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MyFunnyValentine 第6話

 

 
第6話


 
 

 目覚めて、夢ではないと確認する。
 頬をぺちぺち叩き、自分の部屋がいつもと変わりない事を見まわす。外から聞こえてくる音にも何の変哲も無い。鳥の声。近所の生活音。

 いつもの日常の空気にほっとして、鏡の前に立った。
 パジャマのボタンを外して、胸の赤い跡を映す。


 「コウ・・・。」

 好きな男の名前を声にして呟いたせいか、ぷくりと起き上った胸の先端のすぐ横、そのまた横、反対側の乳房にもあるその跡を、指でそっとなぞる。
 
 起きたばかりだというのに、とろりと頭から下半身にかけて、甘い気怠さが充満していく。

 琥一に抱かれ、狂ったようにお互い貪り合い、愛を確認しあった昨日の夕方。
 夜になる前にウエストビーチを出て、ミナコの家に着く前に立ち寄った公園でこれからの事を話し合った。

 「ルカには、俺が言うから。お前は今まで通り、ルカには優しくしてやってくれ。」

 「今まで通りってちょっと、そんな、だって、今までは。」

 琥一の言葉に、ミナコは例えようのない不安の染みが一瞬で心に広がった気がして思わず強い口調になってしまった。
 そんなミナコを予想していたのか、琥一はそのまま続けた。

 「わかってる。今までってのは、なんだ、だから、お前がルカと付き合う前みたいな今までだ。・・・今回の事は俺が言う。今日明日にすぐ言えるかどうかってのは、悪い、ちとわかんねえがよ。」

 琥一が困ったような顔をする。

 「流石に俺も、そこまで神経図太かねえんだ・・・。でもよ、こういう事は男がケジメつけるもんだろ。俺が言うから、お前は言う前も言ってからも、ルカに対する態度は変えないでいてやってくれ。冷たくしないでやってくれ。」

 ミナコは更なる不安を、その時の琥一の表情に覚えないでもなかった。
 
 なんだ・・・という脱力感は確かにあった。

 全身全霊で自分の総てを賭けて壁を壊しても、それを受け入れてくれたにもかかわらず。結局琉夏をシャットアウト出来ていない兄の優しさが、正直ミナコにはもどかしかった。

 ぼんやりとそんな事を思い出しながら、着替えをして髪を整えという毎朝と変わらない朝の支度をしながらミナコは、どこか頭の奥が麻痺したような状態だった。

 「!」

 突然携帯電話の着信音が鳴り響いて我に返る。
 ディスプレイが表示する名前に胸が躍った。
 
 「コウ・・!」

 慌てて通話ボタンを押した。
 
 「おぅ、寝坊してねーか。学校、乗っけてってやる。今もう、オマエんとこの近くのあの公園まで来てんだ。」

 一瞬で、悶々と悩んでいたモヤが晴れる。
 朝から届いた好きな男の、優しい声が嬉しくて、髪をチェックしながら鏡に向かって笑顔を作ると、ミナコは鞄を引っ掴んで家を出た。


 
 

 昼休み。
 ミナコはカレンとミヨを誘って、中庭で食事をした。

 当然、琉夏と一緒に居たくなかったからだ。
 幸い、最近はずっと琉夏も一緒に昼食を取っていたから、たまにはカレンたちと食べたいのだというメールに対して、琉夏は、そうだね~と機嫌良く返してくれた。

 途中で故意か偶然か、琉夏が一人でフラフラと中庭にやっては来たのだが、何も知らないカレンが丁度うまくミナコと同じような理由を口にしてくれた。 

 今日は自分達がミナコを独占するのだと茶化しながら言ってくれたお陰で、琉夏はそのままニッコリ笑ってどこかへ歩いて行った。

 正直びくついていたミナコが、ほっと息を吐く。

 「カレン。ありがと。」

 何の気なしに、日常会話でお礼を口にする。

 「何それ。どういう意味。アタシがバンビと一緒に居たいって言っただけなんだけど?」

 「・・・? バンビ、喧嘩でもしたの?」

 カレンが不思議そうに目をぱちくりさせ、ミヨが首を傾げながら尋ねる。
 そこでミナコは、やっと自分が失言したと気付いた。

 「あ、ううん、喧嘩なんかしてないよ。」
 
 「アヤシイ! バンビ、琉夏くんに泣かされたら、すぐアタシに言うんだよ。説教してやるから!」

 サンドイッチをもぐもぐ食べながら、カレンが勇ましく笑う。
 ミナコはごまかす為に少しだけ笑うと、心配そうに自分を見るミヨのお弁当箱にひょいっと目をやった。

 「ミヨ、これなあに、お肉かな。すっごく美味しそう、貰ってもいい? 交換しよっか。私のこのミートボール、中にチーズが入ってるの、これと交換しない?」

 「・・・バンビ。おかずはあげる。」
 
 「え、いいの。ありがと。」

 「でも。」

 ミヨの言葉に、伸ばし掛けたミナコの箸が止まる。

 「迷ってるように見える。それか、困ってるように見える。」

 仲の良い女友達の言葉が神経を掠める。
 ミナコはその瞬間に、笑顔を作り続けられなくなってしまった。無表情になった自分が解るが、口角を上げられない。

 ミヨは鋭い。普段大人しくて口数も少ないけど、きっと友達としての自分を的確に観察してくれているのだと思う。こういう時、それは証明される。

 「え? なになに、やっぱり何かあったワケ!? ちょっとバンビ、琉夏くんと何があったの、困ってるなら溜め込んじゃだめだよ、アタシらに言いなよ。どうしたの。」

 その様子を見ていたカレンが息まく。
 
 カレンは優しい。そして友情に熱くて、自分が何とかしてあげたいという思いやりに溢れている。友達で居てくれるのが嬉しくて、だけど、ミナコは結局そんな2人に嘘をついた。

 話題を変えようと伸ばした箸が止まったままで、ミナコは持てる気力全部を集め、もう一度2人に向けてニッコリと笑った。

 「大丈夫、なんでもないの。ホントに。ありがとね。」

 「バンビ・・・。」

 尚も心配そうに瞳を覗き込むミヨに、また笑い掛ける。
 その笑顔に、これ以上聞いても無駄だと思ったのか、ミヨはそのまままた弁当を食べ出した。

 青い空をぼんやり見上げながら紙パックのジュースを飲んでいる自分の横で、カレンがおもしろおかしく話す昨日のテレビ番組の内容が、ただ耳を通り過ぎて行く。

 自分は多分、罰を受けるのだろうと思っていた。
 琉夏に内緒で琥一とああなった自分は、きっと罰を受けるのだろうと。

 今この時、2人の友達に対する胸の痛みもそれのうちなのだろうと思った。大事な人に嘘を吐く辛さを、ミナコはそう受け止めていた。






 「ああ、コウ・・・ああんっ。」

 耽る情事はどこまで続くのだろう。そしてどこまでも続いて欲しいと思う。 
 恋い焦がれた男の唇が這う体は、熱を持って内側がざわめきっぱなしだった。

 快感に。
 幸せに。

 昨日に続き今日も同じコトをしている。
 違うのは、昨日はミナコが意を決して飛びかかってコウを押し切ってひとつになったが、今日はどちらからともなく自然に始めていた、という辺りか。

 ルカも筋肉質だが、ルカの多少細身で繊細さのある体と違い、琥一の腕はどこまでも強くて、女からすれば眩暈を覚える逞しさだった。

 男に抱かれるという行為を原始的に捉えれば、琥一の腕の方が自身をより女として実感出来た。

 耳元で、琥一が囁く。

 「ここが、いいのか・・・? 言わねえと俺の勝手にすんぞ。」

 「んんっ、あ、ん、コウの勝手がいい。コウの好きに、はぁ、されたい。」
 
 首にしがみつきながら訴える。
 
 「バカ・・・そんなコト言うんじゃねえ。」

 「だって、あああん、コウのしたいこと、されたいの。」

 喘ぎながら返答をしていた口を塞がれる。
 そして、そのまま熱の塊をゆっくりと入れられた。

 「んんーーー!」

 吸い付かれている唇から声が漏れる。
 どこもかしこも、離れてる部分がないようにとくっつきあう。総て、一緒になってこのまま離れずに一緒に居たい。
 きっと、お互いがそう思ってるとどちらも強く感じながら粘膜を混ぜ合う。
 
 無我夢中。
 まるで夢を見ているかのような、味わった事のない快感。時間の流れも、周りの物音も遮断された2人だけの世界。既に中毒だった。

 心の底から好きな男に抱かれるというのは、泣きそうな堕落だ。

 濡れるのは、物理的に男を受け入れる場所だけではないのだ。体中、粘膜も細胞も何もかもが、しっとりと水気を帯びる。
 じんわりと染み出した水気は、男の愛し方で量も湿度も粘度も変わるのだ。こんな風に、ずっと待ち焦がれていた惚れた男に、愛されてると実感しながら嬲られたら、それこそ涙が止まらない。世界は白く発光した狭くて広い距離感のおかしな空間となる。
 只管相手の肌の熱さと気持ち良さに溺れ続けるしかない。離れたくない。それだけが、つがいである事だけが自分の望みとなる程の閉じゆく高揚感に支配される。

 「好き、好き、コウ、好きぃ・・・!」

 しがみつき、堕ちないようにする。
 琥一の匂いに包まれて、じゅくじゅくと鎔けた血の匂いの甘い果汁に神経のすべてが塗れた気がして、なにもかもが放り出される。
 
 穿たれながら、尖らせた唇の先端で耳の後ろから鎖骨までをすーっと撫でられて、ミナコは意識を飛ばした。

 痙攣するミナコの体を琥一が強く掻き抱く。あっという間に夕方が暗闇になっているのにぼんやりと気付いた次の瞬間には、2人は満足仕切ったのか眠ってしまった。

 






 「やべ!」

 ばさっ! と物音。そして大声。
 隣のただならぬ勢いに、眠っていたミナコも跳ね起きる。

 「おい何時だ!」

 「え、あ、え。」

 琥一の焦った声にミナコもついわたわたして、時計が置かれてもいない方向にくるくると目を向ける。
 二人してただ慌てて、やっと

 「は、8時!」

 2人同時に時計を見て、そして、2人一緒に素っ頓狂な声をあげた。

 そして、一瞬間を置いた後、どちらからともなく吹き出した。

 「あはは、もう、やだ、びっくりしちゃって、やだーもう。」

 「おまえこそ、今、すっげえおもしれえ顔してたぞ、ははっ。」

 「もうっ、笑ってる場合じゃないよぉ。急いで帰らないと、流石にちょっと怒られるかも・・・。バイトって言ってあるから大丈夫だけど・・・良かったー・・・もう少し寝坊してたらダメだった。」

 はーっ、と。
 2人して大きく息を吐いて、安心したように琥一が相好を崩した。
 
 「焦った・・・。」

 そしてどちらからともなく、身を寄せ合ってまたシーツにどさっと倒れ込んだ。
 最中に比べて冷えた肌が、それでも触れるとまたほんのりと温かみを帯びる。その心地良さに揺られながら、鼻先をくっつけて、お互いを慈しむ。

 「あー・・・マジで焦った。・・・寝ちまったな、うっかりしたぜ。」

 「うん。だってコウがいっぱいするから。」

 「あ? バカか。てめーがちっとも離れねえからだろうが。」

 「違うし!」

 暗い部屋で裸のまま、じゃれあっているのがたまらなく幸せだった。

 「じゃあ、離れたかったのか。」

 「ぅ・・・ズルい、コウ。」

 「ばーか。ズルくねえだろ。なあ、どうなんだよ。」

 掠れた声で聞かれ、またどくんと心臓が跳ねそうになる。

 「は、離れたいわけ、ない。」

 小さく答えたミナコに、琥一が吐息で笑い、抱き寄せる。
 それは決して力強くなく、愛おしくて壊せない儚い物に触れるようで。
 
 お互い同じように思っているのが伝わる。軽く触れる唇から、優しい指先から、どちらも今、満たされているという感情が交差する。穏やかで、確かな愛情に包まれていると実感できる時間だった。


 幸せは、崩れる。
 渦中に居る者はいつも、いつの時代もいつの世も、どうしてかそれに気付けないのだ。










 

              To Be Continued・・・・・












 

MyFunnyValentine 第7話

 

 MyFunnyValentine

   第7話








 
  こそこそと隠れて付き合っている。

 少女漫画や、夏休みなどの昼に、母親が食事の後片付けをしながら適当につけているテレビドラマから流れてくるような状況。と、ミナコは思った。

 琥一は、未だ琉夏に事実を切り出せていなかった。
 その話を2回ほどさりげなく持ちだしたが、その度に琥一は必ず胸に何かがめり込んだみたいな、痛みに辛そうな顔をして琉夏を想っている。だからミナコもそれ以上は言えなかった。言わなきゃいけない。頭ではそう判っていても、琥一に躊躇われるとどうしても、自分も黙り込んでしまう。

 悪いのは自分だから。だから言えないで済む選択があるとそちらにふらりと流れてしまうのだ。

 バイトだ、部活だと嘘を吐き、琉夏を避けた。
 学校で一緒に昼食を取る時には、カレンやミヨに同席を頼んだ。流石にカレンやミヨの前で、琉夏はミナコを辱めるような真似はしなかった。彼が元々、女の子とも人当り良く接するタイプなのもあって、その時間はそれなりに和やかに会話が弾んだ。

 琉夏がバイトの日は、ウエストビーチで琥一と抱き合った。
 学校はサボっても、生活費を直撃するバイトは決してサボらない琉夏は、シフトが入ってる日は夜遅くまで帰ってこなくてありがたかった。

 それでも、それは突然やって来た。

 ある日。
 日直の仕事で職員室まで行っていて移動教室に一人遅れたミナコは、教科書を取りに急いで教室に戻った。慌ててドアを開けて脇目もふらずに自分の席へ走った。

 机から教科書を取り出そうと少し屈んだ時、突然背後から口を塞がれてミナコは声にならない悲鳴を発した。

 「黙って。」

 (ルカちゃん・・・!)

 琉夏だった。
 聞き慣れた声に、強張った身体が緩まる。
 
 本当に自分の机だけを目指して走り込んで来たので、ミナコは周囲を全く見ていなかった。琉夏の席が教室の端のせいもあるだろうが、居ることに気付かなかった。

 ほっとして体の力を抜いたのが琉夏にも伝わったのか、手を放してくれる。

 「驚かせてごめん。オマエ、すごく焦ってるみたいで俺に全然気づいてなかったから。」

 「ビックリしたよーもう!」

 「もう! あはは。久しぶりに聞いた、それ。」

 屈託なく笑う琉夏が、移動教室は棟が変更になったというので、ミナコは教科書を揃えて彼の後について歩いた。ところが
 
 「え、ルカちゃん、ここって部室・・・。」

 連れてこられたのは運動部の部室が並ぶ学校の隅だった。
 ミナコは立ち止まる。

 「ごめん。俺、バスケ部のヤツに貸してるものがあってさ、返してもらわなきゃならないんだ。ちょっと授業の前につきあって。どうせ、もう遅刻なんだしさ。」

 「あ、そうなんだ・・・うん、わかった。」

 何故だかほっとして、立ち並ぶドアから一か所を苦も無く探し当て、鍵を開ける琉夏を見る。
 
 「一応授業中だし、先生に見られると面倒だからミナコも入って。」

 「うん。」

 言われるまま狭い部室に入り込む。
 
 ロッカーが幾つか並んでる以外、バスケットボールに使うものが置かれているだけのがらんとした部屋は、日が当たらないせいかひんやりとした。パイプ椅子が3つだけ申し訳のように置いてあるも、あまり使ってないようだった。多分、着替えをする為だけに使われているのだろう。後は倉庫代わりと言ったところだ。

 そう言えば、何度か体育館に用事があって出かけた時、バスケ部は体育館でミーティングのような事をしていたから、そういう話し合いすらここでは行われてないのだろうと、ミナコはぼんやり想った。

 「ルカちゃん、貸したものって、どこにあるの? 探して勝手に持って帰っていいの?」

 我に帰り、ふと琉夏の方を見ると、琉夏は真っ直ぐミナコを見ていた。
 貸していた物を探している素振りは無い。

 「・・・?」

 「探す物は無いんだ。この前バスケ部の助っ人したからね。その貸し分を今、この場所の提供ってカタチで返して貰ってるんだ。」

 「え。」

 どういう意味? と聞き返そうとした途端、琉夏の腕でロッカーに押し付けられた。
 がしゃんと、金属類の衝撃音がする。背中が痛い。訳が分からなくて、ミナコは琉夏を見上げた。

 「ルカちゃ、」

 「ねえ、コウとするのって、気持ちいい? 俺とするよりも。」

 「――――――――――――!」


 時間が止まったかと思った。
 
 呼吸は一瞬、間違いなく止まった。自分は今、あまりの驚きに目を見開いたまま固まっている。それが解るのに、指の感覚すらない。背筋が震えそうなのに、立っている感覚が無い。空耳かとさえ思ったのに、目の前の琉夏の輪郭が妙にリアルだ。

 「な、ん・・・。」

 口が動かない。
 頭が回らない。いや回っているのか。あまりに高速で最良の返答を模索していて、自分でも頭の回転率が把握できないのか。

 「ミナコ、声が大きいからさ、聞こえちゃった。大体、俺そんなに鈍くないし。」

 聞こえた?
 声が?
 
 彼は今、声が聞こえたと言った。いつ。どこで? ウエストビーチで? だが琥一と抱き合う時に彼が居たことはない。

 そんなミナコの疑問を判っているかのように、琉夏は言う。

 「ワルイコトは出来ないって、よく言うじゃん。俺ね、この前バイト中にスッゲー頭痛くなって、店長に送ってもらって途中で帰ってきたんだよね。死にそうに辛くって、多分熱あったと思う。頭がんがんしてフラフラになって階段上がってさ。そしたら、お前の声がした。」

 いつだ。
 歯が抜かれそうな奇妙な感覚の中でミナコは記憶を辿るが、いつの事かまったく判らない。判るわけがない。まさか帰ってこないと決めつけていた家人が帰って来ていたなど。

 「ミナコの喘いでる声聞きながら、布団被って寝たよ。悲しかったけど、現実感が無かったな。夢かと思ってた。俺の部屋なんかいちいち見ないから、帰る時もオマエ、俺が自分の部屋で寝てるって気付かなかったんだろうね。」

 どこか笑っているような形に唇を動かしながら、琉夏は普段と変わらぬ口調でそう言った。

 「でも、夢じゃなかった。コウは嘘が下手だから。」

 「・・・コウが、なにか言ったの・・・?」

 「ん? 違うよ。」

 顔面蒼白のミナコの問いかけに、琉夏はニッコリと笑う。
 
 「コウは特に何も言ってない。でも判るよ。普通に話してればそんなの判る。ミナコだってそれは判るでしょ。コウがさ、隠し事とか嘘とか下手なのは。」

 そうだ。
 自分はどうして忘れていたのだろう。

 琥一に、隠し事や嘘など出来る筈がなかったのだ。ましてや、こんなにも気にかけている弟相手にそんな取り繕いが、上手に進められる訳が無かったのだ。

 「ちゃんと言ってくれればいいのに。俺、別れたくない! なんて駄々こねたり、しないよ。」

 「ルカちゃ・・・。」

 「でも、別れようってミナコにも言われてないし、だから、まだ俺がオマエの彼氏だよね。」

 あっと思った時には琉夏の手がミナコの両手を縛め、ミナコは身動きが取れなくなっていた。空いてる手でミナコの制服を引っ張り、ボタンを外して行く。

 「やめて、ルカちゃん・・・。」

 懇願の声は小さかった。

 琉夏に知られていた。その事実がミナコの良心を抉る。そして知っていても数週間か数日間、素知らぬ顔をしていた琉夏のその心が、恐ろしかった。彼は自分がミナコの裏切りを知っていると告白して尚、普段の彼なのだ。こんなのは普通じゃない。それが怖くて抵抗するのも躊躇わせる。

 下着をずらされ現れた乳房を見て、琉夏が甘い息を吐いた。

 「・・・そりゃ、コウだってこんなの見たら、食べたくなって当たり前だ。」

 琉夏の呟きには棘が無かった。
 
 さっきから感じていた違和感が色濃くなり、すうっと寒気が走ってミナコは動きを止める。

 何故。
 どうして彼は、怒ってもいなければ、悲壮感にもくれていないのだ。普段と全く、何一つ変わらない。顔色一つ、言葉尻一つ揺れがないのだ。

 恋人が自分を裏切った。しかも相手は、自分の兄だ。そして兄も恋人も、今までずっとそれを黙って普通に生活していた。

 どう考えても、誰の目にも明らかに酷い目に遭わされているというのに、何故彼はこんなにもいつも通りなのだ。

 琉夏の指が身体を這い、舌が、既にすっかり知られてる場所を愛撫する。

 「あ、んっ、んんっ。」

 ずるずるっと。
 自分の中の何かが恐怖と快楽、そして良心の呵責に屈して琉夏に引きずり落とされる確かな音を、ミナコは自分の内側で聞いた。








     
    To Be Continued・・・






 
プロフィール

みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

本家ブログはアメブロ
http://ameblo.jp/milk15azuki
にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

下のカテゴリからお好みのモノを選んで頂くと、連載は1話から読めます。

感想・お世辞は大歓迎ですが、苦情は受け付けられません。
鍵付きのコメントは、拍手コメントも含め一切の誤表示を防ぐ為、お返事は致しませんが、必ず読んでおります。励みになっております。有難うゴザイマス。
拍手とかコメントとか貰えると泣いちゃうくらい嬉しいですよ・・・。

鍵付きでは無いコメントは、拍手コメントも含め必ずお返事させて頂いております。
宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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