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ベッドルームのプロポーズ

 


 ベッドルームのプロポース




 

 「はぁ・・・。」

 ぱたんとノートを閉じて、伸びをする要領で机に突っ伏しながら、春歌は溜息を洩らした。

 結構、難しい。
 やってみると案外、何でもそうだけど、外野の立場で見ている時とは大違いなものが多い。これもそうだ。

 「作詞は奥が深いです・・・。」

 昼下がりに音也から突然、逢いたいから部屋で帰りを待ってて欲しい、とメールが届いた。
 今日は朝から夜まで撮影だと聞いていたので、春歌も作曲に打ち込んでいたが、どうやら天候が関係する撮影部分の影響で夕方には終わるようだからと、音也が連絡してきてくれた。

 それが嬉しくて、春歌は早々にキリをつけて、音也の部屋までやってきた。
 
 音也の帰りを待ちながら簡単な掃除をした。そしてふと思いついて、彼に聴かせたくてまだ未完成の段階で持ってきた曲に詞を足し始めたのだが、なかなかどうして思うように言葉が載らない。

 (頭を一生懸命使ったら、眠くなってしまいました・・・)

 目を閉じて、眠るか眠らないかの浮力に逆らわない状態で、ソファに沈む。
 詩を付けるなら、音也への気持ちを謳おうと思っていた。優しくて、真っ直ぐな彼に贈る、賛辞にしたいと思っていたが、浮かぶのはただ、彼のキラキラした姿、音楽に向かう真剣でいて楽しそうな姿ばかりだ。

 それが上手く言葉にならない。
 彼が輝くアイドルである景色は次々浮かぶが、それを言葉に変換出来なくて、春歌は唇を尖らせる。

 (私とふたりきりの時は、キラキラっていうより、ちょっとだけ、しっとりした感じがする音也くんに変身します・・・それを歌詞にしたら・・・)

 そこまで考えて、がばっと起き上って首をぶんぶんと横に振る。

 キスをする時の彼の舌の動きを真っ先に思い出してしまって、赤面した。

 「だめです、恥ずかしすぎます。」

 真っ赤になった顔を手で覆って、自分で自分を意味無く叱責する。
 小さい声で何度も繰り返す。そうしないと、恥ずかしさのやり場が無かったからだ。

 「ただいまー!」

 「あっ。」

 いつの間にかリビングへ入ってきた音也に、春歌は慌ててソファから降りる。
 軽くパニックになっていたせいか、玄関のドアの音に気付かなかったらしい。

 「ただいま。ごめんね、予定してた時間より、大分遅くなっちゃったね。」

 音也が荷物を床に置きながら、片手ですぐさま春歌を引き寄せた。

 「ううん、撮影だから、もっとかかるかもしれないって思ってたから大丈夫です。」

 「ん、でもごめんね。」

 「いいえ。あ、お茶を淹れますから、音也くん、お外から帰って来たら先に手を洗わないとダメですよ。」

 「えーいいじゃん、先に・・・。」

 ちゅっ。
 おでこにキスをされて、春歌は益々顔が火照る。

 「ただいまのキスくらい、先にさせてよ。じゃ、手洗ってこよーっと。ねえねえ、俺、なんか甘いのが飲みたいんだけど、ココアとか、あったかなあ。」

 言いながら音也が洗面所へ消える。
 春歌はどぎまぎしながらキッチンへ向かった。

 用意したココアを一口飲んだ音也が、ソファに座ったまますっと春歌を抱き寄せる。

 「ね、俺、甘い物も食べたい・・・。」

 「えっ。」

 「ね。」

 
 「ね、って、え? え?」

 「うん、甘いもの。君が食べたいよ。今日ずっと仕事してて、俺、なんか判んないけど、いつもより君としたくて1日ウズウズしてた。だから、したいんだ。」

 音也の直球のお願いに、春歌はうろたえた。
 しかしうろたえても、体は既に彼から伝わる熱に反応し始めている。

 それが音也にも判るようで、小さなカタチだけの抵抗は無視されて、抱えられてベッドまで連行された。

 遠慮の無い荒いキスをされる。
 まるで食べるように所構わずむしゃぶりつかれるキスに、春歌はあっという間にどろどろに溶かされた。力が抜けて抵抗の気配のまるで無い春歌の服を、音也が夢中で脱がす。

 「んっふ、っ・・・。」

 首筋を唇で辿られると抑えようの無いゾクゾクした感触が体を走る。
 これでは音也に、感じている事が手に取るように知られてしまうと思うと、なのに更に体は熱くなる。

 乳房を揉みしだかれて、体を捩る。

 「君のおっぱい、とってもかわいい・・・ね、いっぱい吸っていい?」

 「き、聞かないで下さい・・・。」

 「なんで。いきなりしたら、イヤでしょ。」

 少し真面目そうに言う音也に対して、春歌はつられて真面目に返事をする。

 「音也くんにされるなら、イヤじゃないです。」
 
 「え。」

 「音也くんになら、いっぱいちゅうってされたい、です。」

 その言葉を受けて、音也が春歌の胸の先端に勢い良く吸いついた。

 「ふぁああん。」

 「んっ・・・こんなに固くして、やらしー。俺がこうするの、待ってたんだね・・。」

 嘲笑されたような気がして、春歌は首を横に振る。
 そんな事はお構いなしに、音也が先端を舌で転がし吸い続ける。

 「ちゅーってしたら、ほんとにミルクが出たらいいのに。それをちゅーってしたいな。」

 「そ、それはムリです。赤ちゃんが出来ないと、女の人だってミルクは出ないんですよ。」

 息を乱して体をくねらせながら、そしてそれを抑え込みながら、男と女として交わいながら、紡がれる言葉が流れて行く。

 「うん、そっか。だったら、赤ちゃんつくっちゃおう。」

 「ええっ。」

 流れが止まる。
 春歌は強張って停止した。

 音也の言葉が女にとってどれ程の重さか、彼は解って言っているのだろうかと、雌としての本能で体の動きが止まったのだ。

 それを見て音也は、まるで意外な顔で春歌に告げた。

 「なんでそんなに驚くの? だって俺、君とずっと一緒に居たいんだよ。俺達がもっとずっと先も一緒に居るって事は、フツー結婚するってコトでしょ。そしたら子供ほしいよ。」

 「ほんとに・・・? 音也くん、ほんとにそう思ってくれてるんですか・・・?」

 「本気だよ。俺と、ずっと一緒に居て。お願いだよ。」

 そうしてもう一度、今度はさっきより優しいキスをされる。
 春歌は、夢見心地で返事をした。

 「好きだよ。俺、君が大好き。ほんとだよ・・・。」

 「音也くん、わたしもです。」

 ゆるゆると動かされていた腰が大きく早い動きに変わる。
 抱え込まれて、腕に閉じ込められて、春歌は息苦しさと快楽と幸せに喘ぐ。

 軋み揺れるベッドは、まるで世界に浮かぶ、二人を乗せた愛の船。
 このまま2人で、どこまでも共にあれればいいのにと願いながら体を重ねる恋人同士の、総てを包む柔らかな箱。






              

                     To Be Continued・・・









 あとがき


 音春 R18でゴザイマス。

 白い音也求ム。のリクエストにお応えしました! つも、り・・ですが、いかがでしたでしょうか。まーしかし書いてて鼻のアタマむず痒くなりましたよ、ええ、どれ程途中で方向転換したかったか・・・!

 でも、たまにはこんな小さなヒトコマのきっかり短いSSもよいかなと。
 自分は最後の2行が好きです。絵画っぽくしてみたいなって思って。上手く行きましたでしょうか。訪れて下さった方々が、お楽しみ頂けたら幸いです。

 で、これ、きっかりSSとして書いて、カテゴリもよみきりに入れましたが、実はこっそりプロローグです。 

 ちょっと次回まで時間かかりそうなので、とりあえずよみりきカテに入れておいただけっていう・・・。
 いやー、頑張りますのでよろしくです






















 

 

ピュアホワイトデイ

 


 ピュアホワイトデイ♡




 

 3月も半ばになると、暖かい日が増えて来る。
 今日は、そんな小春日和。
 
 私は、ソファとテーブルを窓際まで移動させ、日向ぼっこ宜しく本を読むことにした。曲を作るだけじゃなく、やっぱり作詞の勉強も最低限、語彙を増やす位の事はしないといけません。
 
 「ホントあったかいなぁ、今日・・・。」
 

 暫く読んだ本を置き、紅茶を一口飲んでフっと呟いた時、携帯が鳴った。
 着信音は、彼だけ他の人とは違う着信音に設定してある。私は慌てて電話を耳に当てた。
 

 「ああ、俺だ。何処に居る?」
 
 「聖川さま! お疲れ様です。あ、私は部屋に居ますよ。本を読んでました。」
 
 「そうか。今、レッスンの帰りでな。あの通りでずっと作っていた店、やはりケーキ屋でな。前を通ったら今日がプレオープンだそうでな。お前に電話が繋がれば、食べたいケーキを聞いて買って帰ろうと思ったのだ。」
 

 電話の向こうがざわついている。お客さんが結構いるみたい。
 
 「えっ、ケーキ屋さんだったんですね! えええどうしよう、何があるんですか? 何だか、生クリームとか食べたいですっ! あっでもチーズケーキとかカスタードクリームもああ、どうしようっ・・・・。」
 
 「落ち着け。生クリームならショートケーキと、ああ、フルーツが沢山のっているロールケーキもあるぞ。チーズケーキは・・・ココは、ベイクドタイプのようだな・・・。カスタードクリームならミルフィーユが定番だろう。お前が食べられるなら、3つ買っていくが?」
 

 「太っちゃいます!」
 
 「お前は太っても可愛いから大丈夫だ。」
 
 「・・・!」
  
 一瞬言葉に詰まる。
 
 (そんな事を言うのは反則です聖川さま! ドキドキして、ケーキを選ぶ回路がとんじゃいます!)
 
 「じゃあ、3つ買って行こう。俺と半分ずつ食べればいい。ああ、もう順番が来そうだ、じゃ後でな。」
 
 電話が切れて、まだドキドキした胸を押さえながら、私はお湯を沸かす為にキッチンへ立った。
 







  ******************************************************************************************
 
 

 「美味しいですね、コレ、全部美味しい!」
 
 聖川さまは電話で言った通り、3種類のケーキを買ってきてくれて、2人で半分ずつ食べて感想を言い合った。
 
 「聖川さま、今日はもう予定はないですか?」
 
 「ああ、今日はもう特に用事は無い。お前さえよければ、夕飯も一緒に食べないか。この前は、一十木たちが来たお陰で楽しくはあったが、やはり、お前と2人でゆっくりとしたいものだ。」
 

 有り難い事に、最近私は作曲のお仕事がコンスタンスに続いていた。
 
 聖川さまも、レッスンは当然、端役ながらお仕事も徐々に増えている為、中々2人きりで一緒にゆっくり過ごせない。部屋は隣同士でも、お互い時間が不規則な仕事である以上、メールだけが連絡手段の日が続く事も珍しくなかった。



 「はい、久しぶりですね、長い時間一緒に居られるのは・・・。嬉しいです。今日は、ご飯食べた後も、夜までずっと一緒に居て貰えるんですか?」
 
 
 ただ、率直に、何とはなしに思った事を口にしただけなのに、一瞬彼の瞳が揺れたように見えた。
 
 「・・・あ、え、と。あの、ひ、聖川さま忙しかったから疲れてますよね。ご飯食べたら、早く寝ないとイケナイですよね。ごめんなさい私、気が利かなくて。昨日とかもあまり寝れてないんじゃないですか、撮影、遅くまでしてたみたいだから。」
 
 夜までずっと一緒に居るという事が何に繋がるのかを今更気付いて、頬が熱くなるのが判って、私は慌てて矢継ぎ早に言葉を紡いだ。
 
 (どうしよう、あんなコト言ったら、何か変なコト期待してるみたいで恥ずかしいです! 私ってばどうしてこう、そんなつもりじゃなかったのに、聖川さまに、そんなコトばっかり考えてる子だって思われたらどうすればいいのでしょうか!)
 
 ちょっとしたパニックで頭がパンクしそうになっている私の肩に、聖川さまの手が回る。
 

 「お前がそう思ってくれているのなら、その、俺は、夜まででも・・・朝までだって、ずっと一緒に居たいのだが・・・。今のは、そういう意味に取っても構わんか・・・?」

 彼の顔が近付く。どうしていいか判らずに、頷くのが精一杯の私に、彼はそっとキスしてくれた。
 
 軽く触れた唇が一瞬離れて、それを何度も繰り返して、いつの間にか聖川さまの腕にきつく抱きしめられていた私は、終いには彼に吐息の出口を長く塞がれて、酸欠で頭がフワフワし始めていた。
 
 「あ・・・。」
 
 彼の指が耳をなぞった時、思わず声を洩らしてしまった。彼の触れた場所が火がついたように熱い。そのまま首筋を食まれて、背筋がゾクゾクと戦慄いた。
 
 「ここでは・・・というか、まだ、夕方だが・・・ベッドへ、行ってもイイか・・・?」
 
 激しい何かを必死に押さえ込んでるように見えるけど、遠慮がちに、優しく聞いてくれる聖川さまが愛しくて、応えたくて、私はぎゅっと彼の首にしがみつき、
 
 「ソファじゃなくて、ベッドが、イイ、です。」
 
 その言葉を絞りだすだけで必死だった。もう周りの景色が認識できない位頭が真っ白になっていた私は、自分の声が耳のすぐそばで鳴っているような錯覚さえ起こしかけている。
 

 どうやってベッドに辿り着いたのか覚えていない。
 
 ベッドの上に2人の体が乗った途端、聖川さまは押さえ込んでいた何かの箍が外れたようで。
 だけど私はそれが嬉しかった。彼を好きになって、彼と恋人同士になって、愛する人の思い通りにされる幸せという感触を知った。時々痛くて、恥ずかしさに顔から火が出そうになるけど、それでも、彼の望みに応えたい。その気持ちが全身を震わせる。
 
 寄せては返す波のように、時に大きい波に飲まれながらやがて果てた私達は、夜の帳が降りるのも見えないようにカーテンを閉めた部屋のベッドで、眠りにおちてしまった。
 

 


 ふと目が覚めた。
 
 ベッド脇の時計が光っている。暗くなると光るこの時計は夜中に目が覚めた時に重宝している。19時を表示している時計を目にして、ハっと決定的に目が開く。同時に、無意識に体を起こした。
 
 「・・・どうした。」
 
 「あ。」
 
 私が起き上ったのに気付いて、聖川さまが目を開けた。すっぽりと彼の胸に収まり、彼の腕に抱え込まれていた私は思ったほど体を起こせておらず、彼の目覚ましの役割しただけのようだ。
 
 「・・・・7時か。ウッカリ眠ってしまったな。最近忙しかったからか、お前の顔を見たら、安心してしまった・・・。」
 
 また目を瞑り、更に私を抱き込む。
 
 彼の心臓の音がする。それは、この穏やかな愛が永遠に続くような安堵感を醸し出してくれる音。
 暫くそうしていたのだけど、ふと聖川さまは起き上り、ベッドの下に脱ぎ捨ててあった自分の洋服を探り出したかと思うと、小さな箱を私の目の前に差し出した。
 
 「・・・・え?」
 
 「これは、お前に・・・・。今日は、ホワイトデーだろう。バレンタインに彼女からチョコレートを貰ったら、150倍返しのプレゼントを渡さないと、その彼女と結婚できないと神宮寺から聞いたのでな。」
 
 「ひゃ?」
 
 (ひゃ、150倍返しとは、一体ドコから沸いて出た数字なのですか神宮寺さんっ・・・・!)
 
 「お前は手作りのチョコレートをくれたからな。150倍返しと言われてもどうしたモノかと思っていたが、昨日のレッスンがアイツも一緒でな。いい所へ連れて行ってやるというものだから・・・。」
 
 枕元のスタンドの灯りしかない部屋でも判るほど赤くなりながら、受け取れという仕草で箱を私の目前に翳すので、私はお布団に入ったまま、うつ伏せになって箱を開ける事にした。
 
 「聖川さま、イイんですか、何だかとっても可愛い箱なんですけど・・・。開けるのが勿体ないっていうか・・・。とゆうか150倍って・・・コトは高い。んですか・・・?」
 
 「いや、俺もまだまだ駆け出しの身、自身の収入では、胸を張って高級品だと言えるものは購入できなくて、すまんな。だが、俺なりにお前の事を想って選んだ。お前が気に入ってくれるといいんだが・・・開けてみてくれ。」
 
 「嬉しい・・・何が入ってるんですか・・・開けるの、勿体無いけど、開けますね・・・!」
 
 嬉しいな、何が入ってるんでしょうかと、バカみたいに繰り返しながら、私は可愛く施されたリボンを外し、破らないように丁寧に包み紙を剥がした。
 
 そして、小さな箱の蓋を開けると――――。
 
 「わ・あ・・・! コレ、音譜・・・! カワイイ! 」
 
 中に入っていたのは、私の誕生石がすみっこに、小さいけど一粒埋め込まれた、音譜を模ったピンクゴールドのブローチだった。
 

 「可愛い! コレ、聖川さまが選んでくれたんですか? どうしよう、私、嬉しすぎてっ・・やだ、どうしたら・・・。」
 
 「こら・・・なぜ泣く・・・。」
 
 感極まって泣く私に少し慣れて来たのか、付き合い始めたすぐの頃のように、私が泣きだす度に慌てなくなった彼がふっと笑って頭を撫でた。
 
 「気に入ってくれたか・・・? 」
 
 「はいっ! すごく! こんなに可愛い物、とってもとっても嬉しいです。有難うございます・・・!」
 
 言いながら、ティッシュに手を伸ばし鼻をかむ私を目を細めて彼が見てる。
 
 「気に入ってくれたのなら、良かった。この店のアクセサリーが人気だとヤツが教えてくれてな。値段の割に質も良いと評判だとかで、まぁ、アイツも、女性に関するコトだけは優れている点があるからな。それに、俺は女性物のアクセサリーを買うなど初めてだったから、不本意ながらもヤツに同行を頼んだと言う訳だ。」
 
 「聖川さまが選んでくれるものなら、何でも気に入るに決まってます。でも、本当にこれ、可愛くて嬉しいです。」
 
 「そうか・・・そう言って貰えると・・・。最初は本当にどうしていいやら判らなくてな・・・。アクセサリーと言っても、イヤリングやらブレスレットやら、まず、どこに付ける物にするかを決めなくてはならんだろう。」
 
 「そうですね。どうしてブローチにしてくれたんですか? 私はブローチでとっても嬉しいですけど。」
 
 「そのブローチだけが、音譜の形だったのだ。」
 
 聖川さまが、仰向けになってそのまま私を抱き寄せて言った。思わずブローチの入った箱を手で庇う。
 
 「俺とお前を引き合わせてくれた音楽を、お前が形として身につけてくれると思ったら、迷わずそれを選んでいた。神宮寺は、ネックレスが定番で間違いないと言っていたのだが、それを見たら、それしかないと思ったのだ。」
 
 「聖川さま・・・。」
 
 胸が一杯になる。私の居ない所で、私の事を考えていてくれた。それだけで、自分の中が幸せで満たされる。嬉しさで、涙が出そうになる。
 
 「ケーキを焼くつもりだったが、このところ仕事とレッスンが続けざまでな・・・。すまんな、買ったもので済ませるような真似をして。だが、ケーキを焼く時間も惜しいほど、空いた時間はお前に早く会いたかったのだ・・・。」
 
 そう言いながら、優しく髪に、額にキスをしてくれる。
 
 「お前は、可愛いな・・・本当に可愛い。お前のお陰で、俺は幸せだ。」
 
 「私も、幸せです、聖川さま・・・。」
 
 暗がりでキスをする。
 彼の腕が心地よくて、彼の気持ちが嬉しくて、感激で涙が出そう。
 
 大事にしすぎてしまい込んだりしないよう、常に何かに付けておこうか。日々使う、お使い用の小さいバッグ、普段持ち歩くポーチ・・・ああ、逆に私が迷ってしまっています。
 
 「夕飯は、俺が作ってやろう。だがもう8時か・・・軽いものがいいだろうな。」
 
 そう言いながらも、私を抱きしめる腕を解こうとしない彼の鼓動が心地いい。
 そしてこの後、私達は結局朝までキッチンに立つ事なく、ホワイトデーは過ぎて行きました。










                   ~fin~







   もう何年も前に、アメンバー限定記事で公開したものの転載になります。
   1.2か所手を入れただけでほぼ原文です。忙しくて新しいホワイトデイSSが間に合わなかったー・・・。可愛い可愛いピュアピュアな聖川さまとのホワイトデイ、R18と言いながらこれならCERO/Cでも逝けそうな昨今がコワイwwww









僕と彼女のロジックじゃない関係

 


 僕と彼女のロジックじゃない関係
         
          藍ちゃんSS

 








 僕はロボットだ。
 みんなには内緒だけどね。

 多分、ランマル辺りは知ってもすぐには信じないと思うけど。目の前で電源の入力とか見せても、親父が何か仕掛けてんだろ、とか言ってなんだかんだ疑うか、興味が無いって帰りそう。

 レイジは、「えええええ! そーなんだー!」 とかって大袈裟に驚いて、わーわー喚いて、次の日何もなかった顔して普段通りだね。
 レイジのあのスルー能力って何なんだろう。唐揚げって美味しいらしいけど、食べると自分の優先順位の低い事項から忘れて行く作用でもあるのかな。今度、調べてみるのも悪くないかもしれない。本気の本当の底なしに暇が出来て、それしか調べるコトがない世の中になったら。

 

 そんな日はきっと来ないけどね。

 僕はロボットだからか、こんな時でも冷静にそんなコトを考えていたりする。
 恋人が、藻掻いている最中だというのに。

 柔らかい山の天辺。尖った頂きを摘んでこりこりと弄ってから、ぴん! と、指で強く弾いてみた。

 「んんっ、んっっ!」

 それほど強い刺激じゃない筈なのに、腰をがくがく揺らす。

 「で、さっきから全然証明できてないけど?」

 僕の問いかけに春歌は答えない。
 苦しそうに息を荒げ、全身を染めている。

 「肌が、ピンク色だね。」
 
 そっと、脇腹から太股まで撫でると、ぴくりと反応する。

 「なんて言ったんだっけ? 何かされても、ちゃんと抵抗して逃げられます。だったっけ? その主張はドコに行っちゃったの。結局捕まって、涎垂らして感じてるだけでしょ。何ここ。ぬるぬるし過ぎてクリトリスも摘めないよ。」

 剥いた花芽をぬるりと指が滑る。
 彼女の身体の中心にある湖は湧水で満水で溢れて止まらなくて、中に入れた指は、温度の高さで、どろどろになった製菓用品を混ぜてるみたいな感覚だ。

 春歌は呻いてるだけだ。

 僕がタオルを噛ませちゃったから当然だけど。
 くぐもる喘ぎ声だけが漏れる。僕の、ちょっと頭の悪い恋人の、喘ぎ声。

 目隠しをされて腕を後ろで拘束された姿で、僕のベッドに転がされてる。卑猥な玩具を本来は生殖行為に使わない孔に挿れられて、肌を桜色に染めている。

 これ、埋めてく時も相当よがってたけど、抜かれた時は多分、倍はよがると予想してる。多分、イク確率はかなり100%に近い。

 この彼女の姿を見て可愛いと思う僕のプログラムの名前は、なんだろう。

 「ねえ、これが君の言う、僕にだけ態度が違うって事なの? 僕だからこんなに感じるんだって言いたいのかな。でもさ、誰にでも触られれば感じるんでしょ。人間なんだから、快感の器官はほぼ基本的に全員同じ筈。」

 くっと指を引っ掛けて、彼女の後ろを塞いでた中身を、一気に抜いてやった。

 「~~~~~っ!」

 びくんと、白い白地にピンク色が載った身体が大きく跳ねた。
 その春歌の声にならない声が、空気を震わせる。
 
 蛙の卵に似て無いとも言えない見た目の、勿論それよりも直径がやたらある単純な構造のその淫具は、思いの外彼女の小さな窄まりの壁を刺激したようだ。

 「・・・今、イったね。こっちでもイクようになったんだ。こんな体のくせに、誰かに触られても大丈夫なんてどの口が言うのか不思議だよ。」

 異物を排出したばかりの孔はヒクヒクと震え、僕が一応人間のこの世では男。とインプットされた性を刺激する。
 前髪を掴み、顔を上げさせる。

 ぐったりとした彼女は涙で目の周りが濡れていた。 
 
 「僕、怒ってるんだけど。」

 冷静に告げる僕の声に、彼女の目がまた涙を産んだ。
 
 「何度でも言うけど、流石に言い飽きてきたけどさ。」

 一呼吸おいて、続ける。

 「なんでレイジなんかに触らせてるの。君、馬鹿なの? 腰なんか触られて、なんで黙って俯いてるの。あんな事されたら殴りなよ。ていうかそもそも、僕以外の誰かと2人きりになったら、君なんか丸呑みされて終わりだよ。そんな事も判らないの?」

 畳み掛ける僕の詰問に、彼女がどんどん涙を流す。
 肩を震わせて泣く顔は涙に濡れて、鼻を啜りながら萎縮する様は、でも、どうしてだろう。

 ゾクゾク、するんだ。

 名前のついてない僕のプログラム。
 それを自覚するようになったのはいつ頃だろう。彼女と、恋人同士になってからなのだけど、なんでだろう。

 僕はロボットだ。
 外から何かを設定される存在だ。プログラムを施されない限り、僕はただの小さな機械部品の塊なんだ。

 なのに。
 他の男に近付かれて警戒もしない彼女が許せない。どうしてなのかは、よく、判らないけど。

 下心しか無いのが丸わかりなのに、ニコニコしながら話に相槌を打ってる彼女にイラついて堪らない。

 だけど判らないんだ。仕事で関わりのある人間に話し掛けられたら、ある程度愛想よく返事しないとビジネスとして成り立たない筈だよね。だから彼女がしてる事は、別に間違ってない筈なのに。なのにイライラするんだ。

 話の最中にさりげなく触れて、誘っても大丈夫かどうか確認してる僕以外の男の腕の意図に気付かない彼女が、どうしようもなく憎らしくなるんだ。

 博士は、こんな意味不明な何かを僕に施したの?
 聞いて無い。
 こんな状態、マニュアルに記載は無かった。

 イライラして、可愛いのに、憎らしくて、抱きしめたくなるのに、突き飛ばしたら泣けばいいのにって思って、そして結局彼女をこんな目に遭わせてる僕の回路の計算式は?

 口に噛ませたタオルを取ってやる。
 すぐには動かない顎が震えて、哀れな泣き顔。何度こうやって僕にお仕置きされても判らない子で、本当に手が掛かる。

 「あのさ、レイジは馬鹿なんだよ。何度僕に注意されても、君にちょっかい掛けるのをやめない程、馬鹿なんだよ。認めたくないけど、ああも馬鹿なレイジを見てると、唐揚げには、食べた人間の記憶力を当人に都合の良い部分だけ削除する作用があると思えてくるよ。じゃなきゃ、レイジが性懲りも無く君に近付く行動が理由づけ出来ない。」

 聞いてるのか聞いて無いのか、判断できないとろんとした目。

 何度いってもちょっかい掛けてくるレイジから逃げないから、さっき、いつもよりきつく注意した。
 
 そしたら、「藍くんしか好きじゃないです。寿先輩も、私の態度が藍くんにだけ違うって気付いてるから、滅多な事をしてくる筈がありません。もしそんな事になっても、ちゃんと抵抗して逃げます。」 って言い返してきた。
 
 逃げる? 抵抗して? この子が馬鹿なのか女という生物が馬鹿なのか、呆れるよ。むっとして組み敷いて縛り上げてやったらこの体たらくだよ。狩りの体勢に入った男から逃げられるなんて、甘い考えも大概にしてほしいね。
 
 腹が立ったからこうしてやった筈なのに。

 なのに、目の前のとろんとした表情に誘われてる自分に腹が立つんだ。どうして僕が、こんな聞きわけの無い子に振り回されなくちゃなんないのさ。

 無意識のうちに手を伸ばして、僕は彼女の体を抱き上げた。
 キスをして、それから、僕ははっとして、彼女を自分の身体から離す。
 
 キスなんかして、甘やかしたらダメなのに。
 こうしていつも、僕の方が欲しくなってうやむやになるんだ。それでまた結局同じことの繰り返しなんだ。

 「今日はね、許さないよ。君が2度と僕以外の男に近付かないようにするから。思い知るまで、やめない。僕以外の男なんかに捕まったら、どんな目に遭わされるのか教えてあげる。感謝してよね。」

 そう。
 僕は教えてあげてるんだよ、この子に。指導してるだけで、僕がこの子を好きにしたいんじゃなくて、そうじゃなくて。

 自分に言い聞かせているかのような、暗示のような。
 言葉を並べてる途中でそんな気がして、頭を振った。

 馬鹿馬鹿しい。
 僕は、ロボットだ。暗示なんて必要ないんだ。これじゃあまるで、僕が何かから逃げてるみたいじゃないか。

 「壊れていいよ、君なんて。」

 振り切るようにそう言って、力が入って無いせいで重い彼女の腰を引き摺り寄せた。
 柔らかい太股が行為の予感に強張る。力を入れる事は出来なくても、恐怖で筋肉と肌を攣らせる事はできるんだよね。人間って、面白い。

 「壊れるまで犯してあげる。良かったね。僕の体力が底なしで。」

 アイドルとしての顔でカメラの前に立つ時と同じ顔で、笑ってみせた。
 その瞬間春歌の目は、まるで僕を僕じゃないように見た。確かに、彼女の目がそう訴えていた。

 それが何故だか癪に障って、同時にどうしようもなく不安になって、遠慮も前置きも無く僕は彼女の中に自分を捻じ込んだ。

 「あああっ! ああ、ああっんぁあああああー。」

 いきなり突き入れられたせいか、いつもより甲高い啼き声。
 声ごと抱き締める。彼女に、僕だと判ってほしくて。
 
 「ほら、僕でしょ。いつも挿れてあげてるじゃない、同じでしょ。」

 「ひ、あ。あ、ああっ。あん!」

 「・・・なんであんな顔したのさ。僕が僕じゃないみたいな顔して、なんでなの。教えてよ。自分が自分じゃないみたいって思って怖いのは、僕だよ。君じゃない。」

 「んぁ、あっ。藍く、あああっ。」

 僕の言葉に一瞬何かを感じたような仕草をした彼女の奥を、ぐいっと擦った。
 仰け反った喉の線が女のそれで、噛み切りたいという衝動が愛しさと共に込み上げてくる。抑えきれなくて歯を立てた僕に痛みを訴えるかのように、彼女の声が一際大きくなった。

 なんで。
 僕の回路にこんなもの無い筈なのに。制御できない機械なんて、最低の欠陥じゃないか。どうしてこんな風になるの。

 ああ、止まりたい。 
 電源を落としてほしい。

 だけどそれもイヤなんだ。今この腕に抱いてる命ある愛しさに触れられない時間が惜しいから。
 
 君が他の誰かに触れられたら腹が立つんだ。
 そんな僕に酷い事されて泣いてるくせに、それでも僕を受け入れて包むその愛情が鼻につくんだ。バカだと思う。

 なのに、それが心地よくて、甘えたくて、それからメチャクチャに壊して引き裂いて、それをするのが全部僕じゃなきゃ気が済まないなんて。

 そう思う度に自制するのに、うまくいかないんだ。
 
 きっともう何もかも見えなくなってる腕の中の春歌に、気付いたら囁いてた。

 「僕が怖い? ねえ、怖がらないで・・・止まらないんだ、っ・・・。」
 
 僕には心が無いのだけど。

 その筈なのだけど。

 だけどまるでこれじゃあ。

 ロジックじゃないモノを自分の内側に見るなんて、ありえない夢を見てるみたいだ。だって僕は。






 
 




6:4

 
 6:4
 聖川真斗が優勢の場合





 





 ばんっ!!!!

 

 聖川さまが思い切り壁を叩きつけた音に、私も神宮寺さんも、一瞬動きがピタリと止まってしまいました。

 「こんな男と2時間余りも暗闇の中で過ごすなど、言語道断。自分の身を大切に考えなければいかんぞ!」

 「え、でも、ただ・・・。」

 「”でも”では無い! コイツは明るい日の光の下ですら不埒な振る舞いを厭わぬ男だ。何をするか判らん!」

 
 「やれやれ、ヒドイ言われようだ。」
 
 神宮寺さんが溜息をついて肩をすくめる。

 「ヒドイ言われよう・・・だと。貴様の普段の生活態度を見て、そう言わないで済む道理がどこにある。恥を知れ。」

 「レディ、こんな頭の固い時代錯誤な男の言う事なんて、無視しておけばイイよ。さ、オレと映画に行こう。」
 
 神宮寺さんにクイっと指で顎を上げられ、至近距離で見つめあってウインクをされる。目が近い!そして、くっ、唇が近い! 近いです神宮寺さん! 吐息が! きゃあああああ!

 「な、何をしているのだ、手を離せ神宮寺! 」
 
 聖川さまが横から割入り、私を神宮寺さんから引き離し、イライラした様子で言いました。

 「妻でもない女性に気安く触れるなど、どういう神経をしているのだ、貴様は。大丈夫か。汚い手で触られて、お前のこの綺麗な肌が腫れたりでもしたら大変だ。」

 「オレは病原菌か。っていうか、妻でも無いって、お前ほんといつの時代の人間なんだよ・・・。おい聖川、言っておくが決めるのはレディだ。お前こそ、いつまでレディの腰を抱いている、さっさと離せ。・・・レディ、どうする? オレと映画に行くだろ? 折角こんな人気作品のカップルシートのチケットを貰ったんだ、行きたいよね?」

 「神宮寺と真っ暗な室内で密着して過ごすなど、女子の貞操に関わる。今日は俺が腕によりをかけて、お前の好物ばかりを重箱に詰めて来た。心休まる美しい景色を見ながら一緒に食べよう。天気の良い日にお前と共に見たいとずっと思っていた、とっておきの場所があるのだ。」

 「え、っ と、あ、の、う・・・。」

 
 土曜日の朝。
 お仕事は丁度合間でお休み。いつも通りに起きて、朝食や身支度、簡単な一通りの家事を終えた頃、聖川さまが大きな重箱を抱え、少し顔を赤くしながら、湖が遠くに見える高台の公園があるから、そこにピクニックに行こうと誘いに来て下さったのです。

 その直後、玄関先で私が聖川さまに、お誘いのお返事をする前に神宮寺さんがやってきて、今大人気の映画のカップルシートのチケットを貰ったからと、誘いに来て下さったのです。

 「レディ、選んでくれ。オレと聖川、ドッチと休日を過ごしたい?」
 
 「お前の選択に従おう。遠慮せずに、どちらかを選んでほしい。」

 「あの、あの・・・。」

 「なにやってるんですか~?」
 
 「あ。」 「あ。」 「あ。」

 

 突然現れた呑気な声に、3人の返答が重なっちゃいました。
 四ノ宮さんが、ニコニコしながらいつの間にか傍に立っていたんです。

 「やぁシノミーおはよう。今、レディをデートに誘っていたトコロさ。聖川のヤツが横槍を入れているけど、今日レディはオレと映画に出掛けるから、シノミーの相手は出来ないよ、悪いね。」

 神宮寺さんが、悪戯っぽくウインクを飛ばしながら四ノ宮さんに説明して下さいます。相手が男性でも女性でも、ウインクを飛ばすのは、彼にとっての礼儀のようなものなのでしょうか・・・。

 「何を勝手な事を言っているのだ貴様は。四ノ宮、神宮寺の言う事を真に受けるな。まだドチラと出掛けるか決まっておらん。大体、元はと言えば後から来たのは貴様ではないか。横槍というなら正に貴様だ。俺が先に彼女を誘ったのだぞ。」

 「ハッ。なんだ、レディに選ばれる自信が無いから、今になって早い者勝ちだなんて子供みたいな思想を持ち出すのか?」
 
 「そんなワケなかろう!そういう卑怯な意味で言ったのではない。」

 
 どうしてこのお二人は、いつもこうケンカ腰になってしまうのでしょう。
 お互い同じようなお家同士で、幼馴染で、きっと本当はもっと仲良くなれる筈なのに。

 「そぉなんですかぁ。ところでレンくんの映画のチケットは、今日が期限なんですかぁ?」

 四ノ宮さんが、神宮寺さんの手にあるチケットを覗き込む。

 「え? あ、いや。別に今日じゃ無くても、上映期間中に席が空いてればいつでも使えるチケットさ。だけど、中々休みも取れないし、気が向いた時に行きたいだろう。丁度今日ならレディも休みのようだし、ね。」

 「・・・あ、ソレ、今日じゃなくても大丈夫なんですか・・・。」

 私はなんとなくホッとして、一瞬聖川さまを見ました。
 そして、神宮寺さんに向き直り、

 「ゴメンナサイ神宮寺さん。私もそれは見たい映画で、誘って下さって嬉しいんですけど、でもあの、そのチケット、今日じゃ無くてもイイみたいですから・・・。でも、聖川さまが作ってくれたご飯は、今日じゃないと、その。」

 私が口ごもると、四ノ宮さんがそれを誤魔化してくれるみたいな明るい声で、

 「そうですよねぇ! ご飯はその日のうちに食べないといけませんよねえ! 腐ってしまったら勿体無いし、良くないですよねぇ! だから今日は真斗くんとデートした方がいいと思うんです。ああ、羨ましいですねえ、真斗くんのご飯、美味しいですから!」

 きっと四ノ宮さんは、無邪気に言ってくれているだけで、私を助けてくれるつもりなんて無かったのかもしれません。でも、とっても助かりました。ナイスフォローです四ノ宮さん!

 「あの、そうなんです。食べ物を粗末にするのはよくありませんし・・・すいません。本当にすいません。」

 ペコペコと頭を下げながら言う私の言い訳、苦しくないでしょうか・・・。
 決して神宮寺さんより聖川様の方がいいという意味ではないのですが・・・。どちらか選ぶなんておこがましくて、何とか探した理由なだけなのですが・・・。

 「・・・レディがそう言うなら、仕方ないね。また、誘うよ。」

 「あのっ、神宮寺さん、私、多分今月の半ばを過ぎればまた少し日が取れると思いますので、あのっ・・・!」

 「いいよレディ、無理しなくても。しょうがない。誰か違う子猫チャンを誘うさ。」

 「気にするな。ソイツはその場が楽しければ、相手が女性なら誰でもイイのだろう。おい神宮寺、彼女は貴様の取り巻きの女性たちと違うのだ。無闇に声をかけるな。」

 「まぁまぁ真斗くん、そんな怒ったように言わなくても、あ、映画、良かったら僕がご一緒しますよお~?」

 「ハハハ、そう言ってくれるシノミーの気持ちだけ有り難く頂いておくよ。オレは、可愛い子猫チャン相手なら、30分並んでポップコーンを買うのも平気で映画を見るが、野郎とはご遠慮したいから、すまないね。」

 片手を軽く上げて部屋に戻る神宮寺さんが少しだけ寂しそうに見えて、私は聖川さまに、すぐに戻るからこのままココで待っててほしいと一言告げ、つい追いかけてしまいました。

 「神宮寺さん!」

 部屋に入る寸前の彼に追いつき、声を掛ける。
 神宮寺さんは少しだけ驚いた様子で振り返ってくれました。

 「レディ。」

 そして、すぐににっこりと笑顔を作ってくれる。

 「どうしたんだい。今更オレを選んだら、聖川が泣くよ?」

 「あの、いえ、違います。あの、昨日出した曲にリテイクが来なければ来週なら、大丈夫ですから。今日はすみません。それだけ言いたくて。」

 私は、良かれと思って言ったのですが、神宮寺さんの顔から笑みが消えて
 
 「レディ。」

 さっきとは違う低い声で、小さな声で

 「聖川の次なんてゴメンだね。オレは誰でもイイわけじゃないし、単に君と、たまたま今日デートしたいだけじゃないんだ。・・・聖川が一足先だったとしても、オレを選んでくれる君と、行きたかったんだよ。」

 「・・・え・・・。」

 うまく理解できなくて、動きの止まってしまった私の髪を、神宮寺さんは優しく撫でてくれました。
 そして

 「これはレディにあげるよ。今日ヤツと一緒に行ってもいいし、別の日にお友達とでも行ってくればイイ。」

 「え、でも、折角どなたかが、神宮寺さんにって下さったものなんですよね、そんなの貰うワケには、そんな。」

 「いいんだ。」

 神宮寺さんが、私にチケットを握らせる。
 そのまま無言でドアを閉められてしまった私は、諦めて聖川さまが待つ自分の部屋に戻りました。



 
 

*******************************************
 
 
 

 

 戻って来た自室で、窓に寄りかかり、空を見上げた。
 
 自分でも大人げないと思う。
 選ばれなかった事実に目をそむけたくて、彼女に嫌がらせのような真似をしてしまった自己嫌悪が、胸に黒い染みを広がらせていく。

 誰でもイイわけじゃない。誰でもイイなら、そのままチケットを持って他の誰かを誘いに行くさ。喜んでOKしてくれる子猫チャンは山のようにいる。
 
 でも違う。レディと一緒に行きたくて、オレが自分で用意したチケットだから、レディ以外と行くなんて選択肢は存在しない。

 オレの方を断る理由が出来た時の、レディのあのほっとした顔・・・。思い出すと、心臓がきりきりと痛い。

 聖川みたいに、好きだという気持ちを実直に前面に出して、本人に対し臆面もなく好意を向ければイイと言うのか。馬鹿正直に、隠すという小技も使えないアイツみたいに。そうすれば、レディはオレを選んでくれたってのか?

 「・・・・・・・・・・・・ヤメた・・・。」


 考えるのはよそう。
 
 今考えてもマイナスな思考しか浮かばない。大体、オレはオレだ。変えられないし変える気もない。オレそのものを選んでもらえなければ、意味が無い。
 
 今の時点では劣勢だ。6:4ってトコロか。勿論、オレが、4・・・。大逆転を狙って行かないと、このまま聖川のヤツに持って行かれそうだ。それだけはさせない。絶対に。

 部屋の窓から、聖川と、俺が手に入れたくて堪らない愛しい存在が、並んで歩いて行くのが見えた。
 景色のいい公園に行くとか言っていたな。子供の遠足じゃあるまいし。

 オレは舌打ちをして、車の鍵をひっかけ、外に出た。
 ムカつく聖川に形勢逆転し、本気で惚れてるレディを自分のモノにする作戦を考える為に。

 
 並んで歩く2人を追い越した。
 バックミラーに映る彼女の笑顔を確認すると、勢い任せにアクセルを踏み込んだ。欲しいものは手に入らない。オレが嫡男じゃない事はどうしようもない。今更またどうにもならないコトを思う。だが、彼女は。

 ―――――彼女を手に入れる事は、不可能じゃ無い。
 オレは唇を舐めて、とりあえず今日の休日は、晴天のドライブを孤独に楽しむ事にした。

 



 
     fin








悪ふざけ  ※BL

 


 悪ふざけ






 

 道ならない恋というのはどういうものだ。
 どちらか、或いは両方が既婚である恋か。血の繋がりのある者と育む恋か。

 それとも、ソドムか。

 ソドムが所謂罪だというのは、世間の浅い認識らしい。実際は色々誤解があるらしい。宗教上・言葉の都合上ソドミィ法などと呼称されたらしいが、元々の意味が違うならそれはなんともおかしい話だ。

 しかしソドムという言葉だけが独り歩きしてるのが真実だろうがなんだろうが、宗教上で実際どうだろうが、同性同士の性行為は絶対的に罪なのかもしれないという観念は、少なくとも私自身には確かに存在する。
 だって要はセクシュアルマイノリティだ。普通という定義が大多数であると捉えるとしたら、私はもう絶対的な少数であって、普通じゃなくて、多分、倫理から大きく外れているのだ。

 あろうことか男を受け入れるなど。

 こんな風に、同室の、同性の男に、睦言を囁かれながら、身体の中を掻き回される醜態。そしてそんな様を嬉しいなど、きっと正気の沙汰ではないのだ。

 「っつぅ!」

 突然噛まれて、悲鳴を上げた。

 「トキヤ、何か違うこと考えてるでしょ。」

 「何を突然っ、痛っ!」

 今度は胸を噛まれた。さっきの肩など、跡がついてるに違いない痛さだった。明日の衣装が判らないのにどうしてこんな真似を・・・。そう思うと、ふっと怒りが湧いて思わず抗議した。

 「噛むならしません。離しなさい。」

 起き上がろうとして、阻止される。

 「本気で言ってるの? ・・・終われないクセに。トキヤはもう、自分だけ出したからって終われない身体になっちゃってるでしょ。」

 その声は明らかに、嘲笑の色で。

 「何を、あっ!」

 ずん。と。
 奥まで一気に穿たれ、身体をずらした時に半分ほど押し出されていたもので、自分の中がまた一杯になる。

 そのまま、激しく腰を前後し始めた音也に必死に訴える。

 「やめっ、音、也、ちょっと待っ、ああっ、ダメです、音也、ダメ・・・・!」

 駄目なのはどっちだ。
 最後には、発情期の小動物のような声を発して、音也に揺さぶられる快感に持っていかれてしまう私の方だ。

 いつまでもこんな事をしていてはいけない。
 最初に流されたのがいけなかった。恋愛禁止で溜まってしょうがないからもうトキヤ相手でいいや。と言ってのしかかってきたバカが、単に悪ふざけをしてるのだと侮ってロクに抵抗しなかった。

 まさかで、犯された。
 本当にそんな事をされるなんて、普通誰が思う? 音也も私も男だから信じられなかった。自分は芸能人としての様々以外、素顔に関してはなんの面白味もない、常識の規定値に収まる凡庸な大多数に入ると思っていたのに。突然世界は未知になった。

 それから、ずっと振り切れないで居る。
 あの日、言葉通り私は犯されたのだ。神経まで。すべて。この男に。

 「ほらぁ、終わりたくないじゃん。腰、揺れてるよ。」

 「ち、が、あああ、あ、あん、あっ。」

 「トキヤ女の子みたい。入れられて啼いちゃって。なんかかわいい。」

 ニヤニヤしながら見降ろす音也を、引き剥がせない。
 圧迫感が凄くて言葉にならない。呼吸が忙しなくて落ち着かない。

 そんな私がどうにも面白いのか、音也は中を引っ掻きまわして楽しんでいる。あちこち突いて、散々擦り倒して、最後には私の中に自分の体液を注ぎ込んで満足する。

 「ぅあー・・・すごい出しちゃった・・・。ねえ・・・。」

 ずるりと、ぎっちり嵌っていたものが抜けた突然の空洞の感覚に身体を震わせた私に、音也が問いかける。

 「後でお風呂で掻き出してあげるからさ、もう一回すぐ入れていい?」

 「なにを言っ・・・無理・・・。」

 答えるのがやっとの私の顎を掴み、音也が笑った。

 「もーそんなコト言って、結構トキヤもハマってんでしょ、俺とするの。思ってたより全然気持ちいいよね。ゾクゾクする、背中が。」

 「バ、カなコト、ああぅ、言ってな、いで・・・も、やめっ・・・。」

 音也の指が、彼の出した精液でどろどろになっている後孔を出入りした。

 「そうやって意地張って抵抗するトコロがたまんないんだってば。気持ち良くてイキそうって顔して、言葉だけ拒否して、わざと煽ってるんだよね、俺を。」

 「ちがっ、本当にもう、やめないとっ、あ、あっ、だめ、それはやめ。」

 音也がさっと手を伸ばす動作をしたのを、私は見逃さなかった。
 最近、いつもいつも、同じ事をされるから気配で判るようになってしまった。

 「だーめ。いつまでも意地張ってるからだよ。ていうかわざと? トキヤ、大好きだもんね、これ。」

 「あああーっ。」

 うっ血するかと思う程強く、男根の根元を縛られる。
 最初は何に使っていてどうしてその時ベッドの傍に落ちていたのかもう思い出せないその紐は、ある日、音也がふと手近にあったから使っただけだったのに、今ではこれに使う専用のようになっていた。

 「音也っ・・・解きなさいっ・・・。」

 「やーだ。」

 クスクスと笑う音也が、胸の突起をなぞる。声を殺して耐えるのが辛い。
 根元を紐で締め付けられて、放出出来ないのが辛い。

 「ねえ、俺もうトキヤが居ればいいよ。女の子じゃなくても、トキヤがこうしてくれれば、俺はそれでいいよ。」

 縛られたせいで余計膨らんだ私のモノの先端を、音也は優しく撫でながらそんなことを言う。
 
 だから、それはどういう意味なのだ。
 
 だけど聞かなくても答えは出ていて。

 これは恋じゃない。繋がって絆されて錯覚しているだけなのだ。音也は単に、私が欲を吐き出す相手として丁度いいから離せないだけなのだ。

 私は情けない事に、腹の中を抉り探られたから目を合わせられ無くて、下出に出てしまうだけなのだ。

 でも、本当に只それだけだと、そう言い切ってしまうには何か物足りなくて。

 嗚呼きっと。
 道ならない恋というのは。

 不毛である事なのだ、多分こんな風に、勘違いなのに振り切れない哀れな感情に似たものなのだ。性欲との差がはっきりさせられない弱い自制心を砕かれる屈辱を味わう日々を指すのだ。

 私と音也は違う。
 違うけど、きっとこんなようなものに違いない。

 「また余計なコト考えてる。トキヤ、ダメだよ。俺が頭真っ白にさせてあげる。」

 音也の無邪気な声が、強すぎる刺激と重なって、本当に何もかも考えられなくなっていく。
 言われるままに、頭の中が真っ白になっていく。

 「あっ、やめ、音、也ぁあ、あ、あん・・・っ。」

 「あは、また声が甘くなった。気持ちいいんだね。トキヤほんとに後ろ好きだよね。」


 音也の声が遠くなる。
 
 この遠くなる瞬間の時間の波に溺れている。温くとろりと思考を奪い、岸に植物すら生えないこの不思議で不毛な、恋ではない欲の沼に、私は溺れているのだ。








 
プロフィール

みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

本家ブログはアメブロ
http://ameblo.jp/milk15azuki
にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

下のカテゴリからお好みのモノを選んで頂くと、連載は1話から読めます。

感想・お世辞は大歓迎ですが、苦情は受け付けられません。
鍵付きのコメントは、拍手コメントも含め一切の誤表示を防ぐ為、お返事は致しませんが、必ず読んでおります。励みになっております。有難うゴザイマス。
拍手とかコメントとか貰えると泣いちゃうくらい嬉しいですよ・・・。

鍵付きでは無いコメントは、拍手コメントも含め必ずお返事させて頂いております。
宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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