FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Fire Works 6

 


 薄暗い部屋の中で響く、粘着質な水の音と、荒い吐息。言葉にならない喘ぎ声。
 ホテル最上階の1室で開かれた、混沌とした饗宴。

 「あ、あ、ハルっ、もうダメだっ・・あああっ。」

 真斗が、仰向けの自分の上で体をくねらす春歌の太腿を掴んで、動きを止めさせる。お互いぐちゃぐちゃに溶けあって、どこからどこまでが自分の体なのか判らない。
 
 騎上位で腰を振る春歌の乳房が揺れる様が、視神経を強烈に刺激する。春歌の蕩けた声が、聴覚に甘過ぎる毒を流し込む。

 そして、塞き止められている射精衝動が身体中をぐるぐると駆け巡り、狂い出さんばかりの拷問的な快楽を生み続けている。

 「こら七海、腰振るんだよ!」

 ぱしん!

 「アアアッ!」

 「うぁっ!」
 
 尻朶に細い鞭が入り、春歌が悲鳴をあげる。そうすると膣内がぎゅっと締まり、その度に絞り取られそうな快楽の電流が流れ、真斗も堪らず声をあげる。

 「スゴイねマサ。よく持つなあ。辛いでしょ、もう言いなよ。」

 真斗の根元に指を添える。

 「これで塞き止められちゃってるんだから、相当辛いと思うけどなあ。もう出したいでしょ。七海に一言、中で出させろって言えばいいのに、強情なんだから。」

 「やめ・・もう、ダメだ、もうこれ以上っ・・・」

 「言えよマサ。このリング、あんま長い事使うのも良くないらしいよ。てかもうスゴイよ。破裂すんじゃない? 七海、もっとマサを悦ばせて、中に出したいって言わせなきゃダメじゃない。」

 真斗の性器の根元には、音也によって射精を阻むリングが嵌められており、ぱんぱんに張りきった竿が今にも破裂せんばかりの膨張を誇っていた。

 当然、挿れっぱなしにされている春歌も既に何度も気を遣っており、クスリの作用と相まって、最早自我と理性が完全に飛んでいた。垂れる涎すら拭う事もせず、音也の命令通りに真斗と交わり続けていた。

 イキっぱなしで快楽の奴隷となり喘ぐしかなくなっている2人を面白そうに見ながら、音也は春歌の口を犯したり、乳首を捻って反応を楽しんだりしていた。春歌が腰を動かすのをやめると鞭を揮う。

 乗馬用の鞭は細く短く、革製の為緩く打てば大して傷にはなりにくいが、痛みはそれなりだ。打つ度に啼く春歌の声が、この上なく音也をゾクゾクさせた。

 ワインに混ぜて飲まされたクスリのせいで、どこをどう触られても敏感に跳ね、甘い声で啼く春歌の体は、2人とって最高に脳を直撃する官能だった。
 
 その体に埋め込まれた自身の限界が近い真斗の意識は、レッドゾーンを振り切るギリギリで保たれており、このままでは自分はイった途端に失神すると容易に想像できた。

 必死に耐えていても、快楽の放出の限界は突然やってくる。腰の動きを変えた春歌によって、それは真斗を襲った。

 「あ、あ、ああああああああ!」

 体中が突っ張る。間違いなくイったのに、嵌められたリングが射精を阻む。出口を求めて沸騰し続ける精液の解放の欲求だけが真斗を覆い尽くした。

 「頼む一十木、もう外してくれえっ! 出したい、出したいッ・・・!」

 半分泣きそうになりながら、叫ぶように真斗が訴える。

 「七海の中に出すんだよ?」

 「わかった出すっ、中に出すっ! 早く、ハルの中に全部出すからっ、出させてっ・・・ああっもう出ちゃ・・・ああああああああああああああああ―――――。」

 音也にリングを外されて直後、真斗は女のように声を上げながら、腰が浮く程体を撓らせ、溜まりに溜まった精液を春歌の中に大量にぶち撒けた。
 
 出しても出しても止まる事を知らない勢いで噴出され、膣内に収まり切らない白い体液が、結合部から溢れ出る。真斗が痙攣し小刻みに揺すれて空気が入るせいか、泡立ったようになってシーツへ垂れて行く。

 それでも出し終え、びくんびくんと体を派手に痙攣させ息を切らす。あまりに凄まじい絶頂感に、そのまま気が遠くなった。

 「あっれ、マサ、気絶した・・・? もう、弱いんだか強いんだか判んないヤツだなあ。持久力すげーって思ってたら、イったら気絶とか、意味ワカンナイ。」

 そして、外したリングを指で軽く弾いて飛ばす。

 「ま、こんなモンつけられてあんだけハメられたら、しょうがないか。七海、マサ、気持ち良すぎたみたいだよ。良かったね、悦んで貰えて。さ、こっちおいで。」

 言われるまま、春歌は腰を上げて真斗のモノを体から抜き、ノロノロと動きだす。

 「よしよし、よく頑張ったねえ、何回イった? 教えて。」

 「3回、くりゃい・・・?」

 春歌の舌を吸いながら会話する。唾液の混じる音が、舌を吸うだけで体をヒクつかせる春歌が、気持ちを昂ぶらせる。音也のモノをガチガチに固くさせる。

 「どう、マサのは、気持ち良かった?」

 「うん、気持ち、よかった・・・」

 「そっかそっか。可愛いねえ、とろんとしちゃって。次は俺が入れてあげる。なんかマサので七海の中、ぐっちょぐちょになってそう。」

 言いながら、春歌の乳首を甘噛みする。声をあげる春歌をもっと追いつめたくて、反対側の乳首を強く摘み捻る。

 「七海、マサの綺麗にしてあげな。全部きれいに舐めてあげるんだよ。さ、お尻コッチに向けて、上手にオネダリ出来ないと、まぁた叩かれちゃうよ~?」

 平手で軽く春歌の尻朶を弾くと、春歌が呂律の回らない舌で必死に強請る。
 力の入らない体を、なんとか両腕で必死に支え、音也に言われるままだ。

 「んぁ・・・音也くんの、入れて下さい・・・はぁ、春歌のここ、に、音也くんのおっきいおちんちん、いっぱいくださぁい・・・。」

 「よしよし、上手に言えるねえ。」

 満面の笑顔で春歌の尻を擦り、入口に宛がう。

 「クスリが切れても、そのままで居てね、七海・・・。」

 ねだりながら、一方で早々に真斗の性器に絡みつく精液を舐め取り始めた春歌の中に、音也は一気に自身を押し込んだ。

 「あああああん。」

 春歌の声のせいか、真斗がゆっくり目を開ける。

 「あ、マサが気付いた。」

 「・・・・・・・・・?」

 過激な船酔いみたく意識がまともに戻ってこない頭で、真斗は、愛液と精液に塗れた自分の、まだ勃起したままの肉棒を頬張る春歌を見た。
 舌を出してむしゃぶりつき、後ろから音也に犯され恍惚をさ迷う春歌を、とても綺麗で卑猥だと思った。

 「すっごい短い時間だった、けど、気絶してたよマサ。はぁっ・・・今、七海にきれいに、させてるからっ・・。」

 音也が気持ち良さに揺れながら言うのが、真斗にとって、とても遠い位置から聴こえてくるようだった。

 頭は冴えなくとも、感情も、機微を働かせるほどハッキリしなくとも、たった今自分を溺れさせた快楽だけはしっかりと体が覚えてしまっていた。
 
 細胞の奥にまで沁み込むような浸食。どうなってもイイと思う程の、有り得ない快感。

 ずっと恋心を寄せていた大好きな春歌でその蜜を味わった真斗に、引き返す選択も拒む気持ちも残っていなかった。憑き物が落ちたように素直に春歌に要求する。

 「ハル、こっちも、舐めて・・・そ、垂れてるから、お前がちゃんと舐めるんだ。」

 春歌が、真斗の手に導かれ、睾丸より更に後ろに舌を這わす。

 「はぁっ・・・マサ、判った? 自分の欲求受け入れるって、凄く楽でしょ・・っ。」

 腰を振りながら、音也が嬉しそうに真斗に言う。

 「好きな子をモノにするって、とっても楽しくて、気持ち良くて、こんなの知っちゃったら、ハ・・っ、他はどうでもイイだろ、コレ以外は何もかもさ。っあ、はぁ、七海、気持ちいいよ・・・。」

 音也が春歌の背中に覆い被さる。両手で乳房を掴み捏ねあげ、固く勃ち上がった胸の先端をぎゅうっと抓る。口を塞がれた春歌が呻く。
 
 その様が、真斗を益々狂わせる。目眩がする程落下していく自分に陶酔する。

 「ハル、もう一回、お前の中に入りたい・・・。」

 「ダメだよ、待ってて、俺が終わってからだよっ・・くっ。」

 「一十木、早く済ませろ。早くしたい・・・ハルも、俺がほしいだろう。」

 「うんっ・・・真斗くんのこれ、ほひい・・・。」
 
 咥えたまま言葉を発する春歌には、普段の思考力が完全に無い。と真斗は悟る。
 
 だが、それが何だと言うのだ。
 自分など今や素面でありながら、クスリを盛られた春歌と同じように、いや、もっとひどく堕ちている。

 あれほど並べた綺麗事を音也に一蹴されて揺れたからではない。春歌に跪かれて性器に触れられたからではない。

 きっと自分は、ずっと、春歌をこうしたかったのだ。自分の思うままに抱いて、春歌で快楽を得たかったのだ。理性も正義もどす黒さに塗れ、欲望が勝った。
 悪魔に魂を売れと言われたら、今の自分なら底値で売り渡す。それ程までに春歌が欲しい。春歌と快楽を貪り合っていられるなら音也の言うとおり、他のすべて何もかも、どうでもいい。

 「あ、あっ、そろそろイクよ、七海・・・。」

 真斗は、その時の音也をこれほど憎らしいと思った事は無かった。
 独占欲に駆られると言うのはこういう事なのだと、全身が本能で染まる。
 
 今この時に至るまで、自分が何をし、何をされ、どういう時間を過ごしてきたのか。それらは消し去られ、真斗の中の何かを変える。

 春歌の中に出し切った音也を引き剥がし、真斗は自分のモノを春歌に突き入れた。

 ぐじゅぶじゅっと物凄いような音がして、先程自分が出したものか、今しがた音也が出したものか判らない、同じ白濁の体液が膣口から飛び散る。
 
 焼けるように中が熱い。粘度の高い生クリームがぎっしり詰まった熟れた果肉を貪っているようだった。
 肉厚な花弁が何層にも巻かれた匂いのきつい花を凶暴に抉るような、この世のものとは思えない至上の快楽。
 
 これが欲しい。自分だけのものにしたい。
 
 一度扉を開けた邪な欲求は、走り出したら押さえ込めない鋼鉄の豹のようだと思った。余分な感情を持たず、ある目的を達成する為に他者を寄せ付けぬ鎧で武装した疾走。

 「ハルっ、好きだ・・・好きだっ、ハルっ・・・!」

 真斗に勢い任せに膣内を抉られ、ぷっくり膨らんだクリトリスを音也に指で擦られ、春歌は何度も気を遣った。失神しようにも、後から後から産まれ襲う快感が、意識を殺す事を許してくれない。

 他の何も一切見えていない顔で、真斗は春歌を掻き回し続けた。
 これがほしい。これだけがほしい。これさえあれば他は要らない。真斗は今や、それだけに占有されていた。春歌の舌を激しく吸い、腕に力を込めて抱き締める。好きだ、好きだとうわ言のように繰り返し言い続けた。

 音也も余裕を失くし、少しでも春歌に触れようと必死になった。
 顔を両手で挟み込み、真斗によって歌わせられる声など許せぬとばかりに口づける。
 
 口を吸い尽くすと、一度出しても萎える様子の全くない性器を春歌の口に撫で付ける。反射的に舌を出す春歌の喉奥まで咥え込ませる。

 「ぅっ・・・んんん!!」

 「ちゃんと舌使って・・・そうそう。俺が満足するまで、ずっと咥えてるんだよ。マサが激しいからって休ませないからね。後で俺も、また挿れてあげるね・・・。」

 2人に代わる代わる休む間もなく犯され続けている春歌の声は枯れ、イキっぱなしの状態が体中の感覚を鋭敏にしていた。
 春歌は、耳元で甘く吐かれる真斗の吐息にも体をビクビクと震わせ、脇腹を舐める音也の舌にも思考を白くした。

 意識が飛ぶまで交じりあい、体液だらけのベッドを後にし、もう一部屋あるベッドルームへ移動した3人は、清潔なシーツに沈み込んだその瞬間、余韻のような強烈な睡魔に引き込まれ、泥のように眠った。

 真斗が春歌を腕にしっかり抱え込む。

 音也は反対側から、自分に背を向ける形となった春歌の髪を指に巻き付け顔を寄せる。

 そんな攻防戦、それすら実際あったかなかったかというような混濁に沈む程、皆、疲労困憊して眠ったのだった。

 
 



                     To Be Continued・・・・・



Fire Works 7

 
 
 
 目が覚めた。
 真斗は、一筋だけ強烈な光が差し込む絨毯に気付く。音也が、ほんの少しカーテンを開けて、窓の外を見ていた。差し込む強さで、もう昼だろうと推測できた。


 「ああ、マサ、おはよう。」

 音也が少しだけ口角をあげて小さな声で言う。

 「マサ、七海を、頼めるかな。俺、仕事に行かなくちゃ。」

 「・・・・・・・・・・・・・。」

 「マサ、今なら七海を浚って、マサだけのモノに出来るよ。だけど、今この時を逃したら、俺にそれは保証できない。どうする?」

 真斗が静かに言う。

 「・・・一十木、お前、本当は・・・。」

 音也は目を伏せ、また窓の外を見た。

 「判んない・・・もう判んないんだ・・・ただ、マサなら、七海を大事にしてくれるって信じてる。」

 「俺は、財閥に戻る。ハルさえ居れば、それでいい。俺はハルが大事だ。もう他の誰にも渡したくない。決めた。」

 真斗の真剣な顔を見て、音也は安堵したような顔をした。
 そして、「頼むよ」と真斗に小さな声で告げ、まだ眠っている春歌の顔を覗き込む。

 「さよなら、七海。君のコト、本当に好きだったよ。本当だよ。元気でね。」

 それだけ言って、音也は静かに部屋を出て行った。



 


 
 


 その、少し後。
 およそひと月、まだ、気温も前の季節と変わらない頃。


 街を見下ろすホテルの1室で、コーヒーを飲みつつ座っていたのは蘭丸と嶺二だった。

 「ロングインタビュー嫌いなのに、珍しいね、受けるなんて。」

 「しょうがねえだろ、仕事はしねえとな。」

 「まだ1時間あるね。ランランとお茶できて、嬉しいなあ。」

 「気持ちわりぃんだよ。おい離れろ。ウザイ。」
 
 これ以上嶺二と会話をする気はないという意思表示か、蘭丸がテレビのリモコンをディスプレイに向けた。

 「それでは今日のゲストは、シャイニング事務所の、超!期待の大型アイドル歌手、一十木音也くんです! なんと彼は、東京大アリーナで毎年行われる人気アーティストばかりのライブ、ミュージックフェスティバルジャパンに出演が決まっているんです!」

 テレビ画面には、けたたましい音楽と共に、司会者の紹介で登場した音也が映し出された。

 「あのライブは毎年、3日で15万人を動員し続けている大人気イベントですが、いきなり新人で出演だなんて、テレビの前のファンも喜ん・・・」

 ぷちん。

 「あっ、なんで消すのさ!」

 嶺二が真っ暗なディスプレイを見て不満げな声を出す。
 
 「アイツの顔なんか見たくもねーよ。」

 「も~ランランはぁ。そんなに好きならどうして信じ切ってあげなかったのよ~?」

 
 

 蘭丸と嶺二、そして他2名。シャイニング事務所に所属する彼らは、ある日突然社長に呼ばれて、新しく事務所に所属した後輩達と同居生活を始めろと言われた。
 
 半年間の共同生活の元、その後輩を教育をする。そして、合格だと思ったらエンブレムを渡す。

 エンブレムは2つ。1つは共に生活する先輩から貰う。もう1つは、社長の出した課題をクリアする。2つのエンブレムを手に入れること。それが後輩らに課せられたデビューの条件だと説明された。

 蘭丸は面食らいながらもどうでもいいと思っていたが、自分と共同生活する後輩として現れたのは、かつて自分も生きていた世界の住人。聖川財閥の嫡男・真斗と、後継者では無いが、神宮司財閥の三男坊・レンだった。

 (寄りにも寄って嫌がらせか?)

 それでも、適当にあしらっていれば済むことだった。

 だがある日、社長命令でユニットソングを作る事になり、そこに七海春歌が加わった事で、蘭丸の中の何かが変化した。

 春歌の笑顔は印象的だった。
 何度あしらい、厳しくつっぱねても、音楽への真摯な情熱で自分についてきた。可愛いと思った。そんな感情は何年ぶりだっただろう。

 だが、蘭丸は夢を見てはいなかった。

 人は簡単に裏切る。一緒に夢を追っていた男が、女で簡単にを裏切る。信用出来ると思った人間が、いつか突然必ず裏切る。それが、蘭丸の生きてきた人生で繰り返されてきた事実だった。

 かつては聖川や神宮司と肩を並べる大財閥だった生家が落ちぶれた事で抱えた借金を、未だ返済し続ける彼にとって、揺るぎない、人生の根本。

 それでも、春歌を手に入れた時は幸せだと思った。
 はにかむ春歌の仕草は心底愛おしく、抱く時は、愛する気持ちから来る狂いそうな快感に我を忘れた。

 


 「どうせ最後は見えてたってコトだろうが。てめぇの言う通り、深入りする前に切りあげられて良かっただろ。」

 コーヒーカップを乱暴にソーサーに戻す蘭丸が突き放すように言った。
 
 「それ、本気で言ってんの。ランランさぁ、そんなコトしてたら幸せになれないっていうか、自分から幸せを放棄しちゃってるんだけど?」

 「お前が先に言い出したクセに何言ってやがんだ!」

 「こ~わ~い~。そんなに怒んないでよっ。ランラン、最近またカッコ良くなったって評判だよ。やっぱランランはそうやって尖ってなくちゃね。だけどさぁ。ランランに幸せになってほしいってのも、僕ちんの本音なのよね~・・・。」

 「・・・いいか、俺はな、いつか裏切るヤツと、裏切られるその瞬間までじゃれあうのは大概ウンザリなんだ。俺はたまの恋愛ごっこがテキトーに楽しめて気持ち良かった。あの女は惚れた俺の女気取りで気分が良かった。何がどうなったか判らねえが、あの小僧はエンブレム手に入れて大舞台が決定して万々歳。真斗は家に戻って聖川財閥は安泰。」

 淡々とそう言い、少し笑って嶺二を見やる。
 
 「誰か不幸になったか。なあおい。今全部思い返して順番に並べてみても誰も損してねぇ。何が悪い。収まるトコロに収まってるだろ。寧ろ俺に感謝してくれ。」




 

 
 音也が春歌を後ろから抱き締めていたあの日。
 何とも言えない不安と覚えのある絶望が一瞬で蘭丸を襲った。当たり前のように音也の腕を受け止め、トキヤも交えて3人で話をする春歌の世界の中に、自分は居ないと思った。

 一緒にバンドを組んできたメンバーも、運命の恋だと言って夢を捨てた。そして、運命だと言っていた恋を失って、自分の所へ臆面もなく再訪する。
 
 「先輩、大好きです。」
 
 そう言って自分の胸に顔を寄せる春歌を信じたいのに、どうしても信じ切れない。
 
 春歌が悪いのではないと解っていても、自分の中に渦巻く先入観と、植え付けられたトラウマが次から次へと彼女の心の裏側を探り始めて止まなかった。春歌の前では一切そんな素振りを見せまいとしていたが、1人になると忽ち不安が襲う。過去の記憶が感情を占有する。

 泊まりがけの撮影に出掛けたあの日。
 偶然別の仕事で来ていた嶺二が同じホテルに泊まっていて、蘭丸の部屋へ陣中見舞い宜しく暇潰しにやって来た。

 何をうっかりしたのか、酒が入っていたせいか、音也とのあんな場面を見た直後だったからか、嶺二に春歌との事を話してしまった。
 他人事のように適当に、そんな不安は必要ないと言って貰って救われたかったのかもしれない。ただ話したら、少しは楽になると思ったのかもしれない。その程度心が乱れるくらいには、春歌の事は本気だったのだ。

 「アイツはやっぱり、俺みてぇなのより、音也?だっけ? みてぇな男の方が似合ってるのかもしんねぇな・・・。」

 一言本音を吐いたら、心の底にある棘が顔を出した。

 「あのガキ、思い切って春歌を誘惑でもしねえかな。その誘いにアイツが乗ったら、その時点で速攻別れるのによ・・・。」

 その時はフザけていた。酒の席の軽い冗談。それで通って済む台詞。

 だが、蘭丸の話を一通り聞いた嶺二は、ニッコリ笑って意外な提案をした。

 「ランラン、試してみない?」

 いつものふざけた口調で言う嶺二の話を、蘭丸はそのまま聞いた。追い返さなかったのは、1杯飲んでいた都合、適当に酒の肴程度になるだろうと思ったからだ。
 
 
 「僕はランランが傷つくのを見たくないの。また傷ついたら、今度こそランランはもう立ち直れない! で、自分の後輩は成功させたいワケ。だってそれ、僕ちんの功績になるってことだも~ん。だからさあ~。」

 ふっと笑って、嶺二は蘭丸の顔を覗き込んで、言った。

 「マジでそれ、おとやんにやらせてイイ? イイでしょ~イイって言ってくれないランランなんて、い・け・ず・う~。」

 蘭丸は黙った。冗談混じりでも、嶺二が本気なのが判ったからだ。
 

 春歌は音也に警戒心を持ってない。気心知れたそんな男が、本気で口説きにかかったら彼女がどうするのか、判断材料には最適だと思った。

 信じたい気持ちもあった。誰に言い寄られても、春歌はきっと自分以外には目すらくれないと。
 しかし、どうしても振り切れない数多の痛い経験が彼を躊躇させる。このままいけば又裏切られる。その不安が、自分を守ろうと先回りする。
 
 わざと仕掛けて気持ちを試すなどあざとい真似をする自分はどうなのだとも思う。今ココで嶺二の求める回答をすれば、春歌の行動がどっちに転んでも、結局は自分が春歌を、他人を信じ切れてないと証明されるだけだ。

 信じ切れずとも春歌を好きだ。バカらしいと嶺二の言葉を切って捨てられない。堂々巡りで答えが出せない。迷う気持ちは隙となり、隙は退屈凌ぎの餌を探す輩にとって格好の獲物だ。

 トラウマの影が、<アイツも同じだ。いつか俺を裏切って消える。だったら今すぐ終わらせた方がいい。試してみろ。> そう囁くのだ。

 眼の前の嶺二の、自分の提案を受け入れてくれるのを待つ子供のようなあどけない目が、拍車をかける。
 蘭丸は、とうとう頷いた。

 「よし決まり! でね、モノは相談だけどさ。」

 「んだよ?」

 「おとやんが巧く立ち回って、あの子がランランを裏切る悪い子だって判って別れられたら、おとやんに報酬やってくんない? だって、それでランランの傷が最小限に抑えられたって事になるんだもんさ、イイでしょ。」

 悪戯っぽい目で、嶺二は話を続ける。

 「今度の東京大アリーナでのフェスジャパン、ランランと一緒に後輩が1人出られるんでしょ。ウチの後輩君が成功したら、アレ、彼に出演権利を与えてあげてほしいんだ。うわぉ、嶺ちゃん後輩思い~♪」

 「じゃあもしアイツが、失敗したらどうすんだ。俺に何かくれるのか?」

 「失敗ってナニ? おとやんが失敗? って変な言い方だけど、でもそしたら、彼女は他の男に靡かないって証明できたって事じゃん。そうしたらランランは、あの子との愛を貫けばい~んだよ! な~に言ってるの。それを見極めるんでしょ。」

 「・・・ああそうか・・・まぁイイけどよ・・・。」

 流れ進んでいく話を、どうして止めようと思わないのか。自分を不思議に思いながら、蘭丸はもう一口飲む。

 「なんかてめ、ムリヤリ話纏めようとしてねえか? なんかあんのかよ。」

 「もう! 別にランランには悪い話じゃないでしょ。いいでしょっ、決まりでしょっ? ちょっと試してみるだけじゃない、ね。ただのお遊びだよ。」

 陽気に、新発売のオモチャの話でもするような嶺二に、蘭丸は 「ああ。」 と短く頷き了承してしまった。
 
 

 後悔は、していない。
 信じたいと思っていた女は、嶺二と話をした数日後に一人の後輩と消えた。

 数週間後、新聞に、その後輩が家業を継いだという記事が載った。
 自分には関係ないニュースだと思った。同時に消えた春歌の行方は今も定かではないが、嶺二の話では、音也の采配でその跡取りが浚って行ったと説明された。音也も、2人の行く先は全く知らないという。

 「だけど、春歌チャンがランランを置いていくような女の子だった、って証明できたんだもん、おとやんは一応成功、ってコトで。フェスジャパンの出演権、宜しく頼むよ。」

 そう蘭丸に言う嶺二は、純粋に後輩の大舞台出演権獲得を喜んでいるようだった。

 

 自分には、また以前と同じ日々が戻ってきただけだと思っている。
 だが、その日々を以前はどうやって過ごしていたのか思い出せない。蘭丸の心を占めているのは、その虚無感だけだった。






                        8へ続きます・・・








Fire Works 8

 



 
 音也は最近、多忙で仕方なかった。
 大きなイベントに出演が決まった為、引っ切り無しに取材やテレビ出演がやってくる。

 望んでいた事だから当然、仕事は大変でも有り難く楽しくこなした。世間の認知度が上がり、遂に人気アイドル雑誌の表紙を飾る事になった。

 都内のホテルで取材が数件ある今日は、1日缶詰の予定だ。最初の取材を終え、次の取材までに2時間ほど空いているが、その間に、契約しているブログサイトに頼まれた、新発売のジュースを愛飲しているという記事を更新しなければならない。

 ルームサービスのサンドイッチを食べながら、そのドリンクを飲み、スマートフォンを操作する。ドアのチャイムが鳴り、パンをかじりながらドアを開けた。

 「はいは~い。お疲れちゃ~ん♪」
 
 嶺二が指で帽子をくるくると回しながら部屋へ入って来た。ずかずかと奥まで進み、テーブルのサンドイッチを見ると、貰ってイイ~? と手を伸ばした。ハムとチキンだよ、という音也の説明に、ハムサンドを選んでかじる。

 「あ、コレ? 今度おとやんがCM出るっていうジュースは。オレンジ味なんだ。へ~美味しそうじゃんっ。」
 
 嶺二はペットボトルを手にとって、成分表を眺めている。
 
 音也がもう一度椅子に座ると、頬杖をついて音也に顔を寄せた。

 「あの子が何処に居るか、判った?」
 
 「・・・・・・・。」

 「そっか・・・。ああ、言っておくけど、僕も別に居場所が判った訳じゃないよ。どうせ聖川の御曹司様が、どっかに囲い隠してるのは間違いないから心配はいらないっしょ。逆に、超~ゴージャスな生活してると思うよ~。」

 音也は無言でサンドイッチを食べ続ける。

 「ねえ怒ってるのぅ。友達を貶めてでも昇りつめたかったんでしょ、い~よい~よ。この世界で生きて行くのに、おとやんのその姿勢、間違ってなんかナイナイ。」

 嶺二がテレビのリモコンをディスプレイに向けると、少しして音也が画面に映った。
 
 「今日のゲストは、東京大アリーナで毎年3日間で15万人以上を動員する一大音楽イベント、ミュージックフェスジャパンに新人アイドルながらいきなり出演、シャイニング事務所期待のルーキー、一十木音也くんです! ようこそおいで下さ」
 
 ぷちん。
 
 「あっ、なんで消すのさ~。これこないだ収録したヤツでしょ。んもう、おとやんのインタビュー聴きたかったのに。こないだも見れなかったんだよね、コレと同じような特集のやってたヤツっ。」

 嶺二がオレンジジュースを飲みながら言う。

 「あの御曹司君、ちょ~っとこの世界には向いてないって。財閥継いだ方がイイって。お家に戻ってメデタシメデタシ。人助けしたって思った方がいいよ~。」

 パンを食べる手を止めて、音也が嶺二を見る。

 「どこまでが偶然で、どこからが嶺ちゃんの罠だったの?」

 「罠って・・・ひっど~いおとやん、もう! 罠じゃないでしょう。ちゃんと成功したら、エンブレムと、フェスジャパンに出演させてあげるって報酬があるんだから、罠チガウ。」

 手で、チガウ、とジェスチャーを取りながらおどけた調子で答える嶺二に、音也は苛立ちを隠すように椅子にもたれかかる。

 「っていうかホント偶然なの。最初に君の大失態を見つけた時は、正直どうしようと思ったね。ま、僕ちんが黙ってれば済むかとも思ったんだけど、君の馬鹿正直さがね~・・・、仇になって大問題になるような気がしちゃってたのよ。僕が君を預かってる以上、君の失態は僕の失態。君の追放は僕の責任。ごめんだよ、巻き添え食うのはさ。僕の立場も判ってちょんまげ。」

 嶺二はまたサンドイッチに手を伸ばす。

 「あのさ、僕が手に入れてたのは、ただのバラバラのピースだったんだよ。それが、なんか思いもよらない所でしっくり噛み合っちゃって。ランランと話して繋がった時はびっくりしたね。」

 指についたマヨネーズをぺろりと舐める。

 「だから別に、罠を仕掛けた訳じゃないんだよねえ・・・・。こう言うとナンだけど、皆が自分から滑り落ちて行ったんだよ、こうなるようにね。僕はたまたま、全員の事情を知ってたってだけ。全貌を見ちゃったから、先輩として、同僚として、取れる最善策を取ったつもりなんだけどなあ?」

 

 耳につく嶺二の言葉を流しながら、音也は思い返す。
 思い返さないようにしていたので、記憶を辿るのは久しぶりだ。

 あの時、ショックで頭が真っ白になった自分は、春歌に撮ってもいない蘭丸とのキスシーンを、さも撮ったかのような口ぶりで普段から持ち歩いていたカメラを見せて脅迫し、自分から服を脱ぐように仕向け、今度こそ脅す為の証拠を手に入れた。
 
 しかしそれはその場の勢いでした事であり、実際それをどうこうしようなど考えても居なかった。家に帰って、後悔すらした程だ。謝るか。謝って済む問題では無い。このまま事務所すら辞めるか。一晩中考えていた。

 春歌を犯した次の日、前日撮影で泊まりがけで出掛けていたというのに思いの外早く帰って来た嶺二に、時間があるかとリビングで向かい合わせで座らされた。

 「ああ撮影? 撮影は最初から夜の数時間だけだったから。遠いから泊まりにしたけど、無事終わって朝イチで帰って来たの。ちょっと事情が出来てね。おとやん、昼から仕事行っちゃうでしょ。その前に話したくてね。」

 嶺二は何やら嬉しそうだった。

 「昨日、倉庫で裸で放心してる春歌ちゃんを見たんだよね。」

 「!!」

 「あの作曲家チャンに何したのさ? なんでそんなコト知ってるかっていうと、あんなトコからおとやん出てきて何だろう。って見に行かざるを得ない程、明らかに挙動不審だったのさ、君が。」

 「俺っ・・・・。」

 「レイプは重罪だよ~? ランランに殺されるよ~。」

 「あっ、俺っ・・・!」

 見られていた。
 まさかという思いが過る。しかも嶺二はどうやら、蘭丸と春歌の仲を知っている。

 蘭丸のずっと後ろを歩いていたが、春歌を好きだった音也に、彼女が蘭丸を追いかけているというのは一目瞭然だった。胸騒ぎと不安で思わず後をつけた。

 建物奥の倉庫へ、音がしないように扉を開閉し入りこみ、物陰から伺った2人に、自分の失恋が決定した。

 蘭丸が先に出て行ったのを確認し、鍵を閉め、春歌を無理矢理襲った。その後の自分は冷静なつもりだったが挙動不審だったらしい。それが原因で嶺二は倉庫へ足を向けたという。そこで佇む春歌を見た嶺二には大体判ったのだろう。

 音也は焦った。

 「俺、・・・俺、反省してるんだ! ほんとにごめ・・・ふが!」

 嶺二に口を掌で塞がれる。
 
 「はーいストーップ! まっさか、俺、正直に話して謝ります!! とかぜ~ったい無いから! あっりえませ~ん。クビになりたくなかったら、僕ちんのお願い、きいてちょんまげ。」

 「・・・・お願い・・・・?」

 「あの子さ、おとやんのモノにしちゃってよ。」

 「・・・・・・・は?」
 
 「う~んワケわかんない気持ちも判るけどぉ~、メンドクサイから説明だーいぶ割愛するけど、ランランは可哀想な過去があるんだよ。だから、どうしても人を信じ切れない。あの子の事もね。そんなランランがこんなコト知ったら、もう2度と立ち直れないよ。君は責任を取って、ランランが傷つかないように、春歌チャンをランランの前から消して。」

 「・・・・・なに言ってるの?」

 目の前で飄々と発せられる嶺二の言葉が解らない。
 
 「春歌チャン、無理矢理ヤラれたとは言えランランを裏切っちゃったコトになるよねえ。あの子のマジメ具合じゃ、いつか正直にランランに話すか、バレるね。幸いあの2人、まだ付き合ってそんなに経ってない。傷は浅いうちがイイの。わかるでそ。」

 「・・・・わかんない。」

 即答した音也に嶺二は肩をすくめる。

 「日本語何年使ってんのさっ。兎に角人助けなの。このままどんな手を使ってもイイから、春歌チャンをおとやんのモノにしちゃってよ。多分あの子をランランの前から消すには、それが一番手っ取り早いんだ。もっちろん、おとやんには最高にイイコトあるよ~? 」


 ニヤニヤする嶺二の顔が、妙に不快感を煽る。
 その不快感の意味はすぐに分かった。


 「成功したら、エンブレムあげる!」

 
 それがないとデビューが出来ない。今マスターコースに所属する全員が一番欲しいものを、嶺二が音也の目の前に掲げる。憎しみすら湧くかと思った瞬間だった。

 

 「コレ貰えないとどの道クビなんだから。もう9月だし?」

 見た事もない物を見ていると音也は思った。
 厳しくも優しい先輩だと思っていた嶺二が厳しい芸能界で生き抜いているその根本を、垣間見た気がした。


 「・・・・クビになるか、好きな女をこれ以上傷つけるか選べっていうの・・・?」

 
 わなわなと震えた唇に、つんと人差し指を当てられた。

 「どの口で言ってるのよキ・ミ・は。もうこれ以上ないヒドイ事、したじゃない。」

 ニヤリとする嶺二の笑顔を、悪魔のようだと音也は思った。

 「カンタンだよ。人を従わせるのは暴力や恐怖ばかりじゃ無い。効率的なのはね、快楽だ。あの子、おとやんに犯された時どうだった? 泣いてても腰振ったでしょ。泣きながら喘いでたでしょ? その後、おとやんに殴りかかった訳じゃないでしょ。」

 音也の、奇妙なモノでも見るかのような視線も物ともせず、嶺二は喋り続ける。

 「快楽で支配するのは、時に完全な服従を齎すすっごい技だよ。ランランが帰ってくるまでの2日間であの子を徹底的に堕として、おとやんの虜にしてさらっちゃえ。」

 「・・・。」

 「そんな怖い顔しないでよう。ああ、ランランの方は大丈夫。あの子を取られたからっておとやんに何かしたりはしないから。それは約束するよ。ってゆうかね、これはランランからのお願いでもあるんだ。」

 「・・・・それ、どういう意味・・・?」

 「その辺は詮索しないの! とにかくうまくやれたらエンブレムあげるけど、それだけじゃない。あの、出演が決定した時点でトップアイドルの道が約束されてると噂のフェスジャパンに出演できるんだよ。ね、悪い話じゃないだろう?」

 

 

 そこまで思い返して、音也は額に手を当て天井を仰いだ。

 「今でも不思議なんだ。れいちゃんは、黒崎先輩に頼まれたの? あの人は七海のこと好きじゃ無かったの? 好きだったのに、俺にあんなことさせて平気だったの?」

 
 そんな音也をチラリと見て、嶺二は淡々と言う。
 
 「いや。ランランは別に春歌ちゃんをレイプしろって頼んできた訳じゃないよ。流石にソレ鬼畜っしょ。大体、春歌チャンが君に何をされたのかなんて知らないしね。」

 訝る音也を気にせず嶺二の言葉は続く。

 「悩む必要はない。君は、俺に出されたアイドルになる為の課題を乗り越えてトップアイドルへ昇りつめようとしてる。それでいい。この世界は汚くてやったモン勝ちで、売れてナンボだ。女か夢か。おとやんは選んだだけだ。あの御曹司君も選んだだけ。ランランは元の生活に戻った。それだけだよ。 」

 サンドイッチを食べつつそう話す嶺二の声は音也にとって、異国のニュースキャスターが読み上げる天気予報のようだった。

 

 後悔は、していない。

 真斗は信じるに値する真面目な男だ。きっと、春歌をこんな目にあわせた自分からも、詳細は解らないが、この下らない下卑た一連の行為に何らかの形で関わっている蘭丸からも、きっと春歌を守ってくれる。

 それだけが、彼の罪滅ぼしだった。
 
 虚しさと喪失感だけが、あれからずっと彼を苛んでいた。多分きっと、これが罰なのだろうと、音也はそれを甘んじて受け続けていた。

 戻る道など無かったのだ。最初に過ちを犯したあの瞬間から。
 罪を償うという選択を取らなかった時点で、自分は、夢以外の大事な何かを捨てたのだった。



               

                   最終話へ続きます・・・




 
 
 

 

 

Fire Works 最終話

 


 あれから春歌は、高層マンションのかなり上の方の部屋で暮らす日々が続いていた。
 
 かなり上の方、としか、春歌には解らない。窓から見える景色は非常に高い所から見えるそれであり、自分はこの部屋から出た事が無いからだ。

 気付いた時にはココに居た。
 どうやって運ばれたのかも解らない。
 
 とてつもなく広い部屋で、寝室だけでも3つあり、リビングも、何十人が入れるのかという広さのリビングの他に、20畳程の別の部屋もあった。また別の広い部屋は防音仕様でピアノやシンセサイザーが置いてあり、春歌は1日の大部分をそこで過ごしていた。
 
 最初の頃は、放心状態で日常生活もままならなかった春歌の為にか、週に何日か昼前後に、年配の家政婦がやってきて掃除や洗濯、ごみ処理などの家事と、春歌のちょっとした世話をやっていた。
 
 春歌がその女性と口をきくのは、必要最低限の会話だけで、ここがどこなのかと住所を尋ねる質問にさえ一切一言も応じて貰えなかった。
 
 春歌は、ここが外国かもしれないという不安すら持っていた。
 
 テレビもラジオもなく、パソコンはインターネットに繋がっていなかった。
 携帯電話はあったが、以前自分が持っていたものでは無かった。そして、アドレス帳には真斗の名前しか無く、ウェブサイトには繋がらないように設定されていた。発信も、真斗にしか掛けられないようになっており、ロック解除も出来なかった。

 ただ、窓の外の景色に遠く見える大きな看板などが日本語だったので、かろうじてココが日本で、今まで居た所からそれ程離れた場所ではないだろうと思ってはいた。

 真斗は、ほぼ毎日夜にはこの部屋に帰って来た。
 出掛ける時間はまちまちだったが、どんなに遅く、例え明け方戻って来て、たった1時間眠るだけでもこの部屋で、春歌の隣で眠っていた。
 
 暫くのち、春歌が料理も掃除も自分でするからと申し出ると、真斗は元々部屋へ他人を入れたくなかったのか、春歌が家事をするのを快く応じてくれた。
 
 いつも、食べ切れない程の材料を用意してくれた。作ったのもは、美味しいと満面の笑みで誉めて食べてくれた。気分転換に本が欲しいと言えば、何冊も買ってきてくれた。

 家政婦が来なくなって以来、真斗以外の人間に、会った事が無い。

 いちばん隅に、この部屋にしては小さ目の部屋があり、そこは物置のようになっていた。
 春歌はその部屋に近付くと、何故か急に動悸が激しくなり頭痛までするので、極力そこには近付かないようにしていた。
 それを真斗に話した時、なら近付くなと言うだけだったが、いつも優しい真斗が妙に不安そうな目をするので近付かないようになった。

 幸いその部屋は、隅にあるので、わざわざ向かわなければ済むことだった。



 
灯りも心許ないものがあるだけのその部屋に、春歌は、逃げ出そうとしたのを見つかって怒り狂った真斗に閉じ込められたのだった。それから、春歌は1度も逃げようとはしなかった。

 逃げられなくなってしまったからだ。



 
 蘭丸に会いたいと涙ながらに真斗に訴え出たのは、ここへ連れて来られてから4日ほど経った夜で、その時の彼の怒りは、凄まじいものだった。
 
 リビングのテーブルに右手首を縛りつけられ、鞭で尻を打たれ、泣きながらごめんなさいと繰り返す春歌を、真斗は鬼のような形相で打ち続けた。

 「俺は、俺はっ、お前を絶対に手放したりしないっ。絶対にお前をココから出すものか! お前をここへ置いておく為になら、俺は何だってするのに!」

 そう繰り返しながら鞭を揮う真斗はきっと、事務所を辞めて財閥に戻ったのだろうと春歌は思った。ぐいっと腕を掴まれ、口づけられる。何かを流し込まれたが、反射的に飲んでしまった。

 「あっ、何を・・・。」

 ぞっとする。
 又、レストランで音也がワインに混ぜたような、体が熱くなり記憶が無くなるようなあの薬を飲まされたのだろうか。そう思ってる間に、膣に指を入れられ、中に何かを塗りたくられるような動きがした。

 「ひっ!」

 真斗が指を抜いてすぐ、春歌は自覚も無いのに大量の水がぴしゃあっと音をたてて流れ出た気がした。
 実際は音は立っていなかったのだが、春歌の体の中には響き渡っていた。その後もずっと何処からかとろとろと、愛液が溢れ出ているのが判る。小水を洩らし続けているような感覚を消したくて、春歌は真斗に縋り付く。

 「イヤ・・・何これっ。真斗くんっ、これ、いやぁ・・・。おかしいの、やめて、これ、変なの・・!」

 「逃げるようとするお前に、優しくしてやる道理はないだろう? 俺の好きにさせてもらう。」

 その後真斗は、散々手酷く春歌を犯し、半ば失神しぐったりとした彼女をあの部屋に閉じ込めた。暫くして気がついたのか、泣いてドアを叩き始めた春歌を、真斗は放っておいた。蘭丸の名を呼び続ける春歌に耐えられず、耳を塞いだ。
 
 そのうち疲れて止むだろうと思っていた悲痛な叫びがあまりにヒステリックな絶叫になり、流石に不安になった真斗がドアを開けた時には、春歌は春歌で失くなっていた。

 

 
 複数の医者に診せた。春歌は、記憶を一部喪失していた。
 あまりのショックと、深く傷ついたストレスと診断されたが、真斗はそれでいいと思った。

 蘭丸の事を、春歌は一切覚えていなかったのだ。
 音也との事も覚えていなかったし、真斗と2人がかりでああされた事すら、忘れてしまっていた。平たく言えば、学園を卒業した後の事を覚えていないようだった。

 「卒業してすぐ、俺がお前に告白して付き合いだしたんだ。覚えていないか? 俺はお前に、ずっと好きだったと言ったんだが。まあ、無理に思い出さなくていい。俺と付き合っていたのだから、これからもそれでいいんだ。」
 
 「安心しろ。お前は病気で、それを治す為にここにいるのだ。大丈夫だ。俺が居るから心配しなくていい。」

 何十日も、何週間もかけて春歌をそう宥め続け、とうとう毎日ぼんやりと、ただ生きているだけだった春歌が、自分で家事をすると言いだした時、真斗は心底安堵したのだった。

 

 春歌を部屋に監禁してすぐ彼は事務所を辞め、財閥に戻った。
 莫大な財と力を使い彼女を永遠に自分の手元に置いておく為に。記憶が無くなったと診断された時は、その思いが報われた様な気さえした。

 春歌が徐々に日常生活能力を取り戻していくのが嬉しかった。
 3カ月も経つと、春歌は記憶が欠けている以外、ほぼ元の春歌に戻っていた。

 その間にも何度か真斗は春歌を抱いた。壊れものを扱うように優しく愛を囁いた。自分こそが春歌を守る男なのだと、深層心理に植え付けるかのように執拗に抱いた。
 
 元々が友達として好意を持っていた真斗相手だったせいなのか、春歌は真斗が恋人だという説明を特に疑う風もなかった。

 日常生活に支障が無くなり、真斗も、自分を恋人だと信じて愛らしく頼ってくる春歌を、益々大切にするようになっていた。

 

 「ハル、そろそろ外に出られそうだから、綺麗な景色を見に、旅行にでも行かないか。」

 ある日、真斗がそう言って、春歌を連れ出した。
 
 数ヵ月ぶりに見る外の景色。数ヵ月ぶりの外の空気。春歌は嬉しくて、マンションから一歩出ただけで走り回り、真斗に小言を言われ、車に押し込まれた。

 走りだした車の窓から、自分はあんなにも空に近い位置にずっと居たのかと、聳え立つ高層マンションを、春歌は不思議な気持ちで眺めていた。

 ついた先は湖の傍のホテルだった。
 久しぶりに「他人が居る」状況に気後れし、真斗にくっついて歩く春歌の腰を、彼は優しく引き寄せる。
 
 「大丈夫だ。俺が居るのだから、お前は何も気にすることは無い。」

 「うん・・・。」

 少し斜めに俯く様にし、控えめに微笑む春歌の愛らしさに、また好きだと言う気持ちが深くなる。
 ロビーを抜け、チェックインを済ませた夕方、湖の見えるほとりに立つホテルの部屋で、真斗は久しぶりに都会を離れ、春歌とゆっくり景色を眺めていた。

 夕食の後、真斗が春歌に、真っ白なコートをプレゼントだと言って手渡した。

 「わぁ、可愛いです! すごく可愛い。ボタンがとっても大きくて、ファーもふわふわ!」

 「気に入ったか。お前はあまり大人っぽいものではなく、こういう可愛らしいデザインの方が似合うからな。今日はこれを着て行こう。寒いのでな、手袋もブーツも全部同じブランドで、お揃いで用意してある。」

 「どこへ行くんですか? 旅行先は、ここじゃないんですか?」

 「うん? ああ、ここでは、冬に花火を上げるのだそうだ。そんなに大したモノではないらしいが、冬の澄んだ空と湖に映えて、綺麗らしいぞ。冬だし、湖の傍だから、寒さがキツくならない早い時間にあげてしまうらしい。」

 花火。

 その言葉に、もやっとした感覚が春歌の胸に湧く。

 「何をしている。さ、行くぞ。」

 真斗に連れられ、ホテルの外へ出る。観光客用にか、少しイルミネーションの凝った湖の傍の道を歩く。
 この光景を見た事があるような気がする。春歌は何故かそう思った。
 
 まばらではあったがカップルが何組かいた。皆、目的は同じのようだった。平日はやっぱり人が少ないね、バレンタイン前だしね、と隣のカップルが話してるのが聞こえ、春歌は今日が、バレンタインをすぐに控えた平日なのだと知った。

 「真斗くん、もうすぐバレンタインなんですか?」

 「・・・ああ、そうか。あの部屋にはカレンダーも置いてなかったか・・・。そうだ、バレンタインだな。もう少し暖かくなったらカレンダーを置こう。今は、4月始まりのものもあるらしい。一緒に選ぼう。」

 「うん。」

 「あの部屋は、春になったら引っ越そうと思っている。」

 「え、どうして・・・?」

 真斗が黙る。
 春歌は、単純な疑問の答えを待っていた。

 「あっ。」

 花火が上がった。歓声も上がる。色とりどりの炎が散って舞う様が、冬の空に美しかった。

 「花火はやはり綺麗だな。夏でなくても、なかなかいいものだ。」

 花火。

 それを聴く度、頭の奥がチラリと何かを見せるような気がする。春歌は、息を止めてそれが何かを確かめようとした。

 「は、な、び・・・。」

 「どうした、ハル?」

 小さな春歌の呟きは、花火の散る音にかき消される。次々とあがる大輪の華は、やがて大きな尺ばかりを連続で幾つか咲かせ、合図もなく終わった。

 終わった後も、煙る空を見上げたままの春歌の腕を真斗が取った。

 「さ、戻るぞ。部屋の風呂もちゃんと温泉だ。一緒に入るか。」

 「はな、び・・・。」

 「・・・・なに?」

 春歌の小声に、真斗は足を止める。

 「花火が・・・私、確か、花火を・・・。」

 真斗がゆっくり春歌に目を向ける。視線だけを向ける。冷たい空気に吐く息が白かった。

 「子供の頃に見た花火でも思い出したか? さぁ急いで戻ろう。風邪をひく。」

 「違う。」

 焦ったように春歌を歩かせようとする真斗に、春歌は静かに、でもきっぱり言った。

 「違うの。花火を見た。っていう、景色じゃなくて・・・。」
 「花火・・っていう、景色じゃ無くて、言葉に、何か大事な、何か、忘れてるような・・・、いつか誰かに、花火の、話・・・? を、されたような・・・・花火の、夜の・・・誰か私を、花火の夜に・・・・。」

 「ハル!!」

 あまりにも大きな真斗の声と、いきなり掴まれ強く揺さぶられた両肩に驚いた。だがそれが、春歌が少し形を掴みかけた何かの輪郭を強くさせる。

 思わず見詰めた真斗の瞳が、さっき見た炎よりも焼けるようだと春歌は思った。
 そして、自分はこんなに熱い目に、いつか何度も見詰められたことがあると思った。左右同じ色をした瞳では無い、誰か――――――――。



 「ホテルに戻るんだ。こんな寒い所に連れだした俺が悪かった。お前は病みあがりだ。体が冷えたから、悪い夢でも思い出したんだ。さあ、戻るぞ。」

 有無を言わせぬ迫力だった。
 その時、春歌の頭の中で火花が散ったような閃光が走った。

 「どうした、涙が・・・。」

 「・・・? 涙・・・? ・・・・あ、あぁ、本当ですね・・・なんでだろ・・・。」

 春歌が涙を拭う。引き攣ったような顔で真斗はそれを見ていた。涙の理由が彼の頭の中をいくつも浮かんでは消える。不安と怯えが身体中を巡る。

 「戻ろう。俺のせいで風邪を引かせるわけにはいかん。お願いだから、ハル。」

 真斗は、声が震えないようにするのが精一杯だった。些細なきっかけも洩らせない。必死だった。

 「はい。」

 しかし春歌はにっこりと真斗に微笑みかけ、真斗の手にそっと触れた。恐れている事態を免れたのかと真斗は安心したように笑い、そのまま春歌の指をきゅっと握って、歩き出した。

 真斗は春になったら、もう少し離れた所へ移り住もうと思っていた。
 知り合いのいない街でなら、春歌を1人で日用品の買い物程度は行かせても良い、と思うようになっていた。

 


 蘭丸に会いたい、蘭丸が恋人だと春歌があの日言った。
 その時初めて真斗は、蘭丸と春歌の仲を知り、そして音也が春歌をどうして脅迫していたのかも彼女の口から知った。

 だからこそ、春歌が何らかのメディアで蘭丸の姿を目にする機会に怯えていた。それは音也に対しても同じで、何かのきっかけで思い出したら、春歌は今度こそ正気では居られないのではないかと思っていたのだ。

 だが、テレビとインターネット、それらの環境などなくても、春歌は然して困っていないようだったし、買い物する店を指定すれば、余分な情報が入る可能性は低いだろうと考え始めていた。

 真斗にとって、春歌は今や自分の人生の意味の総てであり、彼女が記憶を取り戻し自分の前を去るのだけは、どうしても阻止しなければならないことだった。

 
 

 ホテルへ戻り、ロビーで談笑する大学生くらいの女性グループの横を通って、部屋へ向かう。

 「黒崎蘭丸の新曲、聴いた? すっごいかっこいいよね!」

 飛び込んできた声に、真斗はぎくりとした。あまりの不意打ちに一瞬足が止まる。

 「アタシ、今月号来る途中で買ってきちゃった! 見て見て! ここ、ここに載ってるの! カッコ良すぎだよねこのオッドアイが! ・・・って、アレ? あ、すっ、すいません!!!」

 「何やってんのよ! すいませ~ん、この子おっちょこちょいで~。」

 「もうっ、ちょっとあんたこっち側に居ると思ってた~。知らない人に見せちゃったじゃん。」

 バッグから雑誌を取り出し、ページを捲るのに必死だった女学生が、友人が居る側と全く反対を通り過ぎようとした春歌の目の前に雑誌を突き付けた時、真斗の時間が停止した。


 ごめんなさ~いと言いながら、雑誌を囲んで嬉しそうに盛り上がる彼女らを、春歌は無表情で数秒見詰めていた。
 
 真斗は、次の春歌の言葉の予想が全くつかず、首を締められるような息苦しさを覚えた。だが春歌は、何も言わず歩き出し、エレベーターのボタンを押す。

 今までもこれからも2度とないであろう異様な緊張感の中、部屋へ辿り着いた真斗は、コートも脱がずに春歌をきつく抱きしめた。

 「ハル・・・・!」

 身動き取れぬ程の強さで抱き締められ、春歌は目を閉じる。呼吸が苦しい。自由にならない手をなんとか真斗の背に回し、春歌はそっと、囁いた。

 「真斗くん。・・・さっき、思い出したんです。真斗くんが、私に告白してくれたこと。ずっとお前が好きだったんだって言ってくれたのを・・・。やっぱり真斗くんは、本当に私の恋人だったって、良かったって・・・。」

 真斗が驚いて体を離し、春歌を見た。

 「私には、真斗くんしか居ないんでしょう・・・? でも、それでいいです。真斗くん、一生懸命優しくしてくれたから・・・。」

 「お前・・・! まさか、全部思い出したのか・・・・!?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・真斗くんが、告白してくれたことを、思い出したんです。」

 春歌はにっこりと笑った。

 「それと・・・・・・・・・・・・・・花火の夜に、真斗くんが着付けをしてくれたのを思い出しました。それだけを、思い出せて、良かったです・・・・。」

 外の世界は雪が降り始めていた。
 
 真斗は泣いて膝を折り崩れた。謝りながら好きなんだと繰り返す真斗越しに、春歌は雪を見ていた。真斗にそっと手を伸ばし、震えるその身体を優しく抱きしめた春歌は、あの夜と逆だと、思っていた。

 好きな男に怒鳴りつけられ床に座り込んだ自分を、真斗が同じように慰めてくれた過去を、本当は思い出していた。自分も泣きたいような気がしたが、もう涙は出なかった。




 
 翌朝、少し積もった雪の上を2人は並んで散歩した。バレンタインにはチョコレートケーキを一緒に焼こうと約束をした。春になったらする引っ越し先を、あれこれ言い合って笑った。

 真斗は幸せだと思った。春歌はもう、自分を捨ててはいかないだろうと確信したからだった。

 春歌は、自分は幸せだと思う事にした。昨日の夜も、優しく気遣いながら春歌を抱く真斗の愛を受けとめようと、決意したからだった。

 

 さざめく湖面に映る朝の太陽が美しいと、2人は寄り添い眺めていた。
 



        



                                    Fin







 

 

 
 
 

 

 

Fire Works  アナザーエンド

 

 なんと! 
 ウイングサーチさんで1位を取れたので、FireWorksの別エンドをうれしい記念で掲載する事にしました! 当初はこれを出すか、最初の案通りにするか本当に悩みました。結局最初の案の通りのエンドを掲載致しましたのでこれは微妙に推敲がおざなりで尻切れのままですが、大筋自分では気に入ってたので、いつか掲載してみたいと思ってましたが、折角なので1位記念で。多分今日だけですぐ転落するけどww でも、クリックして下さった皆様に、本当に有り難い気持ちで一杯で、御礼を言いたいです! 有難うございました!!






 FireWorks
  アナザーエンド

 
 


 あれから春歌は、高層マンションのかなり上の方の部屋で暮らす日々が続いていた。
 
 かなり上の方、としか、春歌には解らない。窓から見える景色は非常に高い所から見えるそれであり、自分はこの部屋から出た事が無いからだ。

 気付いた時にはココに居た。どうやって運ばれたのかも解らない。
 
 ここへきて以来、真斗と音也以外の人間に、会った事が無い。

 とてつもなく広い部屋で、寝室だけでも3つあり、リビングも、何十人が入れるのかという広さのリビングの他に、20畳程の別の部屋もあった。また別の広い部屋は防音仕様でピアノやシンセサイザーが置いてあり、春歌は1日の大部分をそこで過ごしていた。

 ここへ来た当初は秋だったが、今や冬も終わろうとしている。
 
 最初の頃は、ただ息をしているだけのような生活をしていたが、ある時から春歌は諦めた。

 料理は気分転換に丁度良かった。家事をすると申し出ると、真斗は快く応じてくれた。いつも、食べ切れない程の食材を用意してくれた。作ったのもは、美味しいと満面の笑みで誉めて食べてくれた。

 真斗はいつも優しく、春歌を大切に扱ってくれた。
 週に1度は、休みを取って終日一緒に過ごしてくれた。たまに、エレベータで途中の階まで下りた所にある空中庭園に春歌を連れて行ってくれた。

 多分そこは12階程度に相当すると、春歌は思っていた。
 回りに立ち並ぶマンションやビル群と比較してそう思っていただけで、真斗も音也も、一切そういう質問には答えてはくれなかった。

 そこは日当たりがよく、花も多く植えられ、四方を巨大なガラスに囲まれているものの天井は開いた造りになっていた。
 唯一外の空気を味わえるその庭に連れて行って貰える時間を、春歌は心待ちにしていた。
 近頃は、真斗の警戒心も薄くなってきたのか、以前より連れてって貰える回数も、陽気のお陰で庭で遊んでいられる時間も増えた。
 
 音也と真斗以外の人間に会ったことがない状況ではあったが、ここ最近は、音也が姿を見せる日は格段に減って来ていた。

 部屋にはインターネットに繋がるパソコンもテレビもない。真斗に与えられた携帯電話は真斗としか連絡を取り合えないようになっており、春歌は真斗の口から、音也が人気アイドルとして多忙になったという話を聞かされていただけで、自分の目でそれを確かめることは出来なかった。

 だが音也も、たまに訪れると春歌にとても優しくしてくれた。
 
 音也は必ずプレゼントを持って現れた。
 それは大きな花束だったり、有名菓子店のケーキだったり、色彩美しい絵本だったりした。仕事の話は一切聞かされなかった。音也がそうやって来てくれるのは、大抵真斗が忙しく不在が続いた時で、マサに内緒だよと悪戯っぽく囁かれ服を脱がされた。

 以前のように手酷い事はせず、優しく春歌を抱いた。跡が残らないようにしないと。と、気遣いながら求められた。

 「七海はもうマサのモノなんだから。俺は、特別ちょっとだけ許して貰ってるだけだからね。あ~あ・・・・最近ほんっと忙しくてさぁ。もっと七海に会いたいのに・・・。」

 そう言いながら春歌を抱きしめ、頬にキスを繰り返す。

 「マサ、明け方には戻ってくるんだよね・・・。俺も、それまでには帰らなくちゃ。」

 残念そうに口を尖らせる音也の髪を撫でてやると、子供のように笑顔になる。

 「七海。マサ、優しい? マサと一緒で幸せ?」

 「・・・・うん。」

 「そっか、良かった。大丈夫だよ。マサは、七海のことだけを愛してるんだ。だから、七海はマサに守られていればいいんだよ。マサの言うこと、聞かなきゃダメだからね。わかった?」

 「うん。」

 何度繰り返したか判らないやり取りを紡ぐ。

 「そろそろマサに、いい加減七海をちゃんと信じて、たまには空中庭園以外の外に出してやりなって頼んであげるよ。旅行にでも連れてって貰いなよ。七海はもうちゃんとマサだけを見てるのに、マサはまだ少し不安みたいだね。」
 
 

 


 

 1度、逃げ出そうとしたのを見つかって怒り狂った真斗を目の当たりにしてから、春歌は1度も逃げようとはしなかった。

 
 それはここへ連れた来られてから数日経った夜だった。

 目が覚めた日は頭がはっきりせず、1日ベッドに転がっていた。それはまだホテルだったのか既にこの部屋だったのか解らない。音也がベッド脇で、薬が抜け切ってないのかもね等と言っているのを、半分眠った頭でぼんやり聞いていた。

 次の日、目が覚めたら昼間だった。
 その時はもうこの部屋に居た。リビングのテーブルには、夕方帰る。冷蔵庫に食事を用意してあると言う真斗の文字のメモがあった。

 夕方遅くに真斗が帰って来て、事情の説明を求めても、急病を患ったのでここへ運んだなどと言われ、それ以上ははぐらかされて終わった。状況が全く呑み込めないまま、風呂に入れさせられ、食事を摂らされた。

 そして3日目。春歌は漸く戻った体調で部屋の中を歩き回り、自分の荷物の一切が無く、この部屋のドアが開かないことに気付く。

 玄関前にひとつあるドアが、どうやっても内側から開かないように細工されていると気付いたが、そのドアさえ開ければ玄関は出られると思った。

 どうしても蘭丸に会いたかった。自分の携帯電話はどこにあるか判らず、部屋にあるパソコンは、パスワードを入れないと立ち上がらない。電話は設置されておらず、テレビすらなかった。連絡手段が無い以上、直接会うしか無く、また、逢いたくて堪らなかった。

 蘭丸はもう帰って来ている筈だ。自分が部屋におらず、連絡も取れなければきっと心配している。春歌は居ても立ってもいられなかった。

 夕方、真斗がお寿司を手土産に帰って来た。
 真斗が居る時のそのドアは何の変哲もなく開いたので、隙を見て逃げ出そうとしたのだが、玄関を抜ける前に見つかってしまった。

 泣きながら蘭丸に会わせてほしいと叫び、抑えつけようとする真斗を振り切ろうと必死になった。だが結局逃げられず、引き摺る様に春歌を部屋へ連れ戻したその時の彼の怒りは、凄まじいものだった。
 
 リビングのテーブルに右手首を縛りつけられ、鞭で尻を打たれ、痛みに泣き叫びやめてと繰り返す春歌を、真斗は鬼のような形相で打ち続けた。

 「俺は、俺はっ、お前を絶対に手放したりしないっ。絶対にお前をココから出すものか! お前をここへ置いておく為になら、俺は何だってするのに!」

 そう繰り返し鞭を揮う真斗はきっと、事務所を辞めて財閥に戻ったのだろうと春歌は思った。ぐいっと腕を掴まれ、口づけられる。何かを流し込まれたが、反射的に飲んでしまった。

 「あっ、何を・・・。」

 ぞっとする。
 又、体が熱くなり記憶が無くなるようなあの薬を飲まされたのだろうか。そう思ってる間に、膣に指を入れられ、中に何かを塗りたくられるような動きがした。

 「ひっ!」

 真斗が指を抜いてすぐ、春歌は自覚も無いのに大量の水がぴしゃあっと音をたてて流れ出た気がした。
 実際は音は立っていなかったのだが、春歌の体の中には響き渡っていた。その後もずっと何処からかとろとろと、愛液が溢れ出ているのが判る。小水を洩らし続けているような感覚を消したくて、春歌は真斗に縋り付く。

 「イヤ・・・何これっ。真斗くんっ、これ、いやぁ・・・。おかしいの、やめて、これ、変なの・・!」

 「逃げるようとするお前に、優しくしてやる道理はないだろう? 俺の好きにさせてもらう。」

 暗い怒りを露わにした真斗と、塗られた何かのせいで腰が抜けたようになった。這うように真斗から遠ざかろうとした春歌は、いつの間にか部屋に来ていた音也に気付いた。

 この部屋に音也が来たと春歌が認識したのは、その時が初めてだった。

 「どうしたのさマサ、七海をデーブルなんかに繋いじゃって。あれ、お尻腫れてるじゃん。ぶったの? どしたの。」

 「お前か・・・ああ、鍵はもうそのまま持っていろ。失くすなよ。・・・・ハルが逃げようとしたんだ。・・・・黒崎さんに会いたいと、喚いて・・・。」

 それを聞いた音也が、冷たい目で春歌を見据えた。ゆっくりと腰を降ろして春歌と視線を合わせ、指で彼女の顎をくいっとあげる。

 「そんなコト言ったの、七海。マサが本気で君を愛してるって気持ちが、全然解らないんだね、七海は。」

 春歌は恐怖で動く事が出来なかった。どこだか判らない場所に数日間閉じ込められ、すっかり精神が疲労困憊していた。恐怖で震えが来る前に、絶望に襲われた。

 「ねえ七海。」

 音也が口を開く。

 「マサはね、君をずっと大事にする為に家に戻ったんだよ。七海が居ればいいんだって。アイドルになるって夢を捨てても、七海とずっと一緒に居る為に、財閥のお金を自分で使えるようにしたいって。」

 真斗は黙ったままだった。
 
 「マサね、あの人と一緒に始めた番組が評判良くて、あの東京大アリーナで毎年やってる音楽フェスに出演が決まってたんだ。その枠をね、俺が、七海を譲るって条件と引き換えで貰ったんだよ。君だって芸能界に居たんだ、判るでしょ。あのライブに出られれば、もうそれは売れるって約束されてるようなもんだよ。あのライブより七海を選ぶ程マサは、君が欲しかったんだよ。」

 広く静かな部屋で、目に入ってくる窓の外の夜空と、ビル群の煌めきだけが妙に美しかった。
 あの時レストランで、大きな仕事が決まりそうだと嬉しそうに話していた音也をぼんやり思い出す。

 そうか、と思った。

 「で、ふふっ、・・・3人でヤったのがよっぽど気持ち良かったから? か知らないけど、今日俺に、やっぱり一十木も、たまには七海に会ってもイイって言ってくれたんだ。」

 
 友達である信用を軸に、春歌と引き会わせるお膳立てという親切を働き、罠に落とし込む。
  
 あの時散々中で出せと言っていたのは、真斗の責任感強い真面目さを利用したのだ。
 
 もしも女を身篭らせた、またその可能性が高いとなれば真斗のような性格では、芸能界など捨てて家へ戻るに違いない。秘め続けたが故に一度頭を擡げた愛する気持ちは止らないだろうから、春歌を囲い続ける為に、莫大な財と力を駆使するに違いない。

 春歌の体と、真斗が貰った大きな仕事との取引。音也にはこれ以上ない、新人としては有り得ない大きな舞台でのチャンスが手に入る。

 そこまで計算するなど、この音也には造作もないと思った。
 人の姿をし、友達と名乗る絹を纏う、異形の強欲。

 自分を好いていてくれる。その気持ちだけは本物だと思えたのに違和感がずっと消えなかったのは、彼が、その愛すら別の欲を満たす道具として扱っていたからだと、春歌はそこで確信した。

 「自分が出演決まってた大きな舞台譲ってくれて、折角自分のものにした七海にまで、まだ会ってもいいって言ってくれて、友達って、有り難いよね。」


 わざとらしい彼の笑顔が、夜空と街の煌めきに滲む。
 一体彼は、何をどう話して真斗を丸め込んだのか。考えようにも、どんどん思考力が消えていく。体は益々血の巡るスピードが上がり、水の中で泥酔したような感覚に溺れていく。
 

 「家に戻れば、仕事は山のようにあるからな。俺とて、毎日ここへ寝るだけに帰る日が続く時もあるだろう。ハルが退屈してはいかんと思ったのだ。お前以外の事情を知らん者をココへは入れたくない。それだけだ。ハルの体に傷をつけるような真似は許さんぞ。」

 「なぁに言ってんだよ・・・自分で七海のお尻がこんなに腫れるまで鞭打っといて・・・大丈夫。俺は七海を可愛がってはあげるけど、傷をつけたりはしないからさ。あ、そうそう、ちゃんと中に出さないようにもするよ。もうマサのモノだからね。弁えてるって。」

 「・・・・今は多少なら、手荒くしても構わんぞ。」

 「も~マサってば怒りすぎじゃない? ・・・でも。」

 音也の顔が近付く。春歌は彼の吐息に震える。

 「逃げるなんて、七海が悪いよ。ダメじゃない。マサは君の為に一生懸命なんだよ。君の事が大好きなんだよ。解ってあげなきゃ。七海は悪い子だね・・・。」

 そう言って、音也が春歌にキスをする。ねっとりと舌を遊ばれ、目眩がする。
 
 「ああ、悪い子なのに、あんまりにも可愛くてキスしちゃった・・・。マサ、どうする? ちょっとキツいお仕置きをしないと、またあの人に会いたいなんてバカなこと、言い出し兼ねないよ。」

 真斗が、奥歯をぎりっと噛んだのがわかった。

 「ハル、他の男の名前など、2度と言えないようにしてやろう。一十木、お前に貰ったあの薬、今飲ませて、あそこの中へ塗りたくってやったが、床が濡れてる。効いてるだろう。」

 「うわスゴ・・・お漏らししたみたいになってるじゃん。さて、どうしようね。」

 唇を舐める音也の舌が、濡れて光る。

 「七海はマサのモノになったんだよ。解らないなら、解るまで教え込んであげないとね。」

 顎を掴まれる。触れられると背筋にゾクっとざわめきが走る。

 「あっ、んんっ・・・。」

 「ああ、もう息が甘いね。そりゃまぁアレを直接塗られたりしたら、俺たち2人がかりでも厳しいかもねえ、足りなくて。」

 きゅっと乳首を捻られ、そこが痛いほど勃ち上がっていると初めて気づく。それだけなのに、まるで挿れられたような声を上げてしまい、音也に嘲笑われる。

 「もうガマンできなくなるよ。キスされて触られたら、後はなし崩しだ。」

 その言葉通り、今の春歌は体中が熱を持ってどうしようもなくなってる状態だった。息が乱れる。心臓が波打つ。

 「ハル。」

 名前を呼ばれ、真斗を見上げる。感情が読み取れない。それが変貌した音也のようだと思った。

 「触ってほしいか?」

 「うんっ・・・触って・・・お願い・・・。」

 視界がブレるような気がした。自分の口走る台詞が既に判らない。ただ熱い。ただ触れてほしい。めちゃくちゃに抱いてほしい。欲求だけが次々と湧き上がる。体中がじんじん疼く。

 「訊けんな。お前は、俺以外の男がいいのだろう?」

 「そん、な・・・。」

 「あ~あ、マサは意地悪だねえ、おいで七海。俺が気持ち良くしてあげる。」

 首だけで音也を振りかえった途端、ぱしん! と思い切り尻を打たれた。

 「きゃあっ!」

 「ははっ、ダメじゃない七海。マサ以外の男を見たらダメだって躾をしてるのに、俺に誘われて簡単に来ようとするなんて。」


 悲鳴を上げた春歌を、真斗は平然と見ていた。ただ、その瞳にあるものが妙に禍々しく、火照りゆく体とぼやけて行く認識力で、春歌はそれだけは冷静に見つけられた。

 「な~な~み。マサにちゃんと謝って、これからイイ子にしますって言った方がい~よ?」

 音也の指が軽く乳首を掠める。
 それだけで、頭の芯まで痺れが走る。

 「ああ、ダメ、ダメっ・・・・!」

 自分で自分が止められくて、春歌は身悶える。プライドも羞恥心もすべてかなぐり捨てて、自分の体を慰めたくて仕方が無い。無意識に自分の指が下半身に伸びる。割れ目をなぞった瞬間、そこが湧き出る噴水と同じだと判り余計に頭の中がぐちゃぐちゃになる。指が止まらない。した事もないのに、一番敏感な芽を捏ね回し、中に指を入れた。

 「まったく・・・自分で始めたか。」

 「手、縛っちゃえば? あ、でも取り敢えず一回イカせてあげよっか。俺、見たいし。」

 「・・・・そうだな。」

 「あっ、あっ・・・。」

 春歌を見下ろしながら2人がそんな会話をしているうちに、春歌は一度達した。
 あまりの早さ。そしてまた吹き出る愛液と、益々疼く体がどうしようもなく持て余された。春歌はそのまま真斗の足元に縋りつく。

 「お願い、真斗くん、お願いぃ・・・。」

 矢も盾もたまらず、服の上から真斗の股ぐらに喰いつく様に縋る。後ろから音也にぐいっと髪を引かれる。

 「こぉら、お行儀が悪いな。お預けだよ。」

 「イヤ、欲しいの、イヤぁっ・・・!」

 「あちゃぁ・・・マサ、ちょっと飲ませる量が多かったんじゃない? こないだよりも回りが早いし、もうマサのちんぽ貰う事しか考えられなくなっちゃってるよ。これじゃあ何やっても気持ちいいと思うよ。お仕置きになんないな。」

 「ふん、それならそれでいいだろう。」

 「あ、じゃあこれ、今やる? 暴れられるよりいいかもしんないよ。」

 音也が何か取り出す。真斗の掌に、キラリと光る金の輪が乗る。

 「・・・なんだ・・?」

 「インナーラビア用のピアスだよ。七海がマサのもの、って証拠につけてあげなよ。いつか本物のマリッジリングをマサがあげるまでの代わりさ。俺から、2人へプレゼント。」

 「どう着けるのだ?」

 「簡単だよ、ここに、普通のピアスみたいにつけるだけだから。」

 音也が、自慰に夢中になっている春歌の小陰唇を指で引っ張る。

 「他にも色々種類はあるけど、取り敢えず一番無難なデザインで。インナーラビアは治りもすぐだし、比較的痛みも無いらしいからさ。流石にコレ着けてあの人の所へは帰らないでしょ。帰ったら逆に見物だ、ははっ。」

 口に入れられた音也の指に舌を這わせながら自慰を続ける春歌を、チラっと見た真斗が音也に問う。

 「ハルは・・・薬が切れたら・・・また、あの人の所へ帰りたいと泣くのだろうか・・・・。」

 「かもね。だから、さっさと着けちゃいな。七海はマサのモノだよ。七海だってそれが解れば、もうそんなコト言わなくなるよ。まだ良くわかってないだけなんだよ。」

 やっと手に入れたものを失いたくない。
 自分が夢までも捨てて囲い込んだ春歌を手放す地獄など悪夢ですら見たくない。

 真斗を突き動かすのは劣情とそして、後退を許さないという激情は、犯罪が見せる錯覚だ。だがそれは、渦中の者には気付けない。

 「ハル。」

 真斗が春歌にキスをする。それに反応し、春歌は息を荒げて真斗にしがみ付く。

 「俺のものになると、誓えるか? 誓えるなら、俺が抱いてやろう。」
 
 「な、なるぅっ! 真斗くんのものになるぅ、からぁっ、抱いてぇ、早く、お願い触って! これ挿れてええ!」

 「誓え。」

 「あ、あ、誓います、真斗くんのものに、春歌は、真斗くんのものになりますぅっ! だからっ・・・。 ふぁあああん。真斗くんの言うこと、ちゃん、と、全部聞くってぇ、誓いましゅ・・・んんっ、ん!」

 言葉半ばで真斗に軽く胸を揉まれ、そこからは舌が巧く回らない。既に脳内は常人では見えない景色しか見えていない。

 「わー! おめでと~マサ。ふふっ、では、誓いのキスと、花嫁にリングをどうぞ。薬指じゃないけどね。」

 自分の唇をなぞりながら笑い、音也はピアッサーを真斗に渡し、春歌の腕を抑えつける。

 「七海、とりあえず仮の結婚式だよ。本番はいつかちゃんとして貰いなね。今日は俺が立会人で、今からマサが、愛の証を君につけてあげるからね。動いちゃダメだよ。」

 「いやぁあん、早くほしいのぅ、真斗くんのいれて、いれてぇえ!」

 「ああ、挿れてやる。これを着け終わったらな・・・・っ。」

 がしゃん。

 「んはぁっ!」

 痛みすら快楽の刺激にしかならない。あまりにぬるぬるしていて、うまくラビアを掴めないと真斗は少し手こずっていたが、程無く終わった。

 小陰唇を貫通した金色の輪が、既に春歌の愛液で艶めく。

 「かわいい~! 七海、すっごく可愛いよ、うわぁ。」

 音也がリングに指を引っかけ引っ張る。その手をどかし、真斗が春歌を抱き起こしキスをする。

 「いいな、ハル。2度と逃げようなどするなよ。お前はもう俺のものだ。」

 「あっ・・んん。はい・・・これ、はやくう・・・んん。」

 真斗のベルトを外す春歌は、自分が今何をされたのかさえ理解していない。

 「ね、マサ、絶対七海にヒドイ事しないからさ、約束だよ。本当に俺にも、時々でも七海を抱かせてくれるんだよね。ね。中出ししないからっ。」

 「・・・ああ、仕方ないだろう、お前は・・・。俺が忙しい日が続いたりしてハルが望むなら・・・まぁ、お前にそんな暇がこれからあるとは思えんがな。」

 「そうなんだけどさ、ここでちゃんと約束しとかないと、マサはまた別の所へ七海を隠しちゃいそうなんだもん。・・・こんなに一生懸命おしゃぶりしてくれる可愛い彼女だもんね。気持ちは判るけど。」

 春歌は真斗の服をずり降ろし、喉の奥まで真斗のモノを咥え奉仕に夢中になっていた。
 数日前と同じように、2人に同時に、時に代わる代わる犯され、眼の前でも頭の中でも、火花が散りっぱなしになっていた。焼けるような快楽。爆ぜるような絶頂。

 まるで炎が舞う一面の空、自分の体がバラバラに分解される様な狂気の幻覚の中で、春歌は一瞬だけ、蘭丸のことを思い出した。


 嗚呼、この快楽で花火舞う様を、あなたとではなく、私は――――――――。


 手を伸ばしても追えない幻影が消え、意識の片隅で自分が半分正気でない事に感謝したその夜。
 
 春歌は頬を伝う涙と一緒に、もう一度会いたいと願った恋人を想う気持ちも、どんな理由であれ恋人を裏切った辛さも、捨てたのだった。




 


 音也が帰って少し眠った明け方、真斗が帰って来た音で目が覚めた。

 「ああすまない、起こしてしまったか、寝ていろ、まだ早い。」

 「・・・ううん・・・真斗くん、寝てないのでしょう。何か、ホットミルクとか・・・あっ・・・。」

 ベッドからおりた途端に抱き寄せられた。
 真斗の腕に包まれ、胸に囲われる。彼はいつも、帰ってくると自分を抱きしめる。居ることを確かめるかのように。

 「・・・少し寝たら、お前を庭に連れて行ってやろうな。」

 「・・・・音也くんに、何か・・・言われた、の?」

 真斗が黙る。
 少しして、髪を撫でられる。
 
 「・・・・外に、出たいか・・・?」

 「・・・お庭には、行きたいよ・・・?」

 「いや、そうではなくて・・・・。」


 春歌は、髪を撫でる真斗の手を取り、そのままそっと自分の頬へ押し当てた。

 「大丈夫。お庭でいいよ・・・。」

 呟く彼女の瞳が何を見ているのかは、真斗にはよく判らなかった。
 だが判らない事など、今目の前に愛する者が居る彼にとっては、どうでも良かった。

 

 


 
 



 

                             Fin

 

 

 

 
 
 
 
 
プロフィール

みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

本家ブログはアメブロ
http://ameblo.jp/milk15azuki
にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

下のカテゴリからお好みのモノを選んで頂くと、連載は1話から読めます。

感想・お世辞は大歓迎ですが、苦情は受け付けられません。
鍵付きのコメントは、拍手コメントも含め一切の誤表示を防ぐ為、お返事は致しませんが、必ず読んでおります。励みになっております。有難うゴザイマス。
拍手とかコメントとか貰えると泣いちゃうくらい嬉しいですよ・・・。

鍵付きでは無いコメントは、拍手コメントも含め必ずお返事させて頂いております。
宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

最新記事
カテゴリ
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。