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complice 第4話

 


 complice
  第4話







 
 
 
 「神宮寺さん、私。」

 立ち上がろうとする春歌の肩を、レンが抑えて座り直させる。
 だがその力は、春歌を無理矢理ここまで連れて来た時とは少し違った。

 「忙しいのを理由に君を放っておいた、いや。放っておいたつもりは俺には無いんだけど、結果的にそうなったのは悪かったと思ってる。俺たち、ちょっとすれ違ってると思うんだ。何度でも言うけど、ちゃんと話がしたい。頼むよ。終わるまで待っててほしい。今日はどこへも行かないでくれ。君が嫌なら、ムリヤリ家に連れてくなんてしない。兎に角、君と話がしたいんだ。」

 楽屋の椅子に座らせた春歌の前に膝をつき、懇願の声で訴えるレンに、春歌は抵抗し切れなかった。

 彼は、春歌を神宮寺の家まで連れて行ったのではなかった。
 車中、あの怒ったようななりは嘘だったかのようにいつものレンに戻り、春歌を気遣い、謝りながら、仕事が終わるまで楽屋で待っていてほしいと繰り返した。

 トキヤの事に不安を煽られたのかと春歌は考えた。
 そして同時に、トキヤの来訪を知っても驚きもしなかった自分も後ろめたく思えて、ここまで黙って連れてこられてしまった。
 
 勿論、レンが自分を気持ちの上ではちゃんと構っていてくれたのだとも信じられた。そんな土台に加え、あまりに眠くなってきて反論するのも面倒になってしまって、終わるまで待つのを了承した。

 「わかりました。帰らないって約束します。今日は何時になっても絶対に、終わるまで待ってます。」

 春歌の落ち着いた笑顔に、レンはやっとほっとしたように立ち上がり、

 「良かった・・・。ハニー。もし眠くなったら、俺の車で寝てた方がいい。一応ここは俺以外に2人、違う俳優さんも使ってる。そうじゃなくてもテレビ局なんて誰が入ってくるか判らないし、横になるのは俺が心配だ。戻って来た時にココにハニーが居なかったら車へ行くから、連絡はしなくていいよ。今日は帰らずに待っててくれるって、信じてる。」

 そう言って、春歌に車のキーを握らせると、額にそっと優しいキスを落として仕事に戻っていった。

 レンが居なくなった楽屋をぐるりと見渡す。
 スタジオに来るなら、監督などに配る為に作ったCDを持ってくればよかった・・・。などと、呑気な考えが浮かぶ。普段のレンに戻ってくれたからか、家に連れて行かれずにほっとしたからだろうか。

 最初に楽屋に入った時、俺の場所はこっちの隅なんだ、と指さしてくれた方を改めて見た。
 まだまだ新人扱いだから、それなりの役でも個室の楽屋は与えられなかったらしい。壁一面が鏡になった前のテーブル部分に、3人分の荷物が間隔を空けて、それとなく陣地取りのように置いてあった。

 右端に、覚えのある彼のバッグやら上着やらが無造作に乗せてある。

 なんとなしにそこへ近寄ると、楽屋の大きな鏡に自分がくっきりと映った。
 ひどい顔だ。隈もひどい。肌の生気も、窪んでるかの色味だった。これではレンがあんな事を言い出すのも無理も無い。と、自分でも納得する疲弊さだ。
 

 自分の風貌の情けなさに目を伏せたその時、何かが光った気がした。
 キラリと、何かの光が春歌の目に入った。

 「・・・?」

 春歌の手元に、レンがいつも使っている仕事用のポーチが、無造作に口を開けたまま置かれていた。
 覗き込まずともぱっと見える入口にその光はあった。興味本位で手に取って確かめてみるとそれは、やたらと大きな一粒ダイヤのイヤリングだった。留め具自体が普通の物と違って太いデザインで、何やら傷が沢山ついているようで、片方しかない。

 (ダイヤ・・・にしては大きすぎ。イミテーションかな。スワロフスキー・・・? とかかな。あ、だけど神宮寺さんみたいなお金持ちなら、こんなの普通に買えるのかも・・・。でも、どうして神宮寺さんがイヤリングなんか・・・。)
 
 まじまじと見つめ、そして、傍と思う。
 イヤリングなど、普通つけるのは女が浮かぶ。

 まさか、浮気でもされているのではないか。話がしたいというのは、実は別れ話なのではないか。という突飛な不安がぶわっと沸き起こった。

 「俺たち、すれ違ってると思うんだ。」

 さっきのレンの言葉が反芻される。すれ違ってるというのは、お互い違う相手を見てるという意味なのか。自分はトキヤを見ていると勘違いされて、そしてレンは、既に自分とは違う誰かを見ていると? そういう意味なのか。

 脈絡も無くざぁっと巻き起こった不幸な予想に息が苦しくなる。限界に来た眠気と疲労が不安と交差し、倒れそうになる。

 いや、でもさっきはああして謝ってくれたのだから、自分は考えすぎかもしれない。これだって、もしかしたら撮影に使う小道具なのでは? それは充分ありえる。自分はあれから意識的に台本を読むのを避けているから、どこかでこんな小物が登場するのかもしれない。でなければ、普通に考えてレンのポーチに入ってる筈がない。しかしそれでも。

 不安と希望が浮かんでは消え、湧いてはしぼんでを繰り返す。淀む脳が、思考力の限界を叫び始めた。

 春歌は、レンに確かめた方がいい。とそれだけ何とか判断し、イヤリングをポケットに仕舞い込んだ。そして駐車場に止めてある彼の車の後部座席に乗り込み、横たわった途端にどっと流れ込んだ睡魔に身の一切を委ねて、眠りに落ちた。








 
 

 食べても太らない体質は便利だと言いながら、レンがサンドイッチを頬張る。
 すぐ脇にも和風味のチキンサラダの皿を携え美味しそうに食べているのを、春歌は眺めていた。二人してリビングのテーブルで、食事をしながらたわいの無い話をしていた。

 あれから撮影は長引いた。そのせいで、レンが車に戻って来た時には相当時間が経っていたのだが、逆に春歌の体調の回復にはラッキーだった。ぐっすり眠れたお陰で頭がさっぱり冴えたからだ。

 クリアになった思考で、落ち着いてレンと帰路に着いた。
 車を運転しながらまた彼は只管詫びを告げ、2度目の信号待ちで春歌の手を握り締めた。春歌は振り解かなかった。つきあった歳月で積み重ねた目が、今のレンが嘘をついてないと確信していた。

 遅くまで営業しているデリで買い込んだ夜食を、家につくなり拡げて食べ始めた彼に、春歌は勝手知ったるでコーヒーを出した。

 それを、春歌も仲直りしたいと思っている合図だと取ったのか、レンはやっと遠慮勝ちながら、いつものようにスキンシップを取った。
 並びながらも少し距離を空けて座っていたソファで、いつもの距離に戻った。
 春歌は、これも味見してみなよ、と言うレンにフォークで口まで運んで貰ったささみを食べた。電子レンジで温め直したキッシュを、二人でスプーンを交代で取った。あっさりと仲睦まじい恋人同士に戻っている自身の置かれた景色に対し、レンに悟られないように苦笑する。

 食事自体は、そんなに大した時間は掛からなかった。

 「はー。やっぱりここのは美味しいね。ちょっと食べ足りないけど満足だ。太るのは気にならないけど、流石に夜中だから胃がもたれても困るしね。腹七分目でやめておこう。ハニー、コーヒー、ありがと。ハニーは少ししか食べてないけど、足りたの? なんか冷蔵庫にあるだろうけど・・・。」

 「いえ、大丈夫です。御馳走様でした。それと、お疲れさまでした。」

 久しぶりに食事をし、人としての充足感を得たからか、自然ににっこりとほほ笑んだ春歌をレンが眩しそうに見た。

 「? どうかしましたか?」

 「・・・いや。やっぱり、君は笑ってる方が可愛いなって思ってね。寝るのも食べるのも大事だよね。こうして君が、笑ってくれるんだから。ハニーがニッコリ笑ってお疲れ様って言ってくれると、俺はそれだけでほっとするんだ。」

 そっと目を閉じ、レンがしみじみと言った。

 「神宮寺さん・・・。」

 「さっき、腕、痛かったろ。すまなかったね。俺が悪かったよ。仕事で根詰め過ぎて頭が回らなくなってた。でも本当に心配してたんだ。俺は仕事に必死になってただけで、昨日だって心配してて、そんなつもりは無かったんだけど、君を傷つけていたなら謝る。きっと、俺が気遣いが足りなかった。」

 普段なんでも軽い調子でいなす印象の彼が懸命に言葉を選んでいる姿が、何よりも春歌の胸に届いた。
 車の中からずっと繰り返されている謝罪で、春歌は特にレンを責めようという気はなくなっていた。

 「君の笑った顔を久しぶりに見たって事は、俺が、君を笑えなくしてたんだよね。ちょっと撮影で色々あって気が回らなくなってたんだ、ごめんよ。」

 レンは少し躊躇ってる様子だったが、言葉を繋げた。

 「・・・君が好きだ。本当だよ。こういう時に愛を口にするのはズルい気がして、あんまり言いたく無かった。だけど俺は、君無しじゃ居られない。君を不安にさせる位なら、喧嘩中だろうとハッキリと俺の気持ちを伝える。もう君が居ない生活なんて、忘れたんだ。愛してる。だから・・・。」

 春歌の心に、愛してるという響きがじわりと染み渡った。
 思わずレンの顔を見詰める。彼のこんな泣きそうな瞳を、初めて見たと思った。

 「俺以外の誰かの、・・・イッチーの所になんか行かないで。俺には君しか居ない。君が好きなんだ。」

 「神宮寺さん・・・!」

 先に泣いたのは春歌だった。
 泣きそうだと、レンの表情を見て思ったというのに、先に涙が零れ落ちたのは春歌の瞳からだった。

 恋愛は魔物だと思う。
 ほんの数時間前まで、置いてきぼりにされたような疎外感を味わっていたのに、ちょっと優しい事を言われただけで舞い上がってしまっている。シーソーかジェットコースータか。とにかく乗ってしまった以上、自分の思いもよらない上下に振り回される。

 だが、やっぱり自分は、愛してるという明確な一言が欲しかったのだと実感した。
 
 ただただ、それでも君を愛しているのだと、言葉ではっきり安心させて貰いたかったのだ。耐えてほしいと言われたいわけでも、謝ってほしいわけでもなかった。ただ、間違いなく愛していると暗示をかけるように唱えてほしかったのだ。強請ってのものではなく、彼の意思で。自然な所作で。

 あんなに悲しかった気持ちは、彼の謝罪と愛の言葉で、あっさりとさらさらのフラットな砂浜になってしまった。
 
 どこまでも続く地平線まで見渡せるような、隆起の無いさらさらした白い砂。さっきまではその砂に埋もれてもがいていたのに、些細な事でこんなにも変わる。

 「ハニー、もっとこっちに来て。」

 レンの腕が腰に回され、春歌も自然に身を寄せ、そのままレンに抱きしめられた。
 幸せの極みを感じた春歌だったが、ふと、さっきポケットに仕舞った小物の存在を思い出した。

 どうしてレンが、イヤリングなど持っていたのか。片方だけ。

 折角レンとこのまま仲直り出来そうな雰囲気の時に言い出すのは躊躇われたが、尋ねるなら今しかないとも思った。
 
 不安が薄れているのも後押しになった。今のこのレンを見て、あれが浮気の証拠などとはどうにも考えられない。きっと自分にとって、なーんだ。と明るく笑って終わらせられる答えを彼はくれる。その確信を持ちながら春歌はそっと、ポケットから取り出したイヤリングをレンに見せた。

 「イヤリングだね。ハニーの? これがどうしたんだい。」

 しかしレンは、不思議そうに春歌の掌の上で転がるダイヤを見るだけだった。差し出した春歌の顔と交互に見比べ、首を傾げている。

 「これは、神宮寺さんの物ではないんですか?」

 「俺の? いや。俺はイヤリングはしないね。しかもこんな一粒ダイヤのデザインなんて、いかにも女性用だ。更につける気にならないな。」

 その言葉に嘘は微塵も見えず、春歌は今度こそほっとした。
 
 「どうしたんだい、これ?」

 「楽屋にあったんです。神宮寺さんの荷物のところにちょこんとこれだけあったので、神宮寺さんの物だと思って、もしかして本物だったら失くすといけないかと、つい持ってきてしまったんです。」

 流石にポーチを、口が開いていたとはいえ、ほとんど零れ落ちそうに他の中身の上に乗ったように在ったからと言って、そこから取り出したとは言い辛かった。

 大体、浮気の証拠品かもしれないとチラリとでも思い、突きつける可能性の為に持ってきたなどと、口が裂けても言えない。

 「ふぅん。」

 レンは然して興味無さ気にイヤリングを摘み、眺めた。

 「本物・・・だね、多分。俺は宝石には大して詳しいわけじゃないけど、流石にガキの頃から見続けてるからね、多少目の利く自信はある。それ、本物のダイヤだと思うよ。あいつらのかな? だけど、こんな物を買うような奴らには見えないな・・・。」

 春歌の掌にまたダイヤを戻しながら、レンは、ふむ。と一時思案する。

 「あいつら?」

 「同じ楽屋のヤツやらだよ。KK事務所の新人くん。楽屋にあったなら、あいつらの私物かもしれないけど、どうもこんな趣味には見えないな、あいつらは。誰か、他のタレントでも遊びに来て落としたのかもしれないね。明日、聞いてみるよ。それまでハニーが持ってて。俺が持ってたんじゃあ、失くしそうだ。」

 「わかりました。」

 春歌はそれを、そっとハンカチに包んでバッグに仕舞った。本物だと思う。とレンに言われたからだ。 
 

 イヤリングを仕舞い終わるのを待っていたかのように、レンが春歌の首筋に顔を埋める。

 「あ、神宮寺さ・・・。」
 
 吐息が肌にかかって背中がぞくりとする。
 知っているのだ。これから何が起こるのか。知っているから、期待が背筋を走る。

 「仲直りしたい。体ごと。・・・・いいかい? ハニーが俺のものだって、俺に実感させて。お願いだ。」

 耳元で囁かれた甘い声の愛撫は、春歌の背筋を簡単により強く痺れさせた。
 
 レンと見詰めあうと、彼は優しく微笑んで、好きだよ・・・と小さく何度も繰り返し囁きながら、額や頬についばむようなキスを落とし始めた。目を閉じてそれを受け止めながら、春歌の頭は心地よい霞がかかり出す。体は体で、奥の方から熱が生まれてゆく。
 
 二人して無言でベッドに急いだ。部屋に入ると同時位に押し倒されてスプリングが軋む。自分でもびっくりする程に固く尖った胸の先を摘まれ、春歌は堪えもせず啼いた。
 
 その声に煽られたのか。いつもと違い、積極的にレンの髪に手を差し込んで自分の柔らかい胸に押しつける春歌の昂りに魅せられたのか。レンは荒い息でむしゃぶりつくようなキスを春歌に仕掛けると、快感に震える彼女の片足を持ちあげて、一気に自分の硬質を押し込んだ。

 「んぁああああああーーー。」

 「っ、は・・・・。」

 粘膜が粘膜を押し広げて進む感覚に、2人とも正気を持っていかれる。
 
 この熱だけをわかちあいたい。今2人で紡げる、2人だけが感じあえるこの世の夢。

 これを待っていた。これが欲しかった。他の誰でもない。貴方の、貴女のすべてとメルトダウンする欲界へ続く愛の道。手を握り合い、繋がりあって這い蹲って堕ちゆくその道は、落下と上昇を別けない融合点だ。

 春歌しか見て無いレンの目が、まだ奥を、まだ、もっと何もかも喰らい尽くしたいと貪り漁る。レンしか欲しくない春歌の下腹の奥が、余す事無く絞り取ろうと穿つレンに絡みつきしゃぶる。

 レンが、すっかり上気した春歌の額に張り付いた前髪を梳いた。
 口づけながら甘い吐息混じりに耳元で囁く。

 「ごめんね、馴らさずに入れたりして。ガマンできなかった・・・。好きだ。ハニー、愛してるよ。俺の、俺だけの・・・!」

 うなされたかの如く激しく春歌を腕に囲い、レンは春歌の中を抉った。
 
 普段のレンからは想像もつかない荒々しさは、春歌からまともな言葉も奪っていく。「私も愛してる」 とこたえたいのに言葉にならない。甘ったるい喘ぎと浅い呼吸が零れるだけだ。

 覆い被さるレンの髪が、春歌の耳や首をくすぐる。
 肌が湿気を帯びて、重ねているとねっとりと熱い。お互いがお互いの肌に吸着しようとするようで、一度触れた肌が離れるのが切なくて絶えず体を捩り求めてしまう。

 「ハニー、好きだ・・・愛してる・・・もう、一緒に・・・っ。」

 「は、ふ。んっ・・・・はい、一緒に・・・ああああっ。」

 痙攣する体と硬直する体。
 満足を求め果てた2人は、やっと久しぶりに納得して握りあえた手に心から安堵して、終わらないキスを繰り返しながらいつの間にか眠った。










 

 「朝・・・・。」

 あれから一回も起きなかったという事は、よっぽど疲れていて、そして安心したらしい。
 レンのベッドで、まだ寝息を立てるレンを起こさないように頬にキスをし、春歌はキッチンへ移動した。

 時計の針はまだ、レンを起こすには余裕があった。顔を洗って、キッチンで1人分のお湯を沸かした。

 寝起きだが、身体に甘い倦怠感と、妙に晴れ晴れした気持ちがある。理由は明白で、自分の事なのに妙に照れながら春歌は紅茶を用意した。

 なんとなく、テレビをつける。
 砂糖を少しだけ入れてティースプーンを右手で動かす。左手で無造作にリモコンを持ち、2、3度動かした指が止まった。

 朝のやかましいゴシップ番組の司会者の声が、そこに映されている映像が、春歌の動作を止めたのだった。

 「今や大人気の女優・吉野京子さんが、200万円相当のイヤリングを盗まれたっていう今朝のニュースなんですけどね。えー本日お越しのコメンテーターの中に、吉野さんのアクセサリーの趣味についてお詳しい方がいらっしゃるので・・・」

 「これが盗まれたとされるイヤリングです。これは2か月前に彼女の公式ブログに掲載された画像なんですが、大粒のダイヤが一つという、実にシンプル且つ優雅なデザインです。都内の宝石店に吉野さん自らがオーダーしたもので、画像では判りませんが、彼女らしい捻りとして、留め具に細かい彫が施されています。」

 春歌は画面に釘付けになった。頭の中で、昨日の楽屋で見たものがフラッシュバックする。
 レンが普段使うポーチから見えた光。ファスナーが開いていたので取り出したそれを、ポケットに入れたのを思い出す。

 テレビ画面には、ゆうべレンに見せたイヤリングが映し出されている。
 間違いない。同じものだ。

 「家に置いといて空き巣に盗まれたのか、置き引きって言うんですか? ああいう感じで盗まれたのか、とかも判ってないんですか。」

 「その辺の詳細は、まだ我々は掴んで無いんですよ。吉野さんは今日も新しいドラマの撮影がありますので、恐らくマスコミが大勢押し掛けると思いますね。詳しい話はその時に聞けるんじゃないでしょうか。」

 こういう番組でよく見る顔が、井戸端会議さながらに会話している。
 チャンネルを変えても時間帯のせいか、似たような番組が似たような画面や会話を垂れ流している。
 
 
 「警察は窃盗事件として、犯人に繋がる手掛かりを、関係者などに事情を聴きながら捜査しているそうです。先ほどのVTRにもありましたように、共演者の方々の話によると、不審な人物の目撃情報は無く・・・」

 口をつけてない紅茶は、揺れもせず色をたたえている。
 
 警察・犯人・窃盗事件。
 およそ自分の日常と関係無い単語を、画面越しに急激に突きつけられ、春歌は固まっていた。

  「嘘・・・、どういう・・・。」

 思わず口から洩れた言葉も、カラカラに乾いた喉が押し出したもので、棒読みだった。

 画面に映る画像。留め具の彫に覚えがあった。傷だと思ったあれは、細工を彫った物だったのだと妙に納得した春歌の手がゆっくりと落ち、リモコンが床に音を立てて転がった。










    
  To Be Continued・・・














 

 
 
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プロフィール

みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

本家ブログはアメブロ
http://ameblo.jp/milk15azuki
にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

下のカテゴリからお好みのモノを選んで頂くと、連載は1話から読めます。

感想・お世辞は大歓迎ですが、苦情は受け付けられません。
鍵付きのコメントは、拍手コメントも含め一切の誤表示を防ぐ為、お返事は致しませんが、必ず読んでおります。励みになっております。有難うゴザイマス。
拍手とかコメントとか貰えると泣いちゃうくらい嬉しいですよ・・・。

鍵付きでは無いコメントは、拍手コメントも含め必ずお返事させて頂いております。
宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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