FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

complice 第2話

 


 complice
 第2話
 







 「待って下さい! 七海さん!」

 駆け出して来たものの向かう宛ても無く、なんとなくゆっくり歩き始めた所で、外まで追い掛けてきたトキヤの声が大きく響いた。春歌は、周囲への気遣い的な気持ちで足を止めた。
 軽く息を切らせたトキヤが、春歌の前まで来て立ち止まった。

 「はぁ、はあ・・・。意外と走るのが早いですね・・・。いきなり出て行くから・・・。見学の許可をくれたプロデューサーさんに挨拶だけはしないと失礼でしたから、それから追いかけたものですから、はぁっ・・・。追いつけて良かった・・・。」

 「すいません。」

 別に追いかけてきてくれなくても良かったのに。
 
 呼吸を整えながら話すトキヤに対し、そんな本音がチラリと出かかったが、それを消して素直に謝る。一緒に見学をと誘われたのに、何も言わずにいきなりスタジオを走り去ったのだから、確かに自分が悪いのだ。

 自身の非を認めながらもトキヤの顔を見れなくて、俯いたまま、小さな不貞腐れたような声で返してしまった。

 なのにトキヤは、そのような態度は意に介してないように穏やかに春歌に話し掛けた。

 「君が謝る事はありません。私の方が気が利かずに、あんなシーンの撮影見学に誘ってしまって・・・すいませんでした。」

 そうだった。
 彼は知っているのだ。おおっぴらに言った事は今まで無いが、一緒に学園で過ごして、一緒に事務所に入った仲間だから、噂も聞いただろうし、きっと気付かない所でそれらしい態度だったのを見られた日だってあっただろう。
 
 2人の仲は周囲には暗黙の了解のようになっていたから、あまり気にしてなかったが、彼は知っているのだ。

 自分がスタジオを走って出てきた理由を。

 そう認識したら、何故だか急にトキヤが甘えても許される対象のような気がしてしまい、拗ねた気持ちを全面に押し出して、春歌は俯いたまま言った。

 「仕事だから、しょうがないじゃないですか。仕事だから、我慢しなきゃならないじゃないですか。」

 既に言葉尻が涙声だ。
 判っていても、一度口にした言葉を止められない。

 「でも、どうして我慢しなくちゃいけないんですか。大好きな人が他の人となんて、そんなの、嫌で嫌で、本当に嫌です。私が逆に女優さんで、演技でも他の男の人と、あんなシーンを撮影しなきゃならないって時に、神宮寺さんは平気で居られるんですかって聞きたいです。だけどそんなコト言ったら、私はただのわがままな子供です。」

 泣くまいと必死になるせいで、声が大きくなる。

 「こんなドラマなんか、断ってくれれば良かったのに! せめて、知ってたら私は仕事を受けたりしなかったのに! だけど、だけどだけど、そんな事を言ってる自分がもっと嫌なんです!」

 言いながら、後悔が勢いよく沸騰してくる。
 なのに止められない。

 みっともなく泣き叫ぶ自分を、トキヤはどう思うだろうか。
 
 彼はいつも冷静な現実主義者だ。レンも冷静さでは負けないが、トキヤはそこにストイックさも加わる。こんな取り乱した姿は、彼にとっては侮蔑の対象だろう。しかも理由が仕事だ。呆れられるに違いない。
 
 トキヤは告げ口をするような輩ではないが、それでもレンと会えば、それなりに会話をする友人同士だ。何かの拍子に、トキヤの口からレンにこの事が伝わるかもしれない。そんな事があったら、それこそ自分は情けなくて耐えられない。なのに止められない。言い出した本音が、抑え込んでいた限界を越えたからこそ溜め込んだ総てを吐きだす力に変えて、春歌の心の淀んだ何かを道連れにぶち撒かれてゆく。

 ひとしきり声を張り上げた春歌が、黙った。
 後悔と、言ってしまったという単純な、事実への傍観とが混じる複雑な気持ちを握りしめ、大きく息を吐いて黙った。

 沈黙はきっと数秒だった。
 それでも、恥を晒した春歌には大分長い時間に感じられた。しん、とした周囲に、一人だけ醜い熱を放っている自分が空しく浮かぶ。それがまたみっともなくて消えたいと思う。

 「もう、気が済むまで泣いてしまった方がいいと思いますよ。」

 思いがけない言葉に、春歌は弾かれたように顔をあげた。

 目の前のトキヤは、しょんぼりとして顔を歪ませている。
 
 「私が、誘ったりしたから・・・・。ちょっと考えたら、君の性格からして、こんな結果になるのは気付けたのに。自分のコトばかり考えていました。すみませんでした。それに、その・・・。」

 「?」

 言いにくそうに言葉を切ったトキヤが続ける。

 「私は・・・・その、君が、ちゃんと割り切ってると思ってたんです。電話した時、そんなに気にしてる様子でもありませんでしたから、仕事なんだから、芝居ならこういう事もあるだろうしと、納得してると思って・・・。」

 トキヤの言葉は、春歌の心をずり、っと軽石で擦る感触で通りすぎた。
 そうだ。トキヤの言う通りだ。それが普通なのだ。歌も芝居も出来るアイドルを恋人にするという事実は、そんな割り切りを持って当たり前であるべきなのだ。

 知っていたつもりでも、第三者に言われるとこんなに違う。気づかされたとうちひしがれる。

 こんな風に、感情で物事を測る小学生と変わらない行動を取るようで、どうしてレンの恋人なんかが務まるものか。

 そう思ったら、今度は無性に力が抜けて空っぽになって、思わず笑ってしまった。
 春歌は諦めた顔で笑ってしまったのだった。

 「いえ、一ノ瀬さんは何も悪くありません。謝らないで下さい。私が、判ってなかったんです。割り切って無いんです。」

 「七海さ、」

 「私、全然ダメですよね。これじゃあ神宮寺さんと付き合う資格、無いですよね。私の事は気にしないで下さい。一ノ瀬さんはちゃんと見学して、今度の撮影に備えて下さい。誘ってくれたのにすいません。私、割り切って無かったんです。しなきゃならないのに、出来て無かったんです。だから、一ノ瀬さんは何も悪くないです。私がダメなんです。全然ダメだったんです。早く見学に戻って下さい。私なんて構ってる場合じゃないですよ。」

 口を挟もうとするトキヤの声も遮り、顔も見ず、早口で捲し立てて彼をスタジオに帰そうとしたのだが、トキヤはその場から動かない。
 春歌も、気持ちの整理が上手く付かなくて、足を動かせないでいた。だから、トキヤから踵を返してほしかった。

 俯いている春歌の目に映るのは地面の小石ばかりだ。
 早くスタジオに戻ってほしい。今にも落ちそうな涙をこらえる春歌は、苛立ちに似た口調でつい

 「お願いです、早く行って下さい!」

 トキヤに向かってそう言い放ち、顔をあげた。その瞬間だった。

 「っ・・・・!」

 あっという間にトキヤに抱きしめられたと理解したのは、自分で自分の身体を支えているのは足だけだと判ったからだ。上半身はトキヤの腕に引っ張られ閉じ込められ、彼の胸に完全に体重を預けてしまっていた。

 鼻が潰されるかと思う位痛かった。
 少し顔をずらすと、トキヤの匂いが自分を包む。突然の波に思考を根こそぎ持っていかれ、春歌は声も出せず固まっていた。

 「私のせいですいません・・・君を、泣かせてっ・・・!」

 春歌を抱く腕に更に力が入る。息が止まりそうになる。

 彼の謝罪は春歌にとって、この場で更に泣いてもわがままだと思われない。と言ってくれているように聞こえた。
 堰を切ったように声を上げて泣き出した春歌を、トキヤはそのまま黙って抱きしめ続けていた。










 「私、神宮寺さんとお付き合いする事がどういう事か、わかっていたつもりだったんです。でも、違いました。」

 ぽつりと、そう呟いた春歌の目の前には、トキヤが淹れてくれたココアが湯気を立てていた。
 
 ひとしきり泣き喚いた春歌をトキヤは優しくあやし、自分の部屋まで連れて来てくれた。
 あやすというとまるで赤ん坊にするようだが、実際自分の感情を泣くという行動でしか外へ向けられなかった春歌が泣きやんだ後、トキヤの振る舞いはそれに近かった。

 トキヤは普段から自分にも他人にも厳しい人間だが、一歩踏み込んだと認めた相手には、辛辣な言葉を投げながらも面倒見良くつきあってくれる性分でもあった。実力主義の学園時代、厳しい競争の中で誰もが、パートナーと2人だけでは乗り越えられない壁もたくさんあった。そんな時に協力してくれた友の一人である彼の優しい一面は、春歌も良く知っていた。

 実際、女生徒からしょっちゅう言い寄られるレンを目撃して気落ちする春歌を慰めるのは、大抵トキヤだった。淡々と、気にするな、というような一言を掛けるだけだが、その決して押しつけがましくない気遣いがありがたかった記憶があると、春歌はちらりと振り返った。

 その背景が、彼女を安心させているのだろうか。
 春歌は、ゆっくりと、それでもしっかりと言葉を選んで話をした。

 「ずっと、コンプレックスでした。私なんて、可愛くもないし、スタイルも良くないし、人より優れてる能力も何もない。音楽が好きっていうだけです。そんな私がこの世界に入れたのは、確かに努力はしましたが、多分半分以上は運です。神宮寺さんがペアになってくれたから卒業出来たんです。神宮寺さんが、華やかで、かっこよくて天性のアイドル性があるから・・・。」

 今まで秘めていた悩みが、一度口にしたせいで後から後から溢れ出る。

 「それに、神宮寺財閥の御曹司なんて、ほんと、庶民の私には世界が違い過ぎて、一体どうして、って感じですよね。こんな私が神宮寺さんとおつきあいするなんて、やっぱり無理があったんです。」

 何か言いたげな顔で春歌を見たトキヤだが、黙ってそのまま、話の続きを仕草で促してくれた。
 初めてはっきりと口に出して、レンと付き合っていると公言してしまったのを一瞬後悔したが、トキヤのその態度に安堵し、春歌はまた吐露する。

 「会議の時、私はもう内容を聞いただけでショックで、偉い人の話も頭に入って来ませんでした。プロとしてダメですよね、仕事の話を聞けてなかったんですから。その後、神宮寺さんと少し話をした時、私、本当にしなくても、それっぽく撮ってもらえるんですよねって言ったんです。そしたら・・・。」

 そこまで言って、春歌は唇を噛んだ。
 切れない沈黙に、トキヤが、困ったように息を吐く。

 「あの監督は、そういうのはダメらしいんですよ。」

 「・・・はい。」

 「知っていたんですか。」

 「・・・はい。会議のあった日、神宮寺さんに同じ事を言われました。だから、信じて耐えて貰うしか、無い。って・・・・。」

 「え。」

 事のほかトキヤの声が驚きに満ちていて、春歌は思わずきょとんと彼を見た。
 隣に座る友人は声の調子のままの、虚を突かれた。といった表情だった。

 「レンが、そんな風に言ったのですか? ・・・耐えて貰うしか、って。意外ですね、レンらしくないというか・・・ちょ、っと信じられません。」

 戸惑いながら、トキヤが言う。

 「あのレンなら、それこそ女性が、そんな事すら許してしまいそうになる上手い言い方をしそうなものですが・・・。」

 いつも何でも軽く切り返して、スマートな所作で総てをこなすレンから、耐えてほしいなどという願いが出るとは想像つかなかったのだろうか。

 春歌はそこでハッとした。

 そう、きっと自分も、あの時意外だったのだ。
 意外、というより、想像していなかった答えで落胆したのだ。

 きっと自分は期待していたのだ。トキヤが、耐える、などという言葉がレンから出たのに驚いたように。
 レンはいつもカッコ良く、恋人の為に、物語に出てくる王子様さながらの気障を、やってのけてくれると思っていた。

 だから会議の場でも、実際にはキスしなくてもいいですよねと、周りのスタッフにウインクでもして流してくれると思っていた。家に戻ってきたら、ああは言ったけど実際はしないから安心してね、などと少女漫画みたいな台詞を吐いてくれると思っていたのだ。そう、自分は心のどこかでそんな風に期待していたのだ。飄々と総てを流していく姿ばかりが印象的で、実直さなど、あまり今までのレンに見ていなかったのだ。

 驚いたトキヤの反応は、そのまま自分の深層心理だ。そうだ、きっと自分は驚いて落胆したのだ。期待外れだった恋人の言葉にショックを受け、そして自分の期待が如何に甘いかを思い知らされて情けなかったのだ。
 
 自分はなんと愚かなのだろう。釣り合わない、などと言いながらその実、彼は私を泣かすような真似はしない。いつもきっと、軽くスマートに自分を優先してくれる。と思い込んでいたのだ。なんと滑稽な。

 クスリと。
 小さな自虐の笑いが春歌の口から洩れた。

 「なんか私、色々勘違いをしていたみたいです。」

 唐突にも取れる春歌の言葉に、トキヤは顔を向ける。
 春歌は、さっきトキヤに抱きしめられる前よりも、もっと確かな絶望を内に見た気がした。

 期待していた自分が情けない。
 そして、期待にこたえて貰えなかった自分は、彼にとってそうするだけの価値が無かったのだと思うと、泣いても癒えない程に悲しく情けない。

 「私、神宮寺さんが、本当にはキスしないとか、役を断ってくれるとか、そういうバカみたいな、あり得ない何かを期待してたんだって、今気付きました。だから、泣けてしまったみたいです。私が思ってたより、彼は、私より仕事だったんだ、って・・・。あ、でも当たり前ですよねそんなの。それも判ってるんです。」

 どうしてレンの言葉がショックだったのかが判っても、結局根本が仕事であるから問題は解決しない。それもまた春歌の心を押し潰す。
 あの時のもやの表現がついても、また堂々巡りで、仕事だからと割り切れない自分に自己嫌悪する地点へ戻って来る。出口が見えなくて頭が重くなってくる。

 「私、神宮寺さんの何を見ていたんでしょうか。彼なら、なんでも笑顔で上手く切り返せるとでも思ってたんですね。バカですよね。そんなワケないのに。神宮寺さんだって魔法使いじゃないんだから、そんなの無理なのに、彼が私を辛い気持ちにさせるなんてありえないって思い上がってたから、彼にもどうにも出来ない事があって、耐えてほしいって言われて、ショックで、なんか・・・がっかりしちゃったんです。ごめんなさい。一ノ瀬さんを、こんな下らないコトに巻き込んでしまって・・・。」

 「七海さん・・・。」

 自嘲した笑顔で謝る春歌を、トキヤは痛ましげに見詰めた。
 そして、そっと距離を詰めて隣に座り、クッションの上にあった春歌の手をそっと握った。

 「謝らなくていい。君は悪くない。君は、というか今回は、レンも悪い訳ではありません。私達のような仕事をしていたら、仕方の無い事なんですよ。だから、泣きたければまた泣けばいい。」

 「・・・。」

 無言で頭を振る春歌を、トキヤがふわりと抱き寄せる。
 
 「これ以上、君はこの事を気にしない方がいい。ただ、泣きたいという気持ちにだけ、素直になればいい。まだ辛いんなら、泣いてしまってスッキリして下さい。・・・・私が、一緒に居ます。君が泣いてるの、嫌なんです。私で良ければ、君が泣きやむまでずっと一緒に居ますから。」

 優しく、労わるようにトキヤが言う。
 春歌は少し首を傾げた。

 「あの、どうしてですか。」

 「え。」

 「どうして、そんなコト言ってくれるんですか。神宮寺さんがそういう事を言うなら、つきあってるからって理由もあるけど、一ノ瀬さんは別に、あの、友達、です、けど、だからってそこまで・・・。」

 純粋に不思議そうに尋ねる春歌に、トキヤが困ったように笑う。
 少しして、ぼそりと、トキヤが告げた。

 「今言った通りですよ。君が泣いてるのは、嫌なんです。」

 「・・・。」

 春歌が黙る。トキヤは微笑んで言葉を繋げた。

 「この仕事をしている以上、今回のような事はこれからも起きてしまうと思いますよ。きっと君は、その度に苦しむでしょう。そんな時は、私に一緒に居させて下さい。今日のように解決しない気持ちも、口に出せば少しは軽くなるかもしれない。どうしようも出来ないものは世の中に色々ありますが、人に話して自分の気持ちを楽にする対処方法は、そんな場合にこそ有効だと思います。」

 教科書の文言のような彼の言葉は、学生時代からそうだったが、いつも尤もらしく聞こえる。

 「今日みたいに、泣きたい理由がレンだとしたら、いくら恋人でも頼れないでしょう。」

 「それは・・・まぁ、はい・・・。」

 「そんな時は、私を頼ればいい。それで君が泣かないでいてくれるなら、少しでも気持ちが楽になるのなら、聞きますよ。」

 「どうして、ですか。そんな、そこまでしてもらうような、一ノ瀬さんもお忙しいので・・・。」

 「私は君が好きなんです。」

 告げた瞬間、ん? と一瞬難しい顔で固まった春歌の頬に、トキヤがそっと口づけた。

 何をされたのか一瞬判らず、そして理解した途端、まんまるに見開いた目で自分を見る春歌に、トキヤが相好を崩した。

 「どうしてそんなびっくりしてるんです。私の気持ちは、結構バレてると思っていたんですけどね・・・。まあ君の鈍さは知っていましたが、本当に気付いて無かったんですね・・・。まったく。」

 「いえあの、まさか、そんな、冗談ですよね?」

 春歌は信じられない気持で、思わず意味もなく手を顔の上下に当てたり離したりを繰り返し、誰もいないのに横を見たり、ソファの具合を確かめるかのように座り直したり、忙しなく挙動不審になっている。

 その様子を見て拍子抜けしたのか、さっきより更に肩が下がり、トキヤが照れた笑顔で言った。

 「やっぱりキスしたのは正解ですね。いささか強引かとも躊躇したんですが、そうでもしないと、君はきっと判ってくれないと思いまして・・・。」

 「だ、だからって・・・!」

 益々真っ赤になって沸騰している春歌に、

 「七海さん。」

 きゅ、っと。トキヤが春歌の手を力を込めて再度握ってきた。
 好きだと告げられ頬にキスされた驚きの方が大きくて、春歌は手を握られてもそれに気を向けられなかった。

 「今日のこと、レンには言ったりしないから大丈夫ですよ。また辛くなったり、悲しくなったら電話して下さい。メールでも構いません。君からの連絡を、迷惑だとは絶対思いませんから。」

 「え? いえあの、そんな。」

 「さっきから、同じ台詞ばかり繰り返していますよ。面白い人ですね。」

 ふっと微笑んだトキヤが、直後、幾らか真剣さを取り戻した声で言う。

 「遠慮しないで下さい。私がそうしてほしいです。君があんな悲しそうにしてたら放っておけない。だから、また何か悲しい事があったり困ったりしたら、私を呼んでほしい。いいですね。」

 トキヤの声は真剣だった。

 「君を困らせたりする気はありません。ただ、レンが理由で悲しい時は、私が居ます。頼ってほしい。それだけ覚えいて下さい。それ以外は今まで通りの君でいてくれれば、それでいいんです。」


 突然の嵐が春歌の胸を掻き乱している。
 好きだと告白された戸惑いと、目の前の友を急に異性と認識したざわめきで、春歌は地に足がついてない。

 トキヤの熱意に嘘がないと感じた春歌は、そのままこくりと頷いてしまった。
 
 好意を無下に断ったら相手が可哀想だという気持ちも働いたせいだった。別に疾しくない。これは、単に、友達として甘える日があるかもしれないという、そうなった時に約束があった方がお互い楽なのではないかという、妙ではあるが気遣いだ。ただそれだけの事なのだと思って、頷いたのだった。
 
 春歌のそんな心中を知ってか知らずか、トキヤはほっとしたように微笑み、約束ですよ。と、春歌に小指を差し出した。

 
 
 
 
   

   

 To Be Continued・・・








 

 
関連記事
スポンサーサイト
FC2公認の男性用高額求人サイトが誕生!
稼ぎたい男子はここで仕事を探せ!
[PR]

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

本家ブログはアメブロ
http://ameblo.jp/milk15azuki
にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

下のカテゴリからお好みのモノを選んで頂くと、連載は1話から読めます。

感想・お世辞は大歓迎ですが、苦情は受け付けられません。
鍵付きのコメントは、拍手コメントも含め一切の誤表示を防ぐ為、お返事は致しませんが、必ず読んでおります。励みになっております。有難うゴザイマス。
拍手とかコメントとか貰えると泣いちゃうくらい嬉しいですよ・・・。

鍵付きでは無いコメントは、拍手コメントも含め必ずお返事させて頂いております。
宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

最新記事
カテゴリ
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。