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Russian roulette 9

 

 

Russian roulette       
           vol.9

 

 




 

 検分という彼らの言葉は的確だった。
 
 
 ソファに座らされ、上半身は後ろに回った嶺二に固定された。

 「い、いや、イヤ・・・。」

 冷たい表情で、剥き出しの下半身に触れてきたトキヤの指がナイフのようで、その温度の無さに身体がガチガチに固くなる。床に膝をついたトキヤが春歌の脚を大きく開かせ、中心をゆっくり捲り眺める。

 「トッキーさぁ、そんな怖い顔でしてて楽しいの。春歌ちゃん泣いちゃってるよ。もっとお互い気持良くやんないと。ね。」

 「うるさいですね。・・・一応、腫れてないみたいですが。」

 「おっ、僕の無実が証明されそう?」

 「何を馬鹿な事を・・・。どういう了見で今更無実だなどと、本当に図々しさが常識外ですね。」

 「えー? だってだって、春歌ちゃんのレイプに関しては僕は無実だもん。トッキーみたく騙してヤってないもん。突っ込むなってのに、どーせ中に出したんでしょ。怖いねえ全く、男の嫉妬は醜い。」

 嶺二がケラケラ笑っている間も、トキヤの指は動き続ける。
 壁をなぞり、花芽を引っ掻き、春歌は唯一自由になる腰をがくんがくんと揺らしながら大きな声で喘いだ。弱い部分を正確に触れてくるトキヤが、自分を追い詰める。

 「嫉妬で彼女が手に入るなら、幾らでもしますよ。・・・んっ。」

 「ひっ!」

 花芽に熱い息がかかったと思った途端吸い上げられ、春歌はとうとう一瞬気を遣った。

 「あ、多分イったかも。戻っておいで。」

 「ひぁああ。」

 嶺二がからかうように胸の先端をぎゅっと摘む。痛みギリギリの刺激に春歌は引き戻される。

 「君さ、もっと色々警戒したら? 確かに夜と朝じゃ景色が違うし、玩具入れられてまともに景色も見れなくて、気付く可能性が少ないとは思ってたけどさ。それでも玄関通って、エレベーター乗って、少しも似てるなーとか、見た事あるなーとか思わなかったの? 知ってる人間ってのが安心の理由にはならないって覚えておいた方がいい。これからは気をつけなよ。」

 こんな場面で、諭すかのような嶺二の物言いが不思議だった。まるで気遣いだ。だがそんな気持ちもすぐ消される。トキヤが指を中に2本入れてきた。そしてまた芽を、今度は舌で撫でるように構う。

 「やめ、も、あ、あ、やめっ・・・。」

 先ほどのような強い刺激ではないにしろ、連続して腰に快楽の波が間髪入れずに訪れる。頭が霞む。嶺二が、春歌の胸を好き放題に弄りながら、耳元で囁く。

 「ね、トッキーはね、僕が君とおとやんを別れさせようとしてるの知ってね、協力するって言ったんだよ。君が好きだから。」

 春歌の熔ける頭に、嶺二の言葉がダマとなって浮く。

 彼は今、これまでとは違う単語を使った。 

 別れさせる?
 
 なぜ?

 単に嫌いな女にいやがらせをしていたのではないのか。そこから先がいつも解らない。彼は一番大事な何かを言わないでいる気がしてならない。

 そしていつも、快楽で溺れる寸前で息も絶え絶えな時にしか、そこに繋がりそうな台詞を口にして貰えない。今回もまた、胸に膣内に流される快感ずくめの愛撫に脳が弾け飛ぶ。

 
 「ガス燈のバーグマンみたいに君がおかしくなったら、自分だけは味方だよって顔して、君を囲っちゃう気だったんだよ。あのジェリービーンズを僕にくれたり、君を帰りに攫おうとしたり、酷いコトばっかりしてさ。悪い男だよね。」

 自身の耳にも聞えているだろうその密告を、トキヤは遮らなかった。
 ここまできて無駄だと思ったのか、春歌の蜜の元の検分に余念が無いのか、舐めるのに夢中になっていた。


 快感で朦朧とした頭で、この間の嶺二の台詞を思い出す。
 「このテの話で冗談を言わないヤツが言っていた。」 彼は、あのジェリービーンズが何なのかを説明した時、確かにそう言った。冗談を言わないような人物というのは、トキヤを指していたのだと春歌は知った。

 「だけど、僕は出来るだけ長く楽しみたかったからさ、我慢しろって言っといたのに、犯しちゃうもんなあ。」

 「仕方無いでしょう。好きな女性を前にしてあの状況で理性が保てる若い男は天然記念物ですよ。」

 それを聞いて、ムっとした調子でトキヤが言い返す。
 会話が進むも、2人とも唇も手指も春歌を弄んだままだ。そのせいで春歌はまた気を遣り、2人の声が遠のいてしまう。

 「だからって、気が急ってもう写真を送っちゃダメだって。もっと長く根気よく追い詰めるつもりだったのになあ。計画台無し。」

 嶺二が春歌の耳を、熱い息ですっぽりと覆う。
 春歌の背面の総てに、ぞわっと目の眩む枝が走る。

 「あれを送ってさっさとおとやんに別れる決意をしてほしかったんでしょ。彼女に何て言ったか知らないけど、おとやんさえ別れを切り出してくれれば、このまま自分のモノに出来ると思ったんでしょ。」

 嶺二の、答えを知ってる上での質問に、トキヤはチラリと視線を送っただけで答えない。
 そのまま立ちあがり、すっかり意識が蕩けて息が上がり、自分に降りかかった災厄の裏の事情の受け入れ難さに思考が止まっている春歌を見下ろして、自分のズボンのベルトに手を掛けた。

 「ちょっとトッキー、僕まだ一度も彼女とヤってないんだけど!?」

 「そのようですね。安心しました。もうそこまで力を入れて抑えずとも、逃げる気力も残って無いでしょうから、彼女から離れて下さい。」

 「ひど・・・どうなのこの先輩の扱い、無いね、ホント。」

 だが名残惜しさも無さげに、嶺二が春歌から離れる。
 ずるりと、春歌の身体がクッションに身体が沈んだ。

 「一ノ瀬さ・・、本当は、私、ほん、とは、逢いたいなんて、好きだなんて、言ってないんじゃ・・・。」

 それだけ問うのが精一杯だった。春歌にとって、今呆ける頭でも捨てられない、音也に対するせめてもの操だ。
 力が抜けて動くのも上手く無い春歌を、トキヤが目を細めて見詰めた。

 「言いましたよ。」

 「どうなのそれ。あれを、言ったって言ってもいいもんなの?」

 「言った事実に間違いはありませんよ。逢いたいと言ったから運んだという部分は嘘ですが、言うのは言いましたよ、間違いなく。どんな誘導尋問であれ、ね。」

 「誘、導・・・。」

 「あの部屋は、元々君に度々ちょっかいをかける事になるからと、2人で借りておいたんです。私は君たちより前に到着していた。玄関先で長く話していたんで出て行くべきか迷っていました。寿さんがあの薬を君に上手く飲ませられなかったら、私も出て行かないといけませんでしたが、まだ最初の段階で私の存在がバレない方が都合が良かったんで、ギリギリまで待ちましたよ。」

 春歌の問いかけの後、2人の手は止まっていた。
 そのおかげで多少正気の戻った春歌がトキヤに縋り付く。怒りと、悲しみと、不安とが綯い交ぜになった顔で。

 「なんでですか・・・、なんで、どうし、て。こんなことっ・・・!」

 「・・・。」

 トキヤはその時少しだけ息をつめたが、考えを巡らせている訳では無さそうだった。
 揺るぎない回答を言おうかどうか迷ってる訳でも無く、ただ、知らせる程のモノではないとでも言いたげな顔だった。

 「君が欲しかった。音也が憎かった。それだけですよ。」

 淡々と、溜息混じりに言うトキヤに、春歌が尚も食い下がる。

 「わかりません、そんな、どうして・・・!」

 言葉がハッキリして来た春歌に僅かながら逃げる隙を与えた気がしたトキヤは、もうそこで春歌に喋らせなかった。
 床に引き摺り下ろして上に覆い被さると、抵抗する春歌に滅茶苦茶なキスをして、嶺二にもう一度春歌の腕をおさえてくれと頼んだ。

 「先輩使い荒いなーもう。」

 そう独りごちる嶺二は、言葉とは裏腹に妙に嬉しそうに春歌の手を一纏めに取る。

 「やめて、どうして!?」
 
 服を脱ぐトキヤに必死になって訴えかける春歌の頬を、嶺二が撫でる。

 「だから、トッキーの理由は本当にあれだけだよ。君が好きだから自分のモノにしたかったんでしょ。そこにどうしても何もない。人を好きになるのに理由なんて無い。勝手に惚れて、勝手に嫉妬してるだけだ。写真とか決定的な物証を突きつけるのはもっと後の予定だったのに、普段冷静なトッキーが焦る程、君を好きになってた、それだけのコトさ。」

 また嶺二の言葉に引っ掛かる。
 
 トキヤの理由はあれだけ? じゃあ、まだ他に彼以外の誰かは理由があったのか。そんな疑問が過る。過るだけで、トキヤのような見目の良い男が欲しがっていたという優越と快感に負け、また彼らの手に溺れる。巧みに動く指と舌に抵抗や貞操を毟り取られていく。

 「持ち出されたくない物を、テーブルに無造作に置いておく寿さんが悪いんでしょう。」

 嶺二の顔も見ず、トキヤが淡々と言い放つ。
 春歌の脚を拡げて持ち上げると、反り返った自分のものを濡れた孔に宛がった。

 「春歌、私は君が好きなんです。諦めていた君を手に入れるチャンスがあったから、賭けてみた。今回のコトはそれだけです。別に寿さんの味方をしたつもりもない。利害の一致というだけですよ。」

 宛がった昂ぶりの先端を、挿入直前といえる位置まで押し付ける。

 「抵抗しないと言うなら、ちゃんと2人きりで、ベッドの上で優しくしてあげますよ。どうします?」

 「やめて・・・抵抗しないから、もうやめて下さい・・・。」

 無駄だと知っていながら口に出す願いは儚かった。
 ふぅ、と息を吐き出したトキヤが無表情で呟く。

 「仕方ありませんね。私で君がどんな顔をしながらよがるか、寿さんなんかに見せるのは癪だったのですが。」

 「どーゆー言い草ーもうっ。・・・ああ、中出しはやめときなよ。アイドルとして、自分がまだ事務所に宣伝費の回収もさせてない身だって忘れないように。出来ちゃったら困るのはトッキー自身だ。そこは冷静になりな。」

 軽くいなしながら、しかし途中から声に真剣味を出した嶺二の言葉に、トキヤが頬を引き攣らせる。

 「・・・解りました。もう邪魔しないで下さいね。春歌、挿れますよ。」

 「あああっ! あ、ああっ、ぁあーーーー。」

 前置きは言葉だけだった。
 事前に通知したのはポーズだけで、言葉のような殊勝さは皆無だった。実際には遠慮も躊躇いも無く一気に肉杭を穿たれて、春歌の身体と意識が剥がれる。
 その勢いのまま腰を打ちつけられ、自分の乳房が大きく揺れる羞恥に苛まれながら、春歌は声をあげた。

 「はぁんっ、ん、も、あああっ、やめっ、あっ。」

 「うーん、流石に僕もヤバいかも。こんな顔してあんあん言ってる春歌ちゃん見てたら理性飛んじゃう。お口ならいいかなー。」

 「っ、ダメに決まっている、でしょう・・・。っ、はぁ。」

 「トッキーのそのケチさはどっから来るのさ。ダメ、マジ我慢ムリ。ちょっとトッキー、この子ひっくり返して。仰向けのままよりその方がいいと思うから。」

 「人の話を聞いてないんですかっ。」

 「聞いてるよ。だけどこの状態で我慢しろって、さっき自分で、あれで我慢できるかって言ってたじゃない。おんなじだよ。僕、健康な男の子だし。」

 春歌の胸に手を伸ばし、掴んで捏ねる嶺二のその手がどうにも許せなかったのか、トキヤが春歌を抱き起こす。
 挿し込んだまま座らせて、大仰に口を吸った。自分のキスで春歌がどんな表情をするのか伺う目は同時に、影を落とす睫毛の隙間から嶺二を威嚇する。

 「上の口も自分のものだって言いたいの。どこまで強欲なんだろうね、このナマイキな後輩は。」

 肩を竦めた嶺二はソファに沈み込んだ。
 諦めて成すがままになっている春歌は、半分泣いていた。

 「泣き顔が可愛いんだよねー・・・反則レベル。」

 嶺二は小さな声で呟く。そして、自分の事を全く気にしてないだろう2人を見ながら一度部屋を出た。
 しかしすぐに戻って来て同じ場所に座ると、膨らんだ自分の性器を取り出した。

 「オカズにする位はいいよね。」

 トキヤの反論は無い。
 もう、周りの音なんて聞えて無いのだろう。検分するという上辺の目的を取り繕う時間も過ぎているからか、春歌から得られる快楽に夢中になっていた。

 嶺二はその様子を見ながら、どうやったら収まるか不安な程張りつめた自分の肉茎を握り込む。ゆるゆると上下に扱き、短く息を吐いた。

 霞む目に、嶺二が自分で自分のモノを慰めている姿が映り、春歌はぎょっとした。
 男が自分で処理をする場面を当然だが見た事が無かった。トキヤと繋がった姿に欲情される扇情。他人の性欲のみの目に晒されて、我を失う真っ白さが急に停止した。

 「どこを見てるんです。」

 「ひっ。」

 髪ごと頭を引っ張られ、トキヤと目を合わされる。
 その時初めてトキヤも、嶺二のし始めた行為に気付いたようだった。

 「・・・随分遠慮するんですね。ありがたいですが、どうしてそんなに手を出さない事にこだわるんです? 私に言われたからってあっさり引き下がるなんて。・・・気味が悪いですよ。何を考えてるんです。」

 「んー? 別にトッキーに言われたからじゃないんだけど・・・。まあ、こういうのも中々、貴重な経験かなって、さ、・・・っふ、結構ヤバイね。知り合いのを見ながらってのも・・・、はぁ、すぐイキそうだよ。・・・ね、続けてよ。僕は見て楽しむ位しか出来ないんだからさ。ね、イク時、っは、あ。彼女の顔に…掛けてよ、見たいなあ。」
 
 自身を扱きあげる手を休めないままの回答。どこまでもはぐらかす口調が消えない嶺二に怪訝な顔をしていたトキヤが、振り切るようにまた春歌を揺さぶり始めた。

 「あっ、あっ、やぁ、あんっ。」

 「イヤじゃないでしょう。もう、何度も私にこうされて、そろそろ覚えたんじゃ、ないです、かっ。」

 息を乱すトキヤに、ずぐりと抉り入れられる。

 「んぁああああっ。」

 「君は、あの時、私のコレが気持ちいいと、好きだと、ハッキリ言いましたよ・・・。何度も自分から、強請ったクセにっ・・・っ。」

 「あっ、あああっ、あんっ。」

 それはおかしな薬のせい。
 そう言いたくても、口からは喘ぎ声しか零れない。

 「その後も、っはぁ、抵抗しなかったじゃ、ないですか。ぁ、っ、逃げもせず、嫌がりもせず、私を受け入れたじゃないですかっ。」

 だからそれも、あの時、どうする事も出来なかった。
 
 目が覚めて記憶が無くて、あの変な薬の所為で頭も働かなくて。抵抗するも何も、何をどうしていいか解らなくて、自分で自分のコントロールすら出来なくなっていたのだ。

 嶺二が言っていた、あの映画の女優のように。
 自分がおかしくなったのかと。何かをしたら、又何かが起こるのではないかと。恐怖に動きも気持ちも委縮して身動きが取れなかっただけなのだ。

 でもそれも言葉にならない。
 トキヤに激情のまま揺さぶられて、理性は溶けて快楽の海に全身が呑まれ、考える力が崩壊していく。
 
 揺れる髪、乳房。
 明らかに普段とは違う肌の色でトキヤに貫かれ啼き声を上げる春歌の姿は、嶺二をあっという間に射精まで追い上げた。そして視姦だけでなく、直にその体を腕に抱くトキヤこそそれが顕著だ。

 「やっば・・・もうイク・・・っ、っ・・!」

 「っ、出しますよ・・・!」

 ガツガツと剥き出しの性欲と身勝手な愛をぶつけて自分に侵入し襲う男と、それを眺め自慰行為の助長に春歌を利用する男と。それぞれに犯されているという実感が、春歌の身体に知らなかった泡を張り巡らす。前が見えない。頭の中で反響する自分の声と、宙に浮いたようになる身体を掴めない。

 気付いたら杭を抜かれて、腹の上に、トキヤの熱い体液がぼとぼとと飛び散っていた。
 その熱さに心地良さがあって、人と交わる快楽に溺れる理由がなんとなく解るような気になる。解るような気になるから胸が痛くなる。

 見知らぬ男に犯されたのではなく、よく知っていて、想われてる事実を不快に取れない相手だからこそ、身体に落された体液の熱さにも人肌の心地良さを覚えてしまうのだが、それこそが心を打ちのめすのだ。徹底的に。
 結局、恋人ではなくても、嫌がって抵抗しても、愛されて抱かれれば女はそれなりに受け入れてしまうのかと、深い部分から気持ちが泣くのだ。

 音也だけを愛していると、自分は思っていたのに。
 彼以外を受け入れるなどという場面がもし人生であったら、自分は舌を噛んで死ぬしかない位のつもりで居たのに。割と呆気ない。自分はもっと酷く取り乱して首でも吊るかと思っていたが、実感したのは、身体の中心に感じる果てのない空洞だけだった。

 

「終わったー?」

 嶺二の呑気な声が掛かる。
 ティッシュを大量にゴミ箱に放り込んだ彼は、既に服も元通りだった。箱ごと、まだ残っているティッシュをトキヤに投げて寄こす。

 「ちゃんと拭いてあげなよ。あーあ、顔にかけるのが見たいって言ったのにぃ。ケチなんだから。」

 「だから、どうして貴方を楽しませなければならないんです。まったく・・・。」

 返事も適当に、トキヤが春歌の腹をさっとティッシュで拭う。春歌は起き上がれなかった。まるで本当に恋人同士がするのと変わらない事後で、もうどうしていいか判らない。

 「綺麗になった? 良かった良かった。一応、人に逢うのにあんまり汚れてちゃね。」

 「・・・?」

 嶺二の言葉に、トキヤと春歌が不思議そうに顔を見合わせる。
 春歌は女として反射的に、”人に逢う” という単語に突き動かされ、傍でグシャグシャになっていた自分の服を手繰り寄せ身体を隠すした。
 
 「しかも、元。とはいえ恋人に逢うんだもん、女の子としては綺麗で居たいよね。他の男の精液かかったままはキツイでしょ。」

 「・・は?」

 トキヤの心底不思議そうな声が、人の気配と重なった。

 「・・・!」

 その時同じ空間に存在して、息を飲んだのは、2人。
 トキヤと、そして春歌だ。

 残りの2人は―――――。

 嶺二はいつものようにどこか笑って目を眇めて。そして、いつから居たのか現れた音也は、血の気の無い顔で静かに入口に立っていた。

 「恋人のアソコに、他の男のモノがずっぽり入りこんでる絵は興奮した? あー、でもその顔だと、泣いちゃってたかな。」

 嶺二の声は明るかったが、その通りなのだろう。
 音也の頬に涙の跡などなくとも、誰の目にも明らかだった。

 「なんで・・・。」

 音也が弱く呟く。
 想像もしてなかった人物の登場で呆気に取られていたトキヤは、その声で我に返ったようだった。裸のまま居直ったように、悪びれもせず、音也を見返す。

 「なんで、とは? 」

 「トキヤが、なんで春歌を・・・。」

 ショートした機械にも似た接触の悪さで、音也は動きも言葉も滑らかさが無い。
 無機質な声でトキヤが答える。

 「彼女が好きだからですよ。他に何か理由が? 私は、好きでもない女を必死に抱くほどヒマではありませんよ。」

 「・・・。」

 喉元まで出かかった感情が言葉にならず、音也は唇を震わせて立ち尽くしていた。
 春歌はといえば、まさか今この時に音也がこの場に現れるなど、万に一つも思っていなかった現実に驚き過ぎて、声も、まともな呼吸も失っていた。

 嶺二が、春歌の隣にしゃがみ込む。
 
 「今まで一番ビックリしたみたいだねえ。・・・うわー・・・ちょっと、やりすぎたかな。・・・大丈夫?」

 嶺二に目の奥を覗き込まれても、春歌は微動だにしない。

 「・・・・ははっ。マジやりすぎたかも。でもまあ、良く頑張ったねえ。もう終わり、終わりだよ。安心して。これで終わりだ。ロシアンルーレットは弾が命中したら終了だからね、大丈夫だよ。見られたのがそんなにショックだったんだ。そっかそっか。…ごめんね。」

 「どういう意味・・・。」

 音也が嶺二を見る。

 「ん? 意味? そのまんまだけど。この子、ずっと銃口突き付けられてるのと同じ状態だったから。どこまで行けるか僕が試してたんだけど、やっとぶち抜かれてくれちゃったみたい。今まで撃った弾も結構しんどかったらしいけど。・・・まぁ、詳細は知りたきゃ彼女に聞けばいいんじゃない。尤も、今は口も利けないっぽいけど。」

 「信じられないくらい悪趣味ですね。でも、本当に見たかったものが見れたようで。満足なんじゃないんですか。」

 「そうだねー、まあ、満足かな。ホントに人って壊れちゃうんだ。ま、壊れても直せるんだろうけど、そっかー・・・。」

 トキヤは不愉快気に眉を顰めて、音也はすっかり困惑しているようだった。
 嶺二だけがいつも通りで、冷静だ。ただ、初めて見たものに素直に感動し、まじまじと春歌を見つめている。その眼は、純粋にきらきらと興味で輝いていた。

 「なんなの、これ。一体どういう、トキヤも、嶺ちゃんも、なん、で。」

 音也は目線も定まらない。
 どこを見ていいか解らない。どこを見たら現実なのか、どこかが夢かもしれないといった様子だ。
 手早く下半身だけ衣服を纏ったトキヤが、脱ぎ捨ててあったシャツを手に取りながら音也に答える。

 「見ての通りです。彼女は私のモノになりました。返すつもりはありませんし、そもそも彼女も、こうなってしまっては性格的にあなたの所へは帰れないでしょうし。持って帰ります。」

 「モノ扱いかいっ。」

 「寿さんには関係ありませんよ。私が連れて行く事に不都合でも?」
 
 「待ってよ、なんで、いつから、俺そんなコト一度も・・・!」

 「聞いた事が無いって? 当たり前でしょう。それこそどうして、私が自分の恋心をあなたなんかに打ち明けなくてはいけないんです。・・・音也。」

 「え。・・・な、に・・・?」

 トキヤは真っすぐ音也を見据えた。
 聞きたいのに聞きたくない何かを告げられる予感で、音也が強張る。
 
 「私はあなたが嫌いです。アイドルとして天性の才能に恵まれている故に能天気で、大した努力もしてないクセに人に好かれ。彼女まで手に入れて・・・。少し前の映画のオーディション、私も寿さんも受けた事、覚えていますか。」

 春歌はそこでやっと顔をあげた。
 
 映画。
 その響きに覚えがあった。嶺二に突然誘われる直前、音也は映画の長期ロケに出ていた。今日も、龍也と打ち合わせした会議室から帰る時に聞えて来たのは、映画の話だ。

 「あの時ですよ。あなたが主役に選ばれて、私と寿さんは選ばれなかったあの時、私の中でずっと燻ぶっていた嫌悪が、憎い、というハッキリした感情に変わったのは。」

 「トキヤ・・・。」

 「あ、僕もそうだよ。厳密には、僕はトッキー程の感情は沸かなかったんだけどね。残念だったなーっていう程度。でも確かに、あの映画には思い入れがあったから、主役を取られたのは悔しかったよ。」

 スマートフォンをいじりながら、嶺二が口を挟む。
 
 春歌は、音也が映画に出演する事になって長期ロケに出掛けるとは聞いていた。彼がそのロケから帰って来る日から、日々がおかしくなったのだ。しかし主役だとは聞いて無かった。ぼんやりと頭の片隅で、撮影が済んでから驚かすつもりだったのかとも思った。音也らしくない。停滞した意識のほんの隙間で、かろうじてそんな思考が浮かんだ。

 浮かぶだけで、糧にも言葉にもならない。
 すっかり神経が麻痺している。

 「まー長い人生こんな事もあるよ。で、おとやんどうするー。他の男に抱かれてイっちゃったトコ見ても、まだ前みたく彼女を抱いてあげられる? 言っておくけど、トッキーのレイプはこの1度だけじゃないからね。因みに僕は潔白。見てたでしょ。僕ちんはオナニーで我慢しました。はー、嶺ちゃんホントおりこうだわ。」

 淡々と、おやつのメニューを決める調子の嶺二の声が部屋を通る。
 それが癇に障ったのか、音也がぎっと目線を鋭くした。

 「トキヤ、俺が嫌いなら、俺に言えば良かったじゃないか・・・なんで、なんで春歌をっ・・・!」

 音也がトキヤに掴みかかり、二人の身体がリビングに派手な音を立て倒れ込む。

 「あー顔は殴らないように! アイドルだからね。お互い商売道具に傷付けたら仕事になんない。」

 「嶺ちゃんだってひどいよ!」

 涙声で、音也が嶺二を振り返る。
 実際、目端に浮いた涙は今にも零れ落ちそうだった。

 「俺に、俺に直接言えばいいじゃないか・・・俺がイヤなら、俺だけをどうにかすれば良かっただろ!」

 「それじゃダメだったの。おとやんだけに何かしても、意味がなかったんだよ。意味がないっていうか、うーん・・・逆に遠回り? 僕がつまんないっていうか、うーん。」

 「どういう意味だよ! わけがわかんないよ!」

 「ちょっと待って。大事なメール送ってるからさ。」

 ちょん、と。仕上げのように人差し指で画面をつつくと、嶺二は座り直してトキヤに馬乗りになった音也を見た。
 その時、トキヤがふっと笑った。

 「似合うじゃないですか、音也。」

 「・・・?」

 「いつも能天気な顔して笑っていたから意外です。絶望してる顔も、よく似合ってますよ。その顔が見たかった。私が味わっている気持ちを、あなたは解らないだろうと思っていましたが・・・。」

 軽く笑ったトキヤを、音也が呆然と見降ろす。
 嶺二がまた口を挟む。

 「いやいや、似合っちゃダメでしょ。おとやんが、絶望する演技を上手くできちゃうかもしれなくなるんだよ。そうなったら、またトッキーは差をつけられちゃうんじゃない。そうかそうか。僕たち、撮影でおとやんが煮詰まってたシーンを上手く撮る手助けをしてあげちゃったんだねえ。あっちゃー。」

 面白い話題だと言わんばかりに、嶺二は楽しそうに喋る。

 「おとやん。あのシーン、全然ダメで撮り直しなんでしょ。龍也さんから聞いてるよ。良かったね。あの場面は、これ以上無いっていう絶望的な顔を魅せるトコロだからね。この経験を生かして、頑張ってよ。」

 「な・・・。」

 怒りと絶望で短い息を吐くだけしか出来なくなってきた音也を、無表情に彼を見詰めるトキヤを、いつもと変わらない飄々とした嶺二を、春歌はただ見ていた。

 きっと、もう総てはこれで終わるのだろうという、読めた先に打ちひしがれながら。
 音也とは、決して元通りになれないのだろうという悲しみにくれながら。


 心臓を抜き取られた空っぽの身体で、何もかもを失くした事実に耐えられず拒否反応を起こしたそのまま、嶺二の部屋で春歌はただ、量子の塊となってその場に佇むしか出来なかった。

 
 

 

 

         
                   To Be Continued・・・

 

 


       



       次回最終回です。25日頃に掲載を予定しています。







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プロフィール

みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

本家ブログはアメブロ
http://ameblo.jp/milk15azuki
にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

下のカテゴリからお好みのモノを選んで頂くと、連載は1話から読めます。

感想・お世辞は大歓迎ですが、苦情は受け付けられません。
鍵付きのコメントは、拍手コメントも含め一切の誤表示を防ぐ為、お返事は致しませんが、必ず読んでおります。励みになっております。有難うゴザイマス。
拍手とかコメントとか貰えると泣いちゃうくらい嬉しいですよ・・・。

鍵付きでは無いコメントは、拍手コメントも含め必ずお返事させて頂いております。
宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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