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Russian roulette 6

 


 
Russian roulette
      Vol.6






 

 
 何度瞬きをしても景色が変わらない。
 信じられないというよりも実感がなさすぎた。

 思いも寄らない相手が隣に居る突飛な状況に、何から始めるべきか皆目見当が付かない。

 「ん・・・。」

 「!」

 長い睫毛が震えて、トキヤが目を開けた。
 不安と緊張で喉が鳴る。

 てっきり驚いたトキヤに侵入者扱いでもされるのではと、春歌は体を一層強張らせた。

 だがトキヤは、唇を少し笑うように動かすと、安心したような吐息を溢しながら春歌をその腕にしっかりと抱きしめた。

 「・・・!?」

 一体何がどうなっているのか、春歌は目をくるくるとさせて必死に言葉を探した。
 

 「あ、の、一ノ瀬さ」

 「良かった・・・。」

 トキヤの胸に顔が埋まり、息が苦しい。彼の台詞に心当たりが無くて不安が増していく。ほっとしたような口調が良く判らない。

 「朝が来て、君が居なくなっていたらどうしようかと・・・。目を開けるのが少し怖かったですよ。」

 「!?」

 目線を合わせ、焦点がずれるくらい顔を近づけてきたトキヤに、春歌は思わず体を退いた。密着しているのでそれが伝わるのか、トキヤが益々顔を寄せる。

 「逃げないで・・・んっ。」

 唇に軽くキスをされ、春歌はもう何がなんだか全く理解出来ない状況にパニックになっていた。一体これはどういうコトだ。これではまるで、音也とトキヤが入れ替わったような朝だ。音也とは、何度もこんな朝を迎えた。

 だが、相手が違う。
 なぜこんな事になっているのか。

 「あの、一ノ瀬さん、わた、わたしっ。」

 「酔いはもう大丈夫ですか。」

 「は?」

 「覚えて無いんですか? ・・・まぁ無理もないですかね。君はかなり酔っぱらっていましたから・・・。流石の寿さんも大分反省していましたよ。君に、うっかり間違えてお酒を飲ませてしまったって。お酒の瓶が、ジュースと似たようなデザインだったそうで。」

 「お酒・・・?」

 記憶のない春歌に呆れたのか、トキヤは一度大きく伸びをすると、軽く頭を振った。
 それだけの動作で、寝起きの顔でなく、アイドル・一ノ瀬トキヤとほぼ変わらない顔になる。彼は昔からストイックにアイドルとしての自己を追求するタイプだとは思っていたが、目の前でこれだけの切り替わりを見て、春歌は改めて感嘆した。

 「君、寿さんが打ち合わせ中に出してくれたジュースをお酒と間違えて飲んだ事、覚えて無いんですか? どこから記憶が無いんでしょうね・・・まさか、寿さんと打ち合わせする為に一緒に帰った事も忘れているんですか。私が傍に居たことも?」

 「そ、それは覚えてます!」

 慌てて答えた。
 確かに、打ち合わせだと音也に告げた時、トキヤも傍に居た。あのまま車に乗せられて辿り着いたマンション一室の玄関まで入った事は覚えている。

 だが違う。
 自分は部屋には上がらずに、玄関先でおかしな薬をムリヤリ口移しで流し込まれたのだ。お酒を飲んだというのは、一体どこでそんな話になっているのだろう。

 何から尋ねるべきかすら判断の出来ない春歌の頬を、トキヤがそっと撫でた。

 「・・・?」

 「君が、酔っ払ったせいとはいえ、私に逢いたいと言ってくれたなんて・・・嬉しかった。」
 
 「・・・・は、い?」

 今、なんと?
 彼は、なんと言った?

 「私は、そんな事を言ったんですか・・・・。」

 腰から不安が泡立って昇ってくる。
 覚えがない。第一どんな状況になろうとも、自分が音也以外の男に逢いたいと口走るなど思えない。

 「ええ、だから寿さんがココへ連れて来てくれたんですよ。私も最初はへべれけな君を見て驚きましたが、でも・・・。」

 「!」

 のそりと覆い被さってきたトキヤに驚く暇も無かった。
 彼のさっきの言葉が自分の中で高速で回転している。

 (私が、一ノ瀬さんに逢いたいと言ったの? 音也くんに逢いたいって言ったのを勘違いされているのではなくて? 本当に私がそう言ったの?)

 渦巻く疑問に呑まれているせいで、春歌はトキヤの口づけに気付くのがまた遅れた。
 今度は舌を軽く舐められる。皮膚がぞわりと毛羽立つ。衝撃的な出来事で目は覚めたがそのせいで、酷く敏感になっているらしい。
 
 春歌が抵抗しないのを只の同意だと受け取っているのか、トキヤは春歌の唇や舌を舐めながら、囁くように言う。

 「酔っていると本音が出ると言いますから・・・私に抱きついて、・・・ちゅ、ん、好きだと言ってくれて・・・私もずっと君が好きだったから、もう舞い上がってしまって・・・。本当は私はずっと、君は音也とつきあっていると思って諦めていました。でも、・・・んっ、違ったんですね。…いえ、そうだったとしても、私を選んでくれたという事でしょう? ・・・違うんですか。」

 キスの合間の熱い囁き。
 ふっと、睦言を止めたトキヤが不安を覗かせた。

 「昨日のコトは、夢ではないですよね? 私を好きだと言ってくれて、何度も強請ってくれた君の言葉を、信じてもいいのですよね?」

 「・・・。」

 何か言わなければと思って開きかけた唇が止まる。

 違う、と言いかけた唇が、トキヤのキスでまた塞がれたからだ。
 抵抗出来るほど体が動かない。
 媚薬の詳細を春歌は知らないが、翌日までこんなに倦怠感が続くものだろうか。でも原因にはそれしか心当たりがない。
 

 しかし、春歌が抵抗しなかったのは、体が動かないという理由だけではなかった。

 混乱していた。あまりにも。

 総てが霞がかった状態で、トキヤに何を言おうというのだ。今、自分がどこでどうなったのかすら正確に把握できないという局面で。
 
 知らない場所で記憶も曖昧な自分が、今ここで、この幸せそうにしている男にどんな正確な返事ができる?
 唇を解放してくれたトキヤは、とても満足そうにしている。
 
 自分はトキヤに逢いたいと、好きだと言ってないなど、自信が無い。気持ちの上では言う筈がなくても、酩酊状態の最中の行動が断言出来ない。幸せそうにしていながら、夢のような状況に少し自信が持てないのを春歌の言葉に埋めて貰いたくて、甘えるように瞳を覗きこんでくる旧知の友に対して。

 誰がどうみても、言い逃れの出来ない風景。
 男と女が服も身につけずベッドに潜り込んでいるままのこの姿で。

 あまりにも、どうすればどうなるのか思いつかない。
 喰い射るような目で見られていると気付いて春歌が目を閉じたら、それが誘いと取られて深く口づけられた。

 さっきまでと違い、舌全体で口の中を犯すキスで、意識が朦朧と地底へ沈み込んでいくような気分になる。
 トキヤのキスに確かに快感を拾っていると自覚して泣きたくなる。


 昨日は嶺二で、今日はトキヤで、自分は男なら誰でも受け入れてしまうとでも揶揄されて仕方ない惨状に涙が滲む。これが油断だったのだ。一番最初に嶺二に襲われた時の彼の言葉をまた思い出す。

 そして後悔した。
 次から次へと自分の前に降りかかる連続した驚愕。巻き戻したい、時間を。音也の許へ何もなかった自分に戻って帰りたい。

 はっと、気付いた時には、トキヤの吐息は興奮を交えていた。

 「こんなキスをしていたから、また・・・君のせいですよ。」

 手を取られて宛がわれる。
 掌に熱く固い塊を押し付けられ、春歌は驚いて手を退くが、トキヤはそれを許さなかった。

 耳元で、甘い熱を孕んだ誘惑が囁く。

 「昨夜のように、積極的にはしてくれないのですか? いっぱい欲しいと言って、あんなに擦り寄ってくれたじゃないですか。」

 「!」

 ぐ、と太股を開かれ、春歌は咄嗟に叫んだ。

 「やめてっ!」

 「そんな顔をしないで。」

 「!」

 切なそうな声が懇願のようで、春歌の叫びが止まる。
 それを確認したトキヤが、間を置かずに自身を春歌の中心へ挿入した。

 「あっ、あ、ああああああーーー。」

 悪い夢。
 
 なのに、気持ちが良いと感じる身体が自己嫌悪を通り越して、春歌の意識を混沌とさせる。
 
 覆い被さるトキヤの唇が、春歌の耳の後ろを這う。彼の濡れた吐息が益々頭を狂わせる。快楽を呼び起こして、堕ちるものかと拒否する春歌の心を破壊するのだ。今の春歌は、指先で触れるだけで崩れる砂の城。音也への操はサラサラと音も無く、押し寄せるトキヤの欲情の波で意思をすり抜け消えていく。

 「やめ、てぇ・・・お願いですっ・・・ああっ。」

 ひっくり返されて、顔をシーツに埋めながらトキヤに懇願する掠れ声が嬌声に変わる。
 背中や尻を撫でながら、彼は何度もゆっくりと抜ける寸前まで引き抜き、それから何回か素早く抜き差しをして、またゆっくりと引き抜いて・・・を繰り返した。

 「やめて、もう、もうしないでえ。」

 気持ちを裏切り続ける体が、燻ぶる焦れったさを覚える。それを悟られたく無くて必死で許しを乞いたのが逆効果だった。

 「激しくされたいですか?」
 
 「・・・いや・・・今しちゃダメっ!」

 「イキたくて仕方ないんでしょう。いいですよ・・・。」

 「ダメぇ! イっちゃうからダメえっ!」

 頭が回転しないせいで馬鹿正直な抵抗の言葉しか出なかった。
 
 ふ、と笑う吐息が聞こえ、次の瞬間、ぴったりと春歌の背中に自分の身体を密着させたトキヤが、獰猛に腰を打ちつけてきた。獣じみた姿勢で羞恥に震えが走る。

 「あっ、あ、あんっ、あんあん!」

 「はぁ、っ、君の声が、もっと聞きたい・・・、私のモノになった、君の声、っ。」

 肌を噛まれて瞼の裏で火花が飛ぶ。
 真っ暗な思考のそこかしこでも火花が散る。後ろから探られて固く勃ち上がった胸の突起を強く扱かれる。トキヤは春歌を抑え込むようにうつ伏せで組み敷いて、肌がぶつかる音が途切れる間の無い程に激しく犯し続けた。

 「好きだ・・・君が、君だけがっ・・・もう音也の所になど帰さないっ・・・!」

 ぐっと最奥に入れ込まれ、それが何を意味するかを蕩けた頭であっても理解できた春歌の腰が強張る。

 「あん、ダメ・・ッ、あんっ、ああーっ。」

 どこまでも奥へ。
 言葉にならないトキヤの思いを快楽と同じだけ感じ取って、春歌は全身を走り抜けた電流に意識を持って行かれた。







 肌に食い込む彼の指の力がやっと抜け、体の向きを変えられて、そっと口づけられる。

 ぐったりと横たわる春歌を見詰め、トキヤはそしてまた彼女を腕に抱きしめた。

 「可愛いですよ・・・。ずっとこうしていたいですが、・・・・・仕事です。残念ですが、今日はもう出ないと。君はどうしますか?」

 「・・・?」

 意味が解らないという風にトキヤを見た春歌の髪を、彼が優しく撫でる。

 「ココで私の帰りを待っていてくれても、いいのですよ。鍵は君にもお渡ししましょう。」

 「!」

 途端に頭が冷める。
 違う。どうして自分の気持ちや記憶が全く無視されて、どんどん話が進められているのだ。そもそも、自分はトキヤに逢いたいと言った覚えが無くて、ましてやこのように抱かれてしまう間柄では無かったのに。 

 急激すぎて理解不能すぎた状況に、あっさりと呑まれてしまっている。
 まるで津波だ。突然押し寄せてきたと思ったら、叫ぶ事はおろか、周りの状況も確認出来ずに海底に引き込まれてしまった。

 戻ってきたら、呑まれる前とはまるで世界は変わってしまった。
 なぜ、自分がトキヤに、部屋の合鍵を渡すなどと言われているのだ。

 「一ノ瀬さん、私っ。」

 「大丈夫ですよ。私たちの交際がバレないように細心の注意を払います。その為にも別々に部屋を出た方がいいと思うのですが、女性の方が支度に時間がかかりますから、君が後から出る事になれば、どのみち鍵をお渡ししないといけません。」

 「いえ、すぐ出ます、鍵なんて貰えません。すぐに出ますから。それと一ノ瀬さん、あの。」

 「すぐ出ると言っても・・・シャワーだって浴び」

 「いいえ! シャワーもいいです、兎に角ココを出ます。それであの、一ノ瀬さん、私が昨夜酔っぱらって一ノ瀬さんに逢いたいと言ったっ」

 「すいません、事務所に入れる大事な連絡を忘れていました。ちょっと電話をしますので。」

 「あのっ!」

 「すぐ終わりますよ。私はそのままリビングで支度をしますから、気にせずに着替えて下さい。」

 強引に閉じられたドアの音は、そのままトキヤの態度だった。
 答えて貰えないのだと、会話の途中で気付いた。めげずに喰い下がっても、彼は姿勢を変えなかった。
 
 (どうして?)
 
 春歌はベッドを降り、脱ぎ捨てられていたままの服を手に取った。

 詳細を追求したら、トキヤは困るのだろうか。だとしたら、自分はやはり彼に 「逢いたい」 などとは言ってないのではないだろうか。トキヤがそう思いたいだけなのでは? だから質問する隙をくれないのではないか。


 ならばどうして自分はここに居る? 嶺二が連れてきた以外に考えられない。あの時自分は、確かに崩れ落ちてしまった。記憶も途切れている。とても一人でここまでこれたとは思えない。

 なぜ嶺二はここへ連れてきた? 

 大体、人ひとり担いで駐車場へ戻るだなんて、そんな目立つ事を芸能人の彼がどうしてする必要があったのだろう。春歌自身がそんなにトキヤに逢わせろと喚いたのだろうか。確かにトキヤの言う通り、トキヤの名前を出したから連れてこられたと結び付けるのが普通だ。

 自分は、逢いたい、とは言ったのではないだろうか。どうしてか解らないが、音也では無く、トキヤに逢いたいとは口走ったのではないだろうか。そして、それを真に受けた嶺二に連れてこられて、自分を好きだったらしいトキヤがこれ幸いとあのような行為に及んだのではないか。

 それが、春歌が鈍る頭で着替えながら、導き出したひとつの答えだった。そしてそこまで考えて、春歌ははっとする。

 だとしたら、自分は嶺二には、最後までされていない?

 

 ―――――――――なぜ?


 服を身につけながら、思考が止まる。
 嶺二はこの間から、春歌を何度も辱めながら、最後まではしてこない。なぜ? 意味が解らない。解らなくて怖い。嫌われているのだろうか。嫌われる理由が思い付かない。何も思い付かない。

 ショーツを履こうとして、一度脱いだ物だという事に一瞬憚られた。
 些細な迷いに手の動きが止まった直後、とろりとトキヤの先ほどの情事の残滓が内股に垂れてきて、慌てて何枚もティッシュを引き抜いた。泣きそうになりながら、音也以外の男の精液を拭き取る自分が惨めで堪らなかった。知らない部屋で、知らないうちに、こんな目に遭っている。ところが相手が幸せそうにしていて、しかも相手に罪が無くて怒る事も出来ない。

 総て、嶺二が引き起こしたのだ。
 彼に逢って一から説明して貰わなければ、この怒りが収まらない。

 ぽたりと落ちる涙が染みになるシーツの一部分を見ながら、春歌は唇を噛みしめた。
 頬を拭い、早々にある程度の身なりを整えリビングに向かう。

 「おや、早かったですね。」

 ドアを開けた春歌に優しく微笑んだトキヤが声を掛ける。
 忙しくて家に居ないせいなのだろうか。ぱっと見は妙に殺風景なリビングだと春歌は思った。

 「君が先に出た方がいいでしょう。道は解りますか?」

 「いいえ、ここがどこなのかも私・・・。」

 「そうでしょうね。一番近いのは○○線のT町駅です。ここを出て右へ行って下さい。少し歩くとAA電機という大きな会社があります。看板が大きいから必ず解りますから、そこの信号を右へ。5分も歩かないうちに○○線の駅へ出ます。迷わないとは思いますが、くれぐれも気をつけて。」

 「・・・はい。わかりました。」

 返事をした春歌の頬に、トキヤの指先がそっと触れる。咄嗟に春歌は、その指を振り払った。

 「あっ、す、すみません。あの、私っ。」

 振り払われた指を見詰めて黙るトキヤに対し、罪悪感が湧き思わず謝る。
 トキヤはあまり気にしてない様子で少し微笑んで、自分の前髪をかきあげた。

 「次の休みは、一緒に夕飯でも食べましょう。どこか個室を用意してくれるお店を、月宮さんにでも聞いておきますね。勿論、君と行くなどとは言いません。」

 「一ノ瀬さん、私は」

 「さ、遅刻してしまいます。君が出ないと私が出られない。急いで下さい。」

 ぐいっと玄関の方へ体を向けられ、春歌はまた続きを言わせて貰えなかった。

 そのまま笑顔でドアを閉めたトキヤと別れ、エレベーターに乗り込む。
 混乱した頭で銀色の壁を無気力に見詰めながら、春歌は機械の箱にただ下へと運ばれていった。



 


 

 だるい体と、相変わらず鈍痛が取れない頭をひきずるように家に辿り着いた春歌は、惰性のように靴を脱いだ。
 自分の住処に帰って来た安堵感で増した疲労は、リビングのドアを閉めた途端、ずるずるとその場に座りんでしまう程だった。
 
 暫く放心状態でそうしていた。
 カーテンは開いたままだった。帰ってくるつもりだったのだから。なのに、なぜ日にちが変わってから戻ってくるような事になってしまったのだろう。

 何を間違えてしまったんだろう。
 わからない。

 何十分もそうしていたが、やっと、トキヤの部屋では浴びられなかったシャワーを浴びようとのろのろと立ち上がった。ふと、視界の端に見慣れているものが入る。

 それはいつも日常に溶け込んでいるただのゴミ箱で、なのに何かが違う気がして、春歌は何気なく中を覗き込んだ。

 「・・・な・・・!」

 弾かれたように手を突っ込んで中身を取り出した。
 両手に取って確認する。

 「どうして・・・。」

 それは、この部屋で音也がいつも使うパジャマだった。
 少し前にも着た為、洗濯をして畳んでタンスに仕舞っておいたものだ。どうしてこれがココにあるのか。

 それを握ったまま、セットになっているボトムも捨てられているのに気付き取り出した時に、ごとん、と鈍い音を立てて陶器が床に転がり落ちた。マグカップだった。それも音也が使うもので、

 「割れてる・・・なんで、どうしてなの・・・?」

 厚みのある大き目のマグカップの上部は欠けていた。
 欠片はすぐに見つかった。ゴミ箱の中には、音也がこの部屋で使っていたものばかり様々が、乱雑に放り込まれていたからだ。

 春歌は、思わずぞっとして後ろを振り返った。
 
 誰も居ない。
 当たり前だ。

 なのに、恐ろしくて堪らない。自分の部屋で、自分がしていない事が行われた明らかな証拠。見えない何かが自分の周りを急速に変化させていく。悪い方へ。掌握出来ている箇所が僅かであってもそれは理解出来ていた。自分は今、悪い波に浚われていると。

 「まさか・・・。」

 この部屋に入れるのは自分と、恋人の音也だけだ。
 これは音也からの、別れるという意思表示なのだろうか。音也の懇願を聞き入れなかったせいで?


 捨てられていた物を床に散らかしたまま、春歌は今度こそ魂を抜き取られたようにへたり込んだ。

 見詰める床も、窓も、総ては冷たく、夕闇が春歌を呑み込んでいくだけだった。
 

 

 
 
             
            

              To Be Continued・・・









 

 
 
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みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

本家ブログはアメブロ
http://ameblo.jp/milk15azuki
にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

下のカテゴリからお好みのモノを選んで頂くと、連載は1話から読めます。

感想・お世辞は大歓迎ですが、苦情は受け付けられません。
鍵付きのコメントは、拍手コメントも含め一切の誤表示を防ぐ為、お返事は致しませんが、必ず読んでおります。励みになっております。有難うゴザイマス。
拍手とかコメントとか貰えると泣いちゃうくらい嬉しいですよ・・・。

鍵付きでは無いコメントは、拍手コメントも含め必ずお返事させて頂いております。
宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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