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Russian roulette 2

 


 Russian roulette
         vol.2


 

 

 結局その晩、嶺二は来なかった。
 
 本当に来るのか来ないのか、嶺二の表情や言葉からは解らず仕舞いだった春歌はどうしようもなくて、それでも相手は先輩だと思うと、料理を作るしかなかった。

 それなりの時間まで待っていたが、結局嶺二の訪問は無かった。

 すっかり自分も夕飯を食べ損ねてしまい、拗ねたようなほっとしたような気持ちでお風呂を済ませた春歌は、届いていたメールを開いて、やっと笑顔になった。
 
 『明日、会えるよ。行くから待ってて。』

 「音也くん・・・。」

 逢えると思うとそれだけで嬉しかった。
 大好きな恋人。やっと逢える。たかが10日程度、と人には思われるだろうが、今の二人にとって、10日離れているのは辛い長さだ。

 (一晩寝かせて美味しくなったカレーと、サラダと、あ、じゃがいもが余ったから、ポテトサラダを新しく作ろう。レタスは今日使った分の残りで十分かな・・・。)

 春歌は髪を乾かすと、幸せな気持ちで眠りについた。


 

 翌日は晴れていた。
 晴れた空を眺めながら、春歌は事務所へ向かった。

 音也からメールが来たのは少し前で、どうしても事務所へ先に寄って資料を貰ってから帰るから、事務所で待ち合わせをしてそこから一緒に帰らないかという誘いだった。

 『君の好きなケーキを一緒に選んで帰れるといいな。事務所で待ってる。』

 その何気ない音也の一文で頬が緩む。
 クライアント先へ曲を送った事を報告をしながら、元は自分の教師であった林檎にこの間から借りていたCDを返すのに丁度良いと思った春歌は、すぐに同意を返事して家を出た。

 寮から事務所は然して離れていない。
 ほどなくして事務所へ着いた春歌は、部屋の中央辺りで林檎と談笑する愛しい恋人の顔を見つけ、駆け寄ろうとした。

 「おと・・。」

 「後輩ちゃん!」

 「きゃっ。」

 突然飛びかかられて、春歌は転びそうになった。
 それを、飛びかかってきた張本人が抱きとめる。

 「あっぶない! 良かった、大丈夫。どこかぶつけてない? 痛いトコ、無い?」
 
 「あ、はい、だいじょ。」

 目の前に、本当に目の前すぐに嶺二の顔があって、春歌は驚き言葉を飲み込んだ。

 「ホント? ごめんよ、ちょっと勢いつきすぎちゃってぶつかっちゃった。ホントに大丈夫?」

 尚も心配そうに見詰める嶺二に、春歌が心臓を飛び出しそうにしている時。

 「七海!」

 音也が横から、慌てふためいて割り込んだ。

 「どうしたの、嶺ちゃんに突き飛ばされたの? 大丈夫?」

 「おとやんひっどいなあ。突き飛ばしたって何よ突き飛ばしたってのは。ちょーっと言い方ヒドイ。タイミング間違えて、勢い込んでぶつかっちゃったんだよ。悪気無かった。ごめんよ、後輩ちゃん。」

 その間に、音也がさりげなく嶺二の手を春歌から振りほどく。

 「あれ。あれあれ。なんで僕から後輩ちゃんを奪っちゃうワケおとやん?」
  
 「奪ってないよ、そうじゃなくて、七海はあんまり男子に慣れてないんだよ。いつまでも嶺ちゃんがこんなコトしてたら、七海、固まっちゃうからさ。」

 成長したものだと、春歌も音也もお互い思う。
 学園時代だったら、こんなにうまくサラリと、何でもない風を装えなかっただろう。仕事をする為に2人を守る。2人の関係を守る為に仕事をする。少しずつ、それが出来るようになっていた。
 
 だが、嶺二はからかうように音也に絡む。

 「ふ~ん・・・ホントにそれだけ? アヤシイ。すっごいアヤシイなあ君たち。ずっと思ってたんだけど、すっごいアヤシいよね君たちは。」

 「怪しくないよ、何言ってんの。嶺ちゃんの思い過ごしだよ。」

 「じゃー別に、僕が後輩ちゃんをぎゅってしてたっていいでしょ。」

 「だ、だめだよそれは! 七海は男の人があんまりダメなんだよ!」

 また春歌に手を伸ばしてきた嶺二から、守るように音也が立ち塞がる。

 「あんまりダメって、日本語としておかしくない? そんなに慌てちゃってー。益々あやしい。」

 ニヤニヤしながら2人を眺める嶺二を横目に、音也が春歌に目線を合わせて屈む。

 「七海、ほんとに大丈夫?」

 「はい、大丈夫です。」

 2人がやかましくやり取りをしている間に平静を取り戻した春歌が、居住まいを少し直して、嶺二にも、どこも痛くないから大丈夫だと告げた。

 「そぉ? だったらいいけど。夜になってどこかが痛み出したらちゃんと言ってね。僕、責任取って看病してあげるからさ。あ、それと、昨日約束守れなくてごめんね。」

 「え、あ。」

 「約束? なんのこと?」

 嶺二は相変わらずニヤニヤしながら。
 春歌は突然出された話題に戸惑い。
 音也は、嶺二の言葉と春歌の咄嗟の態度に怪訝な目を向ける。

 「なんでもないよ。昨夜、ちょっと後輩ちゃんと約束してたんだけど、僕の仕事がおしちゃってね。部屋で待っててくれた君に連絡もしないで、悪かったね。」

 「あ、いえ、あの、そんなことは。」

 何も悪い事などしていなのに、今すぐ此処から消えてしまいたいと思うのはどうしてなのだろう。
 音也が自分を見るその視線が、まるで責めているかのようにしか思えない自分は、潔白な筈なのに。

 「僕の為に作ってくれたご飯、まさか無駄にしちゃったかな? 次の機会にちゃんと食べに行くからさ、もし間に合うなら今から冷凍でもしておいて。ね。」

 「は、はぁ・・・。」

 「・・・・嶺ちゃん、七海と一緒にご飯する約束してたの?」
 
 「ちょっーとアナタたち、いつまでお喋りしてるのー。嶺ちゃんは精算が済んだなら、さっさとスタジオ入りしてちょうだいよ!」

 林檎が話を切りに入り、春歌はほっと息を吐く。
 一瞬緊迫した場面から雑多な日常風景に戻って、春歌はほっとしながら林檎に借りていたものを返し、音也と共に事務所を後にした。



 
 「音也くん、あの、怒ってるんですか・・・?」

 家に戻る道すがらも、食事中もどこかいつもと違う音也だった。
 春歌が思い切って切り出したのは、夜も更けてからだった。

 「怒ってないよ。」

 「でも。」

 短いやりとりをしながら、春歌は息が詰まりそうな空気を感じていた。
 昼間の嶺二との会話がこの状態を引き起こしてるのだと判っているのだが、どうしようも無かった。悪い事をしてないのだから謝るのも筋違いだ。

 「え。」

 あれこれ考え込んで別の位置を見ていた為、音也が立ち上がったのに気付いたのは、気配だった。
 視覚よりも気配からでは、気付くのが遅れる事がある。いきなり立ち上がった音也に押し倒され、初めて今自分がどうなっているか理解する。

 ソファが沈み、体がずり落ちてそのまま床に2人して倒れ込んだ。
 
 「痛・・・っ、。」

 実際は大して痛くはなかったが、言葉が反射的に出る。
 その言葉を遮るように、音也は自身の体全体を春歌の上に載せた。

 「おと、っんん・・・!」

 無言のまま襲いかかったキスに、春歌は体を固くした。
 いきなり音也の顔が近付いたのが恐ろしくて咄嗟に目を閉じ、持ち上げようとした手を抑えつけられる。

 「んん、っ、ん・・・!」

 長いキスが終わり、息を乱す春歌の顔に、覆い被さる音也の髪が触れる。。


 「おとやく・・・。」

 「いやだ。」

 「え。」

 少し顔を背けられていて、春歌には音也の表情が良く判らない。
 低い呻きに、息が止まりそうで胸が痛くなる。

 「わかってる。別にご飯くらいどうってことないよ。」

 そう言うと音也は、真っすぐ春歌を見降ろした。
 その強い視線に、今度は春歌が目を伏せる。

 「でもイヤだ。嶺ちゃんは、那月やマサとは違う。っていうか那月だって、ああいうヤツだって判ってるからマシなだけで、2人でご飯してほしくないよ。だけど、嶺ちゃんはもっとイヤだ。」

 唇を噛みしめて、音也は続けた。

 「俺、君がカルテットナイトの曲を作ってる時から、正直嶺ちゃんとは仲良くしてほしくなかったんだ。嶺ちゃんは、優しいよ。いい先輩でさ。でも・・・・。」

 言うか言うまいか。
 少し迷ってから音也は、春歌に静かに切り出した。
 
 「あのね、嶺ちゃんはちょっと大人だから、俺とは全然違って、色んな事、すごく上手に進められるんだ・・・。多分、女の子の事もサラっと誘って、サラっと自分の方を向けたり・・・。君みたいに純粋で人を疑わないような子は、きっと嶺ちゃんの楽しいトコロとかいいなって思って、それで、そのまま・・・。」

 そこまで言って、言葉を飲み込んで、思い直したようにまた言う。

 「君の事は信じてる。ほんとだよ、信じてるよ。でも、でもイヤなんだ。」

 「そんな、私は音也くんしか見ていません。」

 「うん、わかる。」

 やっと、音也が少し力を緩めてくれた。

 「でも、イヤなんだ。嶺ちゃんはああやってさりげなく君を抱きしめたりして、俺、心がすごくモヤっとするんだ。お願いだから・・・。」

 ぎゅっと、音也が春歌に益々覆い被さって抱き締めた。
 春歌の首筋に顔を埋め、押し付けるように頬を頬で撫でる。

 「お願いだよ。嶺ちゃんとは2人きりで逢うような約束はしないで。仕事の話も、事務所でしてよ。イヤなんだ、俺・・・!」

 イヤだ、イヤだと先ほどから繰り返す音也が、熱い体を思い切り春歌に伸す。
 厚い胸板に押し潰されて息が苦しくて、それでも春歌は、好きな男の不安げな訴えに、必死に返事をした。

 「はい、寿先輩とは、2人きりになったりしません。約束します。だから、おとやく、くる。。し・・・!」

 「あ、ごめん! 大丈夫!?」

 弾かれたように、音也がぱっと春歌から飛びのいた。
 やっと呼吸が自由になって、春歌は大きく息を吐く。

 「ご、ごめんね、俺、なんか自分の気持ちに一杯になっちゃって、ごめん、重かったよね、ごめんよ?」
 
 春歌の背を起こし、泣きそうな顔で優しく触れる音也の指先。
 それを感じ取り、春歌はそっと音也の胸に寄り添った。

 「ううん、いいんです。あの、それに寿先輩とは、本当に、約束っていえるような約束をしたワケでは無いんです・・・。」
 
 春歌は昨日の一部始終を音也に話し、音也は、

 「そっか・・・。じゃ、別にハッキリとゆびきりとかしたわけじゃなくて、嶺ちゃんが思いつきで言っただけなんだ。」

 思いつき。 
 
 音也のその言葉が、春歌の頭に少しだけ引っ掛かった。

 あの時の嶺二の顔や声を目の当たりにした春歌には、あれが彼のただの思いつきの適当な言葉だとは、その時思えなかった。だからこそ、料理をして待っていたのだ。

 彼は、冗談を言っているようには見えなかった。
 いつも何かしら飄々とした態度のせいか言葉に本音が載ってないと思わせる嶺二だったが、あの時の彼の笑顔は少なくとも、春歌に断る理由を一瞬真剣に考えさせる顔だった。
 
 だが、今の音也にはそれを言うべきではないと思った。
 何よりこれはそれこそただの想像で、確証もない。

 さっと巡らせた思案を、音也の優しいキスが止めた。
 唇がそっと触れるだけのキスを春歌に落し、きゅっと、またその体を抱きしめる。

 「ごめんね。俺、つまんないヤキモチやいて。ごめん。」

 「いいんです。だって、好きだからヤキモチを焼いてくれるから、嬉しいです。・・・あ。・・・嬉しいなんて、ごめんなさい。」

 愛おしげに春歌の髪にキスを滑らせた音也が、掠れた声で誘いかけた。

 「俺、したい。ベッド行こう。」

 春歌の回答は待たれる事がなく、音也は春歌を抱き抱えて寝室に向かった。





                To Be Continued・・・





         
     


   第3話は、来週11/15金曜日に更新予定です。







 
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みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

本家ブログはアメブロ
http://ameblo.jp/milk15azuki
にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

下のカテゴリからお好みのモノを選んで頂くと、連載は1話から読めます。

感想・お世辞は大歓迎ですが、苦情は受け付けられません。
鍵付きのコメントは、拍手コメントも含め一切の誤表示を防ぐ為、お返事は致しませんが、必ず読んでおります。励みになっております。有難うゴザイマス。
拍手とかコメントとか貰えると泣いちゃうくらい嬉しいですよ・・・。

鍵付きでは無いコメントは、拍手コメントも含め必ずお返事させて頂いております。
宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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