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FireWorks 3

 

 翌日。
 
 前の晩に激しく蘭丸に抱かれたせいで、春歌はぼんやりした体調で仕事へ向かった。蘭丸と真斗が出演する音楽番組は無事にスタートし、春歌の手掛けた曲も評判が良かった。
 
 そのお陰か、新しく大きな仕事が舞い込んできた。その打ち合わせで、春歌はスタジオにやってきていた。恙無く仕事が進み解散となり、春歌は懐かしい顔に話し掛ける。

 「一ノ瀬さん!」
 
 「久しぶりですね、元気でしたか。私から声をかけようと思っていました。」

 新しい仕事となるドラマの出演者の中には、学園時代の友人であり、現時点で一番の出世頭とも言えるトキヤが名前を連ねていた。
 笑顔を返してくれる彼に、心が弾む。

 「お久しぶりです。一ノ瀬さん、すごいです、準主役じゃないですか、おめでとうございます。」

 「ああ、君にそう言って貰えると本当に嬉しいですね。でも、まだまだ喜ぶのは早いですから。放送終了までは、喜ぶのは置いといて、努力するのみです。」

 「ふふっ、一ノ瀬さんは相変わらずですね。一ノ瀬さんらしいです。」

 春歌がそう言った時、

 「七海!!」

 後ろからいきなり抱きつかれ、つんのめった。

 「あ、ごめんごめん、大丈夫? ちょっと勢いつきすぎちゃったみたい、ごめんね。でもさ、久しぶりだね~、俺、君と一緒の仕事って聞いて、すっごい楽しみにしてたんだよ、今日!」

 「音也、なんです。彼女がびっくりしているでしょう。今すぐ離れなさい。仕事場なのですよココは。学園では無いのです。全く、いつまでたってもバカですね。」

 「もー! うるさいなトキヤは。久しぶりに会えたんだよ~? いいじゃない、ねぇ?」

 「音也くん・・・。ふふっ、うん。私も久しぶりに音也くんに会えて嬉しいです。音也君も、とても重要な役に選ばれて、すごいです!」

 「ありがと~。そうなんだよね~! でも、おめでとうって言ってくれるの、君だけなんだよぅ。あ~も~ほんっと可愛いなぁ七海は!」

 「君がそうやって音也を甘やかすから・・・まったく・・・とにかく!! 離れなさいと言っているでしょう、いつまでそうやっているんですか。本当にバカですね。ふざけていて、折角頂いた役を外されても知りませんよ。」

 (心がくすぐったい感じ・・・)

 1年間、辛い事も楽しい事も一緒に乗り越えて来た間柄との、久しぶりの他愛ない会話は、春歌の心を温かくさせた。夏に約束していた花火大会を、あの出来事で欠席した春歌にとって、本当に久しぶりの再会だった。

 「結構、君を見かけたりはするんだけどね。でも、移動中で忙しかったりして、声も掛けられないことばっかでさ。マスターコース行ったら寮も変わっちゃったから、ほんと、七海に会えないのが寂しいんだよ。」

 「あ、私も音也くんを見かけたりしてましたよ。私も、お仕事の方と一緒に居ると、離れた所を歩く音也くんに声を掛けられなくて・・・。一ノ瀬さんなんて、大物俳優さんとお話してるトコとかお見かけして、すごいなあって思ってました。」

 「そうでしたか。君なら、話しかけてきて下さって構いませんよ。」

 「何言ってんだよトキヤ! ねぇトキヤはどうでもイイからさ、今度からは遠慮せずに声掛けてよ。俺、君と話したくて仕方なかったんだ。花火だって来なかったし、メールじゃ、やっぱ全然足りないよ。」

 ―――――花火だって来なかったし。
 音也の言葉が、チクリと春歌の胸を刺す。

 あの日、蘭丸と浴槽でお湯に揺られながら、幸せで満ち足りていたあの時。朝になり、寮まで送ってくれた蘭丸と別れ、自分の部屋のベッドにどっと倒れ込んだ春歌は携帯を開いて息を詰めた。

 音也から、メールと、着信が幾つか届いていた。
 最後のメールは、深夜。丁度、蘭丸の腕に抱かれて、ぐっすり眠っていた頃だ。
 
 なんとなく以前から音也の気持ちに気付いていた春歌は、心配し、会いたかったと書き連ねてあるその文面に一瞬返事を迷ったのだが、突然約束をキャンセルし、真斗1人を向かわせた事については申し訳なく思っていた。
 
 なので、自分が現れる事を期待していたであろう音也にも、謝りたい気持ちはあった。
 蘭丸と心が通じ合った直後で、他の異性とメールのやり取りをするのが聊か気分的に憚られたが、いや、異性とは言え友達なのだから。そう思い、謝罪の返事を送った。

 もう2カ月も前の事を持ち出され、春歌は少し戸惑ったが、音也は何事もなく、屈託のない笑顔で話し続ける。

 「ねぇねぇ、俺、収録は前半だけで終わりっぽいんだ。重要な役って言っても回想シーンが多いみたいだから、俺の収録はパ~っと終わっちゃうらしいんだよね。だからさ、君の時間が合ったら一緒に遊びに・・・。」

 突然音也の声が耳元から遠ざかり、春歌は振り返る。
 
 「黒崎先輩。こんにちは、お疲れ様です。」

 間髪入れず、礼儀正しいトキヤの声がする。首根っこを掴まれ顔を顰める音也を睨みつけながら、蘭丸が、春歌の後ろに立っていた。

 「蘭丸先輩・・・え、どうしてココに・・・。」

 驚いて浮かべた疑問を忽ち掻き消す蘭丸の鋭い目に、春歌はたじろぐ。

 「痛ててっ・・・黒崎先輩、痛いん、ですけど・・・。」

 「・・・殺すぞクソガキ。何してやがんだてめぇ。・・・おい一ノ瀬、レイジはてめーらにこんな教育してやがんのか? 仕事場で女にベタベタ触ってろって? あん?」

 「申し訳ありません黒崎先輩。この男は普通より少し理解力が劣っていまして。音也、黒崎先輩にご挨拶もせずに何をしてるんです。」

 「何っ・・・て、黒崎先輩が離してくれな・・・うわっ。」
 
 思い切り投げ飛ばされ、音也が床に尻もちをつく。

 「・・・春歌、この仕事が終わったらコッチ来い。2スタだ。変更が出た。」

 「あ、はい今一緒に。」

 「ああ、あそこの、音楽の担当責任者が、お前に説明資料を渡すんだとよ。ソレ終わったら来い。」

 淡々と仕事の予定を伝えているように見えて、実は相当蘭丸が頭に来ているのが、今の春歌には明確に判る。
 何故彼がこんなに声に怒りを潜ませているのか判る。そして、それに少し怯えながら喜んでいる自分を、幸せだと思いながら責める。
 
 「わかったな。」

 「はい、2スタですね。資料を貰ったらすぐに行きます。」

 ぺこりと頭を下げ、返事をする。
 蘭丸はそんな春歌を一瞥し、去り際、打った尻をさすりながら立ちあがった音也をもう一度睨みつけ、そこから出て行った。

 「痛って~・・・マジ痛いんだけど~・・・。」
 
 「自業自得ですよ、バカですね。」

 「音也くん、ごめんね、大丈夫?」

 「なんで七海が謝るのさ。大丈夫だよ。ああ痛かった。あの黒崎先輩って、ほ~んと怖いよね。七海、大丈夫? 苛められたりしてない? 」

 「え、あ、うん、そんな怖い人じゃないよ。大丈夫。優しいんですよ。」

 「うっそだぁ。いっつも怒ってるみたいだし、レイちゃんと違って挨拶もしてくれないしさ~。大体、投げ飛ばされる様なコトした覚え、ないんだけどな。」

 春歌は思わず黙った。
 
 蘭丸との交際は、周囲には内緒にしてあった。
 示し合わせたわけではないが、当然、彼の職業柄もある。それに蘭丸自身、人前でベタベタするタイプでは無く、寧ろそういうことは嫌っているようだった。

 なので春歌も、親友の友千香にさえ知らせていない。

 「私、行かなくちゃ、またね、音也くん、一ノ瀬さん。」

 「ああ、またな。」

 「お疲れ様。君も頑張って下さい。」

 手を振り、友達と別れる。春歌は急いで資料を受け取り、2スタへ走った。

 2スタでの打ち合わせは簡単な変更についてのみだったので、すぐに終わった。春歌は、帰ろうとする蘭丸に急いで駆け寄り、服の裾を引っ張った。

 「あの、先輩。」

 蘭丸は、春歌をじろりと睨みつけ、踵を返し歩き出した。春歌は不安になりながら後ろに続く。廊下の奥にある倉庫の、更に奥まで辿り着いて、蘭丸は漸く足を止め春歌を振り返った。

 「んんっ!」
 
 いきなり抱きしめられ口づけられた。唇が触れないうちに舌が先に入りこみ、春歌の舌を激しく貪る。ジュウっと音がするほど強く吸い上げられ、痛みで頭が痺れる。立っているのがやっとだった。崩れ落ちないように足を踏ん張り、蘭丸のキスを受け止める。

 「んぁ・・・はぁ・・・。」

 長い事呼吸を邪魔され、やっと解放されて、酸素の足りないぼんやりした頭を回復させる。

 「先輩・・・。」

 「春歌。」

 蘭丸の声は、意外に冷静だった。

 「触らせるな、俺以外に。絶対に。」
 
 蘭丸がどんな表情をしているのか、抱き締められている春歌には判らない。ただ、嵐のように甘いざわめきが胸を占めてゆく。嬉しい。ただ嬉しい。普段言葉にして愛を訴えない蘭丸の、紛う事無い恋心を見られた嬉しさで、涙が出そうになる。

 (どうしよう。先輩が辛い気持ちになってるのに、私、泣きそうに嬉しい・・・。)

 春歌も、ありったけの気持ちを込め、蘭丸の背を抱き返す。離れたくなかった。許される限り、ずっと抱きしめ合っていたいと心から願う。

 「先輩、ごめんなさい。」

 春歌が呟くと、蘭丸は少し落ち着いたのか、春歌の体を少し離した。

 「隙が多いんだよ、てめぇは・・・。つかあのガキ、次やったらマジ殺すぞ。」

 「音也くんは、昔からああいう風なので・・・でも、ごめんなさい。」

 「ッチ。まぁイイ。・・・・オイ、このまま泊まりで撮影に出るからよ。もしかしたら明日も帰れねぇ。お前は?」

 「あ、私は曲を作らないといけませんので、1週間位はこもりっきりです。」

 「そか。・・・帰ってきたら、お前んトコ寄るわ。んじゃ時間ねえから俺は行くけど、時間置いて出て来いよ。寄り道すんじゃねーぞ。」

 「はい、いってらっしゃい先輩。気をつけて。」

 「それと!」

 改めて春歌を見ながら、蘭丸が言った。

 「さっき言ったコト、忘れんじゃねぇぞ。俺以外に触らせるな、判ったな。」

 「ハイ!・・・大好きです、先輩。」

 にっこりと笑いかけた春歌に、バカか。と捨て台詞を残して蘭丸が出て行った。春歌は嬉しさで頬を緩ませながら少し佇んでいたが、人の気配と物音がした為、蘭丸が戻って来たのかと音がした方を見やった。

 「先輩?・・・・え。」

 

 つい、目の前に現れた人物に驚いてしまった。

 「黒崎先輩とつきあってたんだ~・・・。知らなかったな。」

 「お、と、やく、ん・・・・?」

 思いも寄らない人物の登場に春歌は固まった。先程手を振って別れた音也が、笑顔で眼の前に立っていた。
 
 まさか蘭丸とキスをしている所を見られたのでは。
 
 春歌は焦った。いやしかし、彼は同じ事務所の、しかも気心の知れた友達だ。同じ仕事をしていて事情を判っている相手で助かったのではないか。咄嗟にそこまで考える。
 
 音也が、ゆっくり春歌に近付いた。
 その距離だけ、春歌が後ずさる。先程蘭丸に言われた言葉が頭の中でこだまする。
 
 (音也くんに、触れられてはいけない。)

 無音が怖くて、口を開く。

 「どうして、こんなトコロに・・・倉庫に何か、用事?」

 話し掛ける声を無視して、音也は春歌を棚に押し付けた。

 「きゃっ、音也くん・・・!」

 「七海さ、ココ、跡がついてるよ・・・さっき抱きついた時、気付いたんだよね、首の、コ・コ。」
 
 音也の指が春歌の首筋をツツっとなぞり、鎖骨の近くで止まった。その仕草が何故か恐怖で、春歌は息を飲んだ。

 「これ、黒崎先輩がつけた跡だったんだ・・・そっか・・・全部、判ったよ・・・。」

 「何、が・・・?」

 「花火の日、あの人、レンとマサに、レイちゃんに泊めて貰えってメールしてんだよね。マサからさ、七海が黒崎さんに怒られて来れなくなったって聞いてたからさ、あのメールをレンが見せてくれた時、変だとは思ったんだよね。」

 言いながら、春歌の髪に顔を埋めるように近付く。

 「ねえ。俺、ずっと、七海のこと好きだったんだよ? 学園時代から、ずっとね。」

 「・・・・音也くん・・・。」

 「気付いてたと思うけど? 俺の気持ち。」

 音也がふざけてないことは声音で理解していた。
 だからこそ怖い。こちらも本気で回答しなければ解放されないと、春歌は怯えていた。

 「俺の気持ち、知ってたよね、七海。」

 知っていたと答えたら、それは自ら罪を認めていると思った。隠し通せるならそうしたいと思った春歌は、首を横に振る。

 「あの、ごめんなさい、私、知らなくて・・・・。」
 
 その瞬間、音也の瞳が鈍く光った。

 「知らなかった? 知らなかったの? 俺が、あんなに七海のこと好きだったのに? へぇ、じゃあ、七海は今俺の気持ち知って、どう思った? ね、聞かせてよ。」

 「どうって・・・。」

 「なんで黒崎先輩なんだよ!!」

 「!」

 突然大声を出され、春歌はびくっと体を震わせた。

 「俺は、俺はっ・・・ずっと七海が好きだったのに! 初めて会った時から、ずっと! なのに、なんであんなヤツに取られなきゃなんないんだよ、なんでだよ!」

 「音也くん、やめてそんな大きな声で・・・!」

 「ああ、大丈夫だよ。」

 「?」

 「さっき、あの人出てった時、ちゃんと鍵かけたから、俺。」

 「鍵?」

 「そ。内側からかかってるからね。開かないよ、俺たちが開けなきゃね。」
 
 春歌の脳裏を一瞬不安が掠めたが、冷静に思い直す。
 相手は、音也だ。学園時代からずっと変わらない明るい優しさと、純粋な笑顔で接し続けてくれた音也なのだ。何を心配する事があるのか。こんな不安は音也に失礼だ。そう思い、早口で窘めるように話し出す。

 「あの、音也くん、帰ろう? ・・・・ごめんなさい、私、鈍感だから、音也くんの気持ちに気付いてあげられなくって・・・ごめんね? それと、蘭丸先輩とのコトは、皆には内緒にして貰えると・・・きゃ!!」

 いきなり突き飛ばされて春歌はよろめき、そばにあった書類棚にもたれ込んだ。それを音也が上から押さえ込み、床に押し付ける。春歌は下半身を完全に抑えつけられた。

 「音也くん!」
 
 「内緒にしてほしいの? 黒崎先輩との事。」

 至近距離で見つめられ、問われ、春歌の心臓は早鐘のようになっていた。
 怖い。この感覚を、自分は知っている。これは、そう、あの2カ月前の花火の夜。あの時突然自分を犯した蘭丸とそっくりだ。

 「お、お願い音也くん、離して。」

 「俺の質問に答えてないよ。内緒にしてほしい? 君が、黒崎先輩にこんなトコロにキスマークつけられるような仲だって。バレたら、クビかもね。恋愛禁止は学園も事務所も同じだよ。ハハ、忘れちゃったの?」

 笑っているような音也が恐ろしくて、春歌は身じろぎも出来ず返事だけをする。

 「・・・・お願い、黙ってて。お願いだから、蘭丸先輩に迷惑がかかるような事はしないで!」

 「いいよ、別に。七海も、俺のお願を聞いてくれるならね。ギブアンドテイクで行こうよ、公平にさ。」

 音也が春歌の耳元に唇を近付ける。

 「今ここで裸になって、俺に、抱いてって言ってみてよ。それが出来たら、黙っててあ・げ・る。」

 「な・・!」

 思わず大声をあげそうになった春歌の目の前に、音也が切り札を翳す。

 「・・・カメラ・・・。」

 頭に上った血が急激に冷える。見られていただけでは無かったのだ。証拠が、ある。
 春歌の心臓がどくどくと大きく振動する。

 「イヤなら別にイイんだよ? 俺は困らないからさ。週刊誌に売り込みに行くより、日向先生にでも言った方が社長の耳に入ってイイかなぁ。黒崎先輩、どうなるなんだろうね、もう新しい番組も始まってるのにさ。あはは。」

 愕然とする春歌の耳に、音也の笑い声が虚しく響く。
 いつもと変わらない屈託のない声。なのにどうして、どうしていつもの音也と同じ人間だと思えないのか。

 これは夢なのだろか。あまりにも突飛過ぎてリアリティがない。だけど、さっきキスを交わした愛する男は、確かに自分を抱きしめ、次に又会えると言ってくれた。だとしたら、この目の前に居る音也の容貌をした見知らぬ男は、やはり自分の友達なのか。

 どうしてこんなコトになったのか判らない。自分がどこで選び取る道を間違えたのか思いつかない。春歌は焦り、とにかく逃げ出そうと立とうとするが、音也の下半身が春歌の上にどっかりと乗っかり、身動きが取れない。

 「ほーら。黙ってちゃ、わかんないよ。七海の好きな方を選べばイイんだって。脱ぐ? それとも、黒崎先輩の芸能人生命、潰したい?」

 悪戯を企む子供のような目で春歌の返事を待つ音也の声は、既に小動物を甚振る獣のそれだった。

 
 それを認識し、痛みと恐怖、そして、蘭丸に被害が及ばない事だけを考えすっかり混乱した春歌は、ガクガクと震える膝を必死になだめながら、為す術もなく服を脱ぎ始めた。
 蘭丸を守る為にはこれしかない。自分さえ我慢すれば、蘭丸は今まで通り、そして、自分と蘭丸の仲も今まで通りなのだ。

 それだけを信じ、震える手でブラウスのボタンを外していく。

 「ねえ、なんで後ろ向いちゃうのさ~。ま、いっか。俺は脱き方までは言ってないんだしね。ソコはしょうがないか。」

 きゃらきゃらと無邪気に笑う声に絶望を感じながら、春歌は下着だけになった。
 そこから先に、どうしても手が進まない。

 まだブラを外してないのに、両手で胸を隠しながら音也の方を見る。

 「音也くん、お願い。もう、これで許して。お願いだから。」

 長い事使われていないような机の端に腰掛け、足をぶらつかせながら自分を見る音也に向かって、春歌は訴求した。

 「お願いだから。他の事なら、私に出来るコトなら何でもするから、だから・・・!」

 「イヤだよ。」
 
 冷たい返答が春歌の言葉を止める。

 「七海。俺、七海のコト大好きだよ。だから、あんまり怒らせないでよ。時間稼ぎしてるなら、俺も考え直すよ?」

 春歌は息を飲んだ。

 「あ、それフロントホックなんだね! カワイイ模様だね~!早く外してよ。ああもう、早く見たいなぁ。・・・ねえねえ、これ以上待たせるなら、今すぐこのカメラ、誰かのパソコンに繋いじゃうよ。」

 さっきと打って変って、いつもの調子でニコニコしながら春歌を見る。春歌は、音也が本気だと思った。この駆け引きを緩めるつもりなど全くないのだと。
 
 泣きそうになりながら、覚悟を決めて春歌はブラのホックを外した。

 その瞬間何かが光り、それがカメラのフラッシュだと気付いた春歌は、外れかけの下着も構わず発作的に音也に詰め寄った。

 「な、やめて! 返して、今撮った写真消して! 音也く」

 だがカメラを奪い取ろうとした腕を簡単に取られ、後ろ手にぐいっと捻られた。そのまま机に押し付けられ、背中に伸し掛かられる。

 「きゃあっ! 痛い! 痛いやめて!」

 「乱暴にされたいの? あんまり怒らせないでよ。」

 「痛い、痛い、やめて!」

 春歌の悲鳴のような声にも態度を変えず、音也は益々腕にぎりっと力を込める。

 「きゃあああああああああ!」

 絶叫。有り得ない程の痛みに、春歌は思わず叫び声を上げた。音也が春歌の背中に乗ったまま、腕だけを解放する。だが激痛はすぐに消える訳もなく、あっという間に恐怖心が心を塗り潰す。

 「まったく。服脱ぐのに何時間かかってんだよ。まぁいいや、俺が脱がすから。」

 「やめ、やめ、て・・・・!」

 音也は無言で春歌の下着を引き剥がし、春歌はまだ腕の痛みと恐怖で満足に逃げる事も出来ない。

 「ほらぁ、言わなくてイイの? 俺に抱いてほしいって。」

 裸にされ怯える春歌の体を自分に向き合わせ、信じられないような冷えた声で、音也が言い放つ。
 
 「・・・ふぅん。カウントダウンだなぁ・・・あと10秒しか、待たないよ。じゅーう、きゅーう・・・。」

 残酷な数字の羅列が春歌にぐさぐさと突き刺さって行く。溢れ出る涙と、脳裏に浮かぶ蘭丸の優しい顔が、春歌をズタズタに切り裂いていく。

 「さーん、にー・・・」

 「やめてっ、言うから、今言うからっ・・・・!」

 涙に咽ぶ春歌の悲痛な声を聞いた音也がカウントを止め、薄っすらと笑った。



 

    


                                          
                  To be continued・・・・・・・







 
 

 
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∑∑∑

お、オトヤのくせにっっっ!

ドキドキさせるなよ~~~!
オトヤのくせに~~~!!

どうなっちゃうの?
黒崎先輩の嫉妬とか嫉妬とか嫉妬・・・

続きを早く~~~!

No title

音也!!いい!!www
黒ワンコ!!最高ですーーー!!!(><)

ヤれ!ヤってしまえ音也!!www

そしてその後の蘭丸のお仕置きfooooooo!!!!wwwww

Re: ∑∑∑

きっと、みんな私が音也を持ってくるとは思って無いんじゃないかなあって、
それは意外性を狙って書いてみました。

でも本当の大きな理由は。
音也以外を、汚し難いwwwwwww

錫也をあんなに病ませられたのと一緒で、音也はコンニャロ!! って酷い扱い出来ると言うwww
この音也への愛の無さwww あ、でも寺島さんには愛があるのでwww

でも、音也でもこうなるとドキドキしちゃう雫さんの気持ち、判ります。
ノーマークだからこそのドキドキですよね!

もっと黒くなる予定であります、彼。

Re: No title

アリガトウゴザイマス。

もちこさんみたいな本職の方に誉められるとじわり嬉しいww

蘭丸は私の夢が入り過ぎてデレすぎて、若干キャラ崩壊だなって自分でも思ってるんですが、
音也は多分、実際問題こんなもんでしょ? ←音也ファンにいつかさされそうwwww

黒さを爆発させて続きを書いておりますが、ここまで黒いとどうなんだと思っておりますが・・・。

もちこさんにも突っ切りOK! を頂いておりますので、突っ切ります!!!

いいんですっ!

黒ワンコ続行ですか!?

きゃっふーー!!(>_<)


音也は純粋が故に、どこまでも黒くなれるヤツだと私は確信しています!wwwwww

続きが超楽しみですぅ!!(>_<)


この調子でマサもいきませんか?wwwwwwほら、あの不運に居合わせたヤツwwwwww

もちこさん

コメントありがとうございまっす。

> 黒ワンコ続行ですか!?

はい! なぜなら、音也はこんな扱い出来ても、
聖川さまを~・・・汚せない~♪

でも、どす黒い話が私の頭の中に出来あがっていて、確かに①としてその案もあるのです・・・。

でも、でも、聖川さまにそんなコトっ・・・!

と、ためらっているので、②案にいくつもりwwww

どっちにしても、音也はどす黒く突っ走るんですけどねwwww
プロフィール

みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

本家ブログはアメブロ
http://ameblo.jp/milk15azuki
にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

下のカテゴリからお好みのモノを選んで頂くと、連載は1話から読めます。

感想・お世辞は大歓迎ですが、苦情は受け付けられません。
鍵付きのコメントは、拍手コメントも含め一切の誤表示を防ぐ為、お返事は致しませんが、必ず読んでおります。励みになっております。有難うゴザイマス。
拍手とかコメントとか貰えると泣いちゃうくらい嬉しいですよ・・・。

鍵付きでは無いコメントは、拍手コメントも含め必ずお返事させて頂いております。
宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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