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Amadeus 第3話







 Amadeus
 第3話










 春歌に選択肢は無かった。

 疑問は当然あったし、反論と反発も当然持っている。だが、別れると言われたらもう従うしかなかった。大体が逃げる時間すらない。今日の今日だ。


 蘭丸と別れるなど、今の春歌にとって死ぬのと同義だ。それだけは絶対に避けたい。別れないで済むには蘭丸の言う事をきくしかなかった。

 自分は蘭丸を怒らせる何をしたのだろう、などと考えたし、これは冗談ではないかという気持ちが拭えないままだ。

 
 日々は楽しかった。
 
 2人で出かけた事もある。芸能人という職業柄、おおっぴらに街を気ままに歩けもしないが、それでも都会の利便性を生かし少し変装して、最近名をあげて来たグループが公開録画を行うといえば、無料にあやかってそのパフォーマンスを見に行ったり、ちょっとした日用品を買いに行った事もあった。共に食事をし、ベッドも当然共にした。季節もその中で移っていった。

 蘭丸の日常に、既に自分は愛しい相手として立ち位置があった。それは春歌の勘違いではない。絶対に。そんな断言が出来るのに、どうしてこんな風になるのか判らない。というよりも判りたくないし、わかったのなら人として間違っていると思う。そう。やはりこんな事はおかしくて、蘭丸は自分を愛しているに間違いない。

 だが、そう結論付ける度に一瞬でまた同じ疑問が湧いてくるのだ。

 「愛しているのに、他の人とそんな事をしろなんて言えるの?」 と。だけど結局、しないと別れると言われたからには従うしかない。あの目は嘘をついている目では無かった。まして、冗談などの類でもないのも判った。だからこそ一層謎だけが胸を巡る。


 怒らせたのか。嫌われたのか。
 
 違う。

 どれも違う。彼には愛があり、そして、なのに本気で、真斗と寝ないと別れると言っていた。蘭丸が精神分裂を起こしているとしか思えない。でもそんな事もありえない。


 どうしていいのか、どうしてこうなったのか何もかも不明なまま、その時はやってきた。

 

 蘭丸の言った通り、真斗はその夜、春歌の部屋へやってきた。
 
 事前に連絡が入り、食事をしながら仕事の打ち合わせを済ませて行くので20時を回ると承知していたので、春歌は夕方遅い時間に部屋に戻り、さっと簡単に掃除をしてお茶の確認だけしておいた。

 一体真斗はどういうつもりで来るのだろうかと身構えていた春歌は、訪問した真斗の態度に聊か拍子抜けした。

 最初こそ落ち着きなく、ソワソワした様子の真斗に、春歌は自分を誘うタイミングを計っているのだろうかと思ったがそうではなかった。


 「その、ハル。」

 会話が途切れたその時に、斜め下に視線を向けたままの真斗は、真面目な顔で今日訪れた理由を言った。


 「突然ですまなかったが、今日は、神宮寺に頼んでこのような時間を作ってもらった。わざわざ申し訳なかったと思っている。折角の休みの日の夜を、俺の為に空けて貰って。」

 
 春歌は、どうしてそこで蘭丸ではなくレンの名前が出てくるのか一瞬驚いたが、真斗が春歌の様子などお構いなしに話を続けていたので口を挟まずそのまま聞いていた。真斗はとても緊張しているようで、そして何か不安気な様子で、ずっと春歌から少しだけ目を逸らしながら話をしていた。


 「実は・・・その、お前さえよければ、あ、っと何だ、何というか、だな。」


 春歌はイヤな予感がした。


 「俺は、ずっとお前を見ていた。お前がもし、その、今、特に決まった相手が居ないのであれば、その、俺と、交際を・・・してくれないだろうかと、それを、今日は言いたくて。」


 春歌が、思わず目を瞬かせた。
 真斗が予想外の事を言ったからではない。そう告げられるだろうというのは蘭丸から聞いている。聞いてはいても事実になると多少驚くのは当然だが、それそのものに瞼が動いたわけではない。


 「お前が俺にそんな気持ちを持っていない事は承知している。だから、いや、だからこそ、もう少し俺を知ってほしくて、休みなどを合わせてお前と会話する時間をもっと取れたら、嬉しくて、そのチャンスを、もらえ、ないかと。」

 どういう事なのだろう。

 先程感じたイヤな予感というのは、彼がまさかいきなり体の繋がりを求めて言葉を探しているのではないかという予想だ。根底では、真斗に限ってそんな事は無いと彼の人柄から解かっているつもりだ。だが、女が自分の身体を守る本能的な感触でどうしても最悪の事態を想定して構えてしまう仕方なさはある。そこからきた予感だった。決して真斗をそのようにだらしない人物だなどと評価はしていない。

 そしてやはりその通り、彼はいきなり肉体関係を強要するつもりではなかった。

 蘭丸は、戸惑う自分の腕を掴み強引に身体を繋げたが、真斗はそのような邪さなど垣間見えない。彼は、真斗はどうみても純粋な中学生のような告白劇を素で展開している。本気だ。本気で、純粋な気持ちで愛を告げている。どこをどう見てもそれは間違いない。

 春歌はそれに戸惑っていた。大きく、動揺が隠せない程に。真斗の気持ちに、すぐに肉体関係を結びたいなどという軽さは見えない。まったくだ。


 だとしたら、余計に何故。何故そんな、本気で春歌に想いを寄せている男と寝ろ、だなどと。どうしたらそんな発想になるのか判らない。真斗は蘭丸にとってもそれなり可愛い後輩の筈だ。蘭丸は、人の気持ちを踏みにじるような真似をするとは思えない。後輩の恋心を軽く遊びの道具にするような男ではないと信じている。それとも蘭丸は、真斗がこんなに真剣に想いを寄せているとは思っていないのか。

 それも考えにくい。あんな突飛な話を自分の恋人にするのに、事情を詳しく知らないなどと普通はありえない。いや、この状況はだとしたら普通なのか。そうは思えない。ならば真斗のこの真っ直ぐな気持ちを蘭丸は知らずにあんな話をしたのか。でもどうしてだからといって、真斗とベッドを共にするという所まで話が飛躍するのか。

 混乱したせいで黙ったままの春歌の姿勢を否定と受け取ったのか、真斗は慌てて


 「いや、これはあくまで俺の希望だ。お前に全くその気が無いのに無理にという訳ではない。大体、そんな風に交際して貰っても俺は嬉しいとは思えないし、お互いの為に良くない事だ。お前も俺を多少でも、今はまだ男としてではなくても、人としてならそれなりに好いていてくれて、それで合意の上で休日を共に過ごしたりが叶うならば、という話であってだな、あ、いや、その、好いていてくれてというか、その、いや、そうじゃないのは解かっているのだが、だから、もし少しでも考えてくれるのなら。」

 上下に降る手の動きも忙しく、立ち上がらんばかりに必死に釈明にもならない言葉を並べ立てている。しどろもどろになる真斗は、顔を真っ赤に耳まで染めていた。

 黙ったままの春歌に、自分の気持ちが届いていないのかと勘違いしたのか、真斗が、急にぎゅっと春歌の手を握った。

 
 「え、ま、まさ」

 「俺は真剣だ。決して浮ついた思い付きや気まぐれで言っているのではない。信じてほしい。」

 
 その声と表情が、真斗の言葉が真実だと裏付けるが、春歌の目には真斗の顔が見えていても、重なり浮かぶのは蘭丸だ。

 今日、真斗と一晩を共にしないと別れると彼は言った。この真摯な真斗を自分は誑かすのか。気持ちもないのに、嘘をついて春歌も真斗を愛していると勘違いさせるのか。

 それで、傷つかずに済む者が居るのか。この状況で。自分は勿論、真斗も、蘭丸も、誰もが、この渦中に居る人物で無傷である者などいまい。なのにどうして蘭丸はそんな事を望むのか。


 「ハル、何か言ってくれ。」


 真斗の声で我に返った春歌は、真斗の手を握り返した。

 
 「真斗くん。」

 「な、なんだ。」

 「どんなコトがあっても、私の事を好きでいてくださいますか?」

 真斗は一瞬きょとんとしたような風を見せたが、すぐいつもの彼に戻り


 「当然ではないか。俺は真剣だ。先程も言ったが、決して浮ついた軽い気持ちではない。ずっと学園時代からお前を好いていたのだ。お前の素晴らしさはよく解かっているつもりだし、他者にとっては欠点かと思える部分も、俺はとても可愛らしいと思っている。」


 「欠点?」

 今度は春歌がきょとんとする。


 「欠点というと言い方が悪いが」


 真斗は、悪いが、と言いながらもそのまま言葉を続ける。

 
 「お前は引っ込み思案だし、自信が足りない場面も見た事がある。だが、そういう部分も俺は愛しいと思っているし、言い換えれば謙虚さという日本人の徳でもある。それが仇名す時は俺が助けになれればいいと思っている。完璧な人間など居ないのだから、支え合って補い合って成長していければ、俺は嬉しいし、男女交際とはそうあるべきだとも信じている。」


 きっぱりと告げる真斗に、春歌は眩しさを感じながら同時に、罪悪感と焦りを募らせていた。
 この彼を騙すような真似をしなければならない。この純粋で真っ直ぐな熱い気持ちをまるで嘲るような夜を、自分はこれから彼に、本心ではなくても、でも。

 蘭丸と別れたくない。
 嘘だと今でもどこかで思っている。でも、あの時の彼のあの冷たい態度が、言う通りにしなければ本当に別れるだろうと予感させる。


 「あの。」

 覚悟を決めた春歌が、真斗に一歩踏み寄った。


 「私も・・・私も、真斗くんの事、ずっと、好きでした。」

 
 「・・・!」

 
 真斗の喉元が揺れる。
 ああ、自分は、こんなにも簡単に人を騙せるのかと、足の裏からぬるりとした水に嵌った気がした。


 「あの、真斗くんに、お願いがあるんです。」


 「あ、ああ、構わない。何でも聞こう。俺に出来る事なら最善を尽くそう。」

 
 真斗の声に喜びが滲み出ていて、きっと彼の望みはある意味叶う、という希望だけが春歌を支えていた。それだけが、こんなに真面目な彼を欺くたった一つの贖罪となる。そこにすべての良心を託し、春歌は真斗とぐっと距離を縮め、震える声で囁いた。

 
 「私を、抱いて下さい。今日、今、ここで。」

 
 明らかに驚いた空気を放った真斗の顔は見れなかった。

 俯いたままそっと身体を寄せ、彼の服の裾を引いた。彼は何かを言おうとして、そして言うべきかどうか思案しているのが感じられた。軽く握られたまま多少の迷いを見せる真斗の拳が目に入った時、春歌の頭に僅かな閃きのようにしゅっと思い出されたのは、神宮寺に頼んで、という繋がりの判らない真斗の言葉だった。

 










   To Be Continued・・・










 

 第4話は9月上旬に掲載予定です。







 
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妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
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