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Amadeus 第2話

 






 Amadeus  
 第2話











 この世界は何で出来ているのかと、時々、春歌は思う。

 
 哲学的な思考を走らせているのではない。単純に、子供のような輪郭の無いポっと湧く疑問だ。


 蘭丸と付き合う前は、世界は単に地球という惑星上の世界でしかなく、空気や空や雨などの自然を強く感じていたが、蘭丸に愛されるようになってからは、世界の総てが甘い匂いで出来ているとすら思う日があった。生まれる音楽はどれもこれも楽しい、嬉しい、という色つきで紡がれるようになった。


 音楽が満ち溢れている世界には幸せしか無い。などとは思っていないが、幸せをより多くする為に何が必要かを考えると、春歌にとっては音楽となる。が、幸せは人によって違うというのは解かる。という事は、人により、物事の関わり方により等々、様々なケースバイケースで幸せも、その者が捉える世界の素材も変わるという一つの結論が出る。でも大抵思考はそこで終わる。いつも考えは纏まらない。しかし気にならない。只の空想に答えを求めてないからだ。


 


 最初の頃は、蘭丸の人を寄せ付けない態度に苦労した。

 
 事務所の企画で蘭丸の曲を作らなくてはならなくなったのに、蘭丸はやりたくないと突っぱねて最初の会議に来なかった。担当者はそんな蘭丸に慣れているらしく、頑張ってコンタクトを取って下さいと丸投げでさっさと帰ってしまった。

 
 蘭丸の噂は聴いていた。
 
 アイドルの枠を利用しているが、借金塗れの没落貴族で、ロックに心血を注ぎながら借金を返済している日々。昔バンドのメンバーに裏切られた為、他人を容易に信用しない。歌唱力やステージパフォーマンスの評価が高く、事務所でも物言いの多い蘭丸を持て余す一面がありながら商品として重宝しているとも、春歌と学園時代を共に過ごし、事務所に所属してから蘭丸と一時共同生活をしていたたレンや真斗から聞いていた。そんな曲者だからといって企画の通った仕事が消える訳が無い。当然、いつまでに仕上げろという非情な催促だけが春歌をせっついた。


 うるさく事務所に言われて曲の打ち合わせをしようにも、携帯電話に滅多に出ない蘭丸は連絡手段が無いに等しく、学生時代に世話になった教師兼取締役の龍也に頼んで、担当外なのに蘭丸との待ち合わせをセッティングしてもらったりした。それすらも、龍也に呼ばれたから来ただけでオマエと話はしたくないなど難癖をつけられ、実になる話まで辿り着けなかった日もあった。

 そんな蘭丸が柔らかさを見せたのは、ある日、とりつくしまが無いなら無理矢理聴かせるしかないと腹を括った春歌が、礼儀も順序も無視していきなり蘭丸に自作の曲を聴かせてからだった。


 曲を聴いた瞬間、彼は明らかに動揺した。動揺の種類はその時は判断し兼ねたが、すぐにそれが良い衝撃を受けたからだと、彼の態度で春歌にも判った。勿論、大分時間が経ってからではあるが、曲に対する評価を言葉でも幾つか述べてくれたからでもあったが。

 それからの蘭丸は徐々に、何とか話をするタイミングを取れるようにまでなった。それからは会話もあまり困らないようになり共同作業も進み、やっと2人で作り上げた曲が発売されオリコンチャートの華々しい順位を獲得した夜、


 
 「俺と付き合えよ。」

 
 「え。」

 
 

 事務所からちょっとしたご褒美にと、そこそこ高級な価格帯のワインと、教師陣もお気に入りだというレストランのテイクアウトデリを貰った。そのまま食事の為にと寄った彼の家で、酒をグラス一杯分飲み干した後の彼に言われた。


 まだ食事には一切手を付けていなかった。

 空腹でもないのに蘭丸についてきたのは、純粋にオリコンチャート獲得を一緒に祝いたい気持ちからだった。だから食べる物は全て蘭丸が平らげればいいと思っていたし、酒を飲む気もそうなかった。

 目の前の蘭丸の顔はどう見ても冗談を言っている顔ではなくて、春歌はそこに少しだけ怯えた。付き合おうと言われたのは嬉しかったが、元々引っ込み思案で地味な生活をしている自分でいいのか。という妙な引け目感が大きく喜びを阻んだ。華やかな業界に就職しようが、幼い頃から養った自身の形容詞は早々変わるものではない。蘭丸は見た目も芸能人に相応しく整っているが春歌自身は容姿に自信もなかった。そんな様々が起こした僅かな春歌の身体の引きを、蘭丸は許さなかった。

 
 テーブル越しに伸ばされた腕に腕を掴まれ、春歌は息を飲んだ。蘭丸の目と腕が春歌を捉えたまま、ゆっくりと近付く。立ち上がった彼につられるように、でも春歌は逃げるつもりで椅子を後ろへずらしたのだが、そんな抵抗は蘭丸の腕に叶わず、あっという間に蘭丸の胸に抱き込まれ荒々しい口づけを受けた。

 生焼けの肉を噛み千切るようなキスは、春歌の身体を固く強張らせた。蘭丸は春歌を引き倒すとお構いなしに力尽くで服を引き剥がした。どんなに春歌が腕や脚に力を入れようが、蘭丸にはじゃれる生まれたての子犬程度で、驚きと事態を呑み込めない混乱ぶりで棒のようになっていた春歌など簡単に犯されてしまった。

 
 

 詳細など、後から思い出そうにも思い出せない程、何もかもがあっという間だった。

 蘭丸の逞しい体が放つ異様な熱に覆われた特殊な世界の中で起こった、自分の中心が物理的に侵食される凶事。記憶をどう耕してもただただ痛みと、あの時の嵐のような独特な空気の流れだけが思い出される。大体、それすらも細かくない織物の柄のような紗がかかった残像だ。その中に混じる、蘭丸のあの狩りをするかのような目や、荒いだけでない甘みを含んだ吐息が脳裏を掠めると、胴の付け根からじんわりと熱が湧く気がした。

 しかし、春歌は蘭丸の行為を責めず、蘭丸もそれからは、愛情が覗く振舞いを見せるようになった。特に春歌の生み出す音楽に関してはほとんど手放しで褒めるようになった。意見は当然的確にはっきりと言われるし、少し彼の要求と違うと注意にも似た口調で疑問を突き付ける時もあれど、根本的な出来への信頼は確固たるものへ変わっていった。それは事実、あっという間だった。


 
 そのあっという間は、蘭丸の恋人としての愛情が深まるのと同じスピードだと、春歌はいつしか気づいた。才能にだけ惚れ込まれたのかと思う時も多少あったが、そうではないのも確信が出来た。彼の手が、言葉が、目が、春歌を愛していると告げる。決して勘違いではなく。引き摺られるように春歌も、蘭丸との日々に拠り所を求め、頭を真っ白にしながら彼にだけ包まれていられる至福の快楽に溺れていった。


 
 蘭丸に抱かれる時は、大抵夜夜中まで終わらない時間を泳いだ。
 
 
 泳ぎ疲れて眠ろうものなら、蘭丸の乱暴な手で意識を引き戻されて息の出来る液体塗れの世界へ引き摺り込まれた。空が白む頃、彼自身が投げ出されたように眠るまで、春歌は彼に抱えられ抉られ、全身を舐め尽されて噛み跡や零れ落ちる体液を残され続けた。

 
 
 初めての男が蘭丸だった春歌にとって、セックスとはそういうものだった。

 
 激情。というものがこれだと春歌は結論づけていた。正に蘭丸の荒っぽさや興奮の度合いはそれに値したし、苛々しているとすら感じた時もある。彼の性格的にもそうなるのは納得出来た事もあったが、処女だった彼女には他に比較する対象がなかったし、何より、愛情がある。というそれだけはどこをどう切り取っても感じ取れたから、不満には思わず過ごしていた。激しさに男らしさを覚えたし、強欲に求められるのは心地良くもあった。幸せだった。これが自分にとって至福だと思って過ごす日々だった。


 
 だが。
 
 
 ある日、抱かれ方には種類があると知る。

 
 それは、何の変哲もないオフの日の昼下がり。本当にほんの数秒、いや1秒前までいつもの蘭丸だったし、そんな話を切り出した時もいつもと変わりない出で立ちだった。


 「おい、今夜、一旦自分の部屋帰れ。」


 珍しく2人同時に連休が取れた時だった。春歌は蘭丸の部屋に2日前から泊まって過ごしていた。食事を共にし、曲作りだのなんだのの名目もなく思いついたフレーズを並んで奏で、見つめ合っては愛撫し合う甘いまどろみの日々。

 その午後が、彼の一言で変わって行く。


 
 「いいですけど・・・どうして、ですか。私、夜まで一緒に居られると・・・。」


 「今日は真斗とヤって来い。」

 
 「? 真斗くん? 真斗くんがどうかしたんで、」


 「真斗とヤれって言ったんだよ。いいか、アイツはあんなんだからな、オマエから服脱いで誘ってやれよ。」


 「!?」




 春歌の動きが止まる。目が止まる。瞬きも出来ず、急激に喉の粘膜が渇く。

 今、蘭丸の言った言葉の意味が解らない。彼は今、何と言った? 何をしろと言った?


 

 「・・・、え? ちょ、っ、と意味が、解らない、です、け・・・ど?」


 

 どんな顔をすればこの困惑が伝わるか判らなくて、春歌が引き攣った顔で笑う。だが蘭丸は、そんな春歌にまるで興味が無いと言わんばかりに、ベッドの脇にあった避妊具の箱を投げて寄越す。


 軽く投げられたそれを反射的に手にした春歌は、まだ混乱した頭でそれを見つめた。

 
 数日前に開封されたが、蘭丸は時々しか使わない。大体春歌の身体のどこかにかけたり、一応簡単にだが計算している春歌に確認し中に注ぎ込む。こんな話をしている今でも、蘭丸にこの数日刻み付けられた余韻が体内に燻っている。


 「真斗が今夜オマエの部屋に行く。いいか、俺との事は言うんじゃねえぞ。オマエは真斗に好きだの付き合ってほしいだのなんだの言われる。そしたら、付き合いたいって返事しろ。そのままそこでヤラせてやれ。いいか、言う通りにしてこいよ。」


 「ま、待ってください!」


 

 何が何だか判らず、春歌は大きな声を出して思わず立ち上がった。

 蘭丸は退屈そうに顔を横に向けたままで、チラリと目だけを春歌に向ける。


 
 「ごちゃごちゃうるせえ。言う通りにしろっつってんだろ。おい、真斗に生でヤらせんなよ。それから、うまく付き合い続けろ。俺との事を悟られるな。判ったな。」


 「ま、待って下さい、どうして、なんで、そんな」


 
 必死に訴えようとする春歌の言葉の力が、ふっと弱まる。

 蘭丸が、優しく微笑んでそっと手を寄せて来たからだった。


 頬に軽く触れ、髪を撫でながら反対側の腕で抱き寄せられ、間近で蘭丸が優しい笑顔を見せる。春歌は、一瞬、ああ、冗談だったのかな、それとも、夢を見ていたのかなと思って肩の力を抜いた。その時。


 
 「いいか。誘って真斗がノってくりゃいいが、もしアイツが腰抜けてたら、オマエがしゃぶって跨んだ。しっかり腰振って、真斗をイカせろ。出来なかったら・・・。」



 信じられない。
 
 その言葉だけが頭の中を駆け巡る春歌を相変わらず至近距離で見つめていた蘭丸の目が、冷たく細まった。


 
 「別れるからな。」


 
 春歌の息が止まる。


 
 「脅しじゃねえぞ。俺と別れたくなかったら、真斗とキッチリ一発ヤって来い。」


 
 世界は何で出来ているのか。

 
 優しい微笑みから一転。真顔で春歌にそう告げる蘭丸を見た春歌の頭に、何故か浮いてきたのはそれだった。人は極限に陥った時、一体何を考えるのかと思った事がある。だがまさか、それが普段どうでもいい類になっているあのとりとめのない疑問だとは思わなかった。
 

 
 自分の身に何が起きているのか判らない。

 自身を取り巻く世界が何に変化しているのか追いかけても追いつかない。


 泥か、闇か。それとも汚れた砂か。今自分が何処に居るのか、春歌は心すべてを放り出されて四方八方判らないまま、ずぶずぶと沈んでいく自分の足元の見えない感触だけを拾った。
 













  ~ To Be Continued~

















 
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妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
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だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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