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Room2308 第9話


 



 

 Room2308
 第9話
  









 

 楽屋というのは不思議なもので。
 本来出演に際しての準備、自分の出番までの待ちの為に使う。

 ただ、人と人が往来する場所ともなりえる。

 サラリーマン社会でも大概はそうらしいが、この世界でも人脈は重要だ。縁あって共演となれば、その縁を強固にする為、楽屋を交流場所の一つとする場合もある。

 私のように中途半端であっても新人はこちらが出向く側だが、大物になればなる程、挨拶に訪れる仕事関係者などが増える。

 それ以外にも、分刻みのスケジュールをこなす人気時には、各種媒体のインタビュー仕事を済ませる場所ともなる。

 テレビ番組などでしばしば楽屋訪問、などと謳い、支度中で私物が散らばったドレッサーテーブルの上を披露したりする。そうなると楽屋は仕事場でありながら、タレント個人の嗜好を持ち物で推測できるプライベート感ある場所となる。これがファンにとっては中々嬉しい企画のようだ。

 
 それでも普通は、こういう使い方はしないだろう。
 当の楽屋の正当な使用者が出番に向けてスタイリングに余念の無い横で、セックスをするなど。

 

 そう、普通は。

 普通ではないのは私で、その私が今日この楽屋を使用している以上、この空間の普通は世の中のそれとは変わるという事なのだろう。

 鏡に映る愛しい恋人の白い尻に這うのが、一応友人である男の手だとか、世間では普通ではないと言われるだろう景色でも、意外に目で楽しむ範囲は広い。

 

 事前に連絡は貰っていなかった。

 たまたま同じテレビ局で仕事をしていたレンが私の局入りを聞きつけ、陣中見舞いにやってきた。次のスタジオに向かうまで多少時間があいたとかなんとか聞いてもいない理由を話し、最近人気だというメンズ用ヘアフレグランスをくれた。どうやら次の彼の仕事は、この商品のCMらしい。


 「テスターサイズだけど、ひと月分位はあるんじゃないかな。まぁ、香りがお気に召すかどうか判らないけど。」

 
 彼は気が向くとこうして私の楽屋に顔を出し、適当に時間を潰して行く。
 音也と違うのは、手ぶらで来ない所だ。何かしら持ってくる。菓子類は気を利かせているのか持ってきたコトがなく、大抵はこの類のサンプル品だ。

 使った感想を聞かれた事は無い。
 私も、使った事は無い。どうでもいい話だが。


 少し遅れて、春歌がやってきた。
 競争心なのか単に気に入らないのかしらないが、彼女が私に手作りのお菓子を渡し微笑んだ途端、レンが強引に彼女を引き寄せ、キスをした。

 
 私はそれを黙って見ていた。

 必死に春歌の唇を貪るレンに吹き出しそうになるのをこらえながら。

 彼の目に、私はどう映っているのだろうか。
 恋人を寝取られた惨めな男として認識されているだろうか。それもまたゾクゾクする。自分の趣味嗜好がまともだとは思っていない。だから構わない、どう思われようと。寧ろそうやって蔑んで上に立った気で居てほしい。

 
 春歌が甘い息を洩らし、レンの手が彼女の胸を強く掴む。


 もう何度見たか解らない。
 こんな風に楽屋やその他で、レンや音也や寿先輩が、春歌を間違った愛で方で私に見せつけるショー。自信タップリの男が私の春歌を無様に欲する様は、いつ見ても腹筋を刺激する、これ以上ない喜劇だ。

 
 僅かに抵抗する春歌がスカートのホックを外されて、自分でストッキングを脱ぐようにレンに命じられた時には、私はもう鏡に向き直り本番に向けてのメイクを始めた。

 

 レンが、わざと音をたててするディープキスに、春歌はすぐに手折れた。はっきりと見ていなくても衣擦れの音で、彼女がレンに倒れ込んだのが判った。息苦しそうに喘ぎながらするキス。彼女の頭の中はもうほとんど真っ白だと思う。愛する私の前で、レンに、恋人同士でもしないような濃厚なキスをされて虚ろになってる彼女の気配が、背中に奇妙な昂揚感を這わせてくれる。

 これから本番に向かう私にとって、これ以上ない気持ちの持って行き方。
 精神的なタフさが要求されるこの仕事で、一種麻痺した神経で舞台に出るのが、実は一番客も自分も楽しめたりするのだ。

 
 「ねえハニー、見てよ。あいつ、ハニーがこんなになってるのに、涼しい顔して支度してるよ。冷たい恋人だね。」

 「ん、あっ、ちがっ・・・一ノ瀬さんは、ああして、舞台に臨む準備を、ああっ。」

 
 私の可愛い彼女の、いやらしい部分が出す粘着質な音。
 
 あの音は、大分濡れているんじゃないだろうか。私が素っ気ない態度で支度をしているせいで、彼女を悲しませてはいないだろうかと不安だったが、要らぬ心配だったようだ。


 「あ、ああ、一ノ瀬さ、ん・・・、ああっ。声、聴かな、で、っ・・・ひあああん、あんっ。あーあっ。」

 「折角オレが気持ち良くしてあげてるだから、酷い恋人なんかに神経向けてないでよ。ほら、ね。オレを見て。」

 「ああぅ、だめです、そんなにっ、ああっ、ああん、あんっ、あん。」

 「ん、そう・・・そうやって、頭真っ白にしちゃって・・・オレが、すぐにイカせてあげるからね・・・ここ、指で撫でてあげる。」

 「あーっ。」

 
 彼女は、あの小さな芽を刺激されると済し崩しになる。
 少し触れただけで感じすぎるくらいになるから、そっと撫でる程度でないと刺激が強すぎるのだ。それをちゃんとレンは判っているのだろうか。

 判っていないに違いない。
 
 彼女は本当に気持ち良くて蕩けている時は、あんな金切り声で喘がない。あれは、味も食べ頃で見た目も最高に瑞々しく、完璧なまでに色づいた熟れた果物を潰すような真似をされているだけだ。

 そうじゃない。
 私の愛しい女性は、私が優しくそっと、壊れ物を扱うように丁寧にあの部分を舌で愛でるだけで呆けた顔を晒して達するのだ。

 それが出来ないクセに自分の女気取りのレンは、なんと愚かしい事か。
 ああやってひいひい啼く春歌に満足しているかと思うと、腹を抱えて笑いたくなる。力を入れずとも、あんなにがっつかなくとも、彼女は美しく達するというのに。


 

 衣装やヘアスタイルのチェックを終えて、私は鏡の前から立ち上がった。
 
 さっきまで肌がぶつかる音と、私の愛する可愛い女性の喘ぎ声がこだましていたが、今は濡れた空気だけがその辺りに残っていた。

 
 肩を上下させながらグッタリしている春歌に近づく。
 スポーツで一試合終えたようなすっきりした顔をレンが、私を見た。その、私を人とも思っていないような目を気にせず、そっと春歌の頬を撫でた。

 
 それだけで、春歌がびくりと身体を痙攣させた。

 
 そう。
 
 本当に愛している男になら、私になら、特別敏感な場所など触れられなくても、たったこれだけで、瞬間的に私の手に収まるのだ。

 それが出来ないクセに、手に入れた気になっているレンの思い上がりが可笑しくて堪らない。
 
 私と彼女が、心の真に深い部分でどれ程繋がっているか解ってない。私のこの呪わしい特殊な欲求を満たす為に使われているだけだというのに、間男にすらなってないというのに。

 
 漲る優越感。
 攻撃的且つ余裕がある高揚した落ち着き。

 
 これだ。
 これで私は、今日もアイドルとして最高のパフォーマンスが出来る。他では手に入らない至宝のスティミュラント。手放せない。罵られようと蔑まされようと。

 
 「一ノ瀬さん・・・。」

 
 ぽーっとした顔で春歌が私の名を呼んだ。
 レンの目の前で、唇を食み舌を舌でくすぐってやる。甘えた吐息で私に擦り寄る彼女を、レンがぐっと自分に引き戻した。


 「レディ、だめだよ、イッチーはもう仕事だ。」

 嗚呼、可笑しい。
 目の前で徹底的な敗北を味あわせられたから、苦し紛れの常識を口にして私を遠ざけようとするなんて。

 ここに、私たちに、世間一般と謳われる常識など最早無いのに。

 
 「いやぁ、一ノ瀬さん・・・。」

 
 快楽にすっかり魅了されて、レンの腕を振り解こうとする力もまったくないような春歌。
 そんなどうでもいい抵抗すら許し難いのか、レンが益々彼女を抱きしめる。私はそれを見るといつも同じ歓喜に身を染める。


 私の女がそんなに欲しいのかと。

 勿体ないが、慈悲で貸してやっているではないかと、心の中で吹き出す。

 
 しかし、顔に出したら失礼というもの。
 こうして私たち恋人同士が盛り上がれて、私のアイドル活動にもプラスになる事に、レンは友達という名のもと付き合ってくれているのだから。

 
 「ダメですよ、レンの言う通り、私はもう行かなくてはなりません。いい子で待っていて下さい。ね、レンが一緒に遊んでくれるようですから。」

 
 笑い出しそうだ。
 大声で。腹を抱えて。

 
 「そうだよハニー。オレが居るだろ。」

 レンが真顔だった事にとうとう堪え切れなくって、私は足早に楽屋を出た。
 揺れる肩が収まるのを待ち、手で顔を覆い、周囲に口許がバレないようにしながらスタジオへ向かった。

 

 
 

 撮影が無事に終わった。
 戻ってきた楽屋に居たのは、尊敬できる部分と出来ない部分の落差が激しい先輩が一人だった。
 


 「おつかれちゃーん。」

 
 「寿先輩・・・お疲れ様です。」


 軽く会釈をして鏡に座り、一息吐いた私を覗き込む彼の目。

 戻ってきた時には、すっかり世間でいう普通の楽屋になっていると予想していたが違った。
 それは何故かと思いながら帰り支度を始めたけれど。


 先輩の顔をちらりと見遣る。

 
 「ん? なぁにトッキー?」

 
 「いえ、別に。」


 そうか、これだ。

 佇んでいたのが、人のカタチをしていながら、人では無い目をしているから違和感があるのだ。この楽屋が元に戻らなかったのではなく、この楽屋はさっきも、今も、何の変哲も無い楽屋なのだ。そこに居す者が異質なのだ。

 さっき居たのは可憐な花と、吸い寄せられて逆に花弁に羽を取られた哀れな虫螻だった。今居すのは、神と祀られながら人を喰らうというあれのようだ。名前がすぐに出てこない、何と言っただろう。

 
 「ねえ、明日さ、久しぶりに5人で遊ぼうよ。あの部屋予約したから。」


 あの部屋。
 
 最初に私の欲望が現実として春歌の前に姿を現したといえる2308号室。

 あの部屋も、ただのホテルの一室なのだ。
 なぜかいつも豪華さに虚無を覚えていたがそれは違ったらしい。奇妙な部屋だと思っていたがそうじゃない。あれ自体はただの部屋だ。奇妙なのは、私たち。目の前のこのヒトの風体をした異物。私がこの世で愛し縋り癒されるただ一輪の花。そしてそれに群がり蜜を貪る虫共。そして何より、私自身。


 口角を上げた先輩の、眇めた目を見る。

 
 嗚呼、やはりそうだ。私の見つけた答えは正しい。
 今日の彼は、鬼の方だ。今はまだ、半分だけ鬼。

 
 「・・・構いませんよ。」

 「おっ、けー! じゃ明日、2308。夜7時に。」


 彼は軽く手を振って、笑顔で楽屋を出て行った。

 
 あれは夜叉だ。
 
 そう。
 あの目は、夜叉の目だ。
 祭祀と祈祓の両方を秘めた、鬼神の目だ。

 ならば私は。


 「・・・くだらない。」

 
 笑えない。
 この最低の舞台で這い蹲って踊る面々に、何の差も上下関係もありはしない。

 私は肩を竦めると手早く荷物を整え、春歌がまだ火照り静まらぬ身体で待っているだろう家へ急いだ。




 
 

 



  To Be Continued・・・・








 

 次回第10話は、7月5日までに更新予定です。







 
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うぉー!!
続きが気になるー!
久しぶりに読めて本当に楽しかったです。
ありがとうございます。
最後までついて行きたいと思います。
私の脳内には、みるくさんの書かれる話がフルボイスで再生される便利な機能があります。

みるくさんの最新話が読めて幸せです♪これからどうなるの〜!とワクワクしながら物語の続きを待っております。

紫さんへ

た、大変お待たせいたしました・・・!!!
思ったより息子の部活引退は、私を蛻の殻にしてくれまして・・・。
エロは書くのにパワーが要るのだと今回思い知りました・・・。

話は最後まで決まっているので書くだけだったのですが
ほんと蛻の殻で御座いました。
アメブロの方でも待ってるというお声を最近も頂いて、やっと更新できました!
本当にお待たせしちゃって、本当に、最後までついてきて頂くのが申し訳ない気持ちでいっぱいですが
次も更新致しますので!
コメントありがとうございます!

ma85さんへ

ma85さんこんにちは!

いやほんと、もぬけの殻、抜け殻症候群で御座いました。私、普通の母でしたww
こんなにやられるとは・・・それだけ私も息子をサポートするのに必死だったのだなと
今更ながらに母親してたなあと思い知りました・・・。

今回、ma85さんが久々に限定じゃなかったあの記事にいいねしてくれたのも、気持ちを奮い立たせるきっかけとなりました。
感謝しています。本当にありがとうございます!
プロフィール

みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

本家ブログはアメブロ
http://ameblo.jp/milk15azuki
にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

下のカテゴリからお好みのモノを選んで頂くと、連載は1話から読めます。

感想・お世辞は大歓迎ですが、苦情は受け付けられません。
鍵付きのコメントは、拍手コメントも含め一切の誤表示を防ぐ為、お返事は致しませんが、必ず読んでおります。励みになっております。有難うゴザイマス。
拍手とかコメントとか貰えると泣いちゃうくらい嬉しいですよ・・・。

鍵付きでは無いコメントは、拍手コメントも含め必ずお返事させて頂いております。
宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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