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Room2308 第6話




 


Room2308
 第6話








 

 夕方は寒くは無かった。
 色々考えた末、私は襟ぐりの開いた服を着なかった。襟のあるブラウスの一番上のボタンまで止めて、家を出た。

 考えれば考える程、信じたくないせいなのか、寿先輩の言葉の矛盾を探してしまう。どこかで綻びが生じてないだろうか。どこかで嘘だと断定出来る何かを取りこぼしてはいないだろうか。そう思えば思う程に、頭がぐるぐるして解らなくなる。

 本人に直接聞くのも、それはそれで実行できそうもない。
 もしも先輩の話が嘘だったら、私は自分から浮気をバラしてしまう事になる。

 あれを浮気だと言われたら悲しくて仕方がないけど、でも、恋人である一ノ瀬さんにしてみたら、そう取られても仕方の無い事だと思う。

 私だって、どんな状況だったとしても、一ノ瀬さんが他の女の人と関係を持ったら悲しい。心がズタズタになるに違いない。想像しただけで泣きそうなのに、実際そんな目に遭ったら耐えられない。

 それが普通だ。
 だから、寿先輩の話が信じられないのだ。どう捉えたって普通じゃない。わざわざ自分からそんな悲しい状況を望むなんて話、にわかには信じられない。

 
 だからこそ、もし、寿先輩が嘘を吐いていたとしたら。
 そう思うと、自分からこの話を切り出す事は出来そうもなかった。
 
 「私が、一ノ瀬さん以外の男の人と、体の関係を持ってるところを見たいって、本当ですか?」

 そんな風にさらりと聞けたらどんなに楽だろう。どういう神経だったら、面と向かってそんな風に尋ねる事が出来ようか。
 本人の口から真実を聞くのが確実なのは解っているのに、それはどうにも出来そうになかった。

 

 心臓が鳴り響く音で潰れそうになりながら、私は一ノ瀬さんの部屋を訪れた。

 「どうぞ。少し忙しかったので片付けがままなっていませんが、君の好きなお菓子だけは買ってあるんですよ。」

 ドアを開けた彼に何を言われるのか、どんな話から切り出せばいいのか。頭が真っ白になる寸前まで色々考えに考えていた私は、いつもと全く変わらない彼の態度に拍子抜けしていた。


 

 「その時の、監督さんのギャグに思わず笑ってしまいまして・・・どうしたんですか、先程から、何だか元気がないようですが。」

 「え! いえっ!」

 突然話を振られ、私は思わず背筋が伸び切るくらいに飛び上がった。
 
 ついうっかり久しぶりに一ノ瀬さんを前にして、本当に彼があんな事を言ったのだろうか・・・と、そればかり考えて、彼の話をまったく聞いていなかった。

 彼は特に普段と変わらぬ様子で私を部屋に通し、お茶を用意してくれた。

 リビングで過ごす時間は、いつもの2人の時間と何も変わらなかった。ありふれた日常だった。私だけが迷いと混乱で揺れていて、他の一切は穏やかに息づいている。

 「どうかしましたか。今日は、何だかいつもと・・・具合でも悪いのですか。」

 「いえっ、全然! あ、の、その、ちょっと昨日曲を作るのに夢中になってしまって・・・その、寝るのが、遅くなってしまって。」

 
 本当ですか。あの話は、本当に。
 
 寝るのが遅くなったなど適当な嘘を吐きながら、その言葉が心を駆け回っている。

 聞きたいのに、聞けない。どうしても聞けない。喉元まで言葉が出掛っているのに。

 胃と喉の間で煮詰めた重い何かを沸騰させたい。煮詰めすぎているから沸点を越えさせて吐き出したい感触。だけど重すぎて、喉を通すにはあまりにも骨が折れて。

 「では、少し横になりましょうか。君と一緒に過ごせるのなら、ソファだろうがベッドだろうが、私は構いませんし。」

 一ノ瀬さんが立ち上がり、私の手を取る。

 「目を瞑って横になっているだけで違うと思いますよ。さ、行きましょう。」

 「あ、あの!」

 「はい?」

 二の句が出ない。
 
 やっぱり無理。聞きたいのに。寿先輩が、一十木くんが、神宮寺さんが。皆が口を揃えて、貴方の望みだというのは本当ですかと。信じられないから確かめたいのに。

 一ノ瀬さんが、吐息でふっと笑った。

 「本当に今日は変ですね。疲れているんでしょう。さ、早く。」

 すっと握ってきた指を、私は握り返した。
 
 その指の優しさに心が解れたのか。

 その時どうしてか、するりと滑るみたいに勢いに任せて口が開いた。殆ど無意識だった。何故そうなったのかは判らない。口をついて言葉が出た瞬間は、頭が真っ白だった。

 「一十木くんに伝言を頼んだのは本当ですか。」

 
 意思と離れた力で放たれたような自分の言葉が、妙に響いた。

 しん、と。
 主語も無い私のその問いかけに、一瞬何もかもが停止したような気がした。

 それはもしかしたら私が勝手に感じていただけで、一ノ瀬さんにとっては空気が変わるでもない出来事だったのかもしれない。でも私には、一ノ瀬さんの返事が耳に届くまでのたった数秒であっただろうその時間が、永遠に続くようにすら感じられる間合いだった。

 「ええ、そうです。音也が君に伝言を届けてくれたから、君は私が急な仕事で来られなくなったのを知ってくれたのでしょう?」
 
 「・・・それと一緒に、別の事も、頼みましたか。」

 凍った空気がひび割れるような微かな音がした気がした。

 「・・・別の事、とは?」

 僅かな沈黙の後、一ノ瀬さんが私に問う。
 
 私が答えたら、状況はどっちに転ぶのだ。
 
 一体それは何の話だと詰め寄られるのか。そうですよと、にっこりと笑顔でも返されるのか。どちらだ。賽子はどちらの目が出る? 緊張で口が痺れる。どちらになっても、私に良い結末が待っているとは思えない。

 なのに話を続けるなんて。
 
 真実を知りたいなど、それだけを取り上げれば自分の意思であるかのように言いながら、結局は寿先輩の言うように、私は既に引き入れられているだけのような気がする。知らん顔をしてあやふやにしておけばこのままフェイドアウトしてしまうかもしれない些細な事件を、引き入れられてしまっているからこそ具体化しようとしているのかもしれないと、頭のどこかが冷静に考える。

 それでも、例え聞いた結果が不幸を呼んだとしても。

 何かに押されるように、私はとうとう聞きたかった事を口にした。

 
 「・・・一十木くんが、一ノ瀬さんに、頼まれたからって・・・。神宮寺さんも、同じことを言って、私を・・・私を、ホテルで・・・。一ノ瀬さんが、自分以外と私が関係をもってほしいと望んでいるって言って・・・。」

 喉が熱い。
 乾き切って、チリチリと鈍い感触がする。沈黙が体中に突き刺さる。一ノ瀬さんの私を見る目が、いつもと違うのかどうかも判断出来ない。

 一体何十秒経ったのか、終わらないように感じられた時間が過ぎ、一ノ瀬さんが困ったように笑った。

 「頼みましたよ。」

 その、瞬間。
 
 彼が、認めてほしくないと願っていた私の祈りを打ち砕く決定的な一言を告げた瞬間。

 ゆっくりと、空気が変わったような気さえした。
 私を取り巻く空気の圧力。ぐぐっと圧縮された何かに気圧され、私は思わず胸を抑えた。

 「う、そ、です、よ、ね・・・?」

 「本当ですよ。」

 彼の声は涼しい。嘘をついているとは思えない。

 「おかしいですか。まぁ、早々褒められた趣味では無いとは理解していますが・・・。」

 そこで言葉を切った一ノ瀬さんが、どちらかと言えば笑顔で私を見た。
 決して、怒っているようにも、泣いているようにも見えなかった。分類すれば笑顔だった。落胆や悲しみはそこに存在していなかった。そんな笑顔で、彼は私に一歩近づき

 「でも君も、レンと結構楽しんだそうじゃないですか。やっぱり君は、私の運命の人です。こんなに相性がいい出会いは、もうきっと、2度と無い。君は私を愛してるのに、レンに抱かれて悦べる身体をしている。」

 少し興奮した様子で、私の頬を撫でる。

 「あれは・・・! そんな、楽しんだなんて、ちが・・・!」

 「薬を使ったそうですけど、それでも完全に意識を失くす効果はないそうですよ。だから君に素質があるのでしょう。音也もですけど、レンが君をとても褒めていましたよ。綺麗で、とてもいやらしい身体だったと。すっかり君の虜のようです。何度もしたそうですね。自分からレンのモノを嬉しそうにおしゃぶりしていたそうじゃないですか。・・・ふふ、そんな君を、次は是非間近で見たいですね。きっと、とても可愛い顔をしながらおしゃぶりしたのでしょう。」

 強烈な稲妻が背筋を走り抜ける。
 まともじゃない。甘い息を吐く彼は、まともじゃない。そんな、そんな話を口にしてうっとりするなんて。

 「私のモノである君に夢中になっている男が居ると思うと、とても興奮するんです。自分のモノが賞賛されているという実感が、私を堪らなくさせる。身近な他人が喉から出る程欲しがるモノを私が持っている。それが嬉しくて仕方がないんです。」

 炎がゆらめくような目が怖い。

 「簡単には理解されなくて当たり前ですが、誰に犯されていても君はきっと美しい。その姿を見たいし、見せたいんです。私以外の男で感じる君がどれ程までに美しいのか、想像しただけでイキそうになります。だって君は、誰に抱かれても私だけを一途に愛し続けてくれる筈です。感じながらも私だけを愛してくれている、それをこの目で見たい。信じたいんです、君の愛を。今でも信じてはいます。でもそうじゃない。何があっても私だけを愛してくれているという証拠が欲しいのです。」

 夢を見るように語る一ノ瀬さんの手が、私の両頬を挟む。
 体温が高い。目が濡れながら昂ぶっている。彼は今間違いなく興奮している。自分の奥底の特殊な片鱗を、初めて私に見せながら。

 「でもきっと、君なら解ってくれますよね。君が好きなんです。大好きな君を他の人にも褒めてもらいたいんです。君が褒められれば褒められる程、君を欲しがる男を見れば見る程、私は嬉しくて震えがくる。他の誰もが欲しがるモノを持ってるという幸せを感じられる。君を見せびらかしたい。触らせて、悦ばせて、でもそれでも結局君は私のモノだと、心の中でそいつらを笑ってやりたい!」
 

 既に私を見ていない目で、こみ上げる笑いを抑えもせず饒舌な、初めて見る普通ではない一ノ瀬さんに、首筋の辺りがサアっと冷えて後ずさった。
 
 彼はそんな冷気を奪うか如く突然噛みつき、痛みと驚きに思わず悲鳴を上げた私に掴み掛るようにキスをし、押し倒した。

 

 

 

 



  
 


 To Be Continued・・・










  


 次回第7話は、4月24日頃更新予定です。












 
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こんにちわ、みるくさん。ついにトキヤの告白で、判ったー!あれだ、お菓子見せびらかしながら食べる子供だ…これ…(^_^;)
歪んでるな~(笑)←良い意味で。
続き、期待しております!

ナナオさんへ

ナナオさんこんばんわ!
そうです、その通りw お菓子みせびらかす人ですよねw
歪んでる彼と、その後どうなるか。
ですが、次回話が予定よりどうしても更新遅れる事になりました。
あまりの多忙さに推敲まで手が回らず仕舞いでゴザイマス。
予定より1週間くらい遅れての掲載となりそうです。
最後までお付き合い頂けたら幸いに思います。
コメント、本当にいつもありがとうございます!
プロフィール

みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

本家ブログはアメブロ
http://ameblo.jp/milk15azuki
にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

下のカテゴリからお好みのモノを選んで頂くと、連載は1話から読めます。

感想・お世辞は大歓迎ですが、苦情は受け付けられません。
鍵付きのコメントは、拍手コメントも含め一切の誤表示を防ぐ為、お返事は致しませんが、必ず読んでおります。励みになっております。有難うゴザイマス。
拍手とかコメントとか貰えると泣いちゃうくらい嬉しいですよ・・・。

鍵付きでは無いコメントは、拍手コメントも含め必ずお返事させて頂いております。
宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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