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Fire Works 7

 
 
 
 目が覚めた。
 真斗は、一筋だけ強烈な光が差し込む絨毯に気付く。音也が、ほんの少しカーテンを開けて、窓の外を見ていた。差し込む強さで、もう昼だろうと推測できた。


 「ああ、マサ、おはよう。」

 音也が少しだけ口角をあげて小さな声で言う。

 「マサ、七海を、頼めるかな。俺、仕事に行かなくちゃ。」

 「・・・・・・・・・・・・・。」

 「マサ、今なら七海を浚って、マサだけのモノに出来るよ。だけど、今この時を逃したら、俺にそれは保証できない。どうする?」

 真斗が静かに言う。

 「・・・一十木、お前、本当は・・・。」

 音也は目を伏せ、また窓の外を見た。

 「判んない・・・もう判んないんだ・・・ただ、マサなら、七海を大事にしてくれるって信じてる。」

 「俺は、財閥に戻る。ハルさえ居れば、それでいい。俺はハルが大事だ。もう他の誰にも渡したくない。決めた。」

 真斗の真剣な顔を見て、音也は安堵したような顔をした。
 そして、「頼むよ」と真斗に小さな声で告げ、まだ眠っている春歌の顔を覗き込む。

 「さよなら、七海。君のコト、本当に好きだったよ。本当だよ。元気でね。」

 それだけ言って、音也は静かに部屋を出て行った。



 


 
 


 その、少し後。
 およそひと月、まだ、気温も前の季節と変わらない頃。


 街を見下ろすホテルの1室で、コーヒーを飲みつつ座っていたのは蘭丸と嶺二だった。

 「ロングインタビュー嫌いなのに、珍しいね、受けるなんて。」

 「しょうがねえだろ、仕事はしねえとな。」

 「まだ1時間あるね。ランランとお茶できて、嬉しいなあ。」

 「気持ちわりぃんだよ。おい離れろ。ウザイ。」
 
 これ以上嶺二と会話をする気はないという意思表示か、蘭丸がテレビのリモコンをディスプレイに向けた。

 「それでは今日のゲストは、シャイニング事務所の、超!期待の大型アイドル歌手、一十木音也くんです! なんと彼は、東京大アリーナで毎年行われる人気アーティストばかりのライブ、ミュージックフェスティバルジャパンに出演が決まっているんです!」

 テレビ画面には、けたたましい音楽と共に、司会者の紹介で登場した音也が映し出された。

 「あのライブは毎年、3日で15万人を動員し続けている大人気イベントですが、いきなり新人で出演だなんて、テレビの前のファンも喜ん・・・」

 ぷちん。

 「あっ、なんで消すのさ!」

 嶺二が真っ暗なディスプレイを見て不満げな声を出す。
 
 「アイツの顔なんか見たくもねーよ。」

 「も~ランランはぁ。そんなに好きならどうして信じ切ってあげなかったのよ~?」

 
 

 蘭丸と嶺二、そして他2名。シャイニング事務所に所属する彼らは、ある日突然社長に呼ばれて、新しく事務所に所属した後輩達と同居生活を始めろと言われた。
 
 半年間の共同生活の元、その後輩を教育をする。そして、合格だと思ったらエンブレムを渡す。

 エンブレムは2つ。1つは共に生活する先輩から貰う。もう1つは、社長の出した課題をクリアする。2つのエンブレムを手に入れること。それが後輩らに課せられたデビューの条件だと説明された。

 蘭丸は面食らいながらもどうでもいいと思っていたが、自分と共同生活する後輩として現れたのは、かつて自分も生きていた世界の住人。聖川財閥の嫡男・真斗と、後継者では無いが、神宮司財閥の三男坊・レンだった。

 (寄りにも寄って嫌がらせか?)

 それでも、適当にあしらっていれば済むことだった。

 だがある日、社長命令でユニットソングを作る事になり、そこに七海春歌が加わった事で、蘭丸の中の何かが変化した。

 春歌の笑顔は印象的だった。
 何度あしらい、厳しくつっぱねても、音楽への真摯な情熱で自分についてきた。可愛いと思った。そんな感情は何年ぶりだっただろう。

 だが、蘭丸は夢を見てはいなかった。

 人は簡単に裏切る。一緒に夢を追っていた男が、女で簡単にを裏切る。信用出来ると思った人間が、いつか突然必ず裏切る。それが、蘭丸の生きてきた人生で繰り返されてきた事実だった。

 かつては聖川や神宮司と肩を並べる大財閥だった生家が落ちぶれた事で抱えた借金を、未だ返済し続ける彼にとって、揺るぎない、人生の根本。

 それでも、春歌を手に入れた時は幸せだと思った。
 はにかむ春歌の仕草は心底愛おしく、抱く時は、愛する気持ちから来る狂いそうな快感に我を忘れた。

 


 「どうせ最後は見えてたってコトだろうが。てめぇの言う通り、深入りする前に切りあげられて良かっただろ。」

 コーヒーカップを乱暴にソーサーに戻す蘭丸が突き放すように言った。
 
 「それ、本気で言ってんの。ランランさぁ、そんなコトしてたら幸せになれないっていうか、自分から幸せを放棄しちゃってるんだけど?」

 「お前が先に言い出したクセに何言ってやがんだ!」

 「こ~わ~い~。そんなに怒んないでよっ。ランラン、最近またカッコ良くなったって評判だよ。やっぱランランはそうやって尖ってなくちゃね。だけどさぁ。ランランに幸せになってほしいってのも、僕ちんの本音なのよね~・・・。」

 「・・・いいか、俺はな、いつか裏切るヤツと、裏切られるその瞬間までじゃれあうのは大概ウンザリなんだ。俺はたまの恋愛ごっこがテキトーに楽しめて気持ち良かった。あの女は惚れた俺の女気取りで気分が良かった。何がどうなったか判らねえが、あの小僧はエンブレム手に入れて大舞台が決定して万々歳。真斗は家に戻って聖川財閥は安泰。」

 淡々とそう言い、少し笑って嶺二を見やる。
 
 「誰か不幸になったか。なあおい。今全部思い返して順番に並べてみても誰も損してねぇ。何が悪い。収まるトコロに収まってるだろ。寧ろ俺に感謝してくれ。」




 

 
 音也が春歌を後ろから抱き締めていたあの日。
 何とも言えない不安と覚えのある絶望が一瞬で蘭丸を襲った。当たり前のように音也の腕を受け止め、トキヤも交えて3人で話をする春歌の世界の中に、自分は居ないと思った。

 一緒にバンドを組んできたメンバーも、運命の恋だと言って夢を捨てた。そして、運命だと言っていた恋を失って、自分の所へ臆面もなく再訪する。
 
 「先輩、大好きです。」
 
 そう言って自分の胸に顔を寄せる春歌を信じたいのに、どうしても信じ切れない。
 
 春歌が悪いのではないと解っていても、自分の中に渦巻く先入観と、植え付けられたトラウマが次から次へと彼女の心の裏側を探り始めて止まなかった。春歌の前では一切そんな素振りを見せまいとしていたが、1人になると忽ち不安が襲う。過去の記憶が感情を占有する。

 泊まりがけの撮影に出掛けたあの日。
 偶然別の仕事で来ていた嶺二が同じホテルに泊まっていて、蘭丸の部屋へ陣中見舞い宜しく暇潰しにやって来た。

 何をうっかりしたのか、酒が入っていたせいか、音也とのあんな場面を見た直後だったからか、嶺二に春歌との事を話してしまった。
 他人事のように適当に、そんな不安は必要ないと言って貰って救われたかったのかもしれない。ただ話したら、少しは楽になると思ったのかもしれない。その程度心が乱れるくらいには、春歌の事は本気だったのだ。

 「アイツはやっぱり、俺みてぇなのより、音也?だっけ? みてぇな男の方が似合ってるのかもしんねぇな・・・。」

 一言本音を吐いたら、心の底にある棘が顔を出した。

 「あのガキ、思い切って春歌を誘惑でもしねえかな。その誘いにアイツが乗ったら、その時点で速攻別れるのによ・・・。」

 その時はフザけていた。酒の席の軽い冗談。それで通って済む台詞。

 だが、蘭丸の話を一通り聞いた嶺二は、ニッコリ笑って意外な提案をした。

 「ランラン、試してみない?」

 いつものふざけた口調で言う嶺二の話を、蘭丸はそのまま聞いた。追い返さなかったのは、1杯飲んでいた都合、適当に酒の肴程度になるだろうと思ったからだ。
 
 
 「僕はランランが傷つくのを見たくないの。また傷ついたら、今度こそランランはもう立ち直れない! で、自分の後輩は成功させたいワケ。だってそれ、僕ちんの功績になるってことだも~ん。だからさあ~。」

 ふっと笑って、嶺二は蘭丸の顔を覗き込んで、言った。

 「マジでそれ、おとやんにやらせてイイ? イイでしょ~イイって言ってくれないランランなんて、い・け・ず・う~。」

 蘭丸は黙った。冗談混じりでも、嶺二が本気なのが判ったからだ。
 

 春歌は音也に警戒心を持ってない。気心知れたそんな男が、本気で口説きにかかったら彼女がどうするのか、判断材料には最適だと思った。

 信じたい気持ちもあった。誰に言い寄られても、春歌はきっと自分以外には目すらくれないと。
 しかし、どうしても振り切れない数多の痛い経験が彼を躊躇させる。このままいけば又裏切られる。その不安が、自分を守ろうと先回りする。
 
 わざと仕掛けて気持ちを試すなどあざとい真似をする自分はどうなのだとも思う。今ココで嶺二の求める回答をすれば、春歌の行動がどっちに転んでも、結局は自分が春歌を、他人を信じ切れてないと証明されるだけだ。

 信じ切れずとも春歌を好きだ。バカらしいと嶺二の言葉を切って捨てられない。堂々巡りで答えが出せない。迷う気持ちは隙となり、隙は退屈凌ぎの餌を探す輩にとって格好の獲物だ。

 トラウマの影が、<アイツも同じだ。いつか俺を裏切って消える。だったら今すぐ終わらせた方がいい。試してみろ。> そう囁くのだ。

 眼の前の嶺二の、自分の提案を受け入れてくれるのを待つ子供のようなあどけない目が、拍車をかける。
 蘭丸は、とうとう頷いた。

 「よし決まり! でね、モノは相談だけどさ。」

 「んだよ?」

 「おとやんが巧く立ち回って、あの子がランランを裏切る悪い子だって判って別れられたら、おとやんに報酬やってくんない? だって、それでランランの傷が最小限に抑えられたって事になるんだもんさ、イイでしょ。」

 悪戯っぽい目で、嶺二は話を続ける。

 「今度の東京大アリーナでのフェスジャパン、ランランと一緒に後輩が1人出られるんでしょ。ウチの後輩君が成功したら、アレ、彼に出演権利を与えてあげてほしいんだ。うわぉ、嶺ちゃん後輩思い~♪」

 「じゃあもしアイツが、失敗したらどうすんだ。俺に何かくれるのか?」

 「失敗ってナニ? おとやんが失敗? って変な言い方だけど、でもそしたら、彼女は他の男に靡かないって証明できたって事じゃん。そうしたらランランは、あの子との愛を貫けばい~んだよ! な~に言ってるの。それを見極めるんでしょ。」

 「・・・ああそうか・・・まぁイイけどよ・・・。」

 流れ進んでいく話を、どうして止めようと思わないのか。自分を不思議に思いながら、蘭丸はもう一口飲む。

 「なんかてめ、ムリヤリ話纏めようとしてねえか? なんかあんのかよ。」

 「もう! 別にランランには悪い話じゃないでしょ。いいでしょっ、決まりでしょっ? ちょっと試してみるだけじゃない、ね。ただのお遊びだよ。」

 陽気に、新発売のオモチャの話でもするような嶺二に、蘭丸は 「ああ。」 と短く頷き了承してしまった。
 
 

 後悔は、していない。
 信じたいと思っていた女は、嶺二と話をした数日後に一人の後輩と消えた。

 数週間後、新聞に、その後輩が家業を継いだという記事が載った。
 自分には関係ないニュースだと思った。同時に消えた春歌の行方は今も定かではないが、嶺二の話では、音也の采配でその跡取りが浚って行ったと説明された。音也も、2人の行く先は全く知らないという。

 「だけど、春歌チャンがランランを置いていくような女の子だった、って証明できたんだもん、おとやんは一応成功、ってコトで。フェスジャパンの出演権、宜しく頼むよ。」

 そう蘭丸に言う嶺二は、純粋に後輩の大舞台出演権獲得を喜んでいるようだった。

 

 自分には、また以前と同じ日々が戻ってきただけだと思っている。
 だが、その日々を以前はどうやって過ごしていたのか思い出せない。蘭丸の心を占めているのは、その虚無感だけだった。






                        8へ続きます・・・








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みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

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にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

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只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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