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Fire Works 8

 



 
 音也は最近、多忙で仕方なかった。
 大きなイベントに出演が決まった為、引っ切り無しに取材やテレビ出演がやってくる。

 望んでいた事だから当然、仕事は大変でも有り難く楽しくこなした。世間の認知度が上がり、遂に人気アイドル雑誌の表紙を飾る事になった。

 都内のホテルで取材が数件ある今日は、1日缶詰の予定だ。最初の取材を終え、次の取材までに2時間ほど空いているが、その間に、契約しているブログサイトに頼まれた、新発売のジュースを愛飲しているという記事を更新しなければならない。

 ルームサービスのサンドイッチを食べながら、そのドリンクを飲み、スマートフォンを操作する。ドアのチャイムが鳴り、パンをかじりながらドアを開けた。

 「はいは~い。お疲れちゃ~ん♪」
 
 嶺二が指で帽子をくるくると回しながら部屋へ入って来た。ずかずかと奥まで進み、テーブルのサンドイッチを見ると、貰ってイイ~? と手を伸ばした。ハムとチキンだよ、という音也の説明に、ハムサンドを選んでかじる。

 「あ、コレ? 今度おとやんがCM出るっていうジュースは。オレンジ味なんだ。へ~美味しそうじゃんっ。」
 
 嶺二はペットボトルを手にとって、成分表を眺めている。
 
 音也がもう一度椅子に座ると、頬杖をついて音也に顔を寄せた。

 「あの子が何処に居るか、判った?」
 
 「・・・・・・・。」

 「そっか・・・。ああ、言っておくけど、僕も別に居場所が判った訳じゃないよ。どうせ聖川の御曹司様が、どっかに囲い隠してるのは間違いないから心配はいらないっしょ。逆に、超~ゴージャスな生活してると思うよ~。」

 音也は無言でサンドイッチを食べ続ける。

 「ねえ怒ってるのぅ。友達を貶めてでも昇りつめたかったんでしょ、い~よい~よ。この世界で生きて行くのに、おとやんのその姿勢、間違ってなんかナイナイ。」

 嶺二がテレビのリモコンをディスプレイに向けると、少しして音也が画面に映った。
 
 「今日のゲストは、東京大アリーナで毎年3日間で15万人以上を動員する一大音楽イベント、ミュージックフェスジャパンに新人アイドルながらいきなり出演、シャイニング事務所期待のルーキー、一十木音也くんです! ようこそおいで下さ」
 
 ぷちん。
 
 「あっ、なんで消すのさ~。これこないだ収録したヤツでしょ。んもう、おとやんのインタビュー聴きたかったのに。こないだも見れなかったんだよね、コレと同じような特集のやってたヤツっ。」

 嶺二がオレンジジュースを飲みながら言う。

 「あの御曹司君、ちょ~っとこの世界には向いてないって。財閥継いだ方がイイって。お家に戻ってメデタシメデタシ。人助けしたって思った方がいいよ~。」

 パンを食べる手を止めて、音也が嶺二を見る。

 「どこまでが偶然で、どこからが嶺ちゃんの罠だったの?」

 「罠って・・・ひっど~いおとやん、もう! 罠じゃないでしょう。ちゃんと成功したら、エンブレムと、フェスジャパンに出演させてあげるって報酬があるんだから、罠チガウ。」

 手で、チガウ、とジェスチャーを取りながらおどけた調子で答える嶺二に、音也は苛立ちを隠すように椅子にもたれかかる。

 「っていうかホント偶然なの。最初に君の大失態を見つけた時は、正直どうしようと思ったね。ま、僕ちんが黙ってれば済むかとも思ったんだけど、君の馬鹿正直さがね~・・・、仇になって大問題になるような気がしちゃってたのよ。僕が君を預かってる以上、君の失態は僕の失態。君の追放は僕の責任。ごめんだよ、巻き添え食うのはさ。僕の立場も判ってちょんまげ。」

 嶺二はまたサンドイッチに手を伸ばす。

 「あのさ、僕が手に入れてたのは、ただのバラバラのピースだったんだよ。それが、なんか思いもよらない所でしっくり噛み合っちゃって。ランランと話して繋がった時はびっくりしたね。」

 指についたマヨネーズをぺろりと舐める。

 「だから別に、罠を仕掛けた訳じゃないんだよねえ・・・・。こう言うとナンだけど、皆が自分から滑り落ちて行ったんだよ、こうなるようにね。僕はたまたま、全員の事情を知ってたってだけ。全貌を見ちゃったから、先輩として、同僚として、取れる最善策を取ったつもりなんだけどなあ?」

 

 耳につく嶺二の言葉を流しながら、音也は思い返す。
 思い返さないようにしていたので、記憶を辿るのは久しぶりだ。

 あの時、ショックで頭が真っ白になった自分は、春歌に撮ってもいない蘭丸とのキスシーンを、さも撮ったかのような口ぶりで普段から持ち歩いていたカメラを見せて脅迫し、自分から服を脱ぐように仕向け、今度こそ脅す為の証拠を手に入れた。
 
 しかしそれはその場の勢いでした事であり、実際それをどうこうしようなど考えても居なかった。家に帰って、後悔すらした程だ。謝るか。謝って済む問題では無い。このまま事務所すら辞めるか。一晩中考えていた。

 春歌を犯した次の日、前日撮影で泊まりがけで出掛けていたというのに思いの外早く帰って来た嶺二に、時間があるかとリビングで向かい合わせで座らされた。

 「ああ撮影? 撮影は最初から夜の数時間だけだったから。遠いから泊まりにしたけど、無事終わって朝イチで帰って来たの。ちょっと事情が出来てね。おとやん、昼から仕事行っちゃうでしょ。その前に話したくてね。」

 嶺二は何やら嬉しそうだった。

 「昨日、倉庫で裸で放心してる春歌ちゃんを見たんだよね。」

 「!!」

 「あの作曲家チャンに何したのさ? なんでそんなコト知ってるかっていうと、あんなトコからおとやん出てきて何だろう。って見に行かざるを得ない程、明らかに挙動不審だったのさ、君が。」

 「俺っ・・・・。」

 「レイプは重罪だよ~? ランランに殺されるよ~。」

 「あっ、俺っ・・・!」

 見られていた。
 まさかという思いが過る。しかも嶺二はどうやら、蘭丸と春歌の仲を知っている。

 蘭丸のずっと後ろを歩いていたが、春歌を好きだった音也に、彼女が蘭丸を追いかけているというのは一目瞭然だった。胸騒ぎと不安で思わず後をつけた。

 建物奥の倉庫へ、音がしないように扉を開閉し入りこみ、物陰から伺った2人に、自分の失恋が決定した。

 蘭丸が先に出て行ったのを確認し、鍵を閉め、春歌を無理矢理襲った。その後の自分は冷静なつもりだったが挙動不審だったらしい。それが原因で嶺二は倉庫へ足を向けたという。そこで佇む春歌を見た嶺二には大体判ったのだろう。

 音也は焦った。

 「俺、・・・俺、反省してるんだ! ほんとにごめ・・・ふが!」

 嶺二に口を掌で塞がれる。
 
 「はーいストーップ! まっさか、俺、正直に話して謝ります!! とかぜ~ったい無いから! あっりえませ~ん。クビになりたくなかったら、僕ちんのお願い、きいてちょんまげ。」

 「・・・・お願い・・・・?」

 「あの子さ、おとやんのモノにしちゃってよ。」

 「・・・・・・・は?」
 
 「う~んワケわかんない気持ちも判るけどぉ~、メンドクサイから説明だーいぶ割愛するけど、ランランは可哀想な過去があるんだよ。だから、どうしても人を信じ切れない。あの子の事もね。そんなランランがこんなコト知ったら、もう2度と立ち直れないよ。君は責任を取って、ランランが傷つかないように、春歌チャンをランランの前から消して。」

 「・・・・・なに言ってるの?」

 目の前で飄々と発せられる嶺二の言葉が解らない。
 
 「春歌チャン、無理矢理ヤラれたとは言えランランを裏切っちゃったコトになるよねえ。あの子のマジメ具合じゃ、いつか正直にランランに話すか、バレるね。幸いあの2人、まだ付き合ってそんなに経ってない。傷は浅いうちがイイの。わかるでそ。」

 「・・・・わかんない。」

 即答した音也に嶺二は肩をすくめる。

 「日本語何年使ってんのさっ。兎に角人助けなの。このままどんな手を使ってもイイから、春歌チャンをおとやんのモノにしちゃってよ。多分あの子をランランの前から消すには、それが一番手っ取り早いんだ。もっちろん、おとやんには最高にイイコトあるよ~? 」


 ニヤニヤする嶺二の顔が、妙に不快感を煽る。
 その不快感の意味はすぐに分かった。


 「成功したら、エンブレムあげる!」

 
 それがないとデビューが出来ない。今マスターコースに所属する全員が一番欲しいものを、嶺二が音也の目の前に掲げる。憎しみすら湧くかと思った瞬間だった。

 

 「コレ貰えないとどの道クビなんだから。もう9月だし?」

 見た事もない物を見ていると音也は思った。
 厳しくも優しい先輩だと思っていた嶺二が厳しい芸能界で生き抜いているその根本を、垣間見た気がした。


 「・・・・クビになるか、好きな女をこれ以上傷つけるか選べっていうの・・・?」

 
 わなわなと震えた唇に、つんと人差し指を当てられた。

 「どの口で言ってるのよキ・ミ・は。もうこれ以上ないヒドイ事、したじゃない。」

 ニヤリとする嶺二の笑顔を、悪魔のようだと音也は思った。

 「カンタンだよ。人を従わせるのは暴力や恐怖ばかりじゃ無い。効率的なのはね、快楽だ。あの子、おとやんに犯された時どうだった? 泣いてても腰振ったでしょ。泣きながら喘いでたでしょ? その後、おとやんに殴りかかった訳じゃないでしょ。」

 音也の、奇妙なモノでも見るかのような視線も物ともせず、嶺二は喋り続ける。

 「快楽で支配するのは、時に完全な服従を齎すすっごい技だよ。ランランが帰ってくるまでの2日間であの子を徹底的に堕として、おとやんの虜にしてさらっちゃえ。」

 「・・・。」

 「そんな怖い顔しないでよう。ああ、ランランの方は大丈夫。あの子を取られたからっておとやんに何かしたりはしないから。それは約束するよ。ってゆうかね、これはランランからのお願いでもあるんだ。」

 「・・・・それ、どういう意味・・・?」

 「その辺は詮索しないの! とにかくうまくやれたらエンブレムあげるけど、それだけじゃない。あの、出演が決定した時点でトップアイドルの道が約束されてると噂のフェスジャパンに出演できるんだよ。ね、悪い話じゃないだろう?」

 

 

 そこまで思い返して、音也は額に手を当て天井を仰いだ。

 「今でも不思議なんだ。れいちゃんは、黒崎先輩に頼まれたの? あの人は七海のこと好きじゃ無かったの? 好きだったのに、俺にあんなことさせて平気だったの?」

 
 そんな音也をチラリと見て、嶺二は淡々と言う。
 
 「いや。ランランは別に春歌ちゃんをレイプしろって頼んできた訳じゃないよ。流石にソレ鬼畜っしょ。大体、春歌チャンが君に何をされたのかなんて知らないしね。」

 訝る音也を気にせず嶺二の言葉は続く。

 「悩む必要はない。君は、俺に出されたアイドルになる為の課題を乗り越えてトップアイドルへ昇りつめようとしてる。それでいい。この世界は汚くてやったモン勝ちで、売れてナンボだ。女か夢か。おとやんは選んだだけだ。あの御曹司君も選んだだけ。ランランは元の生活に戻った。それだけだよ。 」

 サンドイッチを食べつつそう話す嶺二の声は音也にとって、異国のニュースキャスターが読み上げる天気予報のようだった。

 

 後悔は、していない。

 真斗は信じるに値する真面目な男だ。きっと、春歌をこんな目にあわせた自分からも、詳細は解らないが、この下らない下卑た一連の行為に何らかの形で関わっている蘭丸からも、きっと春歌を守ってくれる。

 それだけが、彼の罪滅ぼしだった。
 
 虚しさと喪失感だけが、あれからずっと彼を苛んでいた。多分きっと、これが罰なのだろうと、音也はそれを甘んじて受け続けていた。

 戻る道など無かったのだ。最初に過ちを犯したあの瞬間から。
 罪を償うという選択を取らなかった時点で、自分は、夢以外の大事な何かを捨てたのだった。



               

                   最終話へ続きます・・・




 
 
 

 

 
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みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

本家ブログはアメブロ
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にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

下のカテゴリからお好みのモノを選んで頂くと、連載は1話から読めます。

感想・お世辞は大歓迎ですが、苦情は受け付けられません。
鍵付きのコメントは、拍手コメントも含め一切の誤表示を防ぐ為、お返事は致しませんが、必ず読んでおります。励みになっております。有難うゴザイマス。
拍手とかコメントとか貰えると泣いちゃうくらい嬉しいですよ・・・。

鍵付きでは無いコメントは、拍手コメントも含め必ずお返事させて頂いております。
宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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