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complice 第6話

 




complice
  第6話




 


 
 
 レンは帰って来るなり、ドアを開けると同時にバスルームに直行した。

 そして、濡れた髪も録に乾かさず、リビングのソファにごろんと仰向けになった。
 どうしたのかと心配した春歌が、脇にしゃがみ込んで様子を伺う。

 ほんの少しだけ、トキヤとの事がバレたのかという不安が胸を過ったが、そうではないという確信も同時にあった。
 
 トキヤと部屋で鉢合わせした時に見せた、ああいう不機嫌さ、怒り似た苛立ちが、今の彼には欠片もない。1日撮影だったのも確実である事から、春歌は今日はそれに関して、然程心配していなかった。

 何度もトキヤと逢瀬し、トキヤと会うのはレンと仲を続ける為には良くない。という感覚が麻痺し始めているのかもしれない。
 それはそれで空恐ろしいと思ったが、いつまでも男女のコトに疎いせいで、レンに言わなくてもいい事まで上手く隠せず、態度に出して、無暗に彼を傷つけてしまうよりよっぽどいいような気もしていた。

 

 部屋で一人でレンを待っている間、色々考えていた。
 トキヤにはたかが、キスをされただけだ。そう、役者の芝居と同じではないか。強がりにも似た自分の罪の正当化だったが、その罪悪感で、レンのこれからの仕事に目を瞑れるような気もした。

 あちらは芝居だし、こちらも何も浮気をしようと言うのではない。おあいこだ。決して投げやりな意味ではなく、寧ろ、これからも芝居を仕事とするレンと共に居る為に、その方がいいかもしれないとも考え始めていた。
 当然、その考えばかりが頭を占めているわけではない。無理矢理にでもそんな風に思わないと、罪の意識が動作に出てしまって、結果的にレンを傷つけると思ったし、自分が潰れてしまうと思った。

 そんな昼間を過ごしていた春歌にとって、レンが帰って来るなり口もそう利かずバスルームに直行してくれた事は、ある意味有難い事でもあった。余分な何かが口からうっかり出てしまう隙は少ない方がいい。

 疲れたように仰向けのまま横たわるレンを見詰める。

 そっと無言で伸ばされた手をきゅっと握り、春歌は応えた。
 安心したように微笑んで、暫く黙って目を閉じていたレンが、話始めた。

 「どうもおかしい。」

 「おかしい?」

 思っても見なかった第一声に、春歌は少しびくっとする。
 レンは、口を尖らせて、明後日の方向を向いたまま話し続ける。

 「ああ。吉野京子の言ってる事が何かおかしいんだ。それに、マスコミで報道されてる内容と実際が色々違う。大体、警察に届けを出したのは本当だったんだけど、どうも警察は世間が言うほど積極的に動いていない。まあ、窃盗事件如き元々警察が真剣に取り組む事件じゃないんだろうけど、それにしても妙なんだ。」

 よっ。とレンが起き上がり、春歌をベッドに腰掛けさせる。
 しかし相変わらず、春歌を見ない。2人で居るのに1人で内側に籠り、考え事をしている顔だ。

 「吉野が妙に曖昧でね。盗まれたと騒ぐ割には、最後にいつ持っていたんだとか、そういう話になると口ごもる。」

 「? でも、それはそうなんじゃないんですか? 落としたとか失くしたとかなら、いつどこで、なんて、あまり正確には判らないんじゃ・・・。」

 「ハニー。イヤリングは盗まれたんだよ、世間では、そして吉野京子の届けでは、ね。落とした、失くした。と思ってるのは俺たちだけだ。盗まれたと言うのなら、少なくとも最後に確認したのはいついつの何処。そこに無いから盗まれた。ってなる筈だ。」

 「・・・うーん、言われてみればそうですね・・・。」

 「警察も、俺たち共演者に話を聞いてはくるんだが、本当に適当というか・・・。尤も、俺は警察の事情聴取なんて受けた経験が無いから、あれが普通だと言われれば、へえ。って感じだけど、でもそれにしても・・・って思うんだ。吉野が大物で所属事務所がデカイから、その手前、形だけ事情聴取をしてる、といった風にも取れる。それに。」

 言い掛けて、レンが目を泳がせた。
 それは一瞬だったが、深く付き合っている春歌は見逃さなかった。

 「なんですか?」
 
 「いや・・・違うんだ。これは違う、ごめん、俺が勘違いした。」

 「?」

 春歌が尚も聞こうとしたが、レンが素早く話題を繋いだ。

 「大体ね、楽屋の入り口には無くても、テレビ局の出入り口には防犯カメラがあるんだ。普通に出入りした君が映っていない筈ないのに、君の話が一切出ない。」

 「え。」

 防犯カメラ。
 その存在は忘れていた。トキヤだったら思いついてもおかしくないだろうに、彼も口にしなかった為に春歌は全く気が回らなかった。

 テレビ局のセットの中での撮影だったのだ。テレビ局に防犯カメラが無い訳が無い。自分の出入りする姿は映っているに決まっている。どうして気付かなかったのだろう。ではもう、自分の痕跡は明らかになっているのではないか。

 ぞっとして手が冷たくなりかけた時、レンが言った。

 「君だけじゃない。テレビ局なんて大勢の人間が出入りしてるのに、俺たち共演者に一通りと、監督らに話を聞いただけらしいんだ。出入りの業者や、その日別のスタジオで収録していたタレントには一切話も聞いていない。というより、その日誰が、あのテレビ局に出入りしたかを警察が調べてる感じは全く無かった。」

 「そうなんですか?」

 なぜかほっとして、体温が戻る。自分だけじゃない。という部分に何故だか芯からほっとした。

 「だからおかしいんだよ。・・・まぁ、かと言って、やっぱり正直に拾いましたと名乗り出て済む話じゃないな、というのも今日確信した。暫く様子を見ていた方がいい。」

 「神宮寺さんがそう言うなら。」

 「ん。それがいいと思うよ。・・・おいで。」

 ぐいっと、ソファに仰向けのレンの上に引っ張られる。
 厚く逞しい胸板に、そっと添い被さる。髪を撫でる手の心地良さに、春歌は目を閉じた。レンの鼓動が微かに聞こえて、静かな夜に安らげる空間となる。

 「大丈夫だよハニー。俺がうまくやる。俺を信じて。俺に任せていてくれればいい。」

 その言い方は、春歌の胸の表面に僅かに疑問を湧き立たせたが、レンの腕が力を帯びたと同時に体を引っ繰り返され、
 
 「していい? せっかちでごめんね。すぐ欲しいんだ。」 

 と。耳元で睦言を紡がれた為に泡と消えた。

 キスをされた時、こんなに急ぐ彼は珍しいと感じると同時、ちらりとトキヤの舌が思い出されて春歌の身体が奥から震えたが、レンの腕が忽ちそれを掻き消した。

 せっかちでごめんね。という言葉通り、録に肌への口づけもなく、レンがぬるついた愛液を掬い花芽を擦った。

 「っひ、や、そんな、いきなりダメ、ああっ。」

 軽い拒否を、煩いとばかり乱暴なキスで封じられる。 
 今度はぐいぐいと指の腹で強く押され、強烈な刺激が瞼の裏に閃光を走らせる。強すぎる快感に大きく跳ねる腰も、レンの身体にしっかり乗られている。ぐるぐると高速で身体を駆け巡り燻ぶる熱が、爆ぜる行方が見えない。

 ソファを支えにしてフローリングに膝立ちになり、そのままレンに後ろから穿たれた。

 「あっ、あ、神宮寺さ、はげしっ・・・!」

 膝立ちはすぐに四つん這いにされてるのと変わらない姿勢にされ、レンに掴まれた腰から下は早くも熔けかかっている。程無く床にそのまま上半身まで崩れた春歌を、レンは貪るように休みなく犯し続けた。

 大分揺らされ、固い床に頬を擦りつけながらレンを受け止めていた春歌は、レンが吐精した自身のモノを抜いてもぐったりとしていた。

 ベッドへ移動して二人で手を握りあう。
 
 今夜のレンは、泣きそうな顔で春歌を見つめたかと思うと、寝返りを打つふりで顔を背けたりするような仕草を見せた。何かを言いかけてはやめたりもして、春歌は妙に不安になって、どうしたのかと2度程それとなく聞いたのだが、そうするとレンはいつもの飄々とした口調でなんでもないと返答をした。

 何でもないわけはないのだが、レンが追及を拒んでいるのも見て解ったので、春歌はそれ以上聞けなかった。

 流石に、今日の事がバレる筈がないと思っていた春歌も、レンのその脈絡のない態度に不安になった。
 まさか今日のトキヤとの逢瀬の内容すら知られているのではないかという、ぞっとしない想像に身を竦め始め、早々に眠った。

 








 


 「そうですか。」

 トキヤが腕を組んだ。

 「まあ細かい部分までは判りませんが、大方、警察にしてみれば、吉野さんの発言が曖昧で、届け出を受理したものの、捜査に本腰を入れるような案件ではないと判断したというところでしょうか。私も吉野さんとは少なからず面識がありますから、あれだけハッキリ物を言う人が曖昧な証言をしているとなると、警察みたいに観察力に優れている職業の人間から見れば、余計届け出の信憑性に疑問が湧くでしょう。」

 食後のお茶を啜りながら、トキヤは淡々と言う。
 
 翌日の夜、春歌はレンの話をそのままトキヤに伝えた。

 どうやら警察は本気になって探す気がないようだ。だが、吉野京子の様子を見る限り、発言に曖昧さが残るものの、彼女の盗まれたという主張は嘘には聞こえない。狂言では無さそうだ。共演者に心当たりのありそうな者はおらず、不審な目撃証言もない。尤も、出入りしていた人間すべてを警察が防犯カメラなどで調べた様子もないから、目撃情報など限られた人数のうちの話だ。

 それらをトキヤに、夕食を食べながら話をした。
 夕食は、春歌が簡単に汁物を作り、あとは買ってきたもので済ませた。


 「吉野京子とはお知り合いなんですか?」

 昨日も思ったが、トキヤは彼女を 「吉野さん」 と、知人のように呼ぶから気になって聞いてみた。

 「お知り合い・・・と言えばまあ、そうですね。あちらにしてみれば、私は顔と名前位は覚えているタレントの一人、という感じでしょうか。HAYATOだった頃、2度ほどドラマで御一緒しました。まあ、私は端役で向こうは主役ですが。でも、少し前に仕事関係で食事に誘われた時に彼女も居まして、覚えていて下さいましたよ。」

 「そうなんですか。やっぱり、実物も綺麗なんでしょうね。」

 「女優を名乗って、実際売れているだけのオーラはありますよ。綺麗かどうかは好みの問題でしょうから、私の個人的見解としては、それ以上の返答は致しませんが。」

 トキヤが少し冗談めかして笑う。春歌もそっと微笑んで見せた。

 キスをされた昨日の記憶は、思った程春歌をぎこちなくさせなかった。
 自分の秘密を打ち明け、頼っている相手。心を開くという感覚も覚え始めているのかもしれないと思った。

 それでもそれは、突き詰めれば間違ってるとも自戒している。これ以上トキヤと居たら、自分の恋人はレンだという確かな事実がぶれそうで怖いのも本当だったから、春歌は今日は、用が済んだらさっさと帰るつもりだった。トキヤはそんな春歌の気持ちに気づくでもなく、のんびりしている。

 いつ、「今日はおいとまします。」 と切り出そうかソワソワしている春歌に、トキヤが話題を振った。

 「今日、面白い噂を聞きましたよ。」

 「え? 噂?」

 「ええ。」

 君にとって面白いかどうかは・・・と前置きをして、トキヤが言った。

 「レンが、吉野さんと一緒に都内のホテルのエレベーターからラウンジへ降りてきたのを見た。という噂です。」

 ぐらりと。
 カップの中の紅茶が、揺れた気がした。揺れたのは春歌の視界だ。

 「・・・・・・・・は?」

 気づいたら世界は白かった。
 そんな錯覚が見えた。自分が今座ってるこの状態だけが取り残されて、他の総てが消えたような錯覚。

 「レンと吉野さんを見間違えない人間の話ですから、事実だと思いますよ。一応2人とも変装していたらしいですが、知ってる人間が見ればすぐ見破れる。2人の会話は聞こえなかったが、何やら他人には見えなかったと。」

 春歌は停止していた。
 受け入れられないトキヤの言葉を、脳が 聞いた。という事実から押し出そうとする。突然早まった鼓動で、息が苦しくなった。

 「他人には見えない・・・って・・・。」

 「さぁ、その辺は何とも・・・。私自身が見た訳ではありませんから、どういうつもりでそんな表現をその人が使ったかは定かではありませんが。少なくとも、他人同士が偶然同じエレベーターに乗り合わせてラウンジまでやってきた。という風には見えなかったのでしょうね。」

 体内を巡る血管の動きが不規則になったように、春歌は胸を抑えた。
 
 どうしてか解らないが、昨日、ベッドで不意に言葉を切り、目を泳がせたレンを思い出した。いやな感覚だった。隠し事をされているような、真実を逸らされているような気持ちになった。

 それを思い出すと同時に、トキヤとの事は、キス位で騒がない恋人になる為には決して罪悪では無い。などと、都合の良い大義名分を思い付いた自分に対する天罰なのかも。という恐怖も湧き起こった。

 春歌は、青い顔で胸を抑える。

 その様子を見ていたトキヤが、剣呑な声で春歌に尋ねた。

 「君は、笑い飛ばさないのですか。それはその人の見間違いだと。レンに限ってありえないと言い切らないのですか。昨日、レンはイヤリングを盗んだりしないとあんな勢いで言ったのに、この件に関しても同じように言わないのですか。」

 「そ。れは。」

 言われてみればそうだ。
 何故今自分は、エレベーターから降りてきた。というだけで、既にレンが浮気したと言う前提で理由を考えた? 

 「レンは君に対して、不誠実だという事ですか。」

 「そんなことは! 不誠実だなんて・・・そんな事は・・・ありません。別に、普通に優しく、してくれて、ます・・・。」 

 大きくはっきりと言い切れない春歌の態度の弱々しさが、トキヤの心に火をつけた。

 それは彼の嫉妬心、だったのかもしれない。顔を真っ青にするほど不安にさせているクセに、なのに庇ってもらえるレンへの、妬ましい気持ちだったのかもしれない。

 トキヤが、口調をきつくした。

 「あのイヤリング。本当は盗まれたんじゃなくて、レンが何らかの理由で吉野さんから預かっていたんじゃないですか。だとしたら、彼の荷物の中にあっても説明がつく。」

 突然の言葉に、春歌は信じられないという顔でトキヤを見た。

 「そんなの、そんなのおかしいです。だったら、吉野京子が被害届なんて出すはずない・・・!」

 どうして語尾が震えるのだ。春歌はそんな自分に泣きそうになりながら抗議した。
 トキヤは冷たい表情で春歌を見遣る。

 「親密な仲になって、プレゼントされた後で痴話喧嘩になった。という仮定はどうでしょう。吉野さんが腹いせに、被害届を出して今に至る、とか。だから追及されると、発言があやふやになるんですよ。レンのせいにしたいけど、うまく出来ないから。」

 こんな事を言えば春歌は益々傷つくと判っているのに、トキヤは自分を止められなかった。

 「辻褄は合いますね。案外、一つずつをお互いが持つことでペアアクセのつもりだった。どうです、ありえない話でもないでしょう。彼は女性の心をくすぐるのが非常に上手いですし。そういうの、女性が好みそうなアプローチじゃないですか。」

 「ちが、違う・・・そんなの、違う・・・。」

 頭の中で、昨夜のレンが交錯する。
 話題を変えたレン。春歌の方を見ずに会話をしていたベッドの上。落ち着かない仕草。聞いた時はよく意味が解らなかった 「俺がうまくやる。」 という台詞が、急速に現実味を帯びてくる。

 ずっとレンと過ごして来た春歌だからこそ判る。昨日の夜のレンが見せた、普段とは異なる些細な差。それの何がどういう意味を持って現実感を帯びるのか説明が出来ないが、少なくとも今、何も判らないこの状況より、トキヤの説明は理にかなっている気がしたのだ。そしてそれが怖い。まるでトキヤの仮定が本当になりそうで怖いのだ。

 「今日はもう帰ります。色々すいませんでした。」

 居たたまれずに帰ろうと立ち上がった春歌の手首を、トキヤが掴んだ。

 「どうして逃げるんです。」

 「逃げてなんか・・・。」

 逃げている。
 判っている。だがそれ以外の行動が取れない。トキヤの例え話に真実味を感じるのが嫌で、すぐこの場から逃げ去りたい。

 「・・・もしも、レンが君に対して不誠実だと言うなら、レンには君を任せられない。」

 昨日と同じトキヤの睫毛がつくりだす影から、春歌は咄嗟に逃げた。

 しかし遅かった。
 根元から吸い上げられた舌が痛くて、春歌はそのせいで声をあげた。骨が軋みそうに抱きしめられた背中も、殺気立った唇に吸われる舌も、あまりに痛くて悲鳴をあげたが、塞がれてる喉の先からは篭った呻きしか漏れない。

 大分経って離された頃には、2人して息が上がっていた。
 抱きしめているトキヤの鼓動の早鐘のような荒さに、春歌はもっと色々奪い取られそうな気がした。これ以上攫われたらレンの元へ帰れなくなりそうで、怖くて思わずトキヤを強く突き放した。

 「や、一ノ瀬さん・・・ッ!」

 思い切り押したつもりが、しかしトキヤの体はびくともせずに逆に余計強く抱きしめられた。

 「やめ、離し、てっ・・・。」

 「何もしませんから!」

 「っ。」

 泣きそうな声に驚いて春歌が抵抗を止めた。
 腕の力すべてで抱かれているような強さが、春歌の背骨を軋ませる。

 トキヤは既に後悔していた。
 
 感情が膨れ上がって、春歌をわざと傷つけるような発言をした自分を悔いていた。泣かせたいんじゃない。傍にいてほしい。どんな理由でも。例えそれが、自分では無い男を愛してるからこそ会ってくれるのであっても。

 「これ以上は、何もしません。だから、帰らないで・・・!」

 本音が漏れた。
 どんな些細な理由でも良かった。春歌が、自分を頼ってくれるなら。この理由をずっと引き延ばしていたい。

 「今だけ、あと少しだけ抱きしめていたい・・・。好きなんです、ずっと、好きだったんです、君が・・・。」

 トキヤの必死さが辛くて、春歌は体の力を抜いた。
 
 きっと、自分の揺れが、彼を苦しめている。
 
 自分が楽になりたくて、軽い気持ちでイヤリングの話をした時から。レンを好きでいながら、だからこそレンが理由で寂しい時に甘える為に、好意を逆手に取ってトキヤをきっぱりと拒絶しない自分が、トキヤの真剣な気持ちを傷つけているのだ。そう思うと、自分が恥ずかしくて消えてしまいたかった。

 そんな春歌の自己嫌悪を見透かしたように、トキヤが、抱きしめながら繰り返す。

 「利用してくれていい。それでも、いいんです・・・。好きです。もう少し一緒に居て・・・。」

 トキヤの声が胸に痛みと一緒に染み込む。
 春歌はそのまま、トキヤの腕が離されるまで、大人しく抱きしめられていた。

 


 

 
 言葉通り、キス以上の何もしてこなかったトキヤの部屋から、春歌は複雑な想いで帰ってきた。

 逃げ場所は自分から閉鎖しなければ、いつまで経っても切り離せないのだと気付いているが、思い切れない。そんな自分が心底いやだった。

 リビングの灯りをつけ、取り敢えず見慣れた風景にほっと安堵の息を吐く。
 習慣で携帯電話を取り出すと、着信があった事を知らせるランプが光っていた。
 
 「神宮寺さん・・・!」

 春歌は慌てて履歴を確認する。

 着信が、幾つも入っていた。
 最後の着信は1時間以上前。急いで時計を見た春歌は、もうすっかり遅い時間を指す針を見てへこんだ。

 {気付くのが遅くなってごめんなさい。急ぎの用事じゃなくても、まだ起きていたら遠慮せず今から連絡下さい。待ってます。}

 すぐにそのようにメールし、暫く返信を待っていたが、電話が鳴る事は無かった。
 

 そしてその日から、レンは帰ってこなくなった。
 一切の連絡も、途切れた。






   

   

    
      To Be Continued・・・







 


 
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みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

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http://ameblo.jp/milk15azuki
にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

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感想・お世辞は大歓迎ですが、苦情は受け付けられません。
鍵付きのコメントは、拍手コメントも含め一切の誤表示を防ぐ為、お返事は致しませんが、必ず読んでおります。励みになっております。有難うゴザイマス。
拍手とかコメントとか貰えると泣いちゃうくらい嬉しいですよ・・・。

鍵付きでは無いコメントは、拍手コメントも含め必ずお返事させて頂いております。
宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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