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Russian roulette 1

 
 

 Russian roulette 
       Vol.1





 
 毎日が過ぎるスピートは早い。

 春歌は朝目が醒めてすぐ、昨日仕上げた曲をもう一度チェックした。夜の間に完成し仕上げたとは言え、一晩経って見直したら何が発見されるか判らない。特にプロである以上、些細なミスこそ許されない。

 それを防ぐ為には、余程の事が無い限り〆切りに充分間に合わせ、完成したと思えても一度眠ってから、再度のしつこいチェックをするのが最適だと思っているから、今日もそれをする。

 隅々まで確認をしてから、春歌は曲のデータを指定の宛先へ送信した。

 「これで、少しの間はおやすみです・・!」

 掃除をしながら、暫しの休日に思いを馳せる。
 今回は、人気のドラマ枠の新番組の挿入曲を何曲も担当させて貰えた。事務所の力のお陰で、実力のある著名な人物に師事出来たのが大きかった。このチャンスをものにしなくてはと、春歌は気合いを入れていた。

 佳境に入ってからは音也との連絡も最低間のやり取りに抑え、食事もそこそこに曲作りに没頭した。丁度今回、音也は長期の映画ロケに出ていたので、恋人同士の自分達としては有難いタイミングだった。

 (音也くん、明日には戻ってくる予定だから、そうしたら久し振りに、逢いたいです。一緒にお出かけもたまにはしたいけど・・・何とか人目につかないように・・遠くの街まで行く、とかならダイジョウブでしょうか?)

 キッチンを水拭きする手すら、軽やかに動くように見える。
 キュキュっと、水垢を何気に強い力で擦った時、何故か、ロケに出掛ける少し前に音也からベッドで、結婚しようと言われた事を思い出しはたと手を止めた。


 思い出すと頬が熱くなる。
 頭がぼんやりする。

 誰も居ない現実にほっとしながら、悪い事をしたように俯いて、流し台を拭く手を止めた。

 あの時の音也は、遠慮無く春歌の中に注ぎ込んだ。
 それこそ、いつもよりしっかりと春歌の尻を抱え込み、確実に目掛けているのが判る程に。
 結果的に妊娠などしなかったが、2人とも、どうなってもいいと良い意味で思った上での行為だった。

 それを思い出して目を瞬かせる。
 体の内側に何かが灯ったような感触がして、慌てて布巾を洗った。

 音也とは、もう何度体を重ねたか判らない。なのに、何度でも体は最高潮に熱くなる。
 沸騰して、頭の中までぐちゃぐちゃに掻き回されるような感覚。
 あれは、音也としか得られない。音也を好きな気持ちでしか得られない。そうとしか思えない高揚だった。思い出すだけでいつも、春歌はうっかりぼんやりとしてしまうのだ。

 
 昼になってからお茶を淹れて、一息つきながら音也にメールした。

 「今朝、お仕事仕上げました。暫くお休みです。次のお仕事も入ってますが、それでも3日は最低でも空けられます。明日、予定通り戻って来られたら逢いたいです。今日のうちにカレーを作って、一晩寝かせて美味しくしておきますね。」

 「送信、えい。」

 春歌は小声と共にボタンを押して携帯電話を仕舞い、買い物に出掛けた。




 「!」

 外に出てすぐ、スーッと自分の横に車がついて春歌は驚いた。
 助手席のウインドウが下がり、中から聞き慣れた声がした。

 「こーはいちゃんじゃなーい。ドコ行くの~? おにーさんとデートしないー?」

 「寿先輩!」

 運転していたのは事務所の先輩、寿嶺二だった。
 マスターコース時代は音也と同室だったからか、届け物をしたりして部屋でよく顔を合わせた。勿論仕事でもこれまで何度か一緒になった。明るさは音也に負けず、場の空気を読む能力は業界暮らしの長さを思わせた。

 彼ら先輩の組むユニット・カルテットナイトの歌を、最近春歌が手がけたばかりだ。
 その時はかなり面倒を見て貰った。仏頂面の蘭丸と意思の疎通を図るのに手こずり、嶺二が何度取り成してくれた事か。

 「私はちょっと買い物に・・お野菜とかを。先輩はこれからお仕事ですか?」

 「ううん、今さっき、テレビとラジオの生放送を2本済ませてきたトコロ。今日は、朝のあの人気番組、二重丸マーケットのゲストだったんだよー僕!」

 「あ、そうなんですか。すいません、私、曲の最後の仕上げをしていたので朝はテレビを見ていなくて・・・。」

 春歌が慌てて頭を下げる。

 「えー、ブーブー! 見てないのぉ、ひどーい。じゃあラジオは? ほらほら、あのAMアイドルタイムって番組、結構人気ある番組なんだけどさ、聞いた? 」

 「も、申し訳ありません・・・。」

 「えー! マジでー? 僕の貴重な生放送出演を見てないなんて、後輩ちゃんにはペナルティだねー。ハイ先輩命令。乗って。」

 「は?」

 いきなりの嶺二の言葉に、春歌がきょとんとした。

 「次の仕事は夜でね。夜って言っても割と早い時間なんだけど、すっごい間があるからドライブでもしようと思って走ってたら君が見えたから。折角なら、可愛い女の子と一緒がいいじゃない? だから、乗ってよ。お買いもの、僕ちんがつきあうよ。」

 サイドブレーキを掛けて降りてきた嶺二が、助手席のドアを開けて春歌を促す。
 春歌は誘われるままに乗り込んだ。

 
 
 「わぁ、きれいですねえ!」

 買い物なんて最後でいいよね、と嶺二に言い包められ、着いた先は見晴らしの良い場所だった。街が一望できる。

 「ここ、結構景色がいいのに人が居ないんだよ。あんまり車止めるスペースも無いからだと思うけど。いいでしょ、眺め。」

 「はい。」

 車に乗ったまま、二人して道中で買ったペットボトルのジュースを飲む。フロントガラス越しに見る昼間の真っ青な空と、白っぽい色が多い建造物の街並みが気持ちをゆったりさせる。

 「ねえ後輩ちゃん。」

 嶺二が、徐に話しかけた。

 「お買いもの付き合うんだからさ、僕ちんにもご飯作ってよ。後輩ちゃんの作るご飯、おいしそ~。」

 「それは構いませんが、お口にあうかどうか・・・。」

 決して拒絶の意味では無く、自信無さげに春歌が答える。

 「あうあう。っていうか、合わせちゃうよー。なんでも美味しく頂きます! 何作ってくれるのかな。仕事終わったら行ってもいい? いい?」

 嶺二が調子良く言うので、春歌はつい朝から考えていた事を口にしてしまう。

 「今日は久し振りなので、やっぱり好きなものがいいかなって、カレーとサラダを作ろうと思っていたのですが・・・。」

 そこまで言い、きょとんとしている嶺二に気付いた春歌が口を噤んだ。

 「久し振り? なにが?」

 「あ、あのすいません、カレーを作るのが久し振りで、っていうか、食事を作るのが久し振りで、あの、その。」

 しまったと思いながら笑顔で取り繕う。
 一応、ひよっことはいえ芸能界で仕事をしている身だ。学生時代より、場を切り抜けるのは上手くなったと思っている。

 「後輩ちゃん、そんなにカレーが好きだったの? 僕がから揚げ好きなくらい?」

 「そ、そうなんです!」

 笑顔で会話を続けてくれる嶺二にほっとして、春歌も笑う。
 そう。音也はアイドル。恋人が居るのは、世間には知られてはいけない秘密。

 そして春歌も所属するシャイニング事務所も、学園同様恋愛はご法度だった。だから、先輩にも知られてはならない。
 音也はあまりそういう警戒心が無く、事務所の近しい人間にはバレてしまっているような気もチラチラするのだが、決定的な場面を抑えられたなどの事例がある訳では無い。幾度かヒヤっとした事もあり、2人共それなりには気を付けて生活していた。

 「おとやんも、カレー好きだよねえ。」

 「そうですね。」

 にっこり笑って返事をする。
 何事も無いかのように返事が出来ている事に自身ほっとして、また窓の外に目をやった。それからまた他愛も無い話をして、買い物へ向かった。


 

 寮の前で、エコバッグを抱えて春歌は車を降りた。

 「先輩、有難うございました。助かりました。」

 「もーほんとにいいの? 部屋まで運んであげるよ。ジャガイモとか、重たいでしょ。」

 「大丈夫です。先輩も、17時までにスタジオに到着しないといけないんですよね? あと1時間もありませんから、遅刻したら大変ですので、このまま行って下さい。」

 「そう? じゃあ、多分8時頃には大丈夫だと思うんだ。美味しいカレー、作っておいてよ。あ、サラダのトマトは食べやすいように角切りしてくれる?」

 「えっ?」

 ぺこりと頭を下げていた春歌は、彼の言葉に慌てて顔を上げた。
 しかし嶺二は、ハンドルを握ったまま笑顔で踵を返しただけだった。

 「寿先輩、待っ・・・!」

 冗談なのか本気なのか判らない春歌を残したまま、嶺二の車はシャイニング事務所の寮を後にした。
 







                   To Be Continued・・・






 
 
 
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みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

本家ブログはアメブロ
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にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

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宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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