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ミニチュアガーデン ~錫也 from スタスカ~

 

 以前、本家ブログのアメンバー限定記事で挙げたSSです。
 再掲載にあたり、若干加筆修正されております。スタスカ後春PSP発売に因んで、私の中の全年齢ゲー最悪のヤンデレ代表・アムネのトーマに並ぶ、スタスカより、錫也で、お送りします。

 年末の告知でちらっと記載した、妄想ファミリーさんとの合同本に掲載したシークレットレッスンの嶺ちゃんサイドストーリーを、1月の下旬にUP予定です。本を読んで下さった方への、ささやかなお礼です。エロほとんど無しの、嶺ちゃんのモノローグ的なモノになりますが、宜しくお願い致します。
 





 ミニチュア・ガーデン




 優しいにも、色々ある。
 
 私の幼馴染は優しい。
 お料理上手で頼れるお兄ちゃん。面倒見のいいお母さん(?)、そんな表現がピッタリな人柄は、子供の頃から変わらない。

 周りにも、優等生として信頼されている自慢の恋人。
 いつも、自分より私を優先してくれて、お姫様扱いしてくれる人。私だけを一途に想い、大切にして、尽くしてくれる人。
 
 彼が言葉でハッキリ想いを伝えてくれて、私がそれに応えてからは、より一層深い愛情を注いでくれるようになった。彼の世界は、私を中心に動いていると言っても、それはあながち自意識過剰では無い。
 
 判ってはいる。
 彼の愛は、激しい独占欲で縁取られていると。それゆえの、彼の世界の中心が私。であると。

 でもその事を、うっかり忘れる時もある。そして、こんな事態を引き起こす。

 
 「錫也、お願い、これ、解いて・・・。」

 聞き入れて貰えないだろうという諦めを捨て切れず、一縷の望みのつもりで懇願した。

 長くて深いキスをし終え、私の首筋を舐めながら髪を撫でていた彼の手が泊まる。
 ゆっくりと、少しだけ体を離し、じっとこちらの目を見詰めてきた。錫也は目の奥を僅かに淀ませ、いつもと同じ穏やかな声で言う。

 「痛くないだろ。大丈夫、お前の体に傷が残るような真似はしないよ。」

 「・・・違うの、そうじゃなくて、これ、解いてほしいの。お願い・・・。」

 恐怖がじわじわと足首辺りから這い上がってきて、滅多な事を口にしたら何かされるのではないかと怯えながら、聞き入れられない依頼をまた紡いだ私は、どんなに滑稽に見えているのだろう。

 着物の腰紐のようなモノで縛られた体は見るも耐え難い様で、私は意味もなく泣きたくなっていた。
 座って大きく脚を開いた状態で固定されている。腕も一纏めに縛られ、恥ずかしさが行き場を失くして、思考が劣化していくのが判る。

 「大丈夫、綺麗だよ・・・。お前の体は、こうすると本当、イヤラシイよなあ。興奮するよ。ああ、ココ、、もう濡れてるじゃないか・・・淫乱なお姫様だねえ。」

 「アアッ、やああん、ダメ、錫也お願いッ、許して、あああ。」

 ぐちゅっぐちゅっと指で蜜壺を掻き回され、逃げようと体を動かしても、縛られていてはどうにもならない。

 「許して? お前、自分が悪い事したって判ってるんだ? 何だ、さっきはトボけてたのか。じゃあまだ終われないな。」

 声に僅かに笑いが混じってる気がした。
 どうして、何がオカシイの? 解らない。

 解らなくて、思わず感情を意見も整理出来てないまま、言葉だけを必死で発する。

 「んんっ! あっ、そんな、悪いコト、なん、て。してな・・・も、誰にもついていったりしないからぁっ・・・あああん、あんっ。」

 「・・・。」

 笑う気配。
 
 「喘ぎながら言い訳されても、ちっとも説得力無いぞ。どうして解いて貰えないのか、もう解ってるんだろ? 悪い子にはお仕置きが必要なんだ。」

 そう言って彼は、指をぐっと奥まで押し込んだ。

 「あああああああああっ。」

 奥を抉るような刺激に、彼の言葉を考える余裕が消される。

 前にも似たような事があった。これで、3度目。
 彼は、強烈な嫉妬心を覚えると人が変わったようになる。

 この前は、ベッドの上に乱暴に放り投げた私の上に伸し掛かり、他の人と楽しげに話をしていた、誰々と2人きりでいた、俺をほっぽって知らん顔をしていたと、ある事無い事と散々並べたて、淫乱と罵りながら、執拗に私を攻め続けた。

 他の男の人を知らない私でも、錫也が多分所謂絶倫であるだとうと、なんとなく感じていた。

 そんな彼に、なすがまま乱暴に揺さぶられている間ずっと、どこが感じるのか、自分の体がどうなのか言葉にさせられ、錫也を愛している。私は錫也だけのモノだと、繰り返し言い続けるのも強要された。

 その後は、私の愛液でべとべとになり、精を吐し終わった彼のモノを、丁寧に舌でキレイにするよう指示された。
 半ば気絶していた私は、何も考えられずただ言う通りに従った。錫也はそれでやっと気が済んだのか、その後はいつもの彼に戻り、好きだ、離れないでほしいとうわ言のように繰り返しながら、弄ばれすぎてボロボロになった私を、泣きそうな、縋るような腕で長い時間抱き締めていた。

 嫉妬で彼は豹変する。まるで、もうひとつ人格があるかのように。ソレに気付いたのは、恋人同士になってからだ。

 小さい頃からずっと一緒だから、彼が平和主義者でありながら、完全に敵と見做した相手には度肝を抜くような残酷な仕打ちをするのを見た日もあった。気付いたというよりは、薄々知っていたが身につまされた。という表現が正しい。

 目の前の錫也は、薄っすら笑っているようにも見える。目も、唇も、笑顔のソレでは無いのに。
 
 濡れた下半身を嬲っていた錫也の指が私の唇をなぞり、侵入して舌を挟む。抵抗のつもりで顔を横に向けようとすると、また真正面を向かされる。

 錫也の顔を、見るようにされる。

 「ね、もうこんなだよ、お前のマ××。ほら、ちゃんと舐めて・・・そ、俺の指、お前の汁でベッタベタだろ。ハハ、お前のその顔、すごく可愛い。ほぅら、俺の顔ちゃんと見て、俺を見ながら、舌を動かすんだよ。」

 半分は恐怖心。今の彼に逆らったら何をされるか不安だったから、素直に彼を見た。
 ギュっと閉じていた目を開けて舌を動かす。こんな時でも、自然に反応して教えられてきた通りに舌を動かしている自分そのものが、彼の手から逃れられない永遠を暗示している気がして頭が白む。

 「ンむ・・・ぁ、・・・ん。」

 自分の吐息の卑猥さに体温が上昇しかけた。
 ソレが判ったのか、錫也がすっと私の口から指を引き抜き、見せつけるみたいにゆっくりと自分で舐めた。

 「んー・・・もうお前の涎の味しかしないねえ。お前のコッチの味を楽しみたいのに。」

 そう言う錫也の舌が、やけに苺みたいな、瑞々しさを持った赤だった。時が止まったような感覚の中で、ゾクゾクと背中に何かが沸き上がる瞬間。

 錫也はそのまま私の脚の間に顔を埋め、秘部を舌で愛撫し始めた。
 一番敏感な芽を舌で転がされ、既にそれがぷっくりと膨らんでいる事実に気付かされ、忽ち忘れかけていた羞恥心にハっとなる。

 「や! やああ、錫也やめて、やめて!」

 感情の見えない愛撫を受けているのが怖くて逃げたくても、私の体をガッチリ抑え付ける彼の手は、まるで石の如く重い。強く吸われたり、指で弾かれたりを何度もやられ、世界が段々遠くなる。


 

 同じ部の先輩に、話があると連れ出された大学裏手の芝生での出来ごとを、錫也はどこで見ていたのだろう。

 錫也は、先輩が私に恋心を打ち明けた辺りから、既に見ていたらしかった。

 ただ自分の気持ちを伝えたかったんだと微笑み、彼氏が居るのは知っているから、返事は要らないと俯いた先輩。そして、両手で私の手を取ると、踏ん切りをつけたかった、聞いてくれてありがとう。実家の方で就職するから、きっともう逢う事もないだろうけど、どうか元気で。と、笑顔で言ってくれた。

 嬉しかった。
 嬉しくないなど、そんな人はいないと私は思うのだ。

 真面目に部活動に取り組む姿勢を尊敬していた人だったから。いつも部の皆に分け隔てなく優しく接してくれた。そんな、人として好印象な相手に好かれていたのが判って、嬉しくない筈がない。

 少し浮かれた気持ちは、迎えにきた錫也の一言で凍らされて砕けてしまった。
 迎えにきたよ、と私の顔を見てにっこりと笑った錫也。そして、帰ろうか、と彼が言ったので、隣に並んだ途端、

 「やっぱりあの男、お前のことが好きだったんだな。どさくさ紛れに手ぇ握るとか、ありえないね。どういうつもりなんだか・・・手、握られっぱなしのお前も、な?」

 声は笑ってるのに、底冷えする炎が灯る目線を流して、私の手を持った彼の手。
 熱くて、氷と同じ痛さを持った冷たい手。

 「そんな言い方って・・・!」

 思わず少しむっとして、文句を言い掛けた私の手を、感情の無い目で握り潰すように力を入れた錫也。
 私は、黙るしか無かった。

 「帰ろう。俺の部屋だよ・・・・いいね? いやなのか? いやじゃないよな?」

 有無を言わさない声音。
 帰る場所を選べない私は、彼の法廷では既に有罪だ。前科2犯の私の最終弁論は場外で打ち切り扱いとなり、主文を読み上げない裁判官の手に引かれ、歩き出す。

 あの帰り道と、部屋に入るなり錫也が自分の鞄を放り投げ、仲に入ってたレポートファイルや筆記用具が散らばったままの床を見ながら、彼に啼かされている現実が繋がっている。

 それを上手く頭で整理しきれなくて、今甘い声を上げている自分が空中の浮遊物にしか思えない。
 こんな風にされ、これ以上が怖くて不安がる私をどう思っているのか、錫也は一向に愛撫を止めない。執拗に舌で嬲られ続け、嫌がりながらも快楽の頂上に追いつめられ落下する寸前、錫也がいきなり動きを止めた。

 彼は、荒い息を整えかけた私の顎をクっと掴み。

 「ごめん、気が利かなくて、悪かった。コッチばっかりじゃ可哀想だよな。」

 「えっ・・・?」

 散らかった荷物をガサゴソと漁り、クスクスと喉で笑いながら私に向き直った錫也が手にしていたのは、レポートを束にして挟んでいた文房具だった。
 プラスチックのクリップを掌で転がしながら、錫也はもう片方の手で私の乳房に触れ、撫で回しながら唇で突起を包み込んだ。

 「はぁん。」

 慣れているのに堪らなく甘い痺れが走る恋人の舌。
 さっきまで散々下半身に刺激を受けていたせいで、すっかり固く尖った胸の天辺。キスされて更にしこったそれをクリップで挟まれた。

 「キャあああああああ!」

 驚きと痛みで思わず悲鳴を上げた。
 激痛が襲ったわけではない。恐怖が勝った悲鳴だった。

 しかし彼は私の悲鳴に一瞬の動揺も見せなかった。それどころか、突然の事に驚いて戦慄く私の蜜壺にまた指を入れ、激しく抜き差しし始めた。

 彼の指の動きに比例して白痴みたく、ああ、ああ、と繰り返し啼くだけしか術のない無能な自分は、最早このまま刑を受け入れるしかないと思い知る。

 冤罪?
 錫也と私の世界で私が被告人で在る以上、そんな概念は存在しない。

 「いつも甘噛みされて悦ぶくらいだから、お前はきっとこうされても感じるだろうと思ったよ・・・。やっぱりお前は、俺の予想通り、俺の知ってる通りだ・・・。気持ちいいんだろ、こんな風にされて、こんな顔しちゃって・・・。」

 敏感な天辺を挟んだクリップを弾かれ、痛みなのか快感なのか判別できない。
 湧きあがりが切れ目ない快楽で、頭の中心から自分のすべてが蕩けていきそう。言葉を発する神経の捻子も外れ、同じ喘ぎ声だけが口から流れる。疑問も抵抗も砂となり毀れ落ちていく。すべてがどうでもいい。

 このまま錫也の言いなりでいれば・・・そんな陥落が見えた時、怒張した彼のモノを膣口からずぶりと推し入れられ、途端軽く飛んだ。

 
 「・・・ぅあ、すご。溢れすぎ・・・。」

 びちゅっと勢い良く磨られた粘度のある水の音がした。
 錫也が一旦大きなモノを抜いた時、同時にごぽりと確かに音がして、私の秘部は大量の液体を垂れ零した。

 錫也はそれを見逃さなかった。
 
 「あーあーお前・・・こんな体になっちゃって、まったく。俺以外で満足出来るって勘違いしない方がお前の為だよ。なぁ、正直に言ってみな。こ、れ。」

 「んはぁ!」

 錫也がクリップを軽く揺する。
 ビリビリと痺れが走って、目の前が染まる。頭の中まで染まる。

 「感じてんだろ。気持ちいいんだろ、俺に苛められて。・・・変態。」

 彼の言葉が、私の中のほとんどすべてを剥がしにかかる。ただただ、錫也に嬲られ啜り泣くしか出来なくなる。

 「ほぅら、正直に言ってみな。こうされて、気持ちいいんだろ?」

 錫也はまた私の中に自身を入れ込み、腰をゆるゆると動かし、クリップを指先でぴんっと弾いた。
 
 「ふぁ・・・気持ち、い。いい、いいのぉ!」

 今、何を口走ったのかと、それすら中に入った錫也の動きで消える。

 顔に張り付いた髪を、錫也が優しく梳いてくれた。頬にキスをしてくる。愛しいものを何かから守るような、祈るようなキス。

 「やっと素直になった・・・お利口だねえ・・・。」

 大切な壊れ物を扱うように、彼の手が私を抱き抱える。

 「お前をこんなに可愛がってやれるのは俺だけなのに、どうも解ってないんだよなあ、お前は。お前は俺だけ見てればいいんだよ。イイ子で、俺の言う事だけ聴いてれば、それでいいんだ。俺がお前をうんと可愛がってやるから。」

 私の唇を吸いながら囁く声に反応し、私のアソコは錫也をきゅうきゅうと締めつけた。
 さっきよりも強く出し入れされ始める。

 壊れていく理性に音は無くて、その代わり、私を占領した快楽が引き起こす淫靡な水音が大きく響く。ぐちゅり、ぐちゅりと、錫也のそれを滑り良くする為に溢れ出る蜜の波打つ音が、景色の見えない底無し沼へ誘う。

 「あっ、ああっ、イキそう、イカセてっ、錫也ぁっ・・・ああっ。」

 「いいよ、でも、まだお仕置きの途中立って忘れてないか・・? どうしような? そうだな、お前が俺の上で、自分で動いてイクんなら、イカせてやるよ。」

 理性を失くし素直に強請った私を、錫也は更に堕とそうとする。
 どこまで私を辱め、支配するつもりなのだろう。どうして私は逃げ出さないんだろう。

 器用な手つきで脚の固定を解かれ、仰向けになった彼の上に乗せられた。
 すぐには足が上手く動かせない私を軽々と持ち上げ、入口の位置へ誘う。

 「ほら、自分で俺のを持って入れないと、はいらないんじゃないか?」

 返事をする喉も失くした私は、言われるまま彼の猛りに指を添え、腰を浮かし、挿れた。

 「あ、あああああ。」

 あまりの滑りの良さに目眩がする。
 腰を落としこむとそれだけで大きな声を出してしまいそうで、体重をかけないよう腕を突っ張る。

 彼が下から手を伸ばし、胸を苛んでいたクリップを外してくれた。
 尋常ではない刺激を受け続けたソコは、そっと撫でられただけでも電流が走る。解っていて面白がっているらしく、手を止めずに、彼は意地悪く言った。

 「イキたいんなら、奥まで入れて動くんだ。イヤなら、このままやめようか。」

 錫也の勝ち誇った目に映った私は、きっと情けない顔をしていたに違いない。
 普段の彼からは考えられないような卑猥な命令。それに煽られ、イクことしか考えてない貪欲な腰を性急に沈めた。

 「んぁあああああああん!」

 イキたい。
 大好きな錫也の、太くて固い情欲でイカされたい。

 頭の中がそれで一杯になり、我を忘れて腰を振った。

 彼の視線が肌に痛いほど刺さる恥ずかしさすら、神経を麻痺させるモルヒネ。
 錫也に与えられる快楽をすぐに呑み込む私の体は、錫也が言うように男好きな淫乱で、そのくせ錫也じゃなきゃ満足できないに違いない。私を取り巻く世界のすべては、錫也1人でいいとさえ、思考思惑何もかも塗り込められる。

 「ああん、もうイっちゃう、錫也っ、すず、やぁ・・!」

 「いいよ。ちゃんと見ててやるから。可愛い。俺でイキな。」

 「ア・・・あ、ああああ――――――――。」




 

 よく覚えていない。
 イった後で、また散々彼が上に乗って、私を貪り続けた。

 「俺のが気持ちいいんだろ。だったら、イイ子で俺だけのモノでいるんだよ・・・。」

 何度も聴いたのが夢だったのかすら曖昧で、気付いたら外は暗かった。
 目が覚め、少し不安になって上半身を起こした。ベッドの半分は誰も居ない。

 錫也の不在を確認した時、部屋のドアが開いた。


 「あ、起きたのか。よく寝てたなあ。丁度良かった、喉、乾いたろ。お腹も空いたろ。サンドイッチ、ほら、一緒に食べよう。」

 ニコニコしながら、ベッド脇の小さなテーブルを手早く食卓へと整える。
 いつもの穏やかで、お料理が上手な優しい錫也。・・・あれは、夢?

 「・・・すず、や・・。」

 「はい紅茶。すぐに飲めるようにぬるめにしてあるから、ほら、・・ん、違う、お前はいいの。俺が飲ませてやるから、お前は動かなくていいんだよ。体、しんどいだろ。」

 きちんと服を着て食事の用意をしていた錫也が、乱れた髪で裸のままの私の横に座り、口元までカップを運んでくれる。その時初めて気付いた。足が、おかしい。

 「寝起きだから、紅茶は少し甘くしてあるよ。・・・ああ、それ、寝てる間につけたんだけど、痛くはないだろう? 大丈夫、お前に不自由はさせないよ。俺が何でも全部やってやるから。」

 紅茶のカップから口をはなして足元を見詰める私に気付いた彼が、何でもない事のように笑う。にっこりとあたたかな笑顔は、いつもと同じだった。

 くるぶしを見て固まる私を、目を細めて愛しげに見る錫也の瞳。愛情だけでつくられている眼差し。

 「え・・・これ・・・な、に・・・え?」

 
 目で見た物を、うまく言葉に出来ない。
 じゃらりと、音がする。知っているものなのに、今その名詞を口にする事が怖い。信じ難い映像を言葉にする事が怖い。

 「この部屋出てすぐ洗面とトイレはあるから。風呂は、俺の居る時に入ればいいから問題無いよ。その時は外してやるから。」

 「え。」

 
 空気は凍るのだ。凍って、血の流れまで止める。
 だってほら、私の体は今、手の指一本すら動かない。

 「お前は何度言っても判んないみたいだからさ・・・。もう、俺と一緒じゃ無い時は、外に出さない事にしたよ。」

 「・・・え?」

 「お前この前、ゼミの奴と2人で学校の外へ食事に行ったろ。知ってるんだよ、俺。知らないと思ってた? それとも、飯喰うくらい、なんでもないと思ってた?」

 錫也のいつも通りの口調が怖かった。
 日常にすっぽり収まっている、彼の狂気の末端。

 「お前に言い聞かせるだけじゃダメだって思ったんだ。幾ら俺でも、お前に寄ってくるヤツ全部排除するにも限界があるよ。だから、お前を何とかするしかないって。」

 穏やかに、まるで天気の話をしているかのように、私の隣で彼は続ける。まだ半分寝ぼけた頭がすうっと冷えた。

 「・・・冗談でしょ・・・?」

 笑えない。今まで生きてきて、こんなにも上手く笑えなかった日などない。右足につけられた足枷。カーペットの上でとぐろを巻く鎖。
 絞り出した言葉が精一杯の私に、彼はこたえない。ただ、頭を優しく撫でられた。

 恐る恐るくるぶしに触れる。どうやって外すのか無意識に探りながら気付いた。どういう仕組みで、これが自分の足についているのかわからないのだ。

 「これ。え・・・? どうなって・・・え・・・?」

 現実を上手く整理出来ない頭で尋ねた私の目を真っ直ぐ捉え、錫也は満面の笑顔で答えてくれた。

 「普通の足枷じゃないよ。俺が、俺にしか外せないように、ちょっと作り変えてあるからね。やっと手に入れたんだ。お前だけは、絶対に逃がさない。一生、お前だけは離さない。」

 彼のその笑顔と台詞が鈍く脳内に木魂して、まるでジャッジガベルだと私はその時連想し、そして、理解した。

 判決は、終身刑。
 死ぬことも許されず、愛という拷問に架けられて世界と遮断され、錫也に目を塞がれて生き続ける実刑。

 
 彼は狂っている。逃げなくちゃ、咄嗟にそう思った。

 でもそれが解ったのか、それともそんな事など想定していたのか、錫也は私を抱きよせてキスをし、耳朶を噛みながら囁いた。

 「どこへ行く気だ?」

 「ひ・・・。」

 「逃げようなんて思わない方がいい。大体、何処へも行けないよ。お前の親が、俺を信用し切って最初から合い鍵を持たせてたんだよ。お前の身元を保証する一切のもの、金、何もかも、今はもう俺が全部管理してる。・・・まぁ、お前に断らなかったのは多少、気が引けてる部分もあるけどね。」

 「!?」

 「ペーパードライバーのお前の免許証、最近病気してないから健康保険証。キャッシュカードしか使わないから通帳、印鑑。お前はほんっとに、俺が全部面倒みてやんないと、空き巣に入られても気付かないだろうよ。」

 「まさか・・・。」

 「そうそう、キャッシュカードもさ、1日の引き出し限度額が設定してあったんだよ。お前はお人好しだから、悪い男に騙されて金でも渡すんじゃないかって心配だったよ。ま、これからはクレカも俺が預かるからさ。お前が自分で金を云々する必要は無いし、そもそも、俺と一緒にずっといるんだから、お前は金のコトなんか考える必要は無い。」

 淡々と、淡々と流れる異常。

 「あ、携帯はロック掛けてあるから、誰かに連絡したい時は俺に言って。その時は解除するから。それと、お前の友達で俺が知ってる女の子以外のアドレスは、全部消去しておいたよ。まー一応、もしも親戚とかだったりしたら困るから、俺がデータを預かってるから、後でお前に確認してもらうよ。で、メールは全部俺の携帯に転送だから。俺がチェックしてから、お前が読めばいい。」

 説明が体を素通りしていく。
 彼の言葉には、迷いも決意も無かった。そこに見えるのは生活の色だ。何の変哲もない日常を喋っている。それがたまらなく怖い。

 「お前はココから逃げたとしても、ホテルに泊まる金も無ければ、実家に帰る交通費も無い。自分が誰なのかを証明する書類のひとつすら持ってない。学生証も抜いといた。学校も、俺と一緒に行けばいいんだから、平気だろ。」

 自分の心臓が動いているのが妙にわかる。
 競り上がってくる未知。背筋を走る既知。

 「はははっ、なんて顔してんだ?」

 何でもない事のように彼が言う。穏やかに笑い、私を見て窘めるように言う。私はきっと、蒼ざめていた。

 「大丈夫だよ。お前の面倒は俺が全部みる。心配要らない。学校だって買い物だって、行きたい所にはちゃんと連れてってやるから。ただ、お前を誰にも渡したくないだけなんだ。お前を危険な目に遭わせたくないだけなんだ・・・。」

 彼の目は真剣で、そして、純粋だった。

 「愛してるよ。お前を絶対、誰にも渡さない。お前を本当に大事にしてやれるのも、この世の全部から守ってやれるのも、俺だけだ。・・・俺だけなんだ・・・。」

 いつもと同じ彼が、ふんわりと熱いキスを降らせながら、優しく私を抱き締めた。



 ********************************************************************************************************************************************************


 
 
 10日が過ぎた。

 変わりなく学校へ通い、自室へも行く。ただ、私の部屋にあるカメラのスイッチを切る事は許されない。何処へ行くにも隣には彼が居る。必然的に、彼の部屋で過ごす時間がほとんどになった。

 「さ、紅茶を淹れたよ。今日、高級な茶葉をゼミのヤツに貰ったんだ。そいつ紅茶に凝っててさ。俺の彼女も紅茶が好きだって言ったら、分けてくれたんだよ。アップルパイもりんご多め! お前の好みに作ったよ~!」

 明日は休校だから、少し夜更かしをして久し振りに天体観測をしようと、彼から提案された。
 部屋の窓越しに星を見ながらアップルパイを食べようと、錫也は嬉しそうに、楽しげに夕食の支度と同時にパイを焼いて用意してくれた。

 鼻歌を唄いながらテーブルセッティングを進める彼。
 いつだったか、2人で選んだランチョンマット。ティーポット。まだ温かいアップルパイ。

 「痛いか? そんなことないだろ?」

 私の足首に巻き付く皮をちらりと見て、彼は問う。

 「ちゃんと工夫してあるんだ。お前の綺麗な足が傷ついたり、擦れたりするのは俺がガマンできないからな。寝てる時にも不快感がないように、色々思考錯誤したんだぞ。この2週間近く、平気だったろ? あ、でも、少しでも痛かったりしたら直ぐに言うんだぞ。お前に不快な思いはさせたくないからさ、すぐ新しいの作ってやるか、直してやるから。」

 言いながらもお茶の支度を整え、おどけた口調で恭しく椅子を引く。

 「さぁ、どうぞ、お姫さま。お座り下さい。」

 彼が見立てたワンピースを着用し、彼がコテで整えてくれた髪を崩さないようにゆっくりと、私は椅子に腰掛けた。

 「ああ、可愛いよ・・・。本当にお前はかわいい・・・。」


 座った私の傍らに立ち尽くし、感嘆の溜息をつく彼の気持ちが降ってくるようだった。愛していると、お前が好きだと。空気も光もそれだけを伝えて来るような日々。今、この時も。



 彼は狂っている。

 彼は、近衛兵。小さい頃から見守り続けたお姫様のお守役。

 何年も積み上げた想いをお姫様にぶつけたら、姫はその手を取り求愛を受け入れた。
 身分違いの恋が始まり、彼は幸せながらも、他の国の王子から求婚される姫を見る度、恋人を失うのではないかという不安と恐怖に怯え続けた。

 近衛兵は宮仕えの立場を最大限に活用し、尤もらしい理由を並べ暗躍し、姫を小城に幽閉する事に成功した。彼以外、従者は誰も居ない。優秀な近衛兵である彼が何もかもこなしてくれる。何不自由の無い城の中で、ただ生きる姫。


 姫は、私だ。

 錫也は器用につくりあげた箱庭に真綿を敷き詰め、快楽のシーツに私を寝かせ下界と遮断し、生きる為に必要なものを洩れなく調達し差出し、私を愛しているという圧力で包み込む。

 

 私はいつ、それに疑問を持っただろう。持った事など無かった。

 それが、私の日常だった。例え組み込まれ罠に嵌められていた結果だったとしても、それが私の日常だったのだ。サイレンスな抵抗と批判は日の目を見ない。例え心の奥底で抗議する日があったとしても、それでは要は、納得し受け入れているのと同義なのだ。

 私は笑った。笑顔をつくり彼を見た。
 嘘も虚もなく私を愛してくれる彼を、不安にさせた罪で科せられる刑に服する宣誓の為に。

 「私は、錫也だけのお姫さまだね・・・・。」

 一瞬だけ揺れた彼の眼の奥の波のカタチを、私は一生忘れないだろう。
 錫也は少しはにかんで、私を強く抱き締めた。

 「・・・あ、ああ、お前、解ってくれたのか・・・! うん、うん・・・。お前なら、絶対わかってくれると思ってたよ・・・信じてた。そうだよ。お前は、俺の大事な大事なお姫さまだ。お姫さまは、余計なコトはしちゃいけないんだ。俺がちゃんと、お前が退屈しないように考えてやる。大丈夫、必要な事は俺が全部してやるんだから。お前は俺に甘えて、毎日お茶を飲んで、可愛い服を着て、俺のつくったご飯を食べて、笑顔で居てくれればいいんだよ。」

 ぎゅうっと私を抱き締め、頬ずりをする。

 「愛してる。一生お前だけを愛して、お前の為だけに生きるって誓うよ。俺だけ見てて。お前の為なら、俺、なんだってする。お前のよろこぶ事、一杯してやりたいんだ。大好きだよ。逃がさない。絶対逃がしたりしない。お前は一生、俺の傍に居るんだ・・・。」

 
 逃がさない。

 そう繰り返す一介の近衛兵の愛が狂気であっても、囚われた姫の歩く道は、最早その腕の中にしか存在しない。

 私の肉は、彼に喰らいつかれる度に爛れていくだろう。そうして私の視神経はいつしか、彼しか見えなくするのだろう。
 彼の愛に蝕まれ続ける私はきっと、腐り切る寸前の果物と同じ芳香を放っているのだ。彼の愛がその香りを生み出す。その香りが彼を狂わす。終わらない連鎖。喰うものと喰われるものの道理。私にとってすべての真実。なんという幸せ。

 業火が身を焼く地獄でまどろむ違和感に、遂に私が脳の髄まで膿み始めて来たと思うが、まだ正気なのだろう。狂人は、自分を狂人だと認めないというではないか。

 でも。
 きっと。

 私は壊れ始めている。壊され出している。
 狂い出している。今も、私の足元に跪いて脹脛に舌を這わす彼を受け入れている。淫靡な吐息を手で覆い隠すでも無く。

 狂い出している気がする。でも、自分で認めているから多分大丈夫。

 だけど頭の奥で、それを打ち消すような声もする。

 壊れている? 誰が? 彼は私を愛しているだけだ。
 狂っている? 誰が? 彼は私を離したくないだけだ。

 私は、その愛に応えたい。こたえなくてはならない。彼を選んでおきながら、彼を怯えさせていた贖罪をしなければならないから。これは、正しい選択だ。

 私は錫也にキスをすると、甘えた声で、紅茶を飲ませてほしいとせがんだ。

 彼が淹れてくれる紅茶は、いつも、美味しい。


 箱庭には、私たちしか居ない。








                           fin


 

 

 
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みるくあずき2

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遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

下のカテゴリからお好みのモノを選んで頂くと、連載は1話から読めます。

感想・お世辞は大歓迎ですが、苦情は受け付けられません。
鍵付きのコメントは、拍手コメントも含め一切の誤表示を防ぐ為、お返事は致しませんが、必ず読んでおります。励みになっております。有難うゴザイマス。
拍手とかコメントとか貰えると泣いちゃうくらい嬉しいですよ・・・。

鍵付きでは無いコメントは、拍手コメントも含め必ずお返事させて頂いております。
宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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