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Room2308 第1話

 



 
 Room2308
 第1話



 



 
 

 

 恋人が望むことは、なんでもしてあげたかった。
 それが自分の喜びになるから。彼が嬉しいと私も嬉しいから。

 だから、なんでも、望まれるなら、叶えてあげたいと思った。愛してるから。






 
 
 


 「今日のゲストは、今大人気のアイドル、一ノ瀬トキヤくんでーす!」

 司会者の中堅タレントが、大仰に手を広げ、画面がぱっと切り替わる。
 
 「こんばんわ。」

 画面の中で、私の恋人はにこやかに微笑み、軽く会釈をした。

 
 「この曲は、我儘を言って作詞させて頂いたんです。メロディを聞いた途端、愛が溢れる感じというか、こう、切ないのに、幸せなような気持ちになって、それを歌いたいと思いました。あちこちで褒められる度、素直に嬉しく思います。お蔭様で、オリコンランクインも長いこと果たさせて頂いてますから、改めてファンの方にお礼を申し上げたいですね。」

 
 インタビューに応じる彼は、すらすらと模範的なアイドルとしての回答を述べている。
 
 
 言ってる内容は嘘じゃない。彼は私の作った曲を聞いてすぐ、「ああ、切ないのに、幸せな、不思議な感覚です・・・。」と、感嘆しながら言ってくれた。嬉しくて頬が緩む。

 
 彼と恋人同士として付き合い始めて、もう1年以上が経つ。
 
 最初の頃は、ストイックさからくるのか、繊細というより不器用な部分に戸惑いもあった。なんでもそつなくこなす彼が、実は必死の努力の上にポーカーフェイスを被せている時も多々あると解かり、それからは大分、心の距離が縮まったと思っている。完璧な彼も実は最初から上手く出来るのではなくて、そこに努力がある。そういう点で私と同じ人間なんだって実感できたのは、自分の中の自信の無さを救ってくれた気もした。

 
 幸せだ。
 
 
 こうして、私の曲を歌ってくれる彼を、全国放送の地上波で見られるなんて、夢が叶ったのがひしひしと実感できて、本当に嬉しい。

 
 ついつい数時間前まで、ほっこりと味わっていた幸せ。柔らかな昼下がりの太陽がカーテン越しに感じられるリビングで、穏やかに、テレビ画面の中の彼を見て。

 昔、自分がまだこんな仕事をするなんて夢にも思わなかった頃みたいな、憧れの対象を見つめるみたいな幸せ。
 
 
 それからたった数時間。
 夜になって、昼間テレビを見ていた自分の部屋で。

 同じ幸せでも、それは、昼間には似合わないものに変わっていた。
 
 場所もベッドだし、時間ももう夜中。
 同じ彼に感じる幸せでも、こっちはもっと違う、2人だけの、閉じた世界で味わえる幸せ。

 やっと日常の色んなしがらみから解放されて、2人きりで過ごせる時間。 
 愛し合える時間。




 直前まで私の脚の間に顔を埋めていた彼が、今度は首筋に顔を埋めて、肩口や首の後ろにキスをした。そして私は手を引かれ、彼のモノを握らされる。

 「触ってください。」

 熱くてがちがちに固いそれは、何度触らされても一瞬怯む。
 あまり強く握ると痛いのではないかと不安で、そっと、撫でるように指先だけを上下させる。それがもどかしいのか、彼はキスの合間に唇を離し、

 「もっと強く扱いて。」

 と、強請る。
 言われるまま、しっかりと握って手のひら全体で包み扱くと、彼が息を荒げた。

 「あぁ・・・気持ちいいです。」

 「一ノ瀬さん、今度は、私が・・・。」

 してもらったお返しを。
 そういうつもりで彼の下腹部へ顔を寄せると、彼も身を起こした。

 「じゃあ、一緒にしましょう。私も君のを舐めたいんです。」

 「・・・はい。」

 一瞬返答に詰まったが、素直に彼に従い体を交差させた。互いの性器を互いの口で愛する行為は、強烈な羞恥心を煽って快感を増幅させる。だから本当は恥ずかしくてしたくない。

 ・・・したくない。のは嘘かも。
 したくても、恥ずかしいという気持ちが先にたってしまうだけで。本当はしたい。上も下も彼を感じられて、気持ちよすぎて幸せになれるから。

 さっきまで散々舐められて、すっかりとろとろになってる場所を、また彼の目の前に晒す。
 ベッドの灯りがあるから、彼の上に跨って、彼の頭の上に晒されている私の秘部は、きっと彼にしっかり見えてしまう。

 「すごいですよ、溢れて・・・光ってる。」

 「ヤ・・・! 見ちゃいやです!」

 判っていても、言葉にされると逃げ出したくなる。
 でも彼は私の抵抗を無視して、剥き出しにした芽を舌の先でちろちろと舐めながら、膣内に指を入れ抜き差し始めた。

 「あああああああ、ああん、やあ、それ、だめ、ああああ。」

 「口がお留守ですよ。ちゃんとおしゃぶりしてくれないなら、このままイってもやめませんよ。」

 「そんな・・・ぁ、んむ・・・はあ、ああっ、ちゅ、む・・・。」

 必死に唇を窄め、一ノ瀬さんの太くて長いそれを扱きあげる。
 無心に没頭しようとしても、彼の舌がそれを許さない。また口を離して、喘いでしまう。

 「どうしても口がお留守になるようですね。じゃあ、イッても続けて感じさせてあげましょう。」

 「っひ、あ! や! ああああ!」

 他の男の人を知らない私は、彼の行為が普通なのかどうか解らない。でも、世の中の女性がこんな風に気絶寸前まで毎回攻め立てられていながら、翌日何食わぬ顔をして仕事に向かっているとしたら、とんでもないタフだとは思う。だから、一ノ瀬さんだけがすごいのだと思うようにしている。

 今夜もまた、啼き過ぎて意識が途切れるように眠る羽目になると予想しながら、私は行為に溺れていった。






 外で待ち合わせするのは、珍しかった。
 今まで、あまり無い。

 職業柄、本当にこんなことは珍しい。大体が出かけないからだ。
 
 まだまだ売出し中の身であるとはいえ、大分顔も知られてきたから、大勢の人が集まる場所に不用意に出かけるのは避けるべきと、事務所から指導も受けていた。

 待ち合わせ場所の駅前に、一ノ瀬さんはまだ来ていなかった。くるりと辺りを見回した時、メールの着信音が鳴った。

 「急な打ち合わせで少々遅くなります。チェックインは済ませてあります。2308号室です。フロントで私の名前とルームナンバーを言えば解かってもらえますから、部屋で待っていてください。」

 「・・・。」

 今日は、たまには場所を変えてみませんかという彼の提案で、ホテルに泊まる予定になっていた。
 
 最後に会ったのは3日前。翌日は仕事だが午後からなので、朝もゆっくり出来ると。そう言われて、外でのデートなど滅多に無いせいか、私は妙に嬉しくて、今日を心待ちにしていた。

 だから、メールは正直、一気に気持ちが沈んだ。
 
 チェックイン前に一緒に、今巷で人気のテイクアウトショップで、デリやケーキを買ってチェックインしようか、なんて話にもなっていた。でも、一ノ瀬さんの都合で2人で買い物を楽しむ予定はキャンセルになった。

 「・・・仕方ない、ですよね。こういうのは。」
 
 これは、彼がアイドルだとかは関係無い。
 どんな仕事の人でも、相手が学生でも、急用は誰だって入る可能性がある。

 言われた通り、先に部屋で待っているしかない。私は歩き出した。彼が来たら笑顔でドアを開けて、お疲れ様と言って出迎えてあげよう。思考を切り替える。”理解のある彼女” という理想を追って。

 迷ったが、ケーキだけは買って行くことにした。

 食事は、仕事が終わった時の一ノ瀬さんの気分で決めればいい。ホテルなんだから館内にレストランもあるし、ルームサービスも頼める。あまり遅い時間に食事をしたがらない彼に合わせた方がいいと思った。

 なんとなく、最初に予定していた人気店に並ぶ気にはなれなくて、ホテルのケーキショップでフロントへ行く前に買うことにした。

 一ノ瀬さんはあまり甘いと食べないから、野菜のプリンをチョイス。自分には、ちょっとカロリーが気になるけれど、クリームとフルーツがたっぷり盛られたプリンアラモード。

 支払いを済ませ、ショップコーナーを後にしてフロントへ向かう。

 一ノ瀬さんの名前と部屋番号を告げると、すんなりと鍵を貰えた。ケーキショップの可愛らしい箱を抱え、受け取ったキーを指先に挟み部屋を目指す。

 (2308・・・2308・・・。)

 上層階にエレベーターで辿り着き、案内板で確認して部屋の方向へ進む。
 絨毯で足音の響かない廊下は、誰も居ない。エレベーターにも誰も居なかった。フロントやロビー付近にはそれなりに客が居たのに。

 ホテル規定のチェックイン時刻を大分過ぎた夕方遅くだが、観光客や出張が理由の宿泊者の到着には、まだ早いのか。それとも既に一旦寛ぎ、夕食を取りに外へ出ているのだろうか。

 どうでもいい考えを巡らせていて、部屋に到着した。ドアを開け、灯りをつける。

 「・・・。」

 私は、部屋に入って少しびっくりしてしまった。

 「すごい・・・。」

 入口の扉を閉めて進んだらリビングがあったのだ。それも、広い。と、見た瞬間それ以外に言葉が浮かばないくらい広いリビングだった。自分が泊まった経験のある、よくあるホテルのシングルルームのように、鏡が備え付けられたドレッサー兼デスクとベッドがどん、と一部屋にある部屋ではなかったのだ。
 
 取り敢えずケーキの箱とカードキーをリビングテーブルに置き、ぐるりと部屋を見渡す。リビングを中心にして、左右にドアがある。

 うろうろ歩いて、目についた扉を開ける。

 バスルームもパウダールームも広い。
 特にバスルームは、円形のとても大きな浴槽でまた驚いた。同時に大人が3人位は入れそうな大きさだった。これはジェットバスだか、ジャグジーとかいわれるものだと、なんとなく浴槽の底を見て思った。自分の家には無いから、正確には解らないけれど・・・。

 ベッドルームはリビングと続き間ではあったが、ドアできちんと仕切られるようになっていて独立していた。カーテンが閉められた灯りのついてないベッドルーム。その部屋の、キングサイズのベッドのぴしっと整えられたリネンには触れず、そこを後にする。

 ぽすん、とソファに座って落ち着こうとしてみたが、なんだか性に合わず、棚を漁ったりして見つけた電気ポットをセットした。
 
 冷蔵庫の中には何本かの缶ビールや、女の子が喜びそうなリキュール、そしてオレンジジュースとお茶のペットボトルが入っているだけでスペースが十分あったので、そこにケーキの箱をそのまま入れた。

 お茶は煎茶やほうじ茶、コーヒー、紅茶とがティーバッグながらそれぞれ種類も揃えてあった。カップも飲むものにあわせてか、4客づつ4種類が用意されていた。紅茶のフレーバーを何気に確認すると、この界隈で人気の専門店のオリジナルブレンドで、私は嬉しくなってスキップ気味で、またリビングのテーブルに戻った。

 何かの記念日だったっけ? 私が忘れてる?
 
 こんな豪華な部屋を予約してくれた理由を考える。でも思い当たらない。単なる気紛れなのかな。

 考えているところにチャイムが鳴り、私は嬉しくて駆け出し、ドアを開けた。

 「一ノ瀬さん!・・・え、あれっ?」

 ドアを開けたそこに立っていたのは、待っていた恋人ではなかった。

 「ええっ? 一十木くん?」

 私は驚いて飛び退いた。
 てっきり一ノ瀬さんだと思ってドアを開けたら、思いも寄らない人物が立っていて、本気で驚いて結構大声を出してしまった。

 「トキヤと間違えちゃった? ごめん。」

 ニコニコの笑顔でそう言いながら、一十木くんは部屋に入ってきた。肩から斜めに掛けていたボディーバッグを降ろし、トキヤは用事が出来ちゃったんだって~。と、歩きながら話す。

 「そうなんですか。でも、どうして・・・。」

 それならそうと、メールでも電話でもくれればよかったものを。わざわざ一十木くんに頼んで、こんな場所まで伝言させた一ノ瀬さんがよく解らない。

 「うわー、すごい部屋だねー! 広いし豪華~すごいや!」

 困惑気味の私をよそに、一十木くんは部屋の中をうろうろして、目をきらきらさせて調度品に見入ったりしている。先ほどの私と同じように、目につくドアを適当に開けて中を見ては楽しそうにしている。

 「あの、一十木くん。」 

 私が問いかけるのが解ってて、敢えて無視して部屋の豪華さを大仰に褒めている。そんな気がして、私は普段の自分より、少々語気強めの調子で声を掛けた。

 「私はここで一ノ瀬さんと約束してたんですけど、どうして一十木くんが」

 「トキヤは来ないよ。俺に行ってくれって。だから来たんだ。」

 一十木くんが、寝室のドアを開けて中を見た。そしてそのドアをそのままにリビングルームへ戻ってきた。

 脱いだ上着を適当にソファに乗せながら言う。それは普段の彼の普通の態度だった。

 彼は、というか、学園で同級生として特に仲良くしてきた数人は、私と一ノ瀬さんの仲を知っているから、それについては驚かない。約束がダメになった事を伝えに来てくれたとしても、あまり違和感が無い。

 でも。

 私はぼんやりしていた。
 彼が上着の下に来ていたシャツまで脱いで初めて、異様だと思ったのだ。今のこの、状況に。単に、恋人以外の男性の上半身を裸身で見たから恥ずかしかったなどではなく、本当に、その時初めて、今ここで彼が服を脱ぎ出した事をおかしいと捉えられたのだ。

 「あの、どうしたんですか。なんで・・・、とにかく服を着て下さいっ。」

 恥ずかしくて横を向きながら、一十木くんに言っても、彼はちっとも態度を変えない。

 「なんで。折角脱いだのに。あ、そっか・・・。」

 その時の一十木くんの言葉に引っ掛かり、私はまた彼を見た。でも、「そっか・・・」 の続きが何なのかを問いかける前に、彼の次の言葉が私を突き刺した。

 「俺は今日、トキヤの代わりだからね。俺が今から少しの間だけど、君の恋人。君は今から、俺のものになる。」

 「・・・は、?」

 多分、私の反応はとてもおかしいものだったと思う。疑問形のアクセントは、実際は一十木くんの言葉の意味を理解して、その上で彼に問いかけたものではなかった。確実な衝撃を感じながらも、彼の言葉を咄嗟には正しく理解できなかった。

 あまりに唐突で信じられない内容なのに、それを告げる彼が普段通りの笑顔だったのも大きな理由だ。現実に対して大幅に言語処理能力が出遅れた私は、言われた瞬間、ただぼんやりしてしまったのだ。 

 「大丈夫。優しくするよ。俺、君のこと好きだからさ。大丈夫だよ。」

 「な、え、一体なん・・・。」

 ニッコリと笑った一十木くんの笑顔は、本当に普段とあまり変わりがなくて、でも、確かに、目に宿る光が別物だ。

 「大丈夫って、何、が・・・っっ!」

 聞き終えないうちに唇を塞がれた。
 一ノ瀬さんとは何度もキスをしているから、キスをされたというのは突然でも判断出来た。でも、そんな事じゃない。それは重要じゃない。重要だけど、そうじゃなくて、それをどうして、一十木くんが私にするのか解らない。

 両腕をしっかり掴まれてもがく私を、一十木くんが増々強く抱きしめた。逃げられなくて、大好きな一ノ瀬さん以外の人の唇や舌が、自分の口内で動き回るのが気持ちが悪くて、私は嫌悪感で震えた。

 膝が折れる。
 事態を一層把握して動揺し狼狽えた私は、逃げたいのに恐怖で凍りついた体をがくがくとさせて、一十木くんに抱えられていた。

 「やめ・・・いや、いやぁあ! 離してっ!」

 やっと出せた大声も、彼の前では何の意味も無かった。
 一十木くんは妙に落ち着いていて、そして、薄く微笑んでいた。

 「怖がらなくていいよ。大丈夫。うんと気持ちよくさせてあげる。」

 訳が分からない。
 どうして彼に、何の戸惑いも無いのかが解らない。どうして当たり前のような顔をしているのかが解らない。

 「優しくしてあげたいけど、流石にあんまり暴れるとちょっと痛い目みるかもよ。だから大人しくして。君は逃げる必要はないんだから。ね。」

 ぐいっと顔を掴まれ、目を覗き込まれながら一十木くんに言われている今が解らない。
 彼には焦りも躊躇もない。まるで本当に、自分の恋人と当たり前に愛を確かめ合うような顔で言う。

 「一十木くん、待って下さい、どうして、こんなっ。」

 痛い目をみるという言葉が怖くて、小さな声で問いかけた私の頬を舐めながら、彼は言った。
 
 「トキヤのこと、好きでしょう。これはトキヤが望んだことなんだから、君も諦めて俺と気持ち良くなろうよ。」

 全身の体温が引いたかと思った。
 一ノ瀬さんが、望んだこと? これが? どういう意味なの。

 完全にパニックになった私をじわじわと潰すように伸し掛かり、一十木くんが妖しく自分の唇を舐める。
 いつもと全然違う彼を、彼だとは思えない。

 そんな私を更に引き裂く言葉を、一十木くんは平然と言った。

 「なんでもいいからさ、早く一発ヤラせてよ。俺、楽しみで楽しみで、部屋に入る前からもう軽く勃起しちゃってたんだから、出したくてしょうがないんだよ。」

 
 彼は笑ってた。

 目の前が暗くなる。
 一十木くんの手が、私を犯す欲望しか灯ってない彼の目が、まるで得体のしれない闇のようで、恐怖で体の中心が引き攣った。




 
 





       
    To Be Continued・・・




   

    次回は3月5日頃更新予定です。











 
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Room2308 第2話


 

Room2308
 第2話








 

 やめてと言う声が引き攣っていた。

 怯える彼女は綺麗だった。
 
 綺麗だっていうのは、頭悪い俺でもあまりこの場に似合ってない形容詞だとすぐ気付いたけど、でも、そう思ったんだから仕方がない。

 見とれていたら、春歌が涙声で大きく言葉にならない叫びをあげた。反射的に手で彼女の口を塞いだ。
 誰も入ってこれないホテルの部屋なのに、一瞬慌てた自分に笑いが毀れる。

 
 「トキヤが望んだ事なんだから。」

 俺がそう囁いた時、彼女の目が大きく見開かれたのが印象的だ。
 
 勘違いしたんじゃないかな。トキヤが自分を捨てたとか、だから代わりに俺を宛がったとか、そんな風に。違うんだけど、説明するのも難しいしめんどくさい。

 女の子って本当に弱いんだなって思った。すっごく必死に抵抗してるのは見てて解かるんだけど、俺にとってはそんなの赤ん坊が手足をバタつかせてるのと変わらない。腕で抑え力を入れて動きを止めさせ、引き摺り気味だったけど抱えたら、ベッドルームまでそんなに苦労せず連れ込めた。

 彼女をベッドに押し倒し、上に乗っかると、とうとう恐怖がマックスになったらしい。体中がガチガチに強張って、とんでもなく恐ろしいものを見るような目で俺を見た。

 「大丈夫。痛くしないから。君も一緒に気持ち良くなろう。ね。」

 「イヤ、イヤ・・・!」

 パニックになってるらしい。
 溢れ出した涙が、カーテンの隙間から入ってくる外からの白っぽい光に反射して、それも綺麗だ。

 「君は全部綺麗だね。ずるいなあトキヤは。今までずっと、こんな綺麗な君を独り占めして、自分だけ抱いて楽しんでたんだ。」

 俺はまた見とれて、うっとりしてそう言った。それ位、涙が透明なのが美しかった。

 キスをしたら、思い切り肩を跳ねさせた。
 でもそんな事は気にならなかった。だって、吸い付いただけで俺の神経を灼きそうに甘い唇で、欲しくて欲しくて、一瞬で気が狂ってしまったから。
 
 踏み外す。
 正にそれだ。
 
 踏み外すにはきっかけがあって、そのきっかけはきっと些細な事だったり思いもよらないコトだったりするんだ。きっと今の、俺みたいに。大好きな女の子を、泣いて怖がってるのにそれを振り切って、欲しいって自分の欲望だけを優先して犯す悪魔になる、それが、道を逸れるって事なんだ。

 俺は道を逸れて踏み外した。
 きっかけは何だ。この話に乗ったあの時か。それとも、春歌がトキヤのモノだと知っても諦めなかった時から既に逸れていたのか。

 「やめて、お願いっ、一十木くんっ・・・!」

 抵抗の声すら可愛い。
 彼女が泣いて許しを請う姿が可愛いと思い、その可愛さに震えがくる時点で、俺は本当に道を外し切ってると確信した。力任せに握った彼女の乳房の柔らかさに正気が薄れる。

 もう戻る道がすっかり見えなくなっていた俺は、彼女の首筋に噛みつきながら譫言のように呟いた。

 「可愛い・・・もっと啼いてよ。」

 「・・・! いっと、きくん・・・ひ、ぃ、いや、いやああ!」

 いよいよ身の危険が現実になった彼女の叫びが壮絶な色になっていく。
 トキヤが好きだから、俺に抱かれたくないの? それとも、単に俺が嫌なの?

 後者だったら、イヤだな。そんなの悲しい。俺はこんなに好きでいるのに。ずっとずっと好きだったのに。

 夢中になってるのに、頭の片隅が常に冷静で思考が流れていく。不思議な感覚。

 首筋を舌でなぞりながら、胸まで唇を移動させる。噛り付いた柔らかい肉は、いい匂いで甘くて脳が蕩けそう。軸みたいに中心で尖る部分を舌で扱いて、膨らみ全体は両手で揉み拉いた。

 「やめて、やめてえ、やめてえ。」

 そんなコト言われて止めるヤツが何処にいる?
 ベタなツッコミだけど妥当だって気付くのは、結構こういう切羽詰まった状況だったりするから人生ってオカシイ。

 「気持ち良くないの? うーん・・・じゃあ仕方ないな。」

 俺は予定を変更した。
 だって、彼女は泣いて嫌がるだけで、俺の言う事を全然聞いてくれないんだもん。優しくしたいのに。一緒に気持ち良くなりたいだけなのに。

 「ひっ・・・! な、やめてッ!!」
 
 脚を大きく割り開いたら、春歌は一層暴れ出した。

 「大人しくして。」

 俺は冷たく言い放ち、まだ濡れてない彼女の小さな入口を指で抉った。

 「痛い! 痛いっ! やめてっ、お願い痛いの!」

 「しょうがないだろ、感じようとしないんだから。いいよ、取り敢えず一回ヤったら解かるだろうから。」

 「やめてえええ!」

 「う、わ・・・っ、ちょ、暴れない、で、よ・・・!」

 死ぬ間際かと思うかのような藻掻きに一瞬手を取られたけど、所詮女の子だ。男の力にかないっこ無い。俺は冷静に彼女を抑え込んだまま、待ち草臥れて先端の窪みからとろりとした粘液を出してる自分の凶器を、彼女のまだ濡れてない秘所へ突き入れた。

 濡れてない場所へ入れるのは、男だって多少痛いんだよね。引き攣れるから。それを受け入れる側はもっと痛いと思う。だから、観念して楽しめばいいのに。真面目な子だからしょうがないけど・・・。

 「ヤ、あ! あ、ああ、いやああ、やめてやめて! やめてえやめてえ!!」

 春歌の声が悲痛な色になる。

 「もう遅いって・・・ぁ、やばい・・・すごい気持ちい・・・。」

 止まらなかった。
 濡れてなくても中は熱い。そして、目の前にはずっと好きだった女の子の揺れる肌がある。
 
 越えてしまったら滑り落ちるだけだった。魂を売り渡すようなこの時の落下は、目が眩む高揚感と快楽の怒涛の渦だった。腰が戦慄いて指先が震えた。熱いものを直に感じるのだけが生きてる証拠みたいな気になって、彼女の口の中を貪った。

 「ああん、あっ、ああっ、あ、は、あっ。」

 暫くすると、彼女の声が変わった。

 「やっと気持ち良くなった? 良かっ、た。俺も、すごく気持ちいい。もう出そ、やばい。」

 切れ切れの吐息で言葉を紡ぐ。
 彼女はすっかり抵抗を止めて、俺にされるがままになっていた。ただ、涙がくっきりと頬に跡を残していて、ちょっと可哀想だと思った。

 だから俺は、その涙の跡を舐めてあげた。

 「可哀想に。でも大丈夫だよ。トキヤは、ちゃんと君のコト、大好きだから・・・。ね、安心して。一緒に気持ち良くなろう。一緒にいこうね。」

 彼女はもう反論もしなかった。
 俺はそれが嬉しかった。俺の身体が。俺が、彼女を確実に浸食したと実感出来た瞬間。

 それから何度も彼女の奥を穿ち、俺は暴発した。
 じわりと拡がる熱い感覚。

 「あ・・・!」

 春歌が、絶望的に空を見たのが解った。
 どうしてかな。彼女は小さく、俺に中に出された事実に対して小さな声を上げただけなのに、声も、目も、明らかに絶望したんだと俺は気付いたんだ。

 出し切ってもまだ硬さが収まらなかったけど、仕方なく俺は一旦引き抜いた。
 同時に俺の出した体液がこぼれた。生唾を飲む。妙な実感と達成感。彼女の白い身体。俺の出した白い欲望。白いシーツ。ホテルの無機質な白い壁。何もかもが白い中で、俺が、俺だけが、薄汚い。

 でも。
 もう戻れない。戻る気もない。彼女を手に入れる悦びに代えられるものなんて、無いんだ。


 茫然と横たわる彼女に優しく微笑みかける。

 「今日、ヤバい日だった? 違ったよね。」

 「・・・。」

 春歌は答えない。
 打ちひしがれたように仰向けのまま、虚ろな目をしていた。

 キスをしても、身じろぎもしない。

 そのまま唇を嘗め回しても、彼女は目線も変えず横たわったままだった。人形にキスをしているようだった。だから俺は、うんと優しく何度も啄むようなキスを繰り返した。それこそ体中、隈なくすべてに。人形は大事にしないと壊れちゃうから。壊れたら、直すのは大変だもんさ。

 俺が中で遠慮なく放った事実は、彼女から抵抗を抜き取ったようだった。
 一度で収まらなくて、俺はまた彼女の胸にしゃぶりついた。弛緩した身体は俺の求める向きは相変わらず取らないけど、押し返しもしなくなった。右へ倒せばそれなりに右へ、掴み起こせば何とか起き上がった。

 そうやって、彼女の上半身を少し起こさせ、口元に、硬く上を向いた自分のモノを押し付けた。

 「あ、や・・・っ。」

 そこで彼女は、やっと顔を背け拒否を示した。でも、そんなの聞き入れない。

 「逃げないで。舐めて、お願いだよ。」

 彼女の肩を抱き、腕で倒れ込まないように押さえる。

 もうこのまま進むしかないと気持ちは固まっていても、それでも彼女に嫌われたら悲しい。出来る限り、彼女にも俺を好きになってほしい。我儘だって解ってる。でも折角、彼女と愛し合えるチャンスだから、彼女にも気持ち良くなってほしかったし、俺の一部を愛おしく思って欲しかったんだ。

 「ねえ、お願い。トキヤにはいつもやってあげてるんでしょう。トキヤばっかりずるいよ・・・俺だって、君が好きなのに。」

 「好き・・・?」

 春歌が、俺の言葉を虚ろに繰り返す。

 「そうだよ。俺は君が好きなんだよ。ずっと前から、ね、だからして。お願いだよ。」

 「嘘・・・です。そんなの、好きならこんな、こんなこと・・・。」

 また泣きそうになった彼女を抱きしめ、俺は頬ずりをした。
 
 「かわいそうな春歌・・・トキヤなんかを好きになったりするから、こんな目に遭うんだよ・・・。でも大丈夫。あまり考えない方がいい。その方がみんなが幸せになれる。ね。」
 
 彼女は静かに泣いていた。
 はらはらと零れる涙が熱い。俺の胸が濡らされていく。

 「よしよし・・・。ね、泣かないで。頭を真っ白にしちゃおう。それが一番いい方法だよ。俺、もう一回ヤっちゃってからで説得力ないけど、でも、君に嫌われたくないから。それはほんとだから。あんま無理強いしたくないし、君にも、俺の事できるだけ好きになってほしい。君からしてほしいんだよ。俺が君を慰めてあげる。気持ちよくしてあげる。大好きだよ。」

 実は俺はもうその時、また彼女の中を掻き回したくて突き上げたくて仕方なくなってた。
 
 でも、誓って言うよ。無性に彼女に入れたくなったせいで、その場限りの出任せを言ったんじゃない。俺は本当に彼女を好きだし、嫌われたくないからあんまり無理矢理なコトはしたくない。

 まあ、最初は舞い上がっちゃってたから、つい脅すような事も言っちゃったけど、でも、彼女が好きだ。

 彼女だって、トキヤなんか好きになっていなければこんな目に遭わずに済んだし、俺の前であんな風に泣いたりしなかった。そう思ったら、純粋に可哀想になっちゃったんだ。

 口に含んで貰うのは諦め、春歌をゆっくりと押し倒し、身体を密着させる。

 「ああ・・・、一十木くんやめて、もう、やめて・・・。」

 耳を優しく撫でて、首や顔にずっとキスをしていたら、彼女の息が熱くなってきた。

 「さっきより、気持ち良さそうな声になってるよ。可愛い。大丈夫だよ、正直に声を出して。いっぱい気持ち良くなればいいんだよ。可愛くてかわいそうな春歌。俺が慰めてあげるね・・・。」

 「んんっ、う、ふ、っう。」

 キスで呼吸を邪魔されて春歌が喘ぐ。
 
 俺は春歌の口の中を好き勝手に舌で弄った。甘くて頭が痺れる蜜の味がする。美味しくてたまんない。こんなに美味しくて可愛いお菓子、もう絶対トキヤだけのモノになんてしておけない。もっともっと俺のモノを捻じ込んで、俺なしでは居られなくしたい。こんな醜いコト考えてる俺みたいな男に犯されて、なんて可哀想なんだろう、俺の春歌。

 でも。

 可哀想だと思う心の端で、泣いてる彼女に対して違う感情が沸き起こったのも事実だ。

 それが俺の理性を、何の衒いも引っ掛かりもなく、一瞬で断面美しく縦に裂くんだ。

 トキヤの気持ちが少しわかったような気がしたよ。なんとなく、だけどね。









  



  To Be Continued・・・








 

    次回第3話は、3月13日更新予定です。








Room2308 第3話

 




 Room2308
 第3話







 

 一ノ瀬さんには、翌日は会えなかった。

 会えない方が良かった。会いたい気持ちは確かにあったけど、会ったら一ノ瀬さんに何を言ってしまうか不安だった。自分の身に起こったあの嘘のような出来事は知られたくなかった。

 でも、一ノ瀬さんに聞きたい事はあった。

 だから、そのまた翌日も会えないとわかり、自分の胸が騒いだ。どうして会ってくれないのかという不安がざわめいたのだ。
 翌日というのは、そう。一十木くんがホテルの部屋へやってきた日から数えて翌日。一ノ瀬さんにまた会えなくなったのは、そのまた次の日だ。

 私が、恋人である一ノ瀬さん以外の男の人と、関係を持った日。その日から2日、恋人とは会えなかったのだ。


 
 「今日は、会えますか。」

 会えないと分かったのは、2日目の朝、取り敢えずそれだけのメールを送った後だった。返事はすぐ来た。

 「申し訳ありません。今日はもう今仕事が始まるところで、夜遅くまで終わりません。また休みがいつになるかを連絡します。」

 そんな風に、会えない理由は仕事だと短い説明をするメールだけは届いた。昨日は心のどこかでほっとしたが、今日も会えないと言われ、私は少し不安になった。

 急いでメールを返す。

 「お忙しいところすみませんが、どうしても聞きたい事があります。おととい、一十木くんがホテルに来ました。一ノ瀬さんに頼まれて来たって言ってましたが本当ですか? 少しの時間でいいから、出来るだけすぐ会いたいです。いつなら会えますか。」

 返事はまたすぐ来た。

 「水曜夜8時、事務所がよく使うシャインで。事務所の名前で予約しておきます。」

 私もすぐ返信する。

 「わかりました。でも先に、一十木くんに伝言を頼んだのが本当かどうかだけ教えて下さい。」

 以降、返信は来なかった。
 
 


 
 結局、あれからもメールの返事は一切届かず、一ノ瀬さんが一十木くんに伝言を頼んだのが本当かどうかは、解からないまま水曜日を迎えた。

 色々考えてみても、一十木くんが、伝言を頼まれたそれ自体は嘘をついてるとは思えなかった。あのホテルの部屋の番号を知っていたのが何よりの証拠だ。加えて、中で私が待っているのも予め解っていたとしか思えない言動。

 でも、私が知りたいのはそこじゃない。伝言自体はきっと本当で、でも、彼があんな事をしたのが何故なのか知りたい。
 
 「トキヤが望んだ事なんだから。」 という、彼のあの言葉の意味を知りたい。一ノ瀬さんの望みが、私が一十木くんとああいう関係を持つ事だなんて考えられない。そんな馬鹿げた話、ありえない。だって私たちは、あんなに愛し合っていた。彼が私を好きだと言い、私もそれに同じ答えを返し、連絡を取り合い、抱き合って・・・。

 他の男性にあっさりと引き渡されてしまうような理由に、何も心当たりが無かった。

 
 一十木くんはあれからすぐ地方でイベントの仕事があり、数日間東京へ帰ってこない予定になっていた。それは、月初めに貰った所属タレントの大まかなスケジュール表で知っていた。

 私は一ノ瀬さんの曲だけを作っているのではない。一十木くんの曲も多くを担当させてもらっている。
 
 他にも、学園時代から一緒に仲良くしていた数人。それに、事務所へ入ってから何人かの先輩の曲も担当させて頂いていた。だから、毎月月初に、その時点での大まかなスケジュールが担当タレント人数分、私にも回ってきていた。

 あの夜は結局、一十木くんは明け方までに帰ったようだった。最後に彼が、「あれっ、もう2時なんだ。」 と小さく呟いた声を覚えている。明日早いんだよなあとブツブツ言いながら、シャワーを浴びてくる、と私に言い残してベッドを離れて行った。私は意識が朦朧としていて雪崩込むように眠ってしまって、はっと目が覚めた時は朝6時少し前だった。

 その時に部屋中を探したが、もう一十木くんは居なかった。

 
 
 トキヤに頼まれた。トキヤが望んだ。トキヤは、君の事が大好きだよ。だから俺と。

 
 「なんなの・・・。」

 何度思い返しても、わけが判らない。

 思わず口をついて出た言葉は非難めいたものか、ネガティブなものばかりになっていた。

 あの時の一十木くんの言葉の数々は、私を強姦しようとして、その場をごまかす為の出まかせの類だとしか。

 でも。

 そこまで考えて何度も行き詰る。
 そんな出まかせを言うなんて、おかしいのだ。
 
 普通に考えたら嘘をつくにしろ、君はトキヤにフラれたんだよ。だから俺と付き合おう。というような話をするのではないだろうか。あの状況であれば、その方がよっぽど自然で無理が無い。

 嘘をついてるようにはどうしても見えなかった。
 無邪気な笑顔は罪悪感の欠片も無かった。それどころか、未来を見ているような喜びすら彼からは感じられた。中に出す行為にすら、彼からは躊躇いが見えなかった。

 中に出されたのが解った時は、自分の中で何かが終わった気がした。
 自分の中側からとろりと流れ出る一十木くんの精が、ホテルのシーツと自分の身体を汚して纏わりつく絶望感。

 嬉しそうにそれを眺める彼が恐ろしかった。
 何度か私を犯して漸く満足し、私を抱きしめながらベッドでまどろむ彼が言った。
 
 「今日のこれで君が妊娠したら、俺、君と結婚できるのかな。嬉しいなあ。あ、でも今日は大丈夫な日なんだよねー・・・だったら無理かなー。それに、結婚出来たとしても、君は実際にはトキヤのモノなわけだしぃ。あーその辺がよく判らないんだよなあ難しくて、色々変だから。」

 彼が言う、”よくわからない” が、私にとっても見当のつかない部分だった。彼は何かをわからないまま、こんな重大な真似をしている。私はそれが怖かった。その何かを彼が理解してないせいで事態はどうなるのか。それがまったく見えないからだ。

 どこからどう見ても、恋人同士が愛し合った後に紡ぐ雰囲気そのままの彼は、少し乱暴に欲望をぶつけてきたそれまでとは打って変わって優しかった。大好き、大好き。と何度も頬ずりをしてくる一十木くんに後悔や後ろめたさは見て取れなかった。私を好きだというその言葉が、どうしても嘘だとは思えなかった。そのかわり、彼の目には私しか見えてないような異様さはあった。

 その異様さに怯えるのすら億劫になる程、一十木くんに身体をいいようにされ続けた私は半分意識を失っていた。

 私は彼に、大丈夫な日だ、などというような話は一切、してない。何を根拠に大丈夫な日、などと一十木くんが言ったのか。しかし事実、あの日はそういう日だった。

 彼は私と結婚したいというような事を言いながら、一ノ瀬さんと別れてほしいでもなさそうだった。まるで、一ノ瀬さんとお付き合いしてる私と、自分も同じように付き合っているような・・・上手く言えないけど、なんにせよ普通じゃない雰囲気だった。

 何度思い返しても、疑問を解決する答えもヒントも得られず、私は一十木くんとホテルでああなった翌日から数日間、ただただぼんやりと、1日の大半をベッドで過ごしていたが、水曜日の夕方、何とか気持ちを奮い立たせて身支度を整えたのだった。



 

 
 あの夜私は、時間に遅れず待ち合わせ場所へ着くように、家を出た。
 
 事務所が良く使うシャインというそのお店は、昼間はカフェで、夜はお酒も飲める小洒落たお店だった。

 私も数回、事務所の皆と出かけた。料理も美味しくて内装も凝っているし、雰囲気もステキな好きなお店だった。芸能人もしょっちゅう訪れるので、一見さんは入れないと聞いている。

 事務所を通せば個室を用意してくれるし、お勘定も後からでいいという話も、以前先輩から聞いた。事務所もタレントに勝手に動き回られるよりは、自分たちの顔の利く範疇で飲酒などしてもらった方がいいらしく、この店の予約は、快く事務所の名前で取ってくれるらしかった。

 夜、皆の仕事が終わってからの打ち上げなどでしか来た事がなく、大体が事務所の上司とタクシーで店の前まで来るので気付かなかったが、位置はあのホテルの丁度真裏辺りだった。あのホテル自体も、基本的に私のようなお金の無い若い女には用が無いから、地理がよく解ってなかった。

 

 到着すると、すんなり個室へ通された。

 「お飲み物はいかがなさいますか。」

 若い男性店員に聞かれ一瞬迷ったが、

 「・・・オレンジジュースはありますか。」

 そう聞くと、御座いますと答えられ、結局私はそのままオレンジジュースを注文した。

 まばらだがグループ客も居た店内とは、ほんの数歩の廊下を歩いた先で薄い扉1枚隔てただけだ。しかし、客の話し声も完全に聞こえず、バータイムらしく照明が暗い個室に落ち着くと、急にひとりぼっち感は色濃くなった。
 
 約束の時間よりほんの少し早目に来たが、まだ一ノ瀬さんは来ていなかった。いつになるか判らないから、相手が来てから注文します。というのも店に悪い気がした。

 仕事をしてからここに来るのだから、約束の時間に遅れるのは仕方がない。寧ろ、キャンセルになる可能性だって十分にある。なんでもいいから会いたくて、会えるならどれだけでも待とうと思った。

 その時、カタンと扉の外で音がしたような気がして、入口を見た。するりと戸が開き、私を案内してくれた店員が、こちらです、と、掌を上に向けて、誰かを部屋に招き入れていた。

 「いいよ、これはオレがココで貰おう。」

 その声で、私は目を見張る。
 店員から、グラスが2つ載ったトレイを受け取り私に向かって微笑みかけたのは、一ノ瀬さんではなかったからだ。

 「やあレディ、今日もとっても可愛いね。はい、オレンジジュース。」

 背の高いグラスに入ったオレンジジュース。
 ストローがやけにカラフルで、凝った装飾だった。

 カランと、風鈴のような、小さな女の子が履いた下駄のような。音が鳴る。
 
 テーブルに置かれたグラスの中の氷が揺れて鳴る、高い音。店の中で完全に遮断された空間に、水が固まった独特の音が響いた。

 私はそれを、狐につままれたような気持ちで聞いていた。

 「・・・神宮寺、さん・・・。」

 「驚いたかい。イッチーは来ないよ。急に別の仕事が追加されたんだって。」

 ベンチシートの、わざわざ私の隣に座りながら、神宮寺さんは笑顔でそう言った。向かい側にも席はあるのに。気付いたら店員の男性は既に居ない。頭の奥がじん、と痛んだ。

 待ち人は来ない。
 伝言を預かった異性の友人。
 
 2人きりの空間。そして、笑顔の相手。待ち人が来ない同じ理由。
 
 既視感。
 そして、それに伴い静かに波立つ不安。

 だってこんな、数日前と同じような展開で、不安にならない方がおかしい。

 「どう、して、神宮寺さんが・・・。」

 どうして。
 登場人物だけ変えてあの夜をリプレイするみたいな、空気。

 そこまで考えて背筋がヒヤっとした。
 
 必死でその想像を振り払う。
 手の甲の、人差し指の付け根辺りで小さく額を抑える。冷静になれと、自分を叱責した。

 「どうしたんだい。ひょっとして、具合でも悪いんじゃないだろうね。」

 「あ、いえ、あ、その、は・・・すいません。大丈夫です。」

 息がかかる程近い距離で顔を覗き込まれ、ビクリと肩を震わせてしまったが、なんとかしどろもどろになりながらも返事をした。

 しっかりしないと。
 あんなの何度も起きる訳がない。でも取り敢えずどうしていいかわからない。繰り返されそうなこの前振りが怖い。

 逃げたい。


 「あの、一ノ瀬さんが来ないなら、帰りますので。」

 私は、バッグを手に取った。
 その手を、神宮寺さんに握られる。

 「つれないなあ。もうドリンクも来ちゃったのに飲まずに帰るなんて、まさか、優しい君がまさかね。そこまで速攻で帰る必要は無いだろう。作ってくれた店員さんが可哀想だよ。それにね。」

 神宮寺さんが嬉しそうに笑う。

 「イッチーがに頼まれてるんだ。今夜は自分の代わりに君を楽しませてあげてほしいって。君の恋人から罪滅ぼしの代理をお願いされて、オレは友人として快く請け負ってしまったんだよ。・・・だから、帰せないな。」

 「・・・。」

 振り払い切れない想像から必死で目を逸らす。

 神宮寺さんはいい人だ。だから、来られなくなった一ノ瀬さんに頼まれて、友達として伝言を預かった。ついでに、待ちぼうけを喰わされた恋人の相手をと。

 単にここで、お茶を飲みながら談笑する。普通なら、思いつくのはそのくらいだ。それが普通なのだ。

 なのに一十木くんを思い出す。

 彼は言っていた。この情交はトキヤの望みなのだと。もしも今神宮寺さんが言わんとするのが、それと同じ意味だとしたら・・・? でも、そんなワケが無い。彼はそんな人じゃない。そう思い込もうとして必死に、神宮寺さんが楽しませてくれる事とは何かを考えた。そうじゃないと震え出しそうに怖い。

 ここはホテルじゃない。ここはたまたま個室だけれど普通の店の中だ。こんな場所で何も出来やしない。

 出来やしないと自分に言い聞かせるのに、焦りと不安がじわじわと体の上へ昇ってくる。彼に握られた手が熱い。

 「ほら、飲んで。まずは乾杯しよう。」

 グラスを持たされる。

 神宮寺さんは、女の子の扱いに慣れている人だ。
 異性の手を握るなんて、彼にとっては挨拶以前の動作。そんな人だ。日本人離れしたスマートな対応で、学園時代も女の子たちの心を掴んできた人。

 でも。
 こんな至近距離で、私に否応なくグラスを持たせる人じゃない。私のよく知る神宮寺さんは、否定を許さない笑顔で無理強いする人じゃない。それなのに。
 
 さっき、逃げたい。怖い。と思ったあの気持ちは、自分としては珍しく強く働いた第六感だったのだと薄く気付く。目を逸らしたのは無駄な希望に縋っただけなのだと、その瞬間の私は確かに気付いたのに。逃げ出すならもう今しかないと、入口に目を遣ったのに。

 「ほら、乾杯。」

 なのに。

 私の気付きを霞ませるように、優しく目を細めて促す彼の声は、まるで魔法みたいで。
 
 一ノ瀬さん以外の男の人にあまり慣れてない自分が情けなくなるくらい、私は、神宮寺さんみたいな素敵な人に間近に顔を寄せられ、囁かれ、言われるままジュースを飲んで、その場から帰る選択肢を失くしてしまったのだ。

 ふらふらする頭が重くて、でも、頭痛ではなくて、不思議な感覚だったのは覚えてる。

 「可愛いね。たったそれだけ飲んだだけで、そんなになるんだ。」

 「な、に・・・。」

 「大丈夫。怖がらなくていいよ。イッキの時は大分泣いたみたいだからね。オレは、そういうのはイヤなんだ。」

 神宮寺さんが囁く言葉も全部聞こえているのだけど、聞こえて、まともに言葉が出せなくて、あ、とか、う、とか言ってる最中に、次の言葉を言われると、もうさっきの言葉を忘れてしまって。

 車に乗ったのは判った。
 一瞬だったのは覚えている。走り出した車はすぐに止まって、私も降りた。到着した場所はとても眩しい光と、広い空間なのも判った。どこかで見たと感じていた。

 その時はまだ、自分の脚で立っていたと思う。多分、支えられてはいたかもしれないけど歩けていた。

 その後は、断片的な記憶で。
 
 その記憶の数々は思い出したく、ない。

 バラバラのパズルみたいに再生されるそのひとつひとつは、どれを取っても、神宮寺さんと私が裸で絡み合う映像だったから―――――――――。






 
 






  To Be Continued・・・











   次回第4話は、3月22日頃更新予定です。




 

 
 

 

Room2308 第4話

 



 


 Room2308
 第4話









 

 あんまりこういうのは好きじゃないんだけどね。
 でも、痛がったり、辛さで泣きじゃくる彼女を見るのはイヤだったんだ。

 こんな世界に居ると知り合いは多いし、ある程度名前が売れてると、繋がりを作りたいのか何なのか、大して仲良くも無い相手から面白い物を貰う機会もある。まあオレは新人だから、そのお零れを今回頂いたワケだけど。

 ジュースを先に頼んでくれていたのはラッキーだった。
 
 いつも事務所で使う店だから顔馴染みになったバイト店員が、それを持って行こうとしてた所にオレは現れた。

 だから、 「オレのもササっと作っちゃってよ。案内も出来てから一緒にでいいよ。」 と言うと、店員はすんなりトレイを置いて一旦厨房に引っ込んだ。その隙に薬を入れた。戻ってきた店員は何も知らず、オレの頼んだアイスコーヒーと一緒にそれを運んでくれた。

 一体イッキは何をしてくれたんだか。

 オレの顔を見て、イッチーが来られないって聞いただけで、すごい怯えようだった。やっぱり薬を使う事にしてよかった。あの様子じゃ何も手を打ってなかったら、コトの最中に舌でも噛み切られてもおかしくない。かといってオレは、女性に対して暴力は絶対に振るえないからね。押さえつけるにも限度があるし、困っただろうな。

 ホテルに到着する位までは、何とか彼女も自力で立っていて、オレに腰を支えられながらも歩いていた。問いかけにも、それなりまともな言葉で返事をしていた。
 
 部屋に入ってベッドに寝かせてからはもう、身体に力が入らないみたいだった。
 オレは運が良い日だったらしい。とんとん拍子に物事が運ぶ。彼女は薬の効果で抵抗しないし、こうなったら痛みも感じないそうだ。

 ただ、酩酊状態になるでは無いらしい。
 何をされているか、自分が何をしているか、相手が誰なのか、そういう事はある程度解るらしい。解っても、抵抗するだけの力は出ず、快楽に全て流されてしまうくらい、強烈に快感神経を引き摺り出され刺激されるらしい。

 らしい。ってだけで、本当の、要は一般的な薬の効能書きにあるような詳細は今も知らない。大体こんなモノに説明書なんて存在しないだろうし。
 オレは彼女に使用する事で、初めてこの薬の存在を知ったのだから。それでも彼女にこれを使うのにあまり躊躇は無かった。この薬をくれて、効能に太鼓判をくれた人物を信用してるからね。

 オレが躊躇したのは薬を使う事じゃなくて、彼女を抱く事そのものだった。
 
 彼女が痛みや辛さを感じるのが可哀想だから。だからそれが払拭されるならいいと思った。悲壮な彼女を見るのもイヤだったけど、何より、そうなったらその苦痛を与えてるのがオレだっていう事実に、オレ自身が耐えられないと思ったんだ。

 優しいコトを言ってるようで、突き詰めればどこまで自分勝手なんだろう。

 大好きな筈なのに、どうして、こんなにも自分勝手に求めてしまうんだろう。嫌われるかもしれないのに、暴走を止められなかった。

 
 「大丈夫。気持ちいいコトしかしないよ。安心して。」

 半分閉じかけの目も大して動かない彼女。
 オレの声が実際聞こえてるかどうかも怪しいもんだが、オレも余裕がなかった。さっき引っぱり上げるようにベッドに乗せたせいで、少し捲れて乱れた彼女の服の裾に理性を吸い取られた。

 荒っぽいキスをして胸を弄り、服を脱がせても彼女は抵抗しなかった。
 微かな喘ぎ声がオレの耳の奥を突き刺す。今までにない程に大きく早く動く自分の心臓の音と、彼女のか細い、男の神経を揺らす声だけが聴覚を占める。

 邪な目で彼女を見つめた日もたくさんあった。
 好きだったから、欲しかった。イッチーのモノなのだと知った時は、それなりにショックだった。でも、それでもずっと好きなままだった。



 あれはオレには、正直理解し難い話だった。

 でも、からかってるでも罠でもないってのだけは判断できた。
 だから、乗った。イッキは純粋に目を輝かせていたけど、オレはそんな風には振舞えなかったけど、でも、今こうして彼女を自分の欲望に任せて抱いてるオレに、言い訳する資格なんてこれっぽっちもないんだろう。

 だから、とことん踊らないと。
 こうなってしまったら、音楽が終わるまで踊ろうじゃないか。好きな女を抱ける演者に抜擢されたと素直に喜べばいい。

 彼女の脚の間に顔を埋め、とろとろに蜜を溢れ出させている場所を貪り喰らう。太腿までびしょびしょになる位に濡らしている彼女のそこは、熱くなってぽってりと腫れていた。指を入れただけで、壁が圧迫してくる。

 ここにオレのモノを突き入れて掻き回して、彼女が善がる様を見られる。やっと繋がって、この腕に抱ける。とてつもない興奮にオレは我を忘れた。素面の筈のオレの方が薬物中毒と診断されてもおかしくない程、あの時のオレは目の前しか見えていなかっただろう。

 「ハニー・・・愛してる、君が好きだったんだ、ずっと、ずっと・・・!」

 彼女を抱きしめるというより、しがみつくように抱くオレは、きっと傍から見たら間抜けだったに違いない。本気で愛してると告げながら出来る事じゃない。まともな精神の持ち主だったら、愛している相手にあんな真似はしない。身体だけ手に入れたって虚しいだけだ。

 でも、イッチーの話を聞きながらなんとなく、オレを好きになってくれる可能性があるのかと、そう考えてしまったんだ。

 イッキもきっとオレと同じ考えが浮かんだから、あんなに嬉しそうにしていたのだろう。
 彼女がイッチーに愛想をつかすか、それとも、とことんイッチーの愛に応えるか。どちらに転んでも美味しいトコロは戴ける。多少良心が苛まれる部分は、目を瞑ってしまえばいい。瞑れる程、魅惑的な誘惑だ。

 

 甘い声で喘ぐ彼女を、しっかり抱え込み奥に刻み付けるように抉ったせいで、オレは予定より早く中で派手にぶちまけた。

 なのに収まらない。
 
 一度抜いて、彼女を自分の上に引っ張り上げた。彼女は相変わらず抵抗しない。ロクに意識もハッキリしないのに、軽く指図しただけで、さっきまで自分の中に入っていたオレのモノを口に含んだ時、これをイッチーが教えたのかと思って心が少し翳った。

 でもそれも、すぐに気持ち良さに流された。

 この、すべてを流してしまう威力を持つ快楽が、薬を使われた今の彼女はこの比ではないのだ。そう思うとゾっとする。これ以上気持ちが良かったら自我が一切消えて、ヒトとしての矜持も何もないモノに成り果ててしまうだろう。ギリギリの位置でヒトに留まり、荒い息で、体中を桃色に染めてオレのモノを口で愛撫する彼女の姿が妙に幻想めいて見えた。

 ベッドの上で、彼女に下半身を投げ出して座るオレのモノを、一心不乱に舐める彼女が堪らなく可愛かった。
 髪を撫でると、手が耳に触れるのにすら軽く反応した。それが愛おしくて、わざと、耳を裏をなぞるような動きで髪を梳いてあげた。

 高く上げた尻が艶めかしく揺らされ、吐息が更に熱くなったのが解る。
 もしかして、オレをイッチーと間違えてたりするんだろうか。だからこんなに、情熱的なフェラチオをしてくれるんだろうか。でもまあ、いいや。今日はそれでもいい。何度も肌を重ねたら、きっとオレとするのも好きになってくれる。そして、オレという存在自体も、好きになってくれるかもしれない。

 チャンスは生かさないと。

 イッチーには感謝だ。

 「っ、あ、ハニー、そんなにしたら、出てしまうよ・・・ああ、っ。」

 柔らかい体をオレの脚に擦り付けるようにして、うっとりとオレのをしゃぶってる彼女を、ずっと見ていたい。控えめな笑顔が可愛いあの昼間の彼女からは想像もつかない、下品な音を立てながらする卑猥な行為。

 「っはは、美味しいのかい、そんなになって・・・ん?」

 「あ、ん・・・おいしい、ですぅ・・・。」

 答える彼女はきっと空っぽなんだろう。今の彼女は、オレの飲ませた薬のせいで無理矢理引き出された性欲しか持ってない。オレを好きでいてくれるわけでも、オレが彼女にこんなコトをするのを許してくれたのでもない。それでもこんなに興奮する。心がちゃんとある彼女としたら、オレは一体どうなってしまうんだ。嬉しさで心臓も止まってしまうに違いない。それこそ死ねないのなら発狂するだろう。

 「いいよ、君と一緒なら、俺は狂っても。・・・まあ、そもそも人間なんて、みんな最初からどこか狂ってるのさ。」

 そうだ。
 誰もが皆、多かれ少なかれ狂っているのだ。それを普段は、決して見えない何かで隠して過ごしているだけだ。

 何かのきっかけでその隠し場所に触れるものと出会い、そこで誘惑に乗ってしまうと、他人からも狂ってるのが判る状態になってしまうんだ。

 今のオレのように。

 「ハニー、上手だね・・・もっと先を舐めて、うん、そう・・・。」

 言うがままの彼女の首筋を、指で撫でてやる。

 「オレはずっと、君をめちゃくちゃに犯して、オレのモノにしたいと思ってたんだよ。思ってるだけで済んだかもしれないのに、オレは、オレの狂気の隠し場所に触れてくるものと出会って、誘惑に負けてしまったんだ・・・。ごめんねハニー。せめて、ハニーをうんと気持ち良くしてあげる。天国を見せてあげるからね。」

 小さく、のんびりと独りごちるオレの言葉は、彼女には届いていないようだ。
 それでいい。聞かれても困りはしないが、聞いてもらうようなコトでもない。

 「もうイキそうだ。口に出すよ、いいかい。」

 襲ってきた限界を感じ取り、オレは彼女の頭を柔らかく押さえた。

 「ああハニー、全部飲んで、っ、出る、出るっ、ああっ。」

 余韻に浸り、彼女の顔を上げさせる。
 飲み込みきれない大量のオレの精液が、彼女の口端から垂れていた。

 それを見てオレはまた、際限の無い欲望が腹の奥底から濁った音を立てて湧き上がるのを感じた。

 結局あの夜、彼女を何度犯したかなんて覚えてない。ただ、満足してる。次に彼女に会ったらオレは、多分もう、あの時はまだほんの少し残ってた迷いや躊躇いを一切失くして、只管快楽だけを追い求めるんだろう。

 ・・・楽しみだ。











  


 

  To Be Continued・・・













 

 

 

  次回第5話は、3月31日頃更新予定です 








 

Room2308 第5話

 
 




Room2308
 第5話






 
 

 

 悪夢のようだったと言われればそうだし、そうじゃないと言われれば頷いてしまうかもしれない。
 部屋を出るまでぼんやりしていた頭は、部屋を出て何気なく扉を見た瞬間、覚めた。

 「230、8・・・。」

 呆然と呟いた私を見て、神宮寺さんは不思議そうに、どうかしたの? と尋ねた。
 私は、答えなかった。

 答えられなかったから。
 同じ部屋だった事実に足が竦んだなんて、他人にはわかってもらえない。

 
 

 神宮寺さんが、何度も何度も囁いた。
 好きなんだ。大好きなんだ。

 よく解らない。
 
 一十木くんもそんな事を言っていた。一十木くんの時は怖くて、何が何だか解らなくて悲しくて。そんな気持ちばかりだったけど、神宮寺さんの時は頭がフラフラして、あまり恐ろしいとか、悲しいとかっていう感情は、その時には湧かなかった。

 一ノ瀬さんとは相変わらず会えない。やっぱり自分は捨てられたのではないだろうか。そうとしか考えられない。だってそうじゃなかったら、どうしてあんなに都合良く、一十木くんや神宮寺さんが、彼との待ち合わせ場所に現れるのだ。

 神宮寺さんとホテルを出る時は、最後に見たドアのナンバーが衝撃的すぎて、家に帰りたいという気持ちだけが強くなって、神宮寺さんとロクに言葉も交わさなかった。

 私があまり口を利かなかっただけで、神宮寺さんはいつものように優しく、気を遣いながら話しかけてきた。
 私は笑う事も出来ずにいた。兎に角家に帰りたかった。1秒でも早く自分の住み慣れた風景に戻って安心したかった。わからない事ばかりでぐちゃぐちゃに絡まった神経をフラットにしたかった。

 家に帰って暫くぼんやりしていた。ほとんど何も、覚えてない。正確に覚えてるのは、神宮寺さんに抱かれたという事だけ。
 何度巻き戻しても、神宮寺さんと夢中になって快楽を貪っていた絵しか浮かんでこない。

 自分は確かにあの時、気持ちいいと思っていた。相手が一ノ瀬さんじゃないとちゃんと認識していたのに。私は嫌がらず・・・。

 …嫌がるどころか、神宮寺さんに貫かれて悦んで、抱き付いていた。お酒を飲むと記憶がなくなる人の話を聞いたりするけど、まさか自分がそんな風になるなんて。

 「ハニーごめんね。オレが、ハニーのジュースをカクテルに変えちゃったせいで・・・。まさかあんなになるとは・・・あそこまで酔うと、良くないな。これからは一人で飲まないようにね。オレでさえ理性がなくなっちゃったんだから、普通の男なら二度と家に帰して貰えなくなってしまうよ。」

 私に腕枕をしながら、神宮寺さんは軽口と変わらない調子でそう言った。
 その時既に、私と神宮寺さんはお互い何度達したか数えきれない位になっていた。

 彼の腕枕で微睡む自分を責めなかった自分が居た。どうしてか嫌悪感が無かった。一十木くんに襲われた時は怖くて悲しくて、虚しさと辛さだけだったのに。

 2度目だから、もうこれ以上は一緒だと自暴自棄にも似た気持ちだったのかもしれない。お酒のせいだから仕方ないって気持ちも、強かったのかもしれない。
 
 神宮寺は優しく優しく私に触れ、何度も、ごめんね。と囁いた。好きだ、という言葉とごめんねと言う言葉を、同じ数ほど呟いていた。

 でも、ごめんね、という言葉に、悪いと思ってるような雰囲気は見つけられなかった。きっと本当の意味で悪いなんて思っていない。彼はきっと子供をあやすのと同じような感覚でごめんねと言っているだけで、私があんなに酔っぱらわなくても同じ事をしたに違いない。

 

 突然メールの着信音が鳴り、私は3秒と置かずボタンを押した。

 一ノ瀬さんからの返信を心待ちにしていた私は、画面に表示された差出人に首を傾げる。

 「寿先輩・・・?」

 仕事のメールだろうか。
 
 寿先輩は、一ノ瀬さんが事務所の方針上、一時同居した時期もある先輩アイドルだ。

 寿先輩と一ノ瀬さん、一十木くんが、同じ部屋で暮らし、事務所に認めてもらう為に頑張っていた時期があった。その縁で、私自身もそれなりに彼とは仕事も、プライベートでも多少のお付き合いがある。たまにメールで、他愛もない話題をやり取りする日もあった。

 何か仕事で、忘れていたかな? そんな気持ちで送られたメールを開けた私は、次の瞬間、思わず自分のスマホを画面を下にしてソファに押し付けていた。

 目を疑う。
 一瞬でパニックになり、私はもう一度、信じられなさがあまりにも通り越えた感覚になんとか耐えて、画面を見た。

 「明日19時 ○○ホテル 2308号室で」

 見開いた目を閉じたら、この画面は違う文面に変わっているのだろうか。
 そんな馬鹿げた考えが浮かんで消える。

 「ど、うして・・・どうしてまた、この部屋なの・・・!」

 同じホテル。同じ部屋。蘇る記憶。

 

 夜は早い。
 それとも、私がそれからずっと部屋から動けなかっただけだろうか。

 気付いたら、部屋は真っ暗だった。
 寿先輩に限って、一十木くんや神宮寺さんみたいな事にはならない。そう思うもその端から、じゃああの2人はそんな人だったの? と、別の自分の声がする。

 あの2人だって、そんな人じゃない。私にあんな、ううん、女の子にあんなことをするような人たちじゃない。2人とも、一ノ瀬さんが望んだからこうしてるのだと、言っていた。

 では、先輩は・・・?







 
 呼び鈴を押すのを何度か躊躇い、それでもここへ来る事も悩み抜いて決意したのだからと、結果押した。
 ドアを開けてくれた寿先輩は、いつもと変わらない、優しくて軽口を叩いてる普通の先輩だった。
 
 まるで、この部屋を予約するのは、事務所を通してこのホテルを予約した場合は必ず割り当てられるから。などという理由でも罷り通りそうに、普段の先輩だった。

 「後輩ちゃんはえらいね~。ちゃんと時間通りに来て、おりこうさんだねー。」

 寿先輩はニコニコしながら、テーブルにミネラルウォーターのペットボトルを置いた。
 神宮寺さんと会った日を思い出し、素直には手を出せない。

 そんな私をからかうような声で、先輩は言った。

 「どうしたの。お酒なんかとすり替えてないよ。嘘だと思うなら自分で開けてごらん。ちゃんと蓋、閉まってるから。」

 「!」
 
 その言葉は、私の神経を揺さぶった。
 でも何て切り出すべきか判らず、黙って先輩を凝視するだけの私を見て、また彼は嗤う。

 「ああ、違った。アレはお坊ちゃんが君にそう説明してるだけで、実際はお酒じゃなかったんだよ。君が飲んだのは、普通のオレンジジュース。ただ、ちょっとだけお薬が入ってた。君も流石に、酔っぱらっただけであんな風になるなんておかしいって思ってるよね。」

 がくんと。
 内臓の位置が下がった気がした。

 「寿先輩・・・。」

 なぜ。
 なぜあなたが、そんな話を。

 言いたいのに、言葉が出てこない。

 「あれ? 彼は種明かしはしてないんだ。まったく、どうしてみんな僕にイヤな役ばっかり押し付けるのかなぁ。・・・まぁいいや。」

 軽く肩を竦めて、先輩は水を飲む。
 ごくりと動く喉が妙に現実感を煽る。悪夢ばかりが生まれる、この2308号室のリビングで。私はそれに少しだけ身構えた。

 「ねえ。後輩ちゃんは、トッキーのどこが好きなの。」

 「・・・え。」
 
 「だからさ、好きだからトッキーと付き合ってるんでしょ。どこが好きなの。」

 予想外の質問に少し驚いて、私は黙ったまま先輩を見た。
 先輩は、ん? とでも言いたげに首を傾げ、私の返事を待っている。

 「どこ、って・・・その、色々ですけど・・・。」

 「ふうん。色々って? 色々なオモチャで気持ち良くしてくれるから好き。とかって意味かな。」

 「!?」

 思わず彼を見つめる。私の表情が一瞬で変わったせいか、寿先輩が面白そうに笑う。

 「あはは、そーゆーコトもしてるんだ?」

 「な、ち、ちが・・・!」

 「あはは、何その慌てよう。してても僕ちん驚かないけどね。あんなコト言い出すような男が彼女に大人の玩具を使ってたからって、そりゃそうだよね、って感じだし。」

 
 「あんなコト・・・?」

 そう。
 一十木くんも、神宮寺さんも。

 必ずこの部屋で、一ノ瀬さんが何かを言ったが為に自分はこんな真似をしてるのだ。というような事を言っていた。その何かを、寿先輩も知っている。

 私は寿先輩を見つめた。
 先輩はにこやかに口角を上げる。

 「実を言うと、僕ちんにも良く解らないんだよねー。だってさ、好きな子は独り占めしたいと思わない? 世の中には、自分の彼女が他の男に犯されてるのを見たいってゆー変わった性癖の持ち主が居るとは聞いてたけど、まさか自分の身近に居るとは思わなかったからさ、ちょっとビックリしたしね。」

 時間が止まったような気がした。
 寿先輩の言葉が空気にのって、しゅわっと消えていく。

 そんな感覚だった。あまりにも自分の知っている世界とかけ離れた話をされて、意味が上手く呑み込めない。

 「・・・ど、う、いう・・・。」

 色々聞きたいのに。
 何をどう聞けばいいのか判らなくて言葉にならない。

 「なんていうか、一筋縄じゃないかないっていうか、色々面倒でねえ。完全に寝取られるのはNGなんだって。自分の物ではあってほしいそうだよ。自分の彼女のまま、他の男に堕ちてるトコロが見たいっていうか、なんか複雑で難しいんだ。ま、人の心は表現し切れない部分があるからねえ、僕ちんもあんま上手く説明できないや、本人じゃないし。」

 話をしている先輩は、至極真面目な顔をしていた。
 音声が聞こえない誰かが見たら、まさかこんな会話をしてるとは思わない。

 「で、どこが好きかは答えられないんだよね。じゃ質問を変えようかな。君は、どのくらいトッキーのこと好きなの?」

 寿先輩が言う。
 笑顔の彼に、現実味が湧かなかった。
 
 「君の彼氏は、君に、僕ちんとセックスして気持ち良くてアンアン言ってる姿を見せてほしいそうだよ。それに応えてあげられる位、君は彼を愛してるの? それとも、そんな男と別れて、僕と付き合う?」

 「意味が、わかりません・・・。」

 私はそれだけ言うのがやっとだった。
 寿先輩が、改めてちらりと私を一瞥する。

 「寿先輩の言ってる意味が、わかりません。何を言ってるのか、意味が・・・。」

 「僕ちんの方が解んないよ。てか、誰か理解できるの? こんな話。」

 その時彼は軽快な声のまま、微かに鼻で笑ったような気がした。

 「トッキーのその変態性についてどうこう言っても仕方ないと思うよ。それとね。」

 突っ立ったままの私に構わず、先輩は話し続ける。

 「君はわからないんじゃない。認めるのを拒否してるだけだ。君の恋人は、愛する女を他の男に抱かせて興奮する変態で、今から君が選択すべきは、それにつきあうかどうするか。それだけ。シンプルでしょ簡単でしょ。君は本当は意味が解らないんじゃなくて、そのシンプルな事実を受け入れたくないだけだ。」

 リラックスした姿勢で、先輩が言う。

 「確かに、こんな変態的な趣味を理解するのは難しいよね。僕ちんも同情するよ。でもさっきも言ったけど、どうしてとか、そういうレベルの話じゃないじゃん? 趣味は趣味。ってだけ。アールデコが好きって人に、それはナゼ? って質問しても大して意味無いでしょ。装飾が凝ってるからとか、精神性にロマンを感じるとか何となくの理由はあるかもしれないけど、誰もが納得する絶対的な理由や原因が、趣味趣向に早々存在するワケじゃない。ましてや性癖なんてそうでしょ。」

 「・・・一十木くんが。」

 「ん?」

 寿先輩の説明はあまり頭に入らなかった。
 その代り、思いついた言葉が口をつく。

 「一十木くんが・・・神宮寺さんも、あの時、一ノ瀬さんが望んだって、言ってました。まさか、それが、私を、・・・でも、それって、どこかで一ノ瀬さんが、あれを見ていたって事、です、か・・・? でも・・・そんな・・・!」

 パニックになりかけた私を、寿先輩が制す。
 そっと肩に手を置き、ぽんぽんと、優しく叩いた。

 「ハイハイ落ち着いて。色々面倒な性質のお陰でね、トッキーはまだ見てない。単に他の男とヤってるのを見て満足。なら、もっと話は簡単に終わったんだろうけどね。そうじゃないんだ。さっきも言ったけど、アクマでトッキーを愛したまま他の男に堕ちてるのを見たいんだって。わがままだよね~。」

 頭が痛い。
 ひどく痛い。

 「単に他の男にヤラせたいなら、話は簡単。君が泣き叫ぼうが喚こうが、力づくでも強姦する男は幾らでもいる。でもトッキーが望んでるのはそういう場面じゃない。君がトッキーを愛してて、ちゃんとトッキーのものであって、でも、他の男を受け入れ悦ぶ姿。それが見たいっていう非常に難解というか・・・。いうなれば、究極のドMだよね。愛し合ってる自分たちを弄ばれたいんだから・・・。ま、そういう感じなんで、おとやんが、泣いてる君を無理矢理ヤってるのを見ても意味が無かったの。だから見てない。」

 まだ見ていない。先輩のその言葉に、心のどこかがほっとする。
 ほっとしてる状況ではないのに。

 「ねえねえ。おとやんが君とヤる一番手になったのは、どうしてだと思う?」

 また、唐突に質問された。

 私は黙っていた。
 数秒が過ぎる。

 「理由はただ一つ。」

 先輩が、私の目の前に人差し指を突き立てる。

 「君を強引にこっち側に引き摺り込む為。だから、おとやんじゃなきゃダメだったんだよ。」

 相変わらず淡々と話す先輩が、水を一口飲んだ。

 「お友達の願いを叶えてあげようって、僕たち知恵を絞ったわけよ。3人寄れば~ってヤツね。一応、僕たちを信頼して相談してくれたトッキーに報いてあげたかったのよね。」

 その時一瞬、彼の放った友達という響きに、心がこもってないような気がした。

 「他の男と寝る事に抵抗を感じなくなるようにするなら、なんとかしてトッキー以外の男と一度でも寝ないと、コトが進まないと思った。だけどレンレンは、君を泣かせるのがイヤだってずっと迷っててね。口が上手いから一番手にはいいと思ったんだけど、彼は迷ってた。誰かが既成事実を作った後じゃないと動けない程、レンレンは君に惚れてた。それじゃダメなんだよ。あれじゃ、普通に口説いて、普通に付き合い出しかねなかった、それだと、単に君がレンレンに心変わりして体を許した。って流れになるから、トッキーの望み通りではなくなる。」

 「・・・。」

 「んで、僕ちんは独占欲が強いから、最初に手をつけたら他のヤツらにヤラせない可能性が高かった。自分の事だからね、よ~く判る。君が複数の男の相手をして悦ぶようなド淫乱になってからなら、割り切って楽しめるんだけどさ。そうじゃないと、自分だけのモノにしちゃおうって考えがどうしても捨て切れないだろうなって。そうなると結局、トッキーからも引き離す事になっちゃうからダメなワケ。君がトッキーの彼女じゃなくなっちゃったら、トッキーの望みは叶わない。」

 先輩が、私の前に水を差し出す。
 何も考えず、受け取った。

 「でもおとやんは違った。大好きな君とヤれる大義があるなら何でもいいって感じだった。ああいうタイプは本当に助かる。だから彼を一番手にした。最初におとやんが力づくでも君を犯しちゃえば、始まっちゃえば、レンレンも腹を決める。君は最初はおとやんにあんな目に遭わされて相当傷ついただろうけど、でも、レンレンとはどうだった。君さ、おとやんにヤラれた時程は、ショック受けてないでしょ。」

 ぎくりとした。
 心のどこかで、自分でも感じていた認めたくない箇所。
 
 そう。
 私は確かに、最初に一十木くんにあんな事をされた時よりは、神宮寺さんにされた事に傷ついていない。それどころか、神宮寺さんは優しかった、など。

 イヤだったとは、そんな感情は、幾ら記憶が曖昧だったからとはいえ。

 「人間さ、気持ちいいと罪悪感も薄れちゃうんだよね。それは君に限った話じゃない。皆そうだ。だから自分を責めなくていい。仕方ないんだよ。僕たちはそれを解ってて、そうなるように準備をしたんだ。人間は慣れる生き物でもある。一度だけじゃなく2度あれば、免疫が出来る。それが更に、罪悪感を消すんだ。」

 先輩が、私の頬に優しく触れる。
 
 気付かれたのだろうか。ドキリとして、体が動揺でほんの少しだけ揺れたのだろうか。

 「君は悪くない。誰もが気持ちいいのは好きだもん。しかもそれを、好きな男が望んでるんだ。拒否する理由がない。だから君は、幾ら薬のせいだったとしても、レンレンに抱かれて嫌悪感が無かったって、言い切っていいんだよ。」

 「そんな・・・。」

 「明日、トッキーが君に会う。」

 反論しようとした時、先輩が思いがけない言葉を口にした。

 「え?」

 「明日、やっと休みが取れたからデートしよう。って伝言をトッキーから頼まれてたんだ。会って、自分がこれからどうするかを決めればいいよ。愛してるからとことん付き合うか。それとも、そんな変態男と別れるか。自分で実際会って、もう一度考えてご覧。僕は無理強いはしない。無理強いは、トッキーも望んでいない。」

 先輩の言葉には現実味を全く感じられない。それでも重く、妙にずしりと私の心臓に圧し掛かった。
 頭の中で気持ちも状況も整理しきれず、何も言えずに居る私を、突然先輩が抱き寄せた。

 「きゃ・・!」

 「ちょっと仕掛けだけ、していいかな。」

 「しか、け、って何・・・っいたぁ!」

 首の辺りに、突然痛みを感じて私は声を上げた。

 「痛い! やめ、先輩っ・・・!」

 何が何だか判らず固まっていた私が、やっと渾身の力を出して先輩を押し返せた頃には、先輩の方から離れてくれようとした時だった。

 「痛・・・なんですか突然! 何を・・・!」

 「明日、襟ぐりの広い服を着てってよ。んで、それを見たトッキーがどういう態度を取ったか、明後日教えて。」

 「は? 何を言ってるんですか、大体明後日って」

 「明後日、またこの部屋で僕ちん待ってるから。時間は今日と一緒。トッキーと会ってどうしたか、そしてどうするつもりになったかって、教えてよ。待ってるね。」

 先輩は言いながらスマホを取り出して、あ、明日は夕方トッキーの部屋に来てくれってさ。と、一ノ瀬さんからのメールか何かで確認して、まるで仕事の取決めでも決めるかのようだった。

 部屋を出る前、壁にしつらえられた鏡に映った私の鎖骨の辺りには、幾つか、先輩が付けたキスマークがくっきりと残っていた。












  
  To Be Conituned・・・












  次回第6話は、4月12日頃更新予定です。







 


プロフィール

みるくあずき2

Author:みるくあずき2
成人。
主婦。母。妻。嫁。娘。事務員。など。

本家ブログはアメブロ
http://ameblo.jp/milk15azuki
にて、乙女ゲームレビュー(感想・攻略? 雄叫び、乙女向けCDも愛聴)を書き綴っております。

乙女ゲ歴というかゲーム歴4年。
妻となり母となって大分経ってから見つけた趣味なので、遅咲きです。
遅咲きの狂い咲きってヤツですね。

本家ブログは只今リアル絶賛多忙中の為に気紛れゆるゆる更新です。コチラは元々気の向くままに進めています。

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感想・お世辞は大歓迎ですが、苦情は受け付けられません。
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拍手とかコメントとか貰えると泣いちゃうくらい嬉しいですよ・・・。

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宜しくお願い致します。

只今うたプリだと トキ春 嶺春 蘭春 音春を筆頭にカミュ春や翔春、真春、レン春もございます。R18、オールNLとなりますので宜しくお願い致します。

だけど最近プリンスよりも先輩とかヘヴンズが好きだったり・・・。

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